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エ このほか、確定判決も説示するとおり、本件白バイの右側バンパー等には擦過痕が存在したのであるから、路面にもこれに対応する擦過痕が存在するはずであり、三日月型の痕跡やL字型の痕跡のように、本件擦過痕群のうち主要なものが白墨で描かれたものとすれば、本件白バイの損傷に対応する路面擦過痕がほとんど存在しなかったことになってしまう。
三日月型の痕跡やL字型の痕跡のように、本件擦過痕群
以上によれば、本件擦過痕群には大慈彌鑑定のいうスクレープ痕が含まれている可能性はあるものの、三宅鑑定書•意見書によって、本件擦過痕群が白墨で描かれるなどしてねつ造されたものであるという合理的な疑いが生じるとはいえない。
(4) 本件タイヤ痕の現場でのねつ造について
ア 三宅鑑定書•意見書は、本件タイヤ痕は、現場で液体を塗布してねつ造された疑いがあると指摘し、その根拠として、主に次の点を挙げている。
(ア)先端部の濃度が異常に濃いこと
(イ)その濃い部分がタイヤ痕の中心部からずれていること
(ウ)複数の写真を比較すると、その濃い部分の濃度に差があること (エ)拡大写真を見ても、路面にゴム片が確認できず、液体が浸み込んだようにみえること
(オ)ブレーキ痕であれば、タイヤの溝を示す空白部分があるはずであるが、本件タイヤ痕にはそれがないこと
イ 検討するに、(エ)については、三宅鑑定書は、添付図10 (本件夕イヤ痕の写真の拡大写真)のA、B、C、Dの箇所に液体が浸み込んだような痕跡があるというが、液体が浸み込んだようなという結論を述べるのみであり、図10を見ても、そのような痕跡であるかは不明である。
添付図11のAの本件白バイから漏れたオイルが浸み込んだ路面の写真と比較しても同様である。
また、三宅鑑定書は、添付図10の写真からも、その顕微鏡写真(添付図11のC)からも、ゴム片が確認できないというが、真正のタイヤ痕の写真又は顕微鏡写真においてゴム片が確認できる場合との比較はなくその見解の根拠が具体的に示されているとはいえない。
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即時抗告棄却決定文(1)
即時抗告棄却決定文(2)
即時抗告棄却決定文(3)
即時抗告棄却決定文(4)
即時抗告棄却決定文(5)
(3)本件擦過痕群の現場でのねつ造について
ア 三宅鑑定書•意見書は、(押)符号6の写真10の一部を拡大し、画像の輪郭線抽出処理を行うと(同鑑定書添付図15)、本件擦過痕群のうちの三日月型の痕跡(白色)には、白色部の濃度を低減させても、周りと同じ凹凸面が現れるだけであるから、同痕跡はガウジ痕(三宅鑑定書•意見書によれば、ガウジ痕とは、硬い突起物が路面を擦過し、表面がえぐられた痕跡をいう。後記イの大慈彌鑑定書も同旨)ではないと指摘した上、この痕跡は白墨などで描かれたものである疑いがあるとしている。なお、この三日月型の痕跡とは、確定判決が重視したL字型の痕跡とは別の痕跡であり、本件擦過痕群のその他の痕跡については、三宅鑑定書•意見書において指摘はない。
符号6の写真10
※参考に掲載
三日月擦過痕拡大
T字マーク拡大(警察がチョークでタイヤ位置を示したもの)
図15
イ そこで検討するに、確定判決は、本件擦過痕群を「ガウジ痕」と認定している訳ではなく、「アスファルト路面の表面を硬い物で削ったような複数の路面擦過痕が存し」、「(写真によれば)アスファルト舗装の表面の粒子が削られている状況が認められる」と認定しているところである。
これに対し、交通事故解析の専門家で、原審において裁判所の命により鑑定を行った大慈彌雅弘鑑定人は、三宅氏作成の平成23年10月2 0日付け 解析書(三日月型の痕跡の拡大写真が添付されている)も鑑定資料とした上で、本件擦過痕群はガウジ痕ではなく、スクレープ痕(幅広金属擦過痕)である、スクレープ痕は、転倒した車体から削り落とされた金属粉が路面に付着した場合に生成きれ、アスファルト路面上には傷を付けないとの見解を示し、写真では、えぐれた状況は認められなかったと述べている(大慈彌鑑定人作成の鑑定書及び同人の原審証言。以下、合わせて「大慈彌鑑定」という)。したがって、大慈彌鑑定の見解は確定判決の上記認定とは異なることになる。しかし、本件擦過痕群が本件事故により転倒した本件白バイの車体が路面と接触して形成されたものであるという点では、大慈彌鑑定も確定判決の認定も同じであり、大慈彌鑑定人は、その痕跡にねつ造等をうかがわせるような不自然な点は認めていない。
ウ さらに、大慈彌鑑定人は、ガウジ痕とスクレープ痕の区別は難しいとも証言しており、路面の表面に一切傷が付いていないと断言しているともいい難い。三日月型の痕跡についても、確かに、三宅氏が解析のための画像、処理をした後の画像である三宅鑑定書添付図15 (C)や前記解析書5頁下の画像を見ると、当該路面部分には表面には複数の突起が存在していて、「えぐれ」といえるほどの窪みがあるとはいえないが、これらの画像を子細に見ると、周囲の路面に比べて、突起が少なくなっていることは確認できる。また、(押)符号6の写真9を見ると、三宅氏のいう処理を行った画像ではないことを差し引いても、メジャーの目盛7〜8の上部に写っている痕跡及びメジャーの目盛3〜4の下部に写っている痕跡(緑→)(見取図イからエの間にあり、三日月型及びL字型の痕跡とは別のもの)については、表面の突起が少なく、平坦になっていることが確認できる。
符号6の写真9
※参考に掲載
緑矢印拡大1
緑矢印拡大2
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即時抗告棄却決定文(1)
即時抗告棄却決定文(2)
即時抗告棄却決定文(3)
即時抗告棄却決定文(4)
4 三宅鑑定書•意見書の明白性−2−本件タイヤ痕及び本件擦過痕群の由来について
(1)争点等
三宅鑑定書•意見書は、本件タイヤ痕及び本件擦過痕群は、現場において、警察官が、前者については液体状の物質を塗布したりし、後者については白墨で描いたりして、ねつ造したものである疑いがあると指摘している。
原決定は、警察官が、事故直後に、衆人環視の下で短時間のうちに物理法則等に整合するように本件タイヤ痕及び多数からなる本件擦過痕群をねつ造するのは不可能であり、三宅鑑定書•意見書の指摘は抽象的な可能性をいうにすぎず、全く現実味のないものであると説示している。
また、原決定は、 画像解析の結果、本件擦過痕群の一部につきアスファルトにえぐれがないことが明らかになった旨の三宅鑑定書・意見書の指摘(後記(3)ア)について、路面のチョークによる記載部分と比較して見れば、一見して「えぐれ」があることは明らかであるなどと説示し、三宅鑑定書•意見書の指摘は、本件夕イヤ痕等が現場でねつ造されたことを疑わせるものではないと判断している。
「えぐれ」があることは明らかであるとの点は必ずしも賛同できないが、現場でのねつ造の疑いを否定した原決定の結論は正当である。
なお、所論は、原決定は、三宅鑑定書•意見書が本件タイヤ痕のねつ造を指摘している点についての判断を欠いており、理由不備の違法があると主張する。しかし、原決定の上記説示は、本件タイヤ痕のねつ造の指摘に対する判断を含んでおり、理由不備の違法はない。
(2)現場でねつ造した現実的可能性について
まず、確定判決及び原決定も指摘するように、警察官が、事故の直後に、 衆人環視の下で、短時間のうちに本件タイヤ痕及び本件擦過痕群をねつ造したとみることは極めて困難である。
すなわち、警察官がこれらをねつ造するためには、現場に到着した後、各車両、路面、破片等の状況を観察し、また市川幸男警察官ら目撃者から事情を聴くなどして、停止中の本件バスに本件白バイが衝突したものと判断した上(もとより、市川警察官はそのような衝突態様は証言していない)、これを、前進中の本件バスに衝突したように偽装することを企て、そのような衝突態様に適合するかのような痕跡群を考案し、液体や刷毛、白墨等を用いて、それらを描画するという段取りが必要となる。また、これには複数の警察官の関与が必要であると考えられる。
しかるに、甲23の130丁表の上段、中段の写真には、本件タイヤ痕中の右前輪分及び本件擦過痕群の一部とともに、本件バスに乗っていた生徒らが降車する様子が写っている。甲23の142丁表の写真3枚には、本件タイヤ痕中の右前輪分及び本件擦過痕群の一部とともに、本件バスの運転席に座っている請求人が写っている。
甲23の130丁表の上段、中段の写真
甲23の142丁表の写真3枚
請求人が本件事故現場付近で逮捕され、警察暑に引致された後、現場に戻ってきたときには、本件バスは路上から撤去されていたこと(旧証拠)からすると、これらの写真が撮影されたのが請求人が逮捕された午後3時4分より前であることは明らかである(これらの写真について、画像の改変が行われたという疑いもない)。そうすると、警察官は、いまだ本件バスに請求人や生徒らが乗車している状況で、かつ、午後2時34分の本件事故発生から30分しか経っていない時期に、上記のような段取りを経て本件タイヤ痕等をねつ造しなければならず、これはほとんど不可能なことである(なお、実況見分調書〔甲2〕では、実況見分の開始は午後2時55分となっている)。
その後についても、請求人は、午後4時15分頃、本件現場に戻って実況見分に立ち会っており、同時刻以後にねつ造をしたとは考えられないところ、請求人が現場に戻るまでの間であっても、本件事故発生から約100分であって、十分な時間があるとはいえない。しかも、その間、本件バスに乗っていた生徒や教員が現場付近の路上ないし建物に残っていたと認められるし、逮捕前後の写真では、一般車両の通行や、野次馬、カメラを持った報道関係者が道路脇にいることも確認できる(甲23の130丁裏中段、131丁表上段下段、134丁表上段、135丁表下段、147丁裏全部、148丁表中段)。こうした衆人環視の状況下で、液体を塗る、白墨で描くなどして本件タイヤ痕等をねつ造したというのは、およそ想定し難い事態である。
甲23の130丁裏中段、131丁表上段下段、134丁表上段、135丁表下段、147丁裏全部、148丁表中段)
また、別の写真(甲23の136丁裏中段下段、137丁表上段)には、本件事故現場において、乗用車に乗った請求人が顔を出して、本件タイヤ痕や本件擦過痕群のほうを手で指し示している姿が写っている(本件現場に戻った後と認められる)。警察官が、液体を塗布したり、白墨で描いたりして 痕跡をねつ造し、それらを請求人に間近で見せたとすれば、あまりに大胆な偽装工作である。
(甲23の136丁裏中段下段、137丁表上段)
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即時抗告棄却決定文(1)
即時抗告棄却決定文(2)
即時抗告棄却決定文(3)
(3)画像合成について
三宅鑑定書•意見書は、同鑑定書添付図34(同意見書添付図3。(押)符号2の写真1の拡大)の写真について、下半身のない人物が写っている、 その人物の影が写っていない、その他の影も不自然である、同鑑定書添付図36(同意見書添付図4。上記写真1の拡大)の写真について、運転席側の窓は透明であるのに、後部座席の窓は黒く覆われているなどと指摘して、画像合成の可能性が高いとの意見を述べている。
符号2の写真1
しかし、図36の写真については、後部座席の窓をスモークシー卜で覆っている自動車は珍しくなく、何ら画像合成を疑わせるものではない。図34の写真については、三宅鑑定書•意見書のように不自然とみる余地がないとはいえないとしても、明らかに不自然とはいえない。図34の写真の拡大前の写真である(押)符号2の写真1の中央には本件タイヤ痕が写っているが、不自然と指摘されている人物等は、本件タイヤ痕からかなり離れていて、衝突地点や衝突態様に関わるものではなく、捜査機関がそこに合成などを加える必要は全くないといってよい。そして、本件タイヤ痕や本件擦過痕群の部分については、三宅鑑定書•意見書は、現場でのねつ造が疑われるとはいうものの、本件ネガフィルムの当該部分に画像合成を疑わせる不自然さがあるとは指摘していない。
しかも、原決定も説示するように、事故発生後間もなく現場に来たテレビ 放送局によって撮影され、後に放映された映像の静止画(再弁1の写真4等)にも、本件タイヤ痕と同一とみられる2条の黒い線が写っているのである。
そうすると、図34の写真についての三宅鑑定書•意見書の指摘をもって、本件ネガフィルムは画像合成等を施された複製ではないかという合理的な疑いが生じるとはいえない。
(4)三宅鑑定書•意見書のその他の指摘を検討しても同様であって、前記(1)の原判断に誤りはない。
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即時抗告棄却決定文(1)
即時抗告棄却決定文(2)
(2)色再現の違いについて
ア 三宅鑑定書(8頁)は、本件ネガフィルムのうち(押)符号4から現像した写真11及び12 (いずれも、本件バス及び本件白バイが事故現場から移動された後の状況で、本件タイヤ痕が写っているもの)は、ほぼ同一のシーンを連続して撮影したものであるのに、色度が大きく異なっており、このような色変化は、一旦ネガ画像をパソコンに取り込み、ヒストグラム変換、ガンマ補正などの画像処理により色変換を行ったと考えるのが一般的であると指摘する。
イ この指摘に対し、原決定は、まず、三宅鑑定書は前提となる資料の点で失当であるとしている。すなわち、①三宅鑑定書において(押)符号4の写真11、12であるとして添付されている同鑑定書添付図21、22の写真は、上記写真11、12ではなく、甲23の143丁裏の中段と下段の写真である。そして、②甲2 3のこの2枚の間では色再現が異なるが、上記 写真11、12のほうは一見して色再現に変化がないから、143丁裏の中央と下の写真、すなわち、添付図21と22の写真相互の色再現の違いは、'現像方法の問題である、というのである。
確かに、同じ場面が撮影されている(押)符号4の写真11及び甲23の143丁裏中段の各写真並びに写真11の部分拡大写真とされる三宅鑑定書添付図21を見比べると、写真11は紺色が強く、143丁裏中段の写真と添付図21は共に明るく、薄茶色が強くなっている(他方、写真12、143丁裏下段及び図22の間には、顕著な違いは見受けられない)。しかし、三宅鑑定書の記載によれば、鑑定の資料に甲23の写真又はその写しは含まれておらず、上記色合いの違いのみをもって、原決定の①のように断定することはできず、他にこれを支持する資料もない。上記①、②の原判断は是認できない。
写真4−11
写真12
ウ しかしながら、原決定は、もう一つの理由として、「ほぼ同一のシーンを連続して撮影した」とはいえないことを指摘し、画像処理によって色変換をした疑いがあるという三宅鑑定書を排斥しており、この判断は是認できる。
すなわち、添付図21、2 2は上記写真11、12(原決定によれば143丁裏の中央と下の写真であるが、写真11、12であっても被写体等構図は全く同じ)の一部を切り取って拡大したものである。このため、添付図21、22を見ただけでは分からないが、写真11、12のほうを見ると、写真11には右側に人物の背中が大きく写っているが、写真12には写っておらず、また、写真12には路面の暗い色のシミ部分の上に撒かれた白い粉状のものが写っているが、写真11にはそれが写っていない。このように、2つの写真の場面には顕著な違いがあるから、原決定が説示するとおり、写真11と12は、白い粉状のものを撒く前後において、相応の時間をおいて撮影されたものと認められ、ほぼ同一のシーンを連続して撮影されたものとはいえない。
そうすると、仮に2つの写真の色再現が異なるとしても、それは本件ネガフィルムについて、三宅鑑定書がいうような画像処理がなされたことを疑わせるものとはいえない。
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