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〈1〉 「おい!聴いたか?今日の舞踊科と美術科の調理実習"クッキー"だそうだぜ!」 ギョンが物凄い勢いで昼休みの教室で、シン、イン、ファンの元へ駆け寄る。 「ふぅーん。おまえ、また期待してんの?」 「おうよ!やっぱ、どれだけモテるかってバロメーターになるだろ? でもって、オイシイ出逢いなんかも待ってるかもしれねーしな!ヘッヘッヘ!」 「…懲りないね〜」 「おい、インまた賭けようぜ?」 「ハァ…おまえ、幾つのガキだよ。御曹司がなんでそんな幼稚臭いこと言うかなーったく。」 インとファンが呆れ気味にギョンを相手にする様子を見ながら、シンは映画雑誌片手にいつものことか と溜息を吐き出し、再び視線を雑誌へ戻した。 「そういや、この間のケーキの実習の時は傑作だったな!おまえ!」 「何のことだよ?」 「ほら、あれだよ!…妃宮媽媽の!」 「顔面直撃。」 「ぶふっ!アッハハハハハハ!今、思い出しても傑作だったな!」 「アヒルのヤツ、俺の顔面にケーキをぶつけるなんていい度胸してるよなっ。ったく! おい、シン!今度は、クッキー投げつけに来るなんてことが無いようにきつく言っておけよな!」 「………」 ──俺の妻をアヒルだと? あいつの品位が無いのは、確かだが… やはり一国の皇太子妃を掴まえて軽口を叩くコイツらには、正直ムッとする。 あいつのことを俺がどう言おうと構わないが、他人にとやかく言われるのは癪に障る。 「ギョン、口を慎めよ…」 シンは、不愉快な顔で冷ややかに呟くと雑誌をバサッと乱暴に机に投げ置き、席を離れた。 ──あの時のあいつの顔、今でもチラついて気持ちが落ちつかないな…。 江陵の夏の離宮で一緒に料理もした。 …今なら、ほんの少し、素直になれそうな気がするのに。 あいつ、今回も俺にクッキー持って来るかな?…今度は食べてやってもいい‥ぞ? 但し、人目が無い場所でな… 気持ちをニュートラルにクールダウンさせようと教室の窓から外を眺めていたら、丁度チェギョンが 実習棟へ三角巾にエプロン姿で移動中の姿が見えた。 クラスメートと弾けるように楽し気に笑う彼女の姿を眼で追い、無意識に口許を綻ばせていた。 ◇◇◇ 【東宮殿】 帰宅後、執務を終え、シンがパビリオンのエントランスに足を踏み入れた時、賑やかな笑い声が 聴こえた。いつもの賑々しいチェギョンの声や内人達の談笑する声が響く中、珍しい客人が、 シンの姿に気が付いた。 「シン、お帰り!お邪魔してるわよ。妃宮の手作りクッキーも美味しく頂いてるわ!」 小悪魔…いや魔女のような不適な微笑みを見せるシンの姉ヘミョンがチェギョンが今日学校で作った と思われる、丸型のクッキーをシンに向かってヒラヒラと見せびらかし、パクッと口に含んだ。 内人達も慌てて立ち上がり、モグモグと動く口許を両手で隠して恐縮した面持ちで深々と一礼する。 「あ、お帰りなさい。シン君!早かったんだね?」 「あ、あぁ、まあな。…今日は、姉上もいらしてたんですね。」 「ふふふ。お邪魔だったかしらー?可愛い義妹の顔をちょっと見たくなっちゃって♪ ガールズトークなんてしちゃいけなかったかしら?」 「いえ、妃宮も喜びます。どうぞ、ごゆっくり…」 「ふふふ♪ありがと!」 「ねぇ、シン君。コン内官おじさんは?」 「コン内官なら、ダイニングに居るぞ。」 「よかった!お義姉様、ちょっとクッキーを届けて来ますね!」 そう言ってパタパタとギンガムチェックのリボンを掛けたOPPフィルムの小さなパッケージを手に シンの目の前を素通りして行った。唖然としたまま、そんなチェギョンの後姿を見送るシン。 「シン、あなたに良いお嫁さんが来てくれて本当に良かったわね!料理も上手みたいな感じだし?」 ニヤニヤしながら、またパクッとハート型のクッキーを食べる。 「うん。美味しいじゃない!家庭的なあったかい味がするわ!ねぇ?そう思わない?」 内人達に声を掛けるとうんうんと大きく頷き、 「お優しい妃宮媽媽のお傍でお仕え出来る小生達は、誠に幸福で光栄の極みでございます!」 「殿下、内官や小生達に至るまで、妃宮媽媽の優しいお心尽し、心より感謝申し上げます。」 そう次々に謝辞を述べ、一礼して持ち場に戻って行く内人達を、引き攣った表情で見るシンの様子に 気が付き、雲行きが怪しいと踏んだヘミョンはお皿に残ったクッキーをプレートごと持ち上げ、 ささっと立ち上がった。 「さてっと!じゃ、小姑はそろそろ退散するとしますか!妃宮にごちそうさまって伝えてねー!」 ブリザードが吹き荒れる前に、ヘミョンは、そそくさとその場を後にした。 1人ポツンと取り残されたシンは、テーブルの上に残された飲み残しのカップ&ソーサーを見つめな がら、思考をまとめる。 ──あいつ、まさか東宮殿の侍従達に調理実習のクッキーを配ったのか? ハァ〜また、型破りなことを…侍従達も困っただろうな。 ん?待てよ?コン内官にまで、あんなにきちんとラッピングしたものを用意してるんだ。 俺の分も、勿論あるんだよな? シンの胸の内は、ドキドキ期待と不安に満ちて。 パタパタと駆け戻るチェギョンの足音に気が付いて、ハッと我に返った。 「あれ?お義姉様は?」 「今、帰られた。」 「なんだー。そっか…。」 チェギョンは少し淋し気な様子で後片付けをしようとテーブルに手を伸ばした処で、シンは、侍従達を ねぎらう気持ちは良いことだが、少々注意をしておかなければ…と、本当は別のことが気になっている 自分にそう言い聴かせながら、やや緊張気味に声を掛けた。 「おまえ、今日調理実習だったんだってな?…そのクッキーを侍従達にも配ったのか?」 「え?!あー、うん。ユル君が生地の取り方が上手くってさ、ウチの班だけ大量に焼けたんだよね。 で、クラスメートと交換したり、残った分は勿体無いし、上手に焼けたから東宮殿でお世話に なってる皆さんにお裾分け。貰ってもらったんだぁ…。」 「ユル?」 「そっ!ユル君、無駄が出ないように計算するのが上手くって型抜きで残った分まで全部綺麗に焼けた のよー。女の子顔負けだわ!でもクラスで一番綺麗にできたから、まぁいっかぁー!あはは!」 注意を施すことなど忘れて、シンの表情がどんどん険しくなって行く。 訊く気など無い筈なのに気になることが勝手に口を突いて出る。 「…それ、ユルも食べたのか?」 「え?うん。そりゃ勿論。授業だし、同じ班だしね…。」 当然とばかりにキョトンとした顔で淡々と答えながら、チェギョンはてきぱきとトレーに食器を 乗せて行く。 シンの中で、形容し難い沸々と沸き上がる不快感が溢れいっぱいになる。 そんなシンをよそにチェギョンは、食器を下げようとトレーを持ち上げ、歩き出した時、慌てて戻って 来たチョン内人がそれを制し、恭しくトレーごとを受け取って東宮殿水刺間へと運んで行った。 手持ち無沙汰になったチェギョンは居心地悪く、じゃっとシンに片手を軽く上げ、自室に戻って行く。 ザワザワとする感覚を持て余しながらシンは、思わず彼女がドアノブに手を掛けた瞬間、その後姿を 呼び止めた。 「なぁ!…俺の分は?」 ──おい! 俺は、一体何を尋ねているんだ!? これじゃまるで、強請ってるみたいじゃないか! 「ん?…無いよ。」 ──え?! |
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鍵コメきーさん、こんばんは!コメント本当にありがとうございます!
リコメ大変お待たせしました(/ω\)ミアネヨ!!
悪友達の前では、ポーカーフェイスを決め込みたいシン君でございます。
ちょっと12話の頃より、素直になり始めたところなのにねー(笑)
自分の過去の行いを棚に上げてしまうのは、イジメッ子の悪いクセですよねーまったく!
目を丸くして えっ???っと絶句する姿を想像して頂けて嬉しいデス♪^^
ツンデレ最高ですよねーうふふ♥
ありがとーございます♪
2009/10/7(水) 午後 6:13
鍵っ子Mさん、こんばんは!コメントこちらにも本当にありがとうございます!
リコメ大変お待たせしました(/ω\)ミアネヨ!!
※先にこっちからレスさせて頂きますね!
うはーん。ありがとー!!ほんと、ありがとー!!Mさん♥
本当に今回、勢いでこんなんでもいいのかなー?!なんてビクビクしてたので、他ならないMさんのその嬉しいお言葉に、ホッと胸を撫で下ろしています♥(*´Д`)=з
歯痒い幼さ、うずうず感を感じて頂けてとっても嬉しいです。
裏テーマの1つは、『青い春と寸止め』です(笑)
チェギョンへの独占欲がにょきにょき頭を出しちゃって、小学生みたいな暴挙に走る殿下(爆)
いやいや、こんな拙い小話に勿体無いお言葉、本当にありがとうございます♥
Mさんってば、褒め上手!オバチャン、めちゃ嬉しいわ〜!(*^人^*)” 笑
2009/10/7(水) 午後 6:29
kilalaさん、こんばんは。
シン君がギョンに注意するところに思わず(〃▽〃)ふふ・・・と
思ってしまった私ですw
シン君・・・ユル君に先を越されてムッとしてますねww
素直じゃないけど、そんなシン君・・・可愛いですね(。◕‿◕。)
2009/10/8(木) 午後 9:21 [ まかろん ]
まかろんさん、こんばんは!お久しぶりですー♪
コメント本当にありがとうございます!リコメ大変お待たせしました(/ω\)ミアネヨ!!
(*´艸`)アヒャヒャヒャ もう気持ちバレバレでしょー?!多分、乗馬の時よりもあからさまにムッとしたオーラ全開になってます(笑)
もう、この時点では、チェギョン失踪後、新婚旅行にも行ってるし、ユル君の名前は禁句項目に入ってそうですよねー!素直じゃないでしょーまったく!でもそんな殿下がまた可愛いですよねー♪結局そうなるのね(爆)(;´▽`A``
2009/10/11(日) 午後 7:22
あの〜ケーキ事件は、シンの誕生日の済州島事件と同じぐらいに、私の中では、あまりに人を無視した悲しい出来事でした




やっぱりその酬いを受けなくちゃね
今回、すっきりしました
ありがとうキララさん
2012/9/5(水) 午前 3:24 [ わいわい ]