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東京の友達、裕子ちゃんが結婚した。ネットで知り合った15歳上のバツイチ男性がお相手で、一時期は「私、太っているし、結婚はむりかも」と彼女は相当落ち込んでいたので、今は気持ちが安定して幸せそうだ。友達グループの一同はホッとした。
というのも、ここに至るまでに、彼女は三度、ネットで知り合った男性に激しく恋をし、訥々とその想いを聞かされるにつけ、「でも、会ってみなくちゃ…」「せめて写真くらい交換したら」などと皆で言ってみるのだけれど、だいたい恋する女というのは人に相談に乗れといいつつ、人の話など聞いちゃぁねぇのが一般的で、結局、1人目のときは待ち合わせはしておきながら「勇気がない」と出てゆかず、2人目は勇気を振り絞って会ってみたら、「角刈りでデカくて、超苦手な柔道一直線!路線だったのぉ」と、瞬間冷却。ちなみに彼女はちょっとホストの入ったアブナイ系が好きなのだ。3人目のときは待ち合わせ場所にいたら、時間に来たアホの坂田そっくりの男が、目があった途端、踵を返して行ってしまったとか。フォローしようがなく、皆で罪もないアホの坂田に罵詈雑言を吐いて慰めた。
平安時代には高貴なご婦人は男性の目には触れない場所で生活しており、催しがあっても御簾に隠れて姿をあらわにしなかった。それゆえ、姿が見えない女人の姿の破片、たとえば御簾越しに映った影とか、御簾からかきいでた黒髪とか、焚き染めた香の残り香とか、部屋から部屋へ移動するときの0,5秒くらい瞬間残像とか、そういうものに萌えてゆく。チラリズムと季節の挨拶を主としたメールの交換が恋の本道の世界だったのだから、容姿は察するだけでメールが主流のネット恋愛とは平安貴族の流れを汲む由緒正しい路線ともいえる。
私はネット恋愛に偏見はない。ネットから結婚した友人も他にいるし、ちょっと違うけれど、東京本社の男性と2年ほどメールや電話でお仕事をする機会があったが、面識がなくても、私は彼の頭脳明晰さと卓越したギャグと渋い声にクラクラし、そして実際彼がロンドンに異動になって会ってみたら、容姿はイメージと違ったけれど、でもやっぱり大好きなままだ。あと、小屋野さんという東大講師の著書に『もてない男』というのがあるが、これがすごく面白くて、「貴方がモテないはずはありません」とメールしたら、そのレスがまた絶妙に笑えて、お目にかかったことはないけれど、すっかりファンになってしまった。
とまあ、私はあまり男性の容姿に恋しないので、多分IT恋愛はできるほうなのだと思うけれど、でも殿方のほうは容姿を無視して恋はできないのではと思う。裕子ちゃんの4度目のネット恋愛の最中は、私はすでに東京におらず、経緯は知らない。ただ、私たちが強固に主張したとおり、会う前に写真の交換をしたのがよかったらしい。
私の住むフラットのダイニングにはお座敷簾をかけている。日本に比べると陽の光が弱いから寝室でもないかぎりカーテンの必要は感じない。でも丸見えというのも気恥ずかしい。竹簾は外光は申し分なく取り込むし、日中は家の中を隠してくれるし、そして夜になると、外からこの簾越しに私がゴソゴソしている影がぼんやり見えるのだと思う。だから家に昼間いるときは素っ裸でウロウロすることもあるが、夜は絶対にない。
写真を見せてというご希望をいただくこともままありますが、怖いもの見たさでご希望の方は、Googleアースででもお越しください。風流に簾越しで、ぜひ見初めてくださいまし。
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