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こんにちは、ゲストさん
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装置
完成しているか否かなんてどうでもよかった
ひとつ または複数の 与えられた指示さえ守れば 何をしても構わないという 根元的な規則そのものが作品であり 指示の解釈は、展開〈演奏〉者の意識や趣向、 技術的もしくは経済的限界のみならず かれの生きる時代背景や文化的あるいは地理的条件 その日の天候などといった要因にも 予期せぬ影響を受ける為 作品としてのひとつまたは複数の規則が 結果としてのひとつまたは複数の別の作品を生みだす機会が 無限に存在している 楽譜の指示に時間の要素が
含まれていない場合の演奏時間は 演奏者の判断に委ねられるが 外的要素が演奏者の意思の妨げとなる場合においては その限りではない 意図するかしないかに関わらず 作曲者ですら、例えば《死ぬまで生きろ》とのみ記された 楽譜の予期せぬ演奏者にすぎない 見えない式が無限の解を織り重ね 展開のプロセスそのものへと帰結し 骨組みを露呈するとき ひとつの指示の達成を試みた未完の残骸が 完成させられなかった敗北の記録が 指示の企てを生き生きと照射する逆光となり 光の途絶える闇までを作品と呼ぶか 闇から先を作品と呼ぶかの判断さえ くだす資格はだれにも与えられていない |
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さんしゃめんだん 【81】
なにになってもいいから じぶんのみちは じぶんのいしできめなさい あとから あれ になりたかったのに、などといって おやをこまらせてはいけません だけど それ にだけは ぜったいになってはいけません
このように きつくいいつけられたので わたしはどうしても それ になりたいと
かあさんにいえなかった だからなおさらあこがれて みんながねしずまったあと ひとしれず それ になるための
しゅぎょうするのがいきがいのまま わたしはおおきくなってしまった あんなにひみつにしてたのに あるひせんせいにみつかって おまえの それ は
なかなかいいじゃないか さいのうがあるぞ、とほめてくださったので はらはらとなみだあふれ ふたつにさかれたじんせいが ようやくいっぽんみちとなり それ をひたはしることだけが いきがいのまま わたしはおとなになってしまった せんせいはなくなってしまわれたので わたしの それ を もうほめてはくださらないし
それ をつづけていくことで さいしょのなぞかけをくれたははに よいくらしをさせてやることが できるとはおもえないのだった いまやわたしはとしおいて それ をつづけていきるのを べつのことができないいいわけに
するていどのかくごなら りっぱな それ にはなれないと それ をやるたびざんこくに おもいしらされてきたのに それ でもわたしはなりたいのだ
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★「葡萄の子ども」 KINAKOS UK 2001
↓楽曲のURLです♪(WMAファイル)
葡萄の子ども
ハムシー、レディーアフラ、カランコエ、クルッスラにも朝の霧吹きを 秋に日の長さが12時間以下 夜の気温が15℃前後ならシャコバサボテンに花芽がつく ダンボール箱で作った小さな夜 若い夫婦は日当たりの良い部屋に引越す ベランダの子どもたちは ある日を境に増え続けた 妻は知っているかぎりの歌を歌って聴かせ 水と土と光と闇の母乳を与えた まだ鉢植えが一つしかなかった夏 外回りから戻ると会社の入り口で 妻はぼくを待っていた 四つ折りの小さなメモをおそるおそる渡してくれた 《ちょっと早いかもしれないけど 子どもができました》 光はじゅうぶんにあった 家に帰ると、クリスマスに買った柊の芽が急激に伸びており ぼくらは歓喜した テラコッタを満たす根から 空間を押しあげ 離陸するジェット機 上空の気象はなぜか乱れて あたたかなトンネルに蠢くかすかな光は 冬の試練にさらされてしまった 血は雨のごとく流れ いくつかの病院をたずね歩き どこでも同じことを言われたと 妻は冷静に話してくれた 卵を覆う細胞が木の根のように伸びていき 子宮側から酸素や栄養を取り入れる繊毛が 葡萄のごとく増殖している 育ちすぎた葡萄は掻爬しなければならない
胞状奇胎の葡萄の子を 若い夫婦はアサヒと名づけた 鬱を和らげようと 近所のホームセンターでハムシーの鉢植えを買ってきて 世話の仕方をメモに書き 数日分の冷凍食品を揃え 妻は病院へ行ってしまった ぼくはどうすればいいか分からない 骨盤を削られるほどの痛みに耐え 虚ろに横たわるベッドの上で 妻は夜通し病室のテレビの音を聴いたという どっかの国で旅客機が 大きなビルにつっこんで 多くの死者がでたという 噴煙と悲鳴の巻き起こる映像が何度も繰り返されるのを ぼんやりと眺めていた
あの日からずっと霧は晴れない 鉢植えは日に日に増え ぼくにはどれがどれだか分からない ぼくは妻だけを見ていた 水をやり忘れたことで どれほど怒られたことか もう一つ増やしてもいい?と聞かれ いいよと答えるたびに どれほどうれしそうな顔をしていたことか ベランダを埋め尽くす多肉植物の鉢植えたち 成長したアサヒのばらばらになった身体のあらゆる部位が あたたかな土に抱かれて生えており 息をしているのだ ぼくには虚しく思える 愛を彼女は規則正しく注いだ 成育されるべきものの命を奪う行いに 社会的な憎しみを抱いた 冬を越えても 霧はますます重くたちこめて あるとき仕事から帰ると 部屋はがらんと片づいていた どこへ植え替えられたのか 妻とアサヒは消えてしまった 西向きの大きなベランダ 注ぎこむ直線の光が 最後のメモと 柊の芽の成長に夢中だった あの日々の死角を 狂おしく照射していた
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