【81】えぃてぃわん

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《輪郭》  81

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輪郭
 
 
  
ハヤワリ予約件数がふえているからといって実際にお客さんがふえているとはかぎらない
 
 
ハヤワリ予約をしたお客さんが実際にどれだけきているかキャンセルがあるとそればそれは何パーセントかを知りたい
 
 
遠地のお客さんはキャンセルするかもしれない
 
 
地域コードか郵便番号で集計してどの店舗にどの地域のお客さんがどのくらい来ているのかどのくらいキャンセルしているかを知りたい
 
 
今までに申し込まれたハヤワリ予約件数のうち3ヶ月前予約が何パーセントで2ヶ月前予約が何パーセントで1ヶ月前予約が何パーセントかを知りたい
 
 
毎日、自動的に集計されるようにしたい
 
 
とにかく、実際の利用者数が日々、昨年の実績に対して増えているのか減っているのかを知りたい
 
 
毎日、折れ線グラフでくっきり見たい
 
 
実際に、毎日、誰がいつから書くのか明日から誰か書けるのかを知りたい
 
 
13-06-09 【81】

《危機》 81

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危機
 
 
     

    朝、歩いて会社へ向かった      
   りっぱなレンガ建ての家の前を通った      
  丸くて大きな窓があった      
 中からだれかが覗いている気配はなかった      
わたしはあまり気にもせず通り過ぎた      
 

次の日も、歩いて会社に行った      
 りっぱなレンガ建ての家の前を通った      
  丸くて大きかった窓は      
   正方形になっていて      
    わたしはあまり興味を持てず      
     窓を見ずに通り過ぎた      
 

     その次の日も、
    りっぱなレンガ建ての家の前を通った
   正方形だったあの窓は
  星型に変わっていて
 わたしは見てみぬふりをして
世の中そんなものか、と通り過ぎた
 

そのまた次の日も、わたしは歩いた
 星型だったあの窓は
  丸くて大きな目のカタチに戻っていた
   目は完全に死んでいたので
    わたしはなるべく目を合わせずに
     黙って通り過ぎようとした
 

     しかし、本当のわたしは
    誰とも目を合わせず
   通勤するサラリーマンなどではなく
  毎朝同じ時間に歩く彼を見つめる家の窓であり
 気分で窓枠を変える家の中から
窓越しに彼を見つめる
 太陽の光のひとしずくの反射に過ぎない、と
  言いきれる戦術も過去にはない
 
 
 
13-6-3  【81】

会議 meeting

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会議 meeting
 
 
 
五〇音のヒラガナとかたかな
三千字程度の常用漢字
二十六字のアルファベット
〇から九までの数
その他幾つかの句点・読点
 
たったこれだけを集めるもの
 
 
単語に
文法
目的のための手段
駆使されて育つ
個別な組み合わせは
次を思いついたとたん
ぜんぶ棄てられてしまうだろう
 
空白をまとめるために
 
 
「私」にとってある「他人」は好きだが
ある「他人」は嫌い
「私」にとってある「仲間」は利用できるが
ある「仲間」は価値がない
すると集まるのは
「私」の影にすぎない
ほんとうの「私」は思考でも
肉体でもない
 
 
今朝、ペットボトルの口から
つめこまれたカーテンの繊維が
瞬時に蒸発して
業務予定の面積を奪う
 
議題を超えて評価を疑っても
事業部は宇宙の一部だから
部分が他の部分を
敵に回すことはできない
 
 
思考 や 肉体 に囚われていては
「私」が「他人」と同じ結論になれる
航海の終わりへたどりつけない
 
時間 や 言葉 に囚われていては
「私」が「他人」に息づく生命になれる
空輸のてへたどりつけない
 
 
「私」は
「私」を築きあげた
文字や言葉による履歴から
「私」を切り離せない限り
自由にはなれないと思う
 
思考 や 肉体 や
時間 や 言葉 から
私  や 他人 から 
はやく切り離してほしい
「私」は眠ることがない
「私」は
ピントをはずした空白から
意見をベンチマークするだろう
 
「私」以外のすべてと
過去 にも 
未来 にもない 
遺跡の入口へ向かう
 
 
そこから先の規則などでは
「私」 と
「他人」の区別はない
「自国」や
「敵国」の区別もつかない
 
 
2013-06-02 改稿 【81】

 

《会議》 81

会議
 
 
 
 
五〇音のヒラガナとかたかな
三千字程度の常用漢字
二十六字のアルファベット
〇から九までの数
その他幾つかの句点・読点
 
たったこれだけを集めるもの
 
 
単語に
文法
目的のための手段
駆使されて育つ
個別な組み合わせは
次を思いついたとたん
ぜんぶ棄てられてしまうだろう
 
空白をえがくために
 
 
「私」にとってある「他人」は好きだが
ある「他人」は嫌い
「私」にとってある「仲間」は利用できるが
         ある「仲間」は価値がない
すると判断は
「私」の影にすぎない
   ほんとうの「私」は思考でも
肉体でもない
 
 
今朝、ペットボトルの口から
カーテンの繊維が蒸発して
業務予定の面積を埋める
 
議題を超えて評価を疑っても
事業部は宇宙の一部だから
部分が他の部分を
敵に回すことはできない
 
 
思考 や 肉体 に囚われていては
「私」が「他人」全員と同化しうる
海の終わりへたどりつけない
 
時間 や 言葉 に囚われていては
「私」が「他人」に息づく生命になれる
空のてへたどりつけない
 
 
「私」は
「私」を築きあげた
文字や言葉によるあらすじから
「私」を切り離せない限り
自由になれないと思う
 
思考 や 肉体 や
時間 や 言葉 から
だれか「私」を切り離してほしい
「私」は何も考えない
「私」は
ピントをはずした空白から
意味をベンチマークするだろう
 
「私」以外のすべてと
過去 でも 
未来 でもない 
思覚できない地点の入口へ向かう
 
 
そこから先の領海では
「私」 と
「他人」の区別はない
「自国」や
「敵国」の区別もない
 
 
2013-05-31 【81】

《長い休暇》 81

長い休暇
 
 
持ち主のいないパソコン 
もう二度とログインされないアカウント 
本棚の本 
書きかけのノート 
着古したスーツやネクタイ 
しばらく忘れられた後 
棄てられる靴たち
別の誰かが座ることになる机 
その誰かが棄てるであろう 
鍵のかかった抽斗の書類 
やりかけたプロジェクト 
やりはじめた日の情熱までは
引き継がれないシステム管理 
しばらく上司が不在でも
自分で考えて行動できる優秀な部下たち
霧の朝 水滴だらけの鐘の音が響く
凍結される前に引き出された口座 
自分では提出できない市役所への届け 
保険会社への連絡 
お互いの勤め先や両親や親戚へ電話したり 
葬儀の手配をする妻 
 
父親の行方が解らない四歳の娘と、二つ下の次女と、先月生まれたばかりの長男。ろくに手を入れたことのない雨の庭で喪服の客を迎えるが、だれもこちらを振り返らない。とても久しぶりの伯父さん、伯母さん、従妹たち。いつの間にか大きくなったその子どもたち。
 
家や車だけではない 
所有者の変更手続き 
通夜が執り行われるので 
歯医者の予約を取り消す 
親不孝だけどうちの息子は幸せだったね 
苦労をかけて本当にごめんねと 
嫁に頭を下げる母
 
遺体はいまや棺の中で青ざめており 
好きだった本とか 
勤め先の会長から戴いた手帳も一緒に 
黒い男たちが車へ運ぶ 
妹の夫と 
妻の弟と 
妻の妹の旦那さんと 
大好きな父 
実家にもうちにも仏壇はないのに 
なぜか葬儀は行ったこともない寺で行う
 
一番興味深い話だけは慎重に避ける、話題の尽きないお客さんたち。スマートフォンをいじる若者たち。香典が集まってきて、受付を引き受けた妹夫婦が数える。一度も会ったことのない人もいる。父が挨拶する。「本日は皆様、本当に、ありがとうございました。」
 
これ以上でも これ以下でもない 
流れゆくままに
生きていたときと変わらない
これまでやり遂げた仕事や 
やり遂げられなかった悔いも消えた
面倒をみてくださった上司や
いつも助けてくれた部下たちには
これ以上何もできなくて申し訳ない
今月の利益目標は達成していない
どう思われても仕方がない
家ではどんな父親であったか?
どんな夫であったのか?
どんな息子であったか?
運命は定められていたのか?
どんな過ちを犯したのか?
社会に役立つことはできなかったのか?
何に操られて生きたのか?
思い残すことが何か
あるのかないのかも解らないし
こみあげてくるものはないし
人や物への執着もない
もうゆだねるしかない
良いことでも 悪いことでもない
流れゆくままに
 
慎重に隠してきたことがばれてしまうが、どうでもいい。どうせ大したことじゃないし、駆け引きの道具にすぎない。こんな大した奴だったのか、とちょっとびっくりされたところで、虚栄心は蒸発している。
 
きっかけを忘れたまま、遺体は音を立てて焼かれる。結構時間がかかる。親戚たちはビールやウーロン茶を飲んでいる。仕出し屋の料理がテーブルに並んでいる。子どもたちは飽きて床に寝そべり、空想の海を泳ぎまわる。
 
皆さん、いままで本当に 
ご迷惑をおかけしました
これからもきっと色々と
お世話になります
本当にありがとうございました 
ところで墓はあるのかな?
 
屋根からたち昇る煙は雲に混じり 
雲は雨になって 
大雪山系の川に注ぎ 
川はやがて石狩湾へ流れ込み 
海は雲へ生まれ変わる
子どもの頃に感じていた
朝と夜の繰り返しみたいに
 
 
13-05-27 【81】
※『休暇』を書き直し改訂

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