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肩こりになる。が、欧州ではそれを説明できなくて困る。なぜなら、彼らの肩は凝らないから。ゆえに「肩こり」という単語がない。
この痛みを表す単語を問えば、「寝違い」「首が硬い」と言われ、医者を薦められる。んな大げさな。マツキヨにもあるS字型肩押器もここにはないし、駅前にお手軽マッサージもない。で、同僚に肩を揉んでもらって「そこそこ、もっと強く〜」とか言っていたら、隣の若いSEが「それはちょっと…」と耳まで真っ赤になっていた。マッサージ椅子は積年の念願なのだが、あのイケてない外見のものを家に置くのはいかがなものか。つまりドンピシャリ「肩こり」という単語は仏語にも英語にもない。
逆に欧州のもので日本に存在しないものは邦訳語がなく、「ラマス・ミエット」もその類。これは19世紀末にフランスで作られた食卓用の塵取りで、食事中にテーブルに落ちたパン屑を、デザートの前に集める掃除道具。パリで少しお高いレストランに行けばクロスは白無地が基本で、糊の効いた木綿を滑るように曲線を描いてパン屑を集めるウェイターの洗練された手つきにはウットリするものがある。そして塵ひとつない純白のクロスにデザートが供されると、猫まんまや卵かけご飯が至福の私とて、なんとなく優雅な気分になってしまう代物である。
これはアールヌーヴォーの、しかもジャポニズムが色濃い。浮世絵が印象派の画家やナビ派、イギリスのアート&クラフト運動、ウィーンのクリムトやミュシャに与えた影響ばかりが目立つジャポニズムだが、陶磁器やガラス工芸などあらゆるジャンルに波及していて、実際に日本刀の鍔にそっくりなベルトバックルなんかも市で見た。
それまでのヨーロッパで図案化される植物といえば「花」で、全体に埋めつくすか、中心に一つだけ描くか、またはフレームとして周囲に散りばめるかだった。野菜や生活雑器さえモチーフにし、アシメントリーな構図と絶妙な余白の古伊万里や漆器が与えた驚きはいかばかりだったか。江戸期に稲が文様に使われたように、このラマス・ミエットには麦芽があしらわれ、「パン屑集めに麦」と、どこか日本的遊び心を感じる。
現在のフランスの一般家庭で登場することはほとんどないラマス・ミエット。純血種日本人の私が家で「前菜はジビエのパテ、ペリゴール風でございます」的な食事をすることなどないので、これを使う機会は更にない。使ってもらえない道具とは、なんてお気の毒。
TOTO社がウォシュレットをヨーロッパで売り出して数年が経つが、いまだに普及している兆しは全くない。あんなに便利なものでも浸透しないんだもの、日本がどんなに西洋に感化されても、ラマス・ミエットが日本で市民権を得ることは絶対にない。
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余白の取り方や、麦の穂を持ち手に巧く配している点など、まさにアール・ヌーヴォーらしい意匠ですね。一方で麦を題材としているところに、単なる日本趣味に止まらない西洋らしさを感じますね
〜ナイス
実は欧州に肩こりがないのと同様に(ちょっと違うか、笑)、日本では明治まで麦の図柄は見られません。稲や粟の穂はたくさん描かれており、家紋にもなっていますが、不思議なことに麦だけはないんですね。麦の図の古伊万里、これは私にとっての“幻の古伊万里”のひとつです
2015/4/6(月) 午後 0:53
> okeyaさん
20代の頃、オフィスでしゃがんでファイル・キャビネットの中を漁っていたら、後ろから経理部のお兄さんに両肩に抱きつかれて顔を肩にスリスリされ、「なんて頼りがいのありそうな肩♡」と言わたのを思い出しました。
まあ、私の肩とははそんなかんじですよ(爆)
今から思うと、めちゃくちゃセクハラですよね!くそ〜、前野〜、今どこにいるんだ。探し出して奢らせちゃる!
2015/4/6(月) 午後 4:58
> padaさん
肩コリについて、padaさんの下のMSMさんが「筋肉の質が違う」とコメントくださってます。こ、これでは対処のしようはなさそうです(涙)。
デザイン、素敵ですよね。これはいたただきものなのですが、くださったマダムは本当に私の趣味をよくご存じです♪
2015/4/6(月) 午後 5:00
> MSMさん
人種は変えられないので、それは対処できそうにないですね。確かに私の肩こりについて、同僚たちは「そこは首だろう」「いやそこは背中だ」という議論をしてました。「…いや、だから肩だってば…」という私の意見は全然きいてもらえませんでした。
2015/4/6(月) 午後 5:02
> 平太さん
さすがに麦は古伊万里にはなかったでしょうね。平太さんのおっしゃるとおり、「稲や粟が文様化されているのを真似て、フランスでも生活密着の食料である麦が図案化された」と書きたかったのですが、なかなか簡単にスッと意図が伝わる文章を書くのは難しいですね。そもそも文章鍛錬のために書いているので、ご指摘助かります。ちょっと言い回しを変えてみました。
珍しい図案といえば、以前に平太さんが「人力車」っていうのを記事になさってましたよね。私先日、とっても素敵な人力車を発見したんです。伊万里ではなく明治の横浜焼と思いますが。秘蔵っ子!に加えたいぐらいカワイイんですよ。機会があればUPしますので、見てくださいね。
2015/4/6(月) 午後 5:08
りんりんの妹様へ
りんりんの妹様って。物書きの方では無いですよね。私はりんりんの妹様が休眠中にファンになった者ですから。この文章を読むとどう見ても素人の文章とは思えない。でも企業人ですよね。これ毎回読んで思っておりました。所で欧米では肩こりが無い。大リーグで寝違えたと言って休んでいる日本の選手はおそらく肩が張っているのでしょうね。そしてラマス・ミエットという物を初めて知りました。それにしてもこの品物を使う姿を見てみたい。やはり現地に行かなければ判らない事が多い。行けない者の僻みです(笑)。しかしこのラマス・ミエット。優雅な感じがします。これ置いておくだけで良い。私の良く言う持論だのですが。ある道具は時を経るとアートになる。それがこのラマス・ミエットかも知れません。ナイスです。有難うございます。
2015/4/6(月) 午後 5:54
こいつを使いこなすには、テクニックが必要だ。ミニ箒のような刷毛を使う御仁もいるが、こいつを使うのは、給仕係のお仕事で、彼の存在感をアピールする道具のように思える。


従って、客には、道具を見せびらかす必要があるので、それなりのデザイン・意匠に凝っているのでは?と推測する。パン屑をチマチマと指先で押し、皿に戻している。パン食が普及したと云えど、小市民の生活文化などは、その程度のものです。・・・文化が根付くまでは、時間が係るのでしょうネ。
ウオシュレット・・・・・毎日排便するのに、必要性を感じるには、時間が係るか〜〜〜??!!
[ がらくた・おやじ ]
2015/4/6(月) 午後 7:50
欧州の方々は肩が凝ってないんじゃなく、「肩こり」という認識がないだけだ、と聞いた事があります。
絶対にいないわけがない。きっと肩こりの人もいるだろう、と思う万年肩こりの私は、
なかなか認識出来ず、解決法も身近にない、という状況をひたすら気の毒に思ってしまいます。
2015/4/6(月) 午後 9:45
ヨーロッパにはビデって言うモノがあるのに、何故、ウォシュレットが流行んないんでしょうね? 人気が出てもエエもんやと思いますが?! 因みに僕は家のウォシュレットは使いますが、外のトイレでは絶対に使いません。あれ、大腸菌の宝庫らしいです。って言うか、僕は昔から和式専門ですけどね(笑)どうも生便座は無理!!!
ラマス・ミエットって直訳するとあまり良い感じではないですが、でも、何かパン屑を集める、雰囲気って伝わりますね。
2015/4/6(月) 午後 10:12
ヨーロッパでウォシュレットが定着しないのは、「便の質」が違うからだそうです。欧米の人たちは肉類中心の食生活ですから、便がコロコロして・・・やめときます ^^;
ちなみに食生活が日本人とよく似ている中国では、ウォシュレットは「爆買い」の対象です(笑)、匿名希望でお願いします
2015/4/6(月) 午後 10:59
> 不あがりさん
お褒めのお言葉、ありがとうございます。ぜんぜん物書きではありません。素人です。しかしサラリーウーマンもここ数年は引退(?)してますが…(^^;。
このラマス・ミエットはわりと絵になりますね。なるべくどんな骨董品も使いたいのですが、来客があると基本的に和食を出すことにしているのでこればかりはなかなか出番がありません。かわいそう…。
2015/4/7(火) 午前 5:21
> がらくた・おやじさん
お、さすがにご存じですね〜。たしかにラマス・ミエットには2タイプあって、ブラシ型の小さい箒のものもあります。そっちのほうだとクロスがなくても使えるし、鉛筆削りの消しカスとか、そこらへんのゴミとかも集められてずっと使い勝手はいいのです。それもシノワズリの漆のものを持っているのですが、全然美しくなくて、…違う意味て使う気がしないのです。
ウォシュレット、日本に遊びに来てくれた外国人はみんな喜んで、うちにもほしい!って言うんですけどねぇ…。
2015/4/7(火) 午前 5:24
> りん姉さん
そうなんですよ、私もそうずっと信じていたんです。
が、いくら確認しても「肩こり」的症状を訴えるヒトがいないんです。
日本人って「肩」は重要なんですけどね。「肩の荷が下りる」とか「肩を怒らせる」とか「肩で風切る」とか「肩身が狭い」とか「肩」に感Sる表現がいっぱいあるんですが、フランスにはほとんどないんです!ものすごく「肩」に対する思い入れのない国なので、だから肩も凝らないのか!? 今後の研究が必要です。
2015/4/7(火) 午前 5:27
> 先輩
ビデって…うちにもありますが、観葉植物置き場になってます(爆)。フランスのヒトは古い家にはビデがあるんでそのまま放置されていますが、イタリアではビデは現役バリバリですよ。いつ何時そういうシチュエーションになるか分からないから、レストランとかでもバリバリ使っちゃってるらしいです。さすがパッションのラテン人♪
私も家のウォシュレットは使いますが、外のトイレでは絶対に使いませんでした。大腸菌のことまでは考えてませんでしたが、それは先輩には無理でしょうともっ!(笑)広がらない理由は、みんなケチだからかと思うんです。お金出してまでおしりをきれいにしなくてもいいと思っているきがします。
2015/4/7(火) 午前 5:31
> 平太さん
まったく先輩といい師匠といい、下ネタ…じゃない、トイレネタがお好きなんだから〜(爆) あ、匿名希望だったんですね、ごめんなさい。
中国人の爆買い…。私、今回こっちにくるとき、220V用の炊飯器を買ったんです。私の隣で中国人が同じ炊飯器を4つ買ってました。どうやって持って帰るんだろう…。私なんて、先月魚沼産のコシヒカリ25kgを持ち帰るだけでも決死の思いだったのに、ほんと謎です。
2015/4/7(火) 午前 5:41
パン屑は、人差し指できゅきゅっと押して拾うのが常習のわたくしには、
これ…一瞬パーカッションに見えましたです(涙)。
でも頭上で叩き合わせつつ踊ると…な〜んかとっても楽しそうですなあ♪
ところでりんさん、今いずこ???
2015/4/7(火) 午後 6:11
>〇〇妻…じゃない、〇〇さん
それは、妹ちゃまを是非ベルギーに派遣してほしい…
血流が悪いっていうの、その通りかもしれません。。
昨夏イタリアの田舎でレストラン兼滞在型の料理教室やってる夫妻と休暇を海辺で過ごして、その時わたしが「運動不足だから、走ってくる」と毎朝ランニングしてたんですよ。でもそこって超〜ド田舎で、ランニングしてる人は誰もいない、ひたすら農地〜。で「走ってるひと全然いないのね、このあたり」と友達夫妻に言ったら、「そりゃそうでしょう。ムダに走る余力があるなら働けば?と思われるだけ」と言われました(^^;。確かに、デスクワークとかショップワークと違って、第一次生産者にとっては、労働=運動ですもんね。
第三次産業従事者は、やはりたまには外で運動しましょう♪私も運動始めたら少し肩コリは減りましたよ(笑)
2015/4/7(火) 午後 7:06
> 元単さん
それは斬新なアイデア。たたき合わせてみましたが、なるほど、昔懐かしチンドン屋的な響きがいたします♪
昨夏からブラッセルっちゅーところにおります。自慢できるところといえば…ビールの種類が多いことと、周りがあまりにいい加減な人々なので、私がアバウトでも許してくれることと、みんなデカくてガタイがいいので、「痩せてる」と言ってくれるところです♪←日本ではありえない素晴らしい待遇!
2015/4/7(火) 午後 7:11
ジャポニズムって確かに和風のテイストなんだけど、あくまでアート&クラフト的で、所謂、民芸的な和テイストではないですよね。
縄文人と弥生人、合わせて一緒に入国しただろうに、当時は縄文人だけ受けちゃって、弥生人はブルーノ・タウトが見出すまではあまり見向きもされなかったって、この辺りの系譜はとても興味深いです。
喩えが意味不明だったらすいません(笑)
2015/4/7(火) 午後 7:17
> onewayさん
民芸っぽくはないですね、全く。
アート&クラフト運動に関しては「用の美」と影響しあってる気がしますが(どっちが先に発祥か忘れました(^^;。
結局のところ、最初は誰かのツボにハマるっていうのがあって、その後、その誰かがオピニオンリーダーだったりすると、そのよさに気づいて、ブームが起こるっていう流れなのでしょう。縄文土器だって岡本太郎が『みづゑ』で絶賛しなければここまで評価されたかどうかも分からないし。タウトと同じ表現主義の建築士が建てたアウシュビッツ…じゃないアインシュタイン塔だかなんだかもやたら埴輪っぽいから、弥生がツボだったのではないかなと、後半は本当に激しく私の私見で、なんの学術的根拠がありません。
…同じく、意味不明だったらすみません orz
2015/4/8(水) 午前 2:03