Sweet dreamin'

ご訪問ありがとうございます。只今長ーいお休み中の為、ご挨拶は不用デス(´人`;)スミマセン

Lovers in 明洞

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〈1〉

シンとチェギョンは、賑わう明洞の街並の雑踏の中、しっかりと手を繋いで歩いていた。
シンは、物珍しそうにあちこちキョロキョロ街並を見上げながら歩いていた。
そんなシンをじっと見つめて、チェギョンが急に話かけた・・・

「私のこと、どれくらい好きか聴いてもいい?」

突然の突拍子もない質問にシンは、ちょっと呆れ気味に答える。

「・・女って、どうしてそんなこと聴きたがるんだ?」

「ずっと、胸に刻んでおきたいの・・・」

立ち止まり、シンは俯くチェギョンに向き合い、ため息混じりに優しく問いかける。

「そんなに知りたいか?」

「・・うん・・」

シンは、意を決して俯くチェギョンの帽子を取りはらい、自分のニット帽も脱ぎ捨て、
左手に二人の帽子を重ねて持った。
青空のもと、風になびくチェギョンの髪・・・明洞の街頭で、シンとチェギョンの
お互いの顔が露になった。


「!」


驚いて少し戸惑いがちな目で見上げるチェギョンに向かってシンは、ゆっくりと顔を
傾け、腕をチェギョンの腰にまわし、そっと引き寄せ、周囲の雑踏の目も気にせず、
堂々とキスをした。
それは、彼女を慈しむように甘く優しい、長い長いキス・・・


時が止まったようにしばらく2人の世界に浸っていたが、
余りにも騒がしい周囲のざわめきと人の気配に気付き、シンは、そっとやさしく重ねた
唇をはずし、周囲を見た。
そこには、2人を取り囲むように街頭の人々が大勢集まっていた。
チェギョンは、自分が言い出したにも関わらず、想定外のシンの行動に驚き、嬉しくて
堪らない反面、恥ずかしさで顔を真っ赤に紅潮させ、手で無造作に髪をかき降ろし、
できるだけ顔を隠し、シンの服にしがみついた。


『まずい!』
『バレた?』


我に返った2人はお互い顔をチラリと見合わせ、この人垣の多さに自分達の正体がバレて、
パニックになってしまうことを恐れた。
慌ててシンは、顔を隠すように俯き加減にチェギョンの手をグイッと掴み、ギュッと
手を握って人垣を抜けるように走り出した。


「行くぞ!」


2人に拍手を贈る者、歓声を上げる者、携帯で写真を撮る者、追いかけようとする者、
『ねぇ…皇太子夫婦に似てない?』などと噂する者、様々な人々が2人の行方を食入る
ように見守った。


2人は、笑いながら手を繋いだまま必死に走っていた。

「ハァハァハァハァ・・・」

息を切らしながら、人垣をすり抜けながら手を繋いで街を走り続ける2人。
シンはそのまま振向かず、チェギョンに向かって声を掛ける。

「・・おい!・・わかったか?!」

振向かないシンの背中から、チェギョンはシンが照れていることを直感し、満面の笑み
を浮かべてギュッと繋いだ手を握り返して、

「うん!!」

と元気よく答えた。


「チェギョン!」

「なあに?」

「街を歩くって、気持ちいいものだな!!」

「そうでしょ?」

「こんなに楽しいなんて知らなかったよ!」


眩しい笑顔で振り向き息を弾ませ話すシンにとって、街を走るということさえ生まれて
初めてのこと。人生初のごく普通の高校生、一若者のように自由で開放的な瞬間だった。
そんな姿に、チェギョンの胸は少しキュンとなったが、今まで見たことの無い表情、
初めて見るイキイキとした楽しそうなシンの姿が嬉しくて柔らかく微笑んだ。


2人はキラキラ輝く青空のもと、しばらく駆け回っていたが、やっと人通りの少ない路地を
見つけ、そこで一息ついた。


「ハァ〜ハァ〜ハァ〜・・・バレちゃったかな?」

「ハァ〜ハァ〜ハァ〜・・・かもな?」

「どうしよう…こんな時にまた問題になっちゃうよね?」

「構わないさ。俺達、夫婦だぜ。スキャンダルにもなりはしないさ!それにバレた処で、
 こんな事件の最中に自粛すべきだとか云われる位だろ?まぁ、かなり問題は問題だけどな…」

「アハハ!そうだね。きっと上の方々や世間には、また大目玉くらっちゃうけど、もし、
 あのキスの記事が出ちゃったら、私達の不仲説が一気に払拭されちゃうかな?」

「だろ?」


プププーッと2人で吹き出しながら笑い合う。隠れた路地から来た道を振り返るシン。


「おい。上手く撒けたみたいだし、これからどうする?」

「そうね〜・・・」


チェギョンはあごに手をあてて考えながら、路地の向こうに、あるものを見つけそれを指差した。


「あれよ!!!」

「?」

「いいから、着いて来て!」


チェギョンは、シンの腕を引っ張ってそちらへ向かった。

〈2〉

辿り着いたのは、ゲームセンター一体型のアミューズメントパークだった。


「また、ゲームか?」

「違うわよ!これ!」


チェギョンが指差したのは、周囲から撮影風景が見えない完全に遮断されるスタジオタイプの
最新型のプリクラ・マシーンだった。


「?・・・なんだ??これ??」

「いいから、入って!!」


訝しがりながらも、チェギョンに押されるまま中に入るシン。


「で、なんなんだ?これ?」

「エヘヘ〜♪『プリクラ』よ!知らない?シン君?」

「あぁ!これが、少し以前大流行したプリクラというものか〜。へぇ〜はじめて見たよ!」

「そうよね。私も久しぶりなの!」

「ちょっとしたスタジオみたいに照明やブルーバックとか完備されてるんだな〜・・」


と、さすが映像学科だけに機材に興味津々のシンを見てチェギョンは甘えるように声を掛ける。


「ねぇ、シン君♥ 今日の記念に折角だから一緒に撮りましょうよ!」

「えぇ?!・・・恥ずかしいから嫌だ。それに俺達は皇族だぞ!無理だろ。」


「うぅ〜・・やっぱりダメ?お願い!記念に!1枚だけ!このデータはすぐ消去できるから!
 プリクラ初めてでしょ?!楽しいよ!ねぇ〜!シンく〜〜ん♥」

「ハァ〜〜・・・わかったよ!」


大きな瞳をクリクリと輝かし、甘えるチェギョンの仕草に観念したシンは、内心嬉しい気持ちを
隠して、仕方無しにつきあう素振りを見せた。


「キャ〜♥ シン君、ありがとう!嬉しい!」


チェギョンは、シンの腕に勢いよく自分の腕を絡めてピョンピョンと飛び跳ね、喜びながら、
早速コインを投入する。


最新機種で、さすがのチェギョンも宮中暮らしの為、やや浦島太郎状態で使い方がよく分からず、
タッチパネルの操作に少々手間取っている。


「なんか1年も経ってないのに、進化してて使い方がいまいちわかんないなぁ〜・・・
 もう、基本設定だけでっと・・・」


ある程度、要領を得るとパパパと次々と手際良くセットして行くチェギョンの姿をシンはポカンと
ちょっと感心したように見つめていた。


「フレームは、これで〜・・カメラは顔アップの設定で・・折角だから連写にしちゃおう!
 よし!・・セット完了! ほら、シンくん!こっち来て!」


手招きされてチェギョンのそばに寄るシン。


「どこ見ればいいんだ?」

「カメラのレンズは、あそこよ!あそこを見てポーズを取ってね!」


2人並んで画面を見るが、シンの背が高くてフレームのピントにバランスが合わない。


「あ〜ん!これじゃ私の顔が切れちゃう!ボケちゃう!しまった!もう設定変更できない…
 どうしよ〜・・・シン君、屈んでよ!」


チェギョンが、膨れっ面でシンを見る。


「ハァ〜面倒だなぁ〜・・・」

「もう、意地悪!台があればいいのにここ無いね〜、どうしよ・・・キャッ!!!」


シンは、チェギョンをヒョイと抱き上げて、お互いの目線が合うように抱きかかえたまま
チェギョンの顔を見つめニヤッと笑った。


「これなら、問題ないだろ?」


チェギョンは、照れて赤面しながら、「うん・・・」と小さく頷いた。
でも、すぐに気持ちを切換え、ニッと笑って元気良く、


「じゃあ、行くわよ〜!シャッターが自動で落ちるからポーズ取ってね!」


と、勢い良くスタートボタンを押す。


可愛く笑顔やピースサインをしたり、ヘン顔を作ったりイキイキと色々な表情を作るチェギョンに
合わせ、シンも初めてでタイミングが掴めないながらもぎこちなく、チェギョンに顔を寄せて笑顔
を作ってみる。

シンは、楽しそうにコロコロ変わるチェギョンの表情を画面を通して見ていると、眩しくキラキラ
輝くばかりの可愛らしさに、どんどん愛しさが込み上げて来て、思わず、彼女の頬にキスをした。


「!」


不意打ちにビックリしたチェギョンがシンを見るとシンは、チェギョンの瞳を言葉無く熱い視線で、
静かにじっと見つめ続けた。


「シン君・・・」


2人の瞳が揺れて、シンの顔がチェギョンに向かって傾いて行く・・・
シンは、抱き抱えている腕の力を更にギュッと強めてチェギョンを引き寄せ、覆い被さるように
彼女の唇を塞ぎ、甘い唇の感触を味わうようにやさしく何度も何度も唇を重ねる・・・
シャッター音が続く中、チェギョンはシンに身を任せ、無意識にシンの首へ両腕を回した。
チェギョンは必死に息苦しい程のとろけるような熱くて甘いキスを受け続けた。
2人の息が荒く、無心にお互いの唇の感触に酔っていると、

『出来上がり!また来てね〜!』という機械音と共にカタンと音を立ててプリントされた写真が
出て来た。

ハッと気が付いて唇を離し、顔を見合わす2人。


「あれ?もう終わったのか?」

「うっ‥うん。そうみたい・・・あ!ほら、出来てるよ!見てみよ〜!」


照れながら、そそくさとシンから身体を離して、チェギョンが出来上がった写真を手に取ると、
その横から覗き込むシン。

出来上がったプリクラ画像には、コロコロ変わる表情の2人から、はっきりとキスまでの動向が
写っていた。


「何これ〜?!恥ずかし〜!!!誰にも、見せられないじゃない!/////」

「アハハ!結構よく撮れてるな〜!何なら、もう1回撮るか?!」

「?!シン君ってやっぱり変態??・・ハァ〜とりあえず、データは消さなきゃね・・・」

「!!なんだと?!おい!!」


ムッとするシン。
でも内心、公の場に出ると大変な問題になるので消去して当然だと頭では理解しているのに、
密かにこのデータを自分のPCになんとか残せないか…などと考えてしまうシンだった。



そんな時、2人の携帯のバイブが同時に震えた。

〈3〉

「・・・タイムリミットだな・・・」
「・・・そうね・・・」


一気に現実に引き戻されて、沈み込むチェギョン。
シンは、チェギョンの手にある写真を自分のジャケットのポケットにそっと入れて、ニット帽を
深く被り直し、チェギョンの帽子も顔が隠れるように被せ直した。

チェギョンは、シンにされるがままに突っ立っていたが、切なさと秘めていた抑えていた様々な
感情が溢れ出し、こらえ切れず、シンの胸にしがみついて、声を殺して泣いた。
シンは、チェギョンをやさしく受け止め、背中をさすりながら、強く抱きしめ返す。
耳元で囁くようにやさしく話しかける。


「チェギョン、楽しかったな・・・」

「・・うん。うん!!」

「また・・来ような!」

「・・・うん!!!」


ポンポンとあやすように優しくチェギョンの背中を叩くシンの目頭も熱くなっていたが、それを
堪え、チェギョンの涙を両手で頬を包み込むように拭い、やさしい微笑みを見せた。チェギョン
も微笑み返す。


店を出て、携帯からの私服SPの指示に従い、迎えの車がやって来ている場所まで、わずかな
ひとときをシンとチェギョンは再び、恋人繋ぎに手をしっかり繋いで普通の街行くカップルの
ように闊歩して楽しんだ。




〔車中〕


2人は、ぴったりと寄り添い、ずっと手を握りあったまま、窓の外の流れる景色を眺めては、
あちこち指差しながら、楽しそうに他愛のないことをあれこれ話し合っている。
東宮付専属運転手も、バックミラー越しに、結婚当初に比べ、こんなにも仲睦まじいご夫妻の姿
を垣間見て、胸に込み上げてくるものがあったが、平常心を心掛け運転を続け、宮殿へ向かった。

お忍びの為、人気の少ない宮殿の裏口から東宮へ戻って来た2人。

晴れ晴れとした笑顔で手を繋ぎながら微笑み合う皇太子夫妻の姿を、出迎えたコン内官と
チェ尚宮は顔を見合わせ、ホッっとしたように頷きながら、やさしい笑顔で出迎えた。


「お帰りなさいませ。殿下、妃宮媽媽。何事も問題無く、ご無事で何よりでございます。」

「ありがとうございました。コン内官おじさん、こんな時にワガママを聴いて頂いて・・・
 本当に心から感謝しています!」

「ありがとう、コン内官・・・」


二人は、互いに穏やかに微笑み、会釈をしてパビリオンに手を繋いだまま入って行った。
コン内官達は、そんな2人の後ろ姿を見送り、一礼して静かに席を外した。
パビリオンの中、お互いの部屋のドアの前で、微笑み合い、向き合って立ち止まる。


「楽しかったね〜!シン君とデートなんて、本当に夢みたいだったわ。ありがとう!
 でも、そろそろ皇太子夫婦に戻る時間だね・・・」


そう言いながら、チェギョンはゆっくりと名残惜しそうに手を離そうとした。
その笑顔の裏に潜む、現実に対する切なさと淋しさが、ひしひしとシンに伝わる。

指先が離れそうになった瞬間、シンは堪らず再びチェギョンのその手をグイッと引き寄せた。


「!」


驚くチェギョン。


シンは、そのまま乱暴に扉を開け、ズカズカと自分の部屋へ連れて入り、チェギョンを
有無を言わせず、暗室まで連れて行き、ドアを閉じた。

〈4〉

赤暗い照明の密室の中、手を握ったままたたずむ2人に、わずかな沈黙が広がる。


「シン君、どうしたの?」


そのままチェギョンの手を引っ張って、奥にある椅子の方へ向かい、その椅子にドカッと
腰掛けるシン。チェギョンが立ったままキョトンとしていると、シンはグイッと腕を引き
寄せて、自分の膝の上にチェギョンを座らせた。


「キャッ!」


突然の行動に驚きバランスを崩したチェギョンは、シンの胸に倒れこむような形になった。
急に、さっきまでと様子が違うシンの顔を見上げて、恐る恐る尋ねる。


「どっ、どうしたの?」


一息ついて、シンがちょっと不機嫌に、言い難そうに顔を背けながら口を開く。


「…おまえ、俺にだけ、どれだけお前のことが好きか態度で表現させるつもりか?!」

「え?!」

「俺にも…俺にも教えてくれ。お前がどれだけ俺のことが好きなのか!」

「!!」


そう言って、シンは正面から真顔でチェギョンがどういう態度に出るのか、じっと見つめて
沈黙している。

チェギョンは、目を泳がせ、困ったようにシンを見て、


「あの・・えっと・・どうすれば??」

「そんなこと、お前が考えろよ!俺もそうしたんだ。お前の気持ち、見せてくれ!」


シンは、プイッとふてくされてスネた子供のように、そのまま何も言わずチェギョンの
次の行動を待っていた。あっけに取られるチェギョン。


『プッッ!…カワイイ…シン君ったら〜♪…^^』


そう思ってチェギョンは、フフッっと小さく微笑むと、少し間を空け、深呼吸してから、
シンの膝の上で体勢を整え、シンに向き合い、両肩にそっと両手を乗せて恥ずかしそう
にちょっぴり震えながら、ゆっくり背伸びをして、シンの唇にそっと触れるようにやさしく
唇を重ねた。自分から、シンを含めた男性に対して、キスをするのは初めてのこと。
恥じらいで、わずかほんの数秒で唇を離してしまう。


「/////」

「・・・そんなものなのか?お前の気持ちって?」


満足しなかったのか、あからさまにガッカリしたようにシンは、意地悪な口調でスネる。
仏頂面のシンに言われて困ってしまうチェギョン。


「〜〜〜もう!解ってるでしょ?!シン君の意地悪!!」

「う〜ん、わからないなぁ〜・・そんなんじゃ・・・」


まだスネつつ、ちょっぴり横目でニヤニヤしながら、からかうシン。


「〜〜〜もうっ!!」


チェギョンは、顔を真っ赤にして再度、シンの両頬をやさしく両手で撫で、そっと包み込む
ように手を添えて、やさしくやさしく慈しむように、もう一度、今度は長くキスをした。
慈愛に満ちたやさしい感触・・・初めてチェギョンの方からキスしてくれたことが、とても
嬉しくてあたたかな幸福感と高揚感に満たされるシン。
彼女の性格のように軽やかでやさしい、ついばむような可愛らしいキスの感触を味わいながら、
チェギョンの唇のぬくもりを感じていた。

そんなチェギョンが可愛くて愛しくて仕方ないシンの感情は一層高ぶり、シンの身体を熱く
させた。チェギョンの唇を味わいながら、彼女の後頭部に手をやり、そっと持ち上げ、彼女の
口を少し開かせると、今度はシンの熱のこもった激情をたっぷり込めて、シビれるような濃厚
なキスを返した。

チェギョンは、口の中に広がる初めての感触に一瞬ビクッと身を硬くしたが、シンの情熱を
感じ、とまどいながらも受け入れ、初めての激しいリアルなキスに身を任せた。

そのキスは、お互いの唇が痺れる程、時に激しく、深く、トロけるように甘く、続く・・・
慣れないチェギョンは、息も絶え絶え、トロ〜ンと骨抜きにされたように徐々に指先まで身体
の力が入らなくなって来た。うっとりと甘い感情に呑込まれ、何も考えられなくなって、
今にも仰け反りそうになり、後ろに倒れないように、シンの首に必死にしがみついて回した手を
離さないようにするのが、精一杯だった。

しばらく、シンの動きに翻弄されるチェギョン。息継ぎをしようとすると、その息まで吸い込む
ように、またシンが唇を塞ぐ・・・時が止まったように、いつまでもキスは続いた。
どんどん互いの体温が上昇し、麻痺したように全身が溶けてしまいそうな感覚に目眩を覚え、
耐えられず、とうとうチェギョンが後ろに倒れそうになった頃、ようやくシンは唇をそっと離し、
チェギョンを解放した。


フニャ〜ッと力なく、クッタリとシンの胸に倒れ込むように身体を預けるチェギョン。
まだ、お互いの唇が名残惜しそうに震えている・・・
部屋の灯りの色のような情熱が身体に渦巻いている2人の荒い呼吸が静かな暗室に広がる・・・
呼吸が少し落ち着いた頃、シンがチェギョンの耳元で吐息混じりに囁いた。


「これくらいでないと‥な・・・わかったか?」


チェギョンは、コクンと頷き、火照った身体をシンにあずけたまま、ポーッと放心状態で、
シンに愛されているという幸せを実感し喜びに浸っていた。耳元をくすぐるシンの熱い吐息と
低く響く声にドキッとし、今まで感じたことのない胸の高鳴りを覚えた。
シンも愛する女性が、自分に応えてくれたことが嬉しくて今まで以上に幸福感に満たされていた。
愛するが故の、燃え滾る男の激しい欲望にかられたが、理性を総動員して押さえ込む。


──やっと気持ちが通じあったばかりじゃないか。焦るな、シン!


そう自分に言い聴かせながら、チェギョンの甘い香りに包まれ、そばに居ることだけで幸せ
なのだと、抱きしめたチェギョンの髪を宝物のようにやさしく撫で、そっとその髪に口付けた。

〈5〉

うっとりとした2人きりの甘いひととき・・・
気持ちが通じ合ったばかりの2人は新婚というより、まだつきあい始めたばかりのラブラブな
恋人そのものだ。

まだシンの腕の中でクタッとしているチェギョンに向かって、シンはおもむろにジャケットの
ポケットから、先程撮ったプリクラ画像を取り出す。


「これ、どうしようか?」

「半分ずつ持っていようかと思ったけど、これ、見つかっちゃ大変だから、シンくんが
 持ってて・・・」

「いいのか?」

「(クスクス)・・いいわよ。そんなの誰にも見せられないし!2人だけの秘密よ!
 それに、シンくんの初プリクラでしょ?今日の初デートの想い出に持っていて・・・」

「あぁ、じゃあ、これは2人だけの秘密だな♪・・わかった。俺が持ってるよ」


シンはそう言って、何かを思い浮かべて不適に笑い、軽くチェギョンの耳朶にキスをして
イタズラっ子のように囁いた。


「また、撮りに行こうか・・今度はもっと刺激的でスゴイやつ・・・撮影監督は俺だ」

「!?・・もう、シン君のエッチ!!」

「アハハ!冗談だよ。バカだな〜。やっぱり、お前をからかうのが一番面白いよ!」

「また、からかったわね〜!もう!!」


と、シンの胸をポカッと軽く叩く。いつもの調子が戻って来たチェギョン。
シンはウッと俯き、大げさに痛がるフリをしてから、顔を上げてチェギョンにやさしく微笑んだ。
トボけるシンを見て、チェギョンも嬉しそうに笑った。


「さてっと!そろそろ行くね!」


そう言ってチェギョンは、立ち上がり、彼女の部屋へ戻ろうとした。
思わず立ち上がり、そんなチェギョンの肩を掴んで引き止めて、後ろから抱きしめるシン。


「チェギョン・・・ありがとう・・・
 今日のことは、もし、もしも、おまえが俺の前から消えても・・永遠に忘れない」

「・・・私もよ。シン君、永遠に憶えておくわ・・・」

「俺達は、身体は離れていても心はいつも一緒だ・・・ずっと・・・」

「もちろんよ!離れないわ!ただ、しばらく長い冬休みが来るだけ・・・だから、
 その間、私のこと、絶対忘れちゃだめだよ!シン君!」

「忘れるわけないだろ!バカ!・・・それに、さっきの言葉は撤回する。
 おまえは、俺の前から絶対に消えたりしない!」

「!」

「俺が絶対になんとかする!」



『・・・ありがとう。シン君。その言葉だけで嬉しくて胸がいっぱいだよ・・・』

シンの力強い言葉に胸が熱くなる。この時、恐らく二度と戻れないだろうと予想していた
チェギョンは、それには答えず心の中でシンの想いに感謝した。



「・・・シン君は、絶対潔白だし、私が居なくても皇太子として立派に頑張れる・・よね?」

「チェギョン・・・」

「どこに居ても、あなたを信じてるわ・・・だから、頑張ってよ・・ねっ!!」

声だけは明るく答えるが、どうにも感情のセーブが利かず、喋る声の語尾が震えてしまった。
チェギョンの肩が震え、こらえていた涙があふれ出し、シンの腕に雫がポタポタと落ちる。



ーー 離れたくない!! ーー



互いにそう想い、チェギョンは堪らず振り返り、シンの胸に飛び込んで顔を埋め、2人は、
ギュッと互いの身体が離れてしまわないように、不安をかき消すように、ぴったりときつく
抱きしめ合った。嗚咽を殺して震えながら泣くチェギョン。シンの目にも、もう我慢できず
涙が滲んでいた。


しばらくして、チェギョンは『フゥ〜〜〜ッ』と大きく息を吐き、ゆっくり身体を離して、
泣きはらした真っ赤な目に涙をためたまま、いつもの元気な笑顔をつくってシンを見上げた。


「ハァ〜・・永遠のお別れじゃないのに私ったら何で泣いちゃったんだろ・・・ごめんね!」

「ほんとに、おまえは泣き虫だな〜。目がウサギみたいだぞ!」


そう言いながらシンは、チェギョンの涙を指で掬い、まぶたにやさしくキスを落とす。


「///// エヘヘッ・・・ごめん。
 さて、そろそろ本当に着替えて来るわ!お腹もペコペコだし、シン君、夕食でね!」


照れ笑いしながらそう言うと、振り切るように颯爽とチェギョンは部屋へ戻って行った。


「・・・アッ!」


シンは、無意識にチェギョンへ手を伸ばし、声を掛けて呼び止めようとしたが、普段と
変わらない素振りを見せる健気な彼女の後ろ姿を見ると胸が詰まって、手が宙を彷徨った。
まだ、明日別れるわけでは無いと言い聞かせて、結局、シンは、そのまま彼女を見送った。



──あと、どれだけ2人の時間が残されているのだろう…



砂時計のようにとめどなくサラサラとこぼれ落ちて行く2人のささやかな幸福な時間。
シンは、あとどれだけ2人で過ごせるか分からないが、恐らく残り少ないであろうわずかな
その時間を、今まで遠回りした分、大切にしようと心に誓った。



『わたしのこと、どれくらい好き?』



ふと、チェギョンの言葉を思い出す。暗室に一人残されたシンは、切ない視線で、秘密の
宝物になったキスする2人のプリクラ画像を眺め、そっと指でなぞりながら、一人呟く。


「今、逢っていたばかりなのに、もうこんなにおまえが恋しい・・・おかしいだろ?
 いつも逢いたい、そばに居たい、ずっと顔を見ていたい、触れたい、抱きしめたい、
 俺の全てでおまえの全てを埋め尽くしてしまいたい!・・俺はおまえに夢中なんだ!
 ハハッ、本当に狂ってるな・・・シン・チェギョン・・・行くな。行かないでくれ!
 離れると思うと胸が張り裂けて死んでしまいそうな位、おまえを愛してるよ・・・」


『心から愛している』


──どうしても、まだ面と向かって言えない言葉。キスで想いは伝わったか?
  不器用で、上手く気持ちを言葉で伝えられない自分が情けない・・・


甘い幸福感に満たされつつ、迫り来る別離の予感に焦りと無力感を覚えるシン。
しかし、シンは愛する人に愛されることで、今までにない強い気持ちと新たな”力”を得た。


『家族を守るのも、私の人生・・・皇室は私の家族』


そう言ってくれたチェギョン。あんなに辛く苦しませたのに皇族を『家族』と言ってくれた。
彼女のおかげで、初めて『家族』という絆、『愛する人』のぬくもりをシンは知った。
暗室に張ったロープに吊るし乾燥させている、とびきり笑顔のチェギョンの写真を見つめ、


──彼女を失いたくない、どうすれば潔白は証明される?海外から連れ戻せる?
  例え皇太子を廃位されても、どんなことをしても、チェギョンを手放さない
  絶対に!!!


シンは、唯一無二の愛するものを守るため、絶対に諦めないと力強く決意した。




〈END〉


・*:..。o○☆*゚¨゚゚  ・*:..。o○☆*゚¨゚゚  ・*:..。o○☆*゚¨゚゚゚  ・*:..。o○☆*゚¨゚゚  ・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*


このあと、2人の夕食や夜はどうなったのでしょう?それはまた別のお話・・・


《epi.24へつづく》

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