大阪 ルイブラン

シェフのちょっとおしゃべり

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そうとう長い間ほったらかしにしてしまった、このブログ。
こんなブログでも見てくれている方がいるんだなーって思いまして・・・・・


パリ8区にアルページュと言う3星レストランがあります。1990年(もうずいぶん古い話です)僕はここで働いていました、当時はまだ2つ星でしたが、本当に忙しいお店でした。毎日満席でした。

いろんな意味で僕はここで変わったと思います、進歩したように思います。
もっとも影響を受けたレストランかもしれません。

厨房の広さは5坪弱くらい、僕のいたポジションには3人の料理人がならんでいて、3人ともが両手を伸ばせない位の狭さ、対面にも同じく3人。さらにセコンドシェフの計7人。世界屈指の人口密度を誇っていた厨房だと思います。
さらに地下にパティスリー部門があり、同じくらいの広さに3〜4人と、ちょっとした物置と1坪ほどの冷蔵室、
ここもなかなかの人口密度だったように記憶してます。
一人に与えられたスペースは1m四方有るか無いか、台下の冷蔵庫は扉1枚分だけ、
これで毎回約30〜40名のサービスをこなします。

日はこの極狭キッチンから次々と作り出される、珠玉の料理の楽しくて大変な物語・・・・・・

「Ca marche 2couverts! 2homard、2agneau cistron」
さあいよいよ始まります、まず最初のオーダーは2名様、オマール海老2人前、仔羊2人前
「Ca marche 4couverts. 2homard、2langoustine pour suivre 4canard !」
「Suite 2 couvert 2terrine,2soup d'asperge 2pigeonneaux」
ここで8名。フランス料理もうエンジン全開でございます。複雑丁寧な料理のオーダーが30分位の間に40名ほど、一気に押し寄せてきます。

ひとつの料理を例にあげて、説明致しましょう。
オマール海老のサラダ 蜂蜜のビネグレット ローズマリー風味と言う前菜。

営業前にクールブイヨンと言う魚介類をゆがくたっぷりの液体が仕込まれ、すでに沸騰した状態で火にかけられています。オーダーを読み終わる前にもうオマール海老は鍋の中!タイマーがかけられ振り返りすぐに蕪を極薄に17〜20枚スライス、すぐに湯通しして氷水の中に、すぐに水から引き上げ1枚1枚タオルに広げてお皿に移す。ローズマリーを刻み仕込んでおいた蜂蜜のビネグレット人数分に入れ蕪にうすくかけて、おいておく。ここまで3分以上かかればアウト!です。その他のオーダーに取りかかり
10分後タイマーがなる、オマールを取り出しまな板の上へ、ここから殻をむき固い爪を割り、身をだして
カットして器の中心に美しくならべて蕪をかぶせて、ソースをかけてローズマリーとアサツキをふりかけ
コショウを薄くかけて、ゲランドの塩をかけて出来上がり、シンプルイズベストな前菜のできあがり。
オマール海老の身と爪を取り出すのは、経験が無ければ爪は出せません。普通の料理人でもきれいに崩さずに取り出すのに、上手な人で1分、新人なら5〜6分の仕事。ここアルページュでは、冗談でもなく誇張もまく、
約10秒です。20秒かかれば遅いな〜って感じ。僕のなかで幾つかある「これぞアルページュ!」の1つです。

この様な動きでさまざまな料理が作りだされます、ここの仕事は Cuisine a la minute
すまわち作り置きのない料理のオンパレード。スピード・タイミング・正確さ。3つを全て兼ね備えていないと話になりません。これにはいささか自信のあった僕ですが、ここでさらにブラッシュアップされました。
Vol8で書いた友人のジョンマリーの言葉を思い出します。それはトゥールダルジャンのこと、彼はこう言っていました「ここではハーブの葉っぱ1枚ちぎって用意する事を忘れたら、もうだめだ間にあわない」

今、こういった感覚で料理に取り組もうとすると、いろんなことが時代に合わなくなっているんだなと、感じることがあります。

今の良さと25年前の良さをうまく調和させないと・・・・・

次回はこの3時間程のサービス中におこった、笑えないけど笑っちゃうエピソードを・・・












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