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1年ぶりにパリを散歩した。店舗の入れ替わりはあるものの、街並みは全く変わりがなく、それが嬉しいような寂しいような。東京やシンガポールでは1年も経てば、新しいビルがにょきにょき立ち、ヒルズとか汐留とか丸の内とか、街がどんどん再生されて迷子になる。蠢くような熱に満ちたアジアを訪れると、見識のあるヨーロピアンは「あっちはもう死んでるから」と言う。例えばフランスの生産性や志気の低さや、それを差し置いた待遇改善の執拗なまでの要求は、長年続くと悪循環で、退廃的な無力感が漂っている。
パリにしか住んでいない人には、その自覚症状がないから困る。
がしかし、確かに美的コダワリのある人はわりといる。
地下鉄でゲイカップルらしき男二人がいて、ひとりは頭ぼさぼさの不潔っぽい無精髭。極めつけにジーンズを半ケツぐらいずり下げ、・・・ってか、にーさん、下げすぎっ!パンツ覗いてまんがな、ってなチラリズムどころか、パッション紫色のブリーフが5cmは露出している。が!ラフに着たラベンダー色のセーターが、はみパンの紫と調和しているうえ、シャツ袖口のボタン穴は紫の縁取りで、だらしなく見えて隙がない。俄然ボサボサ頭が無造作なスタイリッシュに、無精ひげもセクシー感満載に見えてくる。アキバ系がツンデレに萌えるのと同じように、ダラピリ系にクラっとくる私。
ある友だち(西洋版骨董オタク)は家の改装にあたり、船舶用円窓の素材感で建築家と互いに譲らず決裂し、元部下(ゲイ)は社内標準の見積書がダサくて美意識に反すると、独自フォーマットを作った。多少ルールから外れても寛容で、ケセラセラなくせに、シャツにパスタソースが散った径0.5ミリの染に「うぎゃー」と大騒ぎするお国柄。「美」に対するコダワリが尋常でない人の率が高い。
表参道近くにある太田記念美術館にも収蔵されているこの絵は、北斎の『千繪の海』。関東周辺の漁をテーマに水の流れと漁師を躍動感溢れる描写で表現した錦絵の連作で、『富嶽三十六景』完成期の同年作とされる。ホクサイって何?というレベルの我楽多屋に転がっていたのを、今私が居候しているノルマンディの家のマダムも北斎とは知らずに買った。保存が杜撰だったのか色褪せて、2色の濃淡しか残っていない。それでも市井の生活感と躍動する水が、A5版ほどの枠から飛沫を放つ。
このシリーズは全10図。各図50枚は刷られたという富嶽三十六景と違い、これは各十枚しか刷られなかった希少品で、日本に揃いは存在せず、全十図が最初に発見されたのはパリ国立図書館だった。それについてお正月にNHKで『幻の北斎』とかいう特番があったらしいのだけれど、見逃してしまって残念無念。それを見ていれば、この絵がフランスに渡った理由が分かったろうに。
富士山や役者絵ならまだしも、漁師じゃありがたみがねえや!と当時の江戸っ子が言ったかどうか。この絵はフランス人のお眼鏡にかなって海を渡ったのだろう。同じシリーズの「総州銚子」がゴッホやモネをはじめとする印象派に多大なる影響を与えたことはあまりに有名だ。
不思議なアートがわんさかで、それが不思議な調和をなしているマダムの家。今晩は、鰯の南蛮漬けを、彼女が掘り出したイゲ皿に盛ってみる。
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御無沙汰しました。お元気で何よりです。この版画初めて見ました。6月に国際木版画会議にでてワークショップしました。イタリア人の男性アーティスト、私のWSでは悪戦苦闘していましたが、午後別の建物で講演していました。偉いんだ!
ところで東京の教室の生徒さん、家にあった浮世絵(役者絵)約50枚を折帖にしようとしています。こちらが気を使います。
2011/8/3(水) 午前 8:06
最後のイゲ皿を、ゲイ皿と読み間違えて、
いったい、『ゲイ皿』ってどんな皿と。。
しばらく、真面目に、考え込んでしまいました。(笑)
そんなにフランスは、ゲイが多いのですか??
2011/8/3(水) 午後 8:02
京うさぎさん、そりゃ、実際に新しいアートに取り組むのと、講義するのでは全然違うでしょう(^ ^)。
私は手先はわりと器用なほうですが、備前焼の窯でチャレンジさせていただいたときは、ほんと幼児の工作みたいになっちゃいましたよ(^^;)。窯で焼いていただくのが僭越至極でした。
浮世絵50枚の折帖とは、それはそれは。家にあるだけでも凄い(^ ^)。
2011/8/3(水) 午後 8:05
みやまつりさん、多分ゲイは日本もフランスも同じ割合で存在すると思いますが、フランスのほうがカミングアウトできる土壌がありますね。だから表面だって見えるだけかと(^ ^)。あからさまにゲイだという銀行員とか、日本では難しいですもんね。
私はわりと彼らは面白くてセンスがあって大好きです。恋愛対象として最初から除外されている気軽さもありますし、話も合うんです(^ ^)。
2011/8/3(水) 午後 8:08
美的感覚は或る意味、家庭環境、お育ち、更には遺伝子が重要なポイントになると思います。 我が家は大阪のど真ん中、心斎橋にとても近いとこにありますが、その界隈では、色んなファッション関係のお店が立ち並んでいます。そこで働く店員さんを見て、ファッションの素質がある人、そうでない人が顕著に見て取れます。 最近、男性では無精髭をするのが流行っていますが、さりげない無精髭と、汚い無精髭の2つに分かれているようです。 汚い髭を生やしている人に限って、何かイキガッテいる感じがしまうね(笑) 「俺って、素敵」って言う感じ! でも、何かダサイんです。さりげない無精髭の人ってやはり育ちのなえる技か、何かカッコいい!!!!
僕的には髭の生える人が羨ましい。僕なんて2日、3日でちょろっとしか生えないんです。ワイルド系には、程遠いですなァ===(爆)
2011/8/3(水) 午後 11:08
「こう、あらねばならない!」ってな観念的思考ではお洒落は出来ませんよね。
70歳過ぎても、赤やピンクのシャツが着たい。
北斎は余りに有名過ぎて・・入り込めませんが
「大津絵」は楽しいですよ。
[ ミーコ ]
2011/8/4(木) 午後 4:23
なぞなぞ先輩、髭がほとんど生えないのは、不要な人にとっては便利ではないですか!女の生理みたいなもんですね!(・・・って、え?違う?)私の脱毛の先生(←何の話をしてるんだ!)は、シンガポーリアン男の産婦人科医でしたが、彼もツルツルんで、「僕も自分でやったんだよねー。もう、すっごく楽♪」って言ってました。
美的感覚って遺伝・・・も、ですか(^^;)。そうでしょうかね・・・。でもまあかなりの部分はトレーニングでカバーできるかと。
無精髭、流行ってるんですか?取り扱いに難しいアイテムだと思いますが・・・。20代の頃は「不精髭」は「メタルフレームメガネ」「タバコ」に続いて、「笑える」「指が節くれだっている」と並ぶ私の萌えポイントでしたが・・・、今となって残っているのは「笑える」だけです(爆)。
2011/8/4(木) 午後 4:55
ミーコさん、そうですね。チャレンジ精神が必要です!
赤やピンク!是非着てください!明るい色のほうが絶対にお顔も明るく見えて素敵です。私の今夏のテーマカラーは、クレイン・ブルーとカーキとゴールドです。
ところで、大津絵、私は直に見たことがないのです。リラックス感がいいですよね。柳宗悦の日本民藝館に展示されてますかねえ・・・。東京に引越ししたら、家から徒歩5分なので、是非とも観にいきたいアイテムのひとつです!
2011/8/4(木) 午後 5:01
良い品をお持ちですね。
大胆な構図や卓越した画力も然ること然ることながら、やはりプルシアンブルーを多用した色のチョイスのセンスが抜群に良いですよね・・・
北斎って・・・・
いいないいな・・・
それと北斎もだけど
南蛮漬け、大好きです。ぼくは鰯より鯵のほうが食べる機会が多いかな(笑
2011/8/5(金) 午前 2:50
おけやさん、構図とかデフォルメした動きの表現が凄いと思います。ほんとに、北斎って。
でも、実はもう1枚あるのですが、そっちはわりと静か〜なかんじで、私的にはあまりツボにはまらない絵です。
私も鯵には目がアリマセン・・・というか、青魚が好きなんです。いまわの際に食べたいものは、絶対鯖寿司!と家族にお願いしてます。
2011/8/5(金) 午後 2:49
お元気に骨董屋巡りをされているんですね(^_^)
2年ぶりに訪れた骨董屋さんは、ちゃんと覚えてくれていたんですね!
そんなことがあると嬉しくなり、益々、骨董にはまっていきますね(*^_^*)
[ Dr.K ]
2011/8/14(日) 午前 9:17
Dr.Koimariさん、ははは。ヨーロッパの骨董屋さんも楽しいですよ。輸出物がでてきたり、「日本」のものでなくても「日本の影響を受けたもの」とか、ヨーロッパのものでも楽しいものはあったりします。
で、やはり今回もしっかりお買い物してきました(^^;)。前に↓の記事を書いたカップを買ったお店です。
http://blogs.yahoo.co.jp/linlin_s_sister/MYBLOG/yblog.html?m=lc&sv=%C9%A6&sk=0
店主は見立が概ね30年ぐらい甘くて、今回も調べると、ぴったり30年サバよんでて、笑えました。
2011/8/14(日) 午後 11:14
↑の口髭のせ仕様のイングリッシュ・イマリのカップ、再度拝見しました。
珍しいですね。
1867年のパリ万博が日本初参加といわれていますが、それ以前にも日本が世界に紹介されていたんですね。
[ Dr.K ]
2011/8/15(月) 午前 7:50
今、林忠正に関する本を読んでいるところなんですが、万博がらみではいろいろなしがらみがあったようで興味深いです。歴史を授業で習うと、たんに事実が並んでいるだけに感じるのですが、きっとひとつひとつのイベントの裏側で、人間のドロドロしたやり取りとか別の意図からの派生とかが絡み合ってそういう出来事になっていったんだろうなぁ・・・と、漸く気づき始めた今日この頃です。(←遅すぎ・・・(^^;)
2011/8/16(火) 午前 6:52
私、無精髭はダメです
痛いじゃないですかっ!
北斎大好きです。名古屋で展示あると絶対観に行ってます。多分姐さんも読んでらっしゃるんじゃないですか?「百日紅」。この漫画読んでからはますます好きになりました。
産まれたての若君、めちゃ生命線長いんです。北斎くらい長生きできるかな〜
2011/8/16(火) 午後 11:34
林 忠正」なる人物について、ウィキを読んで知りました。
教科書的な歴史の本には、大きな、国に関係したような事柄しか取り上げられないですものね。
こうした人物の活躍の話も、現実味があって楽しいですね(^_^)
[ Dr.K ]
2011/8/17(水) 午後 4:24
イク姐さん!お久しぶりです。お元気ですか?
不精髭、ダメっすか(^^;)。私は結構平気ですが。でも先日、不精・・・じゃなくてちゃんとした髭をはやしたにーさんが、「もう2週間ぐらい髭を洗ってない」と発言し、さすがに欧米でふつーのホッペにチュの挨拶をためらいました。
百日紅、知りませんでした!是非9月に日本に上陸したら、ブックオフに走ろうとおもいます♪
生命線ながい若、ええねー。すべてが初体験で、希望がいっぱい♪
2011/8/20(土) 午前 9:17
Dr.Koimariさん、そうです。現実味がありまくりですよね。どんな事柄にも、きっと林さんのような人々が蠢いていたんだろうなーと、思います。
2011/8/20(土) 午前 9:21
北斎ええですね〜集めましたよ富嶽三十六景、、、の切手^^;
でもこの辺りがもっとも名を高めた作品でもあるし、ぜひ国内に持ち帰って欲しいです。ポチ
2011/8/22(月) 午後 8:57
くらいけさん、持ち帰りたい・・・んですが、陶磁器と違って浮世絵は欧州でも評価が高いだけに、値段も高い(^^;)。
有る意味、富嶽三十六景の切手をパリの古切手市で売ればかなり高くいけそうですから、それを軍資金に浮世絵も買い戻せるかもしれませぬ。
2011/8/23(火) 午前 6:23