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〈17〉 チェギョンは、アルフレッドを胸にしっかりと抱き、車窓に流れるソウルの街並を眺めながら、 今までの数々の想い出が走馬灯のように甦り、懐かしさと寂しさと切なさが溢れ出し、チクリ と胸を刺し心を締め付けた。空港に到着し、特別室に通され、出発まで静かな時を過ごした。 ──シン君、どうしてるかしら?もう取り調べが始まったのかな?心配だわ・・・ チェギョンは、既に警察署に到着しているシンの身を案じていた。 その頃、シンは、警察で用意された特別室で、取調べまでの時間を待機していた。 窓の外を眺めて、チェギョンは無事に旅立っただろうか…と遠い目をして想いを馳せていた。 [国際空港] 「妃宮媽媽、お時間でございます。」 「はい、わかりました。参りましょう!あ、チェ尚宮姉さん、皇室専用機ではありませんので、 飛行機に乗ったら、一般の民間人の方々も一緒です。こっそりお忍びになりますから、 『妃宮媽媽』は止めて下さいね。」 「は、はい、承知致しております。妃宮媽媽。」 「だ・か・ら!ハァ〜それじゃ、一発でバレちゃうでしょ?一般人と一緒なんだから、 気をつけないと。そうね、年下だし、『チェギョン』って呼び捨てで呼んでみて?」 「とんでもございません!そんな恩名を呼び捨てになど、恐れ多いことでございます!」 「むむっ。そう?じゃあ、『お嬢様』ならどう?」 「はい、それなら、なんとか・・・」 「よし、決まりね!じゃ、行くわよ!『お姉さん』!」 「はい、おっ、お嬢様・・・」 「ふふふ、その調子よ!」 二人は、一般のファーストクラス搭乗者よりも早く、最前列奥の窓際の2席に着席した。 ここは、隔離しやすい特別席となっていて、他の搭乗者から、顔を覗かれることも少ない席 だった。チェギョンは窓際の席に座り、窓の外に広がる空港、その向こうに広がる空を眺め、 家族のこと、友人達のこと、皇室のこと、そして愛するシンのこと・・・ あらゆることを思い出し、感情が一気に堰を切って溢れ出し、ポロポロと涙が頬を伝った。 膝に抱えたアルフレッドに涙の雫がポタッと落ち、視線を落とすと、更にシンへの想いが 怒濤のように溢れ出し、後から後から涙がこぼれた。 滲んだ視界の先のアルフレッドの丸い黒い瞳の向こうにシンの淋しそうな瞳が重なり、胸が 堪らなく切なくキューンと苦しくなった。 ──シンくん、自分も淋しいくせに・・・アルフレッドが傍にいないとダメなくせに・・・ 馬鹿ね・・・やっぱり、あなたはとっても優しい人だわ・・・ 涙をハンカチで拭い、微笑みながら、アルフレッドの頭にこぼれた涙も拭き取っていた処、 チェ尚宮が、左手薬指の例の痣に気がつき、チェギョンに尋ねた。 「まぁ!お嬢様、その痣、どうなさいましたか?虫さされでございますか?すぐに、 塗り薬を・・・」 「いいえ、これは大丈夫!平気です。ヘヘッ、痛くも痒くもないのよ・・・」 ちょっと、照れ気味に慌ててチェ尚宮を制止し、愛しそうにその痣を右指でなぞる。 昨夜、シンと交わした二人だけの数々の約束、その秘め事の証にうっとりとした甘い微笑みを 見せて、チェギョンはこっそりそっとその印に唇を落とし、その印を眺めながら、心の中で シンに語りかけた。 ──これは、シン君からの初めてのプレゼント。 貴方の愛情のこもった、お金で買えないたった一つの素敵な最高のプレゼントね。 シン君、私達は、離れてても心はずっと一緒よ・・・ 甘い視線で左薬指を見つめる、その様子にチェ尚宮もようやく殿下の顔が浮かび、ピーンと来 て、やわらかく微笑んだ。 「左様でございますか・・・」 チェ尚宮は、やさしい目をしてポツリと答え、それ以上深く追求しなかった。 間もなく、シートベルト装着のアナウンスが流れた後、エンジンが稼働する轟音と共に遂に チェギョンを乗せたマカオ往きの飛行機が離陸体勢に入った。 「いよいよね。お姉さん。」 「はい、お嬢様、緊張されておりますか?」 「う〜ん、そうね。初めてだから、ドキドキするわね!あ!動き出した!」 「大丈夫でございますか?気分はいかがですか?」 「平気よ。わぁ、なんだか、ジェットコースターが登って行く感じね〜!」 そんな会話をしている内に飛行機が大空へ舞上がった。 チェギョンは、できるだけ、チェ尚宮を心配させたくなくて楽しそうな素振りを見せた。 ──チェ尚宮もきっと、海外なんて不安に決まっているはず・・・ 上空から窓の外に広がるソウルの街と、その中心に見える広大な宮の敷地が微かに目に留まり、 シンの顔と彼との想い出がシンクロして、胸が詰まって気がつけば、もう涙が止まらなくなっ た。チェギョンは自分の壊れたような涙腺の脆さに若干呆れつつ、自重気味に口元を緩めた。 ──シン君、行って来ます。私、淋しいけれど、頑張るね。 でも、今はちょっとだけ、あなたを想って泣いてもいい? マカオに着いたら、我慢できるように頑張るから!あなたの傍を離れることがやっぱり 今は辛い…悲しいの。本当は弱虫なんだ…私。だから、ちょっとだけ許して…ね?! アルフレッドを右腕に抱え、左手を窓に押し付け、小さく遠くなって行く大韓民国を上空から、 必死に見下ろしていたが、雲海へ飛行機が突き進み順調に軌道に乗り、ポーンとシートベルト 解除のサインが機内に表示され、その頃にはもう、祖国が完全に見えなくなってしまった。 チェギョンは、窓に押し付けていた左手薬指のシンと自分を繋ぐ唯一の愛の証へ、切なげに 視線を移し、再びその刻印に唇を寄せて、シンのあの熱いぬくもりを思い出し、心で念じた。 ──シン君、愛してるわ。シン君も絶対挫けず、負けないで!・・・ 私達、また逢える日が来るって信じてる・・・ ***** 同じ頃、シンは刑事から、取調室へ移動する旨、連絡を受けた処だった。 窓の外の大空を仰いで、深呼吸した。 ──チェギョンは、今頃マカオへ飛び立った頃だな・・・あいつ、大丈夫かな・・・ 窓際に佇んだまま、左手をじっと見つめて、薬指の愛の証に微笑んで唇をそっと落とす。 ──チェギョン、俺に力を・・・! どうか何処に居ても見守っていてくれ・・・ そして、再び逢える日が来ることを祈っていてくれ・・・ シンは、キリッと表情を引き締めて颯爽と、この国の皇太子らしく堂々と取調室へ向かった。 ***** その頃、ユルが記者会見を開き、自分が真犯人であることを発表し、マスコミも警察も皇室も、 騒然としていた。悪縁を断ち切ろうとするユルの決断は、この後、離れ離れになった二人を 結びつける為の布石となる。 運命の輪は、新たなステージへと動き出し始めた。別れは、出会いのはじまり・・・ 一度、下に落ち切った砂時計も裏返せば、再び、新たな時をサラサラと刻む。 シンとチェギョン、二人の交わした約束が果たされる日まで、あとどれくらいの月日が必要 なのだろう・・・いつしか、季節が巡り、逢えない日々が更に二人の愛を育み、再び、 出逢える約束の日が必ずやって来る、そう信じて・・・各々、新たな一歩を踏み出した。 〈END〉 ・*:..。o○☆*゚¨゚゚ ・*:..。o○☆*゚¨゚゚ ・*:..。o○☆*゚¨゚゚゚ ・*:..。o○☆*゚¨゚゚ ・*:..。o○☆*゚¨゚゚・* ここまで、ご愛読、誠にありがとうございました! いやぁ〜!本っ当に、苦しくて長かった〜!゜。゜(つД≦。)゜。゜ こんなに長く切ないシリアスラブな拙いお話を、長々とお読み頂きまして、皆様、誠に ありがとうございました!二人のラブストーリーは、このあともまだまだ続きます。 それでは、また次のお話で・・・ヾ(○・ω・)ノ☆・゚ 《JPG File/Credit:GUNGGAL》
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17話・最終話です!
遂に旅立つ二人ですが、こんな感じであっさりとかもしれませんが、綺麗にまとめてみました。いかがでしょうか? サプライズなどの展開はなくてすみません^^;
新たな一歩を踏み出したシンチェの今後もまた書ければと思っています!v(゚ー^*)⌒☆
ふぅ(*´Д`)=з ここまで本当に長かったです。皆様、ご愛読、誠にありがとうございました!あとがきにこっそりお知らせ書いてますので、そちらもチェックしてみてくださいね☆
2008/10/1(水) 午後 11:00
kilalaさん、おはようございます。
やっぱり、ティシュ用意していて正解でした。
二人の気持ちが表れていてすごくいいおはなしでした。
ありがとう!!感動してます。
2008/10/2(木) 午前 5:06
kilalaさん おはようございます。
今日は既にメイクを済ませお話を読み始めました。
それが間違いだった・・・。本日も号泣!マスカラが!!
大作ですね!無性に明洞デートが読みたくなってきました。
仕事に行きたくない!!(涙)
2008/10/2(木) 午前 8:10
kilalaさん、おはようございます。
二人の切ない気持ちが痛いほど伝わりました。
二人の絆がさらに強く結ばれて、いつかまた会えるという希望を胸に
この試練を乗り越えてもらいたいと思いました。
最後の「運命の輪は、新たなステージへ・・・」からの文章はそんな
希望を抱かせてくれる終わり方で、悲しいけれどすっきりした気持ち
になりました。
2008/10/2(木) 午前 10:25
かぐらさん、こんばんは!コメレス遅くなって本当にごめんなさい。
いつも、本当にありがとうございます!
最後もやっぱり朝から泣かせてしまいましたかぁ〜(。-人-。) ゴメンネ
でも、素敵なお話とおっしゃって頂けて素直に感激です。本当にありがとうございます!その一言を聴けただけで、私はもう感無量ですよ〜(Pд`q)゚。
最後まで、おつきあい頂きまして、本当にありがとうございました!
また、次のお話も宜しくおつきあい下さいね〜♪
2008/10/4(土) 午前 3:03
りんりんさん、こんばんは!コメレス遅くなって本当にごめんなさい。
いつも、本当にありがとうございます!
ありゃ〜(>人<;)ゴメンネ マスカラ落ちてしまいましたか〜(汗)お仕事までにお化粧直し大変だったんじゃないですか?すみません。マスカラは、是非ウォータープルーフを!(爆)なんちゃって^^;私は、目薬をよく差すのでウォータープルーフです。(違っ)
朝の忙しいそんな時にお読み頂いてありがとうございました!朝から泣かせてしまって仕事に行きたくなくなりますよね。チンチャ・ミアネヨ〜!
大作だなんて、とんでもないですよ。私の書いた作品の中ではそうかもしれませんが、他の素晴らしい二次創作作家さんの長く面白いお話に比べたら、微塵もないくらいの拙作です。でも、そうおっしゃって頂けて、感激です^^♪
明洞デート、あぁ、懐かしい・・・そうですね。私のお話の中ではあの話位しかラブラブじゃないですもんね〜(´m`;)
この先、まだまだ二人は逢えない日々ですので、それまでのラブラブ補給に是非、また読み直してみて下さいね♪
最後まで、本当にありがとうございました!
2008/10/4(土) 午前 3:25
may;beさん、こんばんは!コメレス遅くなって本当にごめんなさい。
いつも、本当にありがとうございます!
>希望を抱かせてくれる終わり方で、悲しいけれどすっきりした気持ちになりました。
と、おっしゃって頂けて、それが何より嬉しいですね〜^^
二人は今、真冬に突入したかもしれませんが、春は必ずやって来ますから♪その一言を聴けただけで、私は感激ですよ〜(Pд`q)゚。
最後まで、いつも暖かいコメント頂きまして、本当にありがとうございます!また、次のお話も宜しくおつきあい下さいね〜♪
最後まで、おつきあい頂きまして、本当にありがとうございました!^^
2008/10/4(土) 午後 9:53
心が通じあった24話は、場面がピョンピョン飛んで、「気持が飛んでる
」と思い、消化不良でした。

でも、キララさんのおかげで、飛んでいた情景が見えてきましたよ
ありがとう
2012/9/2(日) 午後 5:36 [ わいわい ]