Sweet dreamin'

ご訪問ありがとうございます。只今長ーいお休み中の為、ご挨拶は不用デス(´人`;)スミマセン

Blue Star…Moon

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 ♥Blue Star,Blue Moonは、マカオの結婚式後/本編終了後のお話です♥ 

マカオ編 Chapter.2がはじまりまーす! ❤ ヽ(*´ω`)     【※Luv me?の続編になります】
☆ご注意下さい!このお話は、一部 R-18 のアツーイ内容が含まれます☆
※未成年者の方はご遠慮下さいm(_ _)m 閲覧は自己責任でお願い致します※

☆その前に、ひとことお願いデス☆

宮を愛する創作作家さんがとても増え、嬉し楽し大好き♪という気分ですが、これだけ多くの素敵な
作家様がいらっしゃると、自分の中でオリジナルで書いているつもりでも、知らぬ間にどうしても
同じ原作を元にしているので、好みが似たシチュエーションや、内容が若干被ることも出て来るかと
思います。特に本編終了後のマカオのエピソードは一番描かれているお話だと思いますので、そこの
辺り念頭に置いて頂いて、良識的に暖かくご理解頂きたいと思います。
私の作品の中でも、もしかするとそんな類似点があるかもしれませんが、あくまでも私の妄想した
お話なので、全く故意ではありません。

─────────────────────────────────────────────
1つ1つの作品には、1人1人の創作作家様のカラーがあって、どれもたった1つの世界観で描かれ
全てに個性があり、全てが似て非なる物語だと思っています。
─────────────────────────────────────────────

また、ご自分の中のシンチェのイメージとのギャップを感じられる場合は、残念ですが、今すぐに
こちらでお戻りくださいませ…
その辺りご了承の上、それでもOK!という寛大な御方だけ、このまま進んで頂いて、駄文ですが、
お読み頂ければ幸いです。どうぞ、宜しくお願い致します。(o*。_。)oペコッ


ご自分の中のイメージと違う!と思われる方は、申し訳ないですが、ここでお引き取り下さいねー!
苦情は一切、No Thank youですので!m(。_。"m)ミアネヨ


では、どうか、kilala目線の妄想パラレルワールドとして、あたたかく見守って頂ければと
思います。拙いお話ですが、暇つぶしに少しでも楽しんでってくださ〜い♪(*^ー^*)ノ☆゚。・:*:・

2009.12. kilala 拝


《JPG File Credit: Goong DVD&YOONEUNYEGAL》

Blue Star,Blue Moon -1-

イメージ 1

〈1〉


「キャー!かわいい!うっわぁー!素敵ー!」


ここは、シンと太皇太后が滞在中のウェスティン・リゾート・マカオ(澳門威斯登酒店)。
病院からホテルのシンの部屋へ到着するなり、チェギョンは付き添うシンの傍からキャーキャー
黄色い歓声を上げて広いリビングのテーブルへと駆け寄った。

ポルトガルと中国の伝統的な雰囲気を取り入れ、コンテンポラリーな調度品を配したリビングの中、
エントランスから一番眼に飛び込むコーナーテーブルには、昨日には飾られていなかった、
縦に空高く伸び束ねたカラーに大輪の色鮮やかな牡丹、イングリッシュローズをふんだんに使用した
華やかな紅白を基調としたモダンで豪華なフラワーアレンジメントが、新婚の二人の門出を祝うよう
に生けられており、豪奢なスイートルームをより一層華麗に彩っている。

先程まで病院に運ばれ、点滴を受けながら顔面蒼白で意識を失っていたのがまるで嘘のように、部屋
からハクサビーチを望む一面のオーションビューに感動し大はしゃぎ。二人を歓迎するような見事な
調度品に瞳をキラキラさせる妻の様子に、シンは呆れつつもホッと安堵した。

「こらっ!走るな!」

「ヘヘッ、ごめーん!もう大丈夫だって!
 それより、ねぇねぇ見て見てー!!素敵なボールブーケだよー!!」

ペロッと舌を覗かせ嬉しそうなチェギョンの手には、ウエルカムフラワーならぬウエルカムブーケが。
ブルーの太めのサテンリボンが結ばれた丸い花手鞠のようなラウンド型の可愛らしいボールブーケだ。

「これ、サムシングブルー…だね。」

感激で大きな瞳を潤ませながら、まじまじとそのブーケの花々を眺めては眼を閉じて香りを楽しむ。
ブルースター・ピンポンマムをメインにふんだんにあしらい、白いブルーレースフラワー・ティケネ
(白バラ)・アイビーなどをちりばめたキュートで華やかな白とブルーを基調としたチェギョンの
イメージにピッタリの可愛らしいブーケ。
テーブルには、お揃いのブートニアとチェギョン宛の小さなメッセージカードが添えられていた。

「チェ尚宮お姉さん、これは?」

「はい、昨日いつもの生花店へ出向いた際、本日の挙式の件は伏せておりましたが、
 発注した花材を元に推察された店主のアンナ様が妃宮媽媽へのお祝いに…と、
 先程ヴィラへ戻った際、こちらをお預かり致しました。」

「え?!アンナから?!」

「はい媽媽。どうか末永くお幸せに…と伝言を賜りました。」

「アンナ〜!!うわぁ〜〜ん。どうしよう!嬉しいよぅ〜!」

この街でこんな風に暖かく、一国の皇太弟夫妻でなく、一個人としての二人の結婚を祝ってくれる人
がいる… そう感じるだけで、チェギョンは感激の余りブーケに顔を埋め、ポロポロと涙が零れた。
シンは、そんなチェギョンにソファへ座るようにそっと腰に手を添えエスコートしながら、その姿を
微笑ましく優しい眼差しで見つめる。
ソファに並んで腰掛けたチェギョンは、シンを見上げて涙眼でニコッと微笑み、ブートニアをシンの
ジャケットの胸ポケットに差し込んで『素敵〜!』と声を上げた。メッセージカードを手に取り、
そっと開いて読み進めながら、コロコロと表情を変える以前と変わらぬ彼女らしいその横顔にシンは
先程の病院での出来事に想いを巡らせた。


──こいつ、本当に病院で俺に言ったこと覚えてないのか?


病室のベッドの上で夢うつつなチェギョンの口から聴かされた心の叫びのような告白。
あの後、再度眠りに落ちたチェギョンが次に目覚めた時、『ああ良く寝たー!!』とケロリとした様子で
起き上がり、心配掛けたことに対しては深く詫びてはいたが、それとなく覚えているか尋ねてみると、
綺麗サッパリとシンに言ったあのことは全く覚えていなかった。


──まぁ、覚えていないなら、それはそれでいいか…。思い出せば辛くなる…



「…もう『子供だとばかり思ってたのにイイ男(ヒト)が居たなんて!』っだって〜!
 失礼しちゃうわよねー!アンナらしいけどっ!まぁ、フツー驚くか?!ヘヘッ♪
 ねぇ、シン君、明日時間があれば御礼の挨拶に行かない?旦那様を紹介してって書いてあるし!」

いつの間にか僅かに眉間に皺を寄せ、チェギョンに視線を送ったまま物思いに耽っていたらしく、
そんなシンの顔をチェギョンが不安そうに覗き込んだ。


「シンくん?…ダメ? 私もアンナにシン君を紹介したいんだけど…」


徐々に尻すぼみに小さくなって行く愛しい声に、ハッとしてシンは慌ててチェギョンの左手をギュッと
握って返事をした。

「いや!ああ、そうだな。俺からも今までお世話になった挨拶がしたいし、時間があれば行こう…」

「いいの?!ヤタッ!エヘヘッ♪ありがとう♪」


──そうだ。こんな風に笑顔のおまえだけを見ていたい…
  でも、この笑顔の向こうには深い心の傷があるんだよな…


ズキリッと胸に響く疼きを感じながら、その大きな瞳に映る世界の奥の不安を取り除きたいと、
ふわりと頭を撫で、そのまま滑らかな頬をやさしく掌で包み込んだ。

「わわっ! くすぐったいよー!もうっ皆見てるよ?!」

「…別に構わないさ。」

そう言いつつも周囲の微笑ましく見守る視線を感じ、僅かに照れたようにそっと手を離すシンに、
クスクスと嬉しそうに頬をバラ色に染め、チェギョンが微笑んでいる。
そんな仕草を見るだけで、シンは、ささやかな幸せを感じずにはいられなかった。

「妃宮媽媽におかれましては、まだお疲れでございましょう。お召し替えされごゆっくり、
 寝室でお休み下さいませ。」

「それでは、夕食の準備をして参りますので、それまで両殿下ごゆるりとお寛ぎ下さいませ。」

キム内官やチェ尚宮達は、二人に気を利かせ、簡単に伝達事項を伝えると部屋を退室した。





「ふぃ〜!やっと2人になれたね!」


ブーケのリボンの輪を右腕に通したまま、むーんと大きく伸びをしてソファへ背中から身体をポスン
と預けるチェギョン。
瞳を閉じて深呼吸するとシンの腕が伸びて来て、そっと前髪を掻き分けるように流れる髪を梳いた。
その感触が心地よくて、チェギョンはモゾモゾ動いてシンの膝の上に甘えるように頭を乗せると子猫
のようにコロンとソファの上に横になった。

「ハァ〜〜〜ッ」

シンの体温が伝わりホッとする。チェギョンは頬をシンの太腿に擦り寄せて大きく溜息を吐き出すと、
長い髪をやさしく梳きながらシンは、心配そうに声を掛けた。

「大丈夫か?早く着替えて休め…」

「ん…、大丈夫。単なる寝不足なんだってばぁ〜!心配性だなぁ〜シン君は!」

「おまえなぁ、倒れたんだぞ? 少しは自覚しろ…」

「もう平気だってばぁ〜‥!」

「何が平気だっ!……おまえ、俺がどれだけ心配したと思ってるんだ?」


髪を梳くシンの手の動きがピタリと止まる。瞬時に空気がピリッとした。
僅かに指先が奮え、苦し気に歪むその表情は、怒りなのか悲しみなのか。
見上げたチェギョンは、シンから言葉にならない感情が痛い程伝わり、シュンとして心配掛けたことを
素直に謝った。


「ごめんなさい。シンくん…」

「悪いと思うなら、頼むから、これ以上心配掛けないでくれよ…」

「うん…」


チェギョンは、震えるシンの手にそっと腕を伸ばし、小さな手でキュッと握り締めた。
シンもその手をしっかりと握り返し、真っ直ぐに視線を合わせてポツリと呟いた。


「1人で悩むな。約束しただろ? 何もかも内に溜込まないでくれ…!
 具合が悪ければ言うんだ。いいな?」

「…うん。そう…だよね。心配掛けてホントにごめんなさい…」

「ほら、少し休め…」

「ん…。」


シンは大きく一息つくと、切な気にやさしく微笑んで前髪を掻き分け、頬を撫でた。

次第にゆっくりとチェギョンに覆い被さるように顔を寄せ、額に1つKissを落とし、一旦顔を上げ、
愛し気に潤む視線を絡ませて、ぷっくりとした紅い果実のような唇にそっとやさしい接吻けをする。

互いの唇から、やわらかなぬくもりが伝わってひどく安心する。
チェギョンはシンから与えられるその幸福に、理由(ワケ)も無く涙が込み上げて…
ツルンとした滑らかな頬に添えた長い指先に暖かな涙の雫が流れて来るのをシンは感じた。



黄昏時の鮮やかな紅い空に、スコールが降り出した。
陽光に反射してキラキラと輝く雨は金色に煌めき、とても不思議な光景で、静かな室内に雨音が響く。
唇を重ね微睡む二人の間で、シンのシャツの袖をキュッと握りしめたチェギョンの右腕に吊り下がった
まあるいボールブーケがゆらゆらと揺れていた。




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Blue Star,Blue Moon -2-

〈2〉


「こちらは、
 野菜粥、松の実粥、小豆粥、参鶏粥、アワビ粥、かぼちゃ粥、黒ごま粥でございます。」


ダイニングテーブルに、所狭しと並べられた色とりどりの祖国のお粥や様々な宮廷料理。食欲を
そそるようないい匂いと、あたたかな湯気が、部屋中にほわほわと漂っていた。
チェ尚宮が、帯同した太皇太后付き水刺間の料理長が、腕に縒りをかけて用意した様々なお粥を、
着席したシンとチェギョンへ説明する。
チェギョンは、懐かしい宮廷料理とそのお粥の種類の豊富さにあんぐりと口を開け眼を丸くした。

「うっひゃ〜!スゴイ。これ全部食べるの?! あははっ今夜はお粥パーティーだね!」

「フフッ、ああ。これだけ揃うと壮観だな…」

「妃宮媽媽のお口に合うものを…と、太皇太后媽媽からのご指示で料理長が此処でできる範囲で
 従来のスタイルとは異なりますが、このような形で数種類ご用意致しました。どうぞ、暖かい
 うちにお気に召すものだけで結構でございますので、少しでもお召し上がり下さいませ。」

「はい、勿論、いただきます!…私の為にこんなに沢山のお粥を用意して下さったんですよね。
 ヤバイ。感激で泣いちゃいそう!お気遣い感謝します。料理長さんにまでご迷惑掛けてしまって
 ごめんなさい。ありがとうございます!…て、どうか伝えて下さいね。」

「御意、確かにお伝え致します媽媽。では、両殿下まずはどちらをご所望でございますか?」

「う〜ん、そうねぇ〜。私は野菜粥にしようかな?」

「…では、僕はアワビ粥を。」

「畏まりました。」

チェ尚宮自ら取り分け、サーブする。
コトリとシンの前に綺麗に薬味を盛りつけたお粥の器を置いた彼女に、シンは穏やかに口を開いた。

「チェ尚宮、ここからは二人で大丈夫です。妃宮とゆっくり頂きますから、下がって下さい。」

「畏まりました。それでは何かございましたら隣の部屋に控えておりますので、お申し付け下さい。」

チェギョンにサーブし終わった後、恭しく一礼し、
給仕に控えていたチェ尚宮を中心とした女官達は控え室へ戻って行った。




急に二人きりになって、テーブル一杯のメニューに、ちょっぴり落ちつかないチェギョン。
なんだかそわそわ居心地が悪くてスプーンを片手にその先端を口にくわえたまま、小首を傾げた。

「ねぇ、シン君。お祖母様はご一緒じゃなくて良かったの?」

「今夜は、おまえが疲れてるだろうと二人でゆっくり寛げるように、ご配慮下さったんだ。
 ほら、冷めないうちに食べろよ!」

「そうなんだ…。お祖母様、お一人で淋しく無いかな?」

「それは大丈夫さ。今夜は予定通り古いご友人と夕食を共にされることになっている…」

「ふぅん、そっかぁ。なら、よかった…
 ハァ〜でも、なんだか、私のせいで皆にいろんな気を使わせてるような気がする…」

落ち込み気味の浮かない顔で俯くチェギョンに、シンはやさしく言い聞かせる。

「いいから、おまえはそんなこと気にするな…。誰だって具合が悪くなることはあるんだ。
 …さぁ、俺達も食べよう!」

「…うん!そうだね。いただきまーす♪」

チェギョンは、気を取り直して頷くと、フゥーフゥーッと銀製のスプーンに掬ったお粥を冷まして
からパクッと頬張った。

「んん〜〜〜♪おいひぃ〜〜(美味しい)!」

懐かしい韓国のやさしいお粥の味が口一杯に広がって、くぅぅ〜とスプーンを握りしめ身悶えする。
やさしくまあるい美味しさが身体はもちろんの事、心まで沁み渡る。
あれだけ余り食欲も湧かなかったのに、目の前にやさしい眼差しのシンが居るだけで、ご飯もこんなに
美味しく感じるなんて、我ながら現金だな〜とチェギョンは思った。
幸せそうに頬張るそんな姿に、シンも自然と口許が綻ぶ。

「美味いか?ほら、もっと食え!次は何にする?」

「えぇ〜?!シン君がサーブしてくれるの? エヘヘッ♪んじゃあ、参鶏粥!」

「了解。これは、滋養に丁度いいな…俺もいただこう。」


シン直々に甲斐甲斐しく中華風の青磁でできた小振の椀にお粥を掬ってチェギョンへ手渡す。
こんなこと初めてのことで、その所作をじーっと眼で追うチェギョン。
ほらっと器を手に腕を伸ばすシンの姿が新鮮で。
嬉しいのに照れまくって、器を受け取る際に、彼の長い指先と自分のそれがぶつかった瞬間、
ドキンとして、あわや、器を落としそうになってしまった。

「あわわ〜ッ!ふぅ〜セーフ!」

「ったく、何やってんだ。熱いから気をつけろよ?」

「ヘヘッゴメン。ん〜、…まだちょっとフラついてるのかなぁ〜?」

「そうなのか?おい…」

まさか、シンに夫を意識して見惚れたからだなんて言えなくて、わざとらしく溜息をつき俯きがちに
こめかみに手を当てて、踞るように青磁の器をコトリとテーブルに置いた。
シンは顔色を変え慌てて立ち上がり、チェギョンの元へ駆け寄って肩にそっと触れ、顔を覗き込んで、
心配そうに様子を窺う。

「大丈夫か?具合悪いのか? すぐにベッドで横になるか?」

更に予想外のシンの過剰反応に益々ドギマギして視線を泳がせるチェギョン。


──ひゃぁぁ〜、顔!近過ぎなんですけどっ!!


跳ねる心臓をなんとか落ちつかせようと胸を抑えて深呼吸する。
その仕草が余計にシンには心配の種になるなんて気付きもしなかった。

「顔が赤いぞ?苦しいのか?やっぱりまだ辛いんだろ?」

シンは大きなその掌をチェギョンの額にそっと当て、体温を計る。
些細な行動1つ1つにドキドキが止まらなくって、間近に迫る心配そうなシンの表情にもキュンとして
しまうチェギョンは、咄嗟におどけてごまかした。

「ぶふっ!シン君の顔!やーい引っ掛ったぁ〜!」

「はっ?」

「全然平気ですよーだっ!ちょっと器が熱かっただけだよ!
 シン君のその顔!ぷぷぷっ。もうホーント心配性なんだからぁ〜!」

ケラケラ笑ってシンを横目で、照れ隠しでにんまり悪戯っぽく見つめる。
シンはからかわれたことに気が付いて、一気に不機嫌な顔になって大きく溜息を吐いた。

「おまえなぁ〜。皇太弟で夫である俺を騙すとはイイ度胸だな?…ん?」

「イタタタッ!いひゃいよ〜(痛いよ〜)!シンくん!」

恐ろしい程笑顔で、チェギョンの柔らかな頬をムニュ〜ッと引っ張るように摘むシンの手を剥がそうと
バンバンとチェギョンはその腕を叩いた。

「ギブギブッ!まいりまひら!(参りました!)」

「本当に?」

「うんうん。ホントーれす。からかってゴメンね!お詫びに…はい!あ〜ん!」

チェギョンは、頬を引っ張られたまま、手元の参鶏粥をスプーンで掬ってシンの口許へと差し出した。
不意打ちにそんなことをされたものだから、シンもドキッとして思わず、頬から手をパッと離した。
やっと解放されてニパッと微笑み、更にズイッと詰め寄るチェギョンの手首を掴んで遠ざける。

「い、いいよ。俺は自分で食べるからっ!」

「もう照れてないでさぁ〜!ほらぁ〜!はい。あ〜ん!…あ〜ん!」

「よっ…よせってば!」

グイッと遠ざけた弾みに、思わず声を大きく荒げてしまった。
『しまった…』と思いつつ、どうしていいのか戸惑い、チェギョンがどう出るのか固唾を呑んで、
様子をそのままじっと窺うシン。

「むぅー。つまんないなぁ〜!今夜は新婚さん気分で♡って思ったのにぃ〜!
 これ、ケーキじゃないけど『ファーストバイト』のつもりだったの…
 もう、ちょっとはつきあってよぉ〜。ノリ悪いなぁ〜」

肩を落としてスプーンを器に戻し、唇を尖らせて不服そうに睨むチェギョン。
可愛らしく睨む姿に、淋し気なオーラが滲み出ているのに気付かぬ筈がなかった。

「はぁ〜・・・」

「何?その溜息!?……もういいよーだっ!」

シンの溜息にカチンと来て、プイッと顔を背け、ガツガツと1人お粥を食べ出したチェギョンを
じっと見つめるシン。


──ファーストバイトね。
  それがおまえのささやかな願い、か…。 いちいち可愛いじゃないか。


シンは口許を綻ばし、スッと右腕を伸ばしてチェギョンが口に運ぼうとするスプーンを手首ごと強引
に掴み、自分の口へとそれを引き寄せ、パクリと口に含んだ。

「へっ?」

ゴクンとお粥を飲込むと、何が起こったのかポカーンと驚くチェギョンの額を小突いてニヤリと笑う。
チェギョンが力無く握ったままのスプーンを奪い、器のお粥を1掬いして鳩が豆喰らったような顔を
した妻の口許へ突き出した。

「ほら、ファーストバイト…するんだろ?」

スプーンに盛られたお粥から立ち上る湯気を見つめて頬を綻ばせると、チェギョンはシンを上目遣いに
見上げて大きく嬉しそうに頷いた。

「うんっ!…あ〜ん!」

子供のように、かわいい唇を大きく開けて待つチェギョンの口の中へスプーンをそっと運ぶ。
パクンと喰い付いて照れつつも満面の笑みを浮かべる幸せそうな妻の姿を眺めながら、シンは雛に
餌付けする親鳥の気持ちがして、思わず吹き出した。

「良い食べっぷりだな!ハハハッ」

「もぉ〜なんで笑うのよー!」

「ぷっ。おい、口からはみ出てるぞ?」

シンはチェギョンの口許に付いたお粥の汁をグイッと親指で拭って、汁の付いた親指をそのまま
自分の唇に含んで舌で舐めとった。極自然なその仕草に、ドキンとして真っ赤になるチェギョン。


──ひゃぁ〜!シ、シン君。今、指、舐めたよね?!指!!


「//// あ、ありがと。」


──シンくんって、あんなことする人だった?他人の食べさしですら嫌がってたのに…
  ちょっと、ドキドキが止まらないよぅ〜////
  よし。この際、この勢いでやり直しよ!あじゃっ!


チェギョンは、高鳴る胸を抑えながら、おずおずとシンの手に持つスプーンに手を伸ばして、
頬を染め上目遣いで、お願いビームを発射する。

「…ねぇ、シンくん。もう1回私からも食べさせて?」

「ったく。解りましたよ。奥様!」

シンがスプーンを手渡すと、チェギョンは無邪気に笑って、早速お粥を掬う。


「エヘヘッ♪ありがと!……旦那様♪はい、あ〜ん!」


嬉しそうに食べさせようとするチェギョンの笑顔が可愛くて、いつの間にかシンも微笑んでしまう。
この部屋には二人だけなのに、何故かシンは口許を片手で隠して雛鳥のように口を大きく開いた。




≪≪ next

Blue Star,Blue Moon -3-

〈3〉


「ふぅ〜♪満腹〜!久しぶりの宮の味、すっごく美味しかった!ごちそうさまでした!」


チェギョンは、食事を下げに来たチェ尚宮達にニコニコ微笑みながら、ポンポンとお腹を叩いた。
リビングのソファで処方された飲み薬を口に運び、白湯で錠剤を流し込む。

「お口に合って宜しゅうございました。」

「エヘヘッ♪もうねーやさしい味でついつい食べ過ぎちゃった…!」

「莫迦。ったく、ほどほどにしとけよ。まぁ、食欲があることは良いことだが…」

「ぶぅー。だって、私、お昼抜きだったし!
 それにシン君がもっと食べろって、あれもこれもって勧めたからでしょ!」

「それ以上におまえ、『美味しい』を連呼して勝手にバクバク食べてただろうが!?」

「ぐっ。だって…ホントに美味しいんだもん。それに残しちゃ、悪いでしょ?」

指先をイジイジとテーブルの上で弄るチェギョンに、苦笑するシンとチェ尚宮の眼が合うと頷き合い
チェ尚宮は黙礼し女官を引き連れ、再び二人を残し静かに退室して行った。


 ◇◇◇


クッションを抱えてソファにゲフッと満腹の身体を深く沈めるチェギョンは、雨上がりの澄んだ夜景
をじっと眺めながら、脚を投げ出し、ほっこりとくつろいでいた。
再び、ボールブーケを手に取って、左腕に通したり、右腕に通したりしてフフッと笑うと、もう一度
ガラス越しに夜空へと視線を移す。
ぼんやりと夜空を眺める妻の横顔に吸い込まれるように、シンもその隣に腰掛け、さりげなく
チェギョンの肩を抱き寄せた。
しばらく互いに黙ったまま、肩を寄せ合い夜景を眺めていると、ポツリとチェギョンが口を開いた。


「…シンくん。ごめんね?」

「何が?」

「折角マカオに来ているのに、私にゴハンまでつきあわせちゃって…
 もっとマカオらしい美味しいもの食べたかったでしょ?」

クッションに顎を乗せたまま、眉を下げて申し訳無さそうにそのクッションの角を弄るチェギョン。
ちらりと見上げるその仕草がいじらしくて、シンはチェギョンの頭を自分の肩に凭れさせるように
より一層引き寄せた。

「いいや。俺もマカオに来てから連日会食続きで、胃を休めるのに丁度よかった。」

「そう?でも、私はシン君ともっと美味しい中華料理とかいろいろ食べたかったなぁ〜」

「そんなのは、また何時でも出来るだろ?大体おまえは胃が荒れてるのにあんなにエッグタルトとか
 油脂の多く味の濃いポルトガル料理とかよく食べてたよな!?具合が悪くなって当然だ。」

「うっ。スイーツは別腹なの!
 それにあれは、たまたまで…あっさりしたポルトガル料理だってあるもん!」

「はっ?何が別腹だ、一緒だ!
 しばらくは油っぽいもの、甘いものは禁止だ!おまえはお粥!いいな?!」

「ぶー!ちょっと位いいじゃんケチ!」

「なんだって?」

「はぁー。わかりましたよーだ!」

「おい!俺はなぁ…っ!ハァ〜もういい。」


ほんの1分前まで、話を切り出したチェギョンはあんなにしおらしかったはずなのに、いつの間にか
些細なことで脱線してぶつかってしまう。…すぐ最初の話題を忘れて言い争ってしまう。
なぜいつもこうなるのか、二人は内心項垂れながら逡巡し、険悪ムードにならない前に互いに話を
切換えることにした。


「ごめんね。私が悪いのに…
 もうこの話はおしまい!私が迷惑掛けて心配させちゃったのに…本当にゴメンなさい。」

「もういいよ。気にするな……。
 でも、そうだな。此処に来て、残念だったことはある…かな?」

「え? 何?」

「おまえの作った卵入り辛ラーメンが食べたかったな…」

「へっ? 辛ラーメン!? マカオ料理じゃないよ?なんでまた?」

「なんでだろうな?
 でも、あの味が忘れられなくて、また食べたいなぁーって、ずっと思ってたんだ。
 だから、此処で作って貰いたかった…」

「フフッそうなんだー♪あれはね、ただのインスタントじゃないの!私の愛情がたーっぷり
 籠ってるからなんだよ?ヘヘヘッ♪ なかなか庶民の味の良さも分って来たじゃないシンくん!
 よっしゃーっ任せて!絶対また作ってあげるね!
 でもさぁ〜、私、お料理のレパートリーね。こっちへ来て沢山お姉さんに習って増えたんだよ?
 シン君に私のきちんとした手料理を今度はご馳走したいんだけどなぁ〜」

「おまえの手料理?…ククッ!それちゃんと食えるのか?」

「失礼ねー!このシン・チェギョン様が作るんですから美味しいに決まってるでしょ?!」

「ハハハッ冗談だよ。そうだな、おまえの手料理か…食べてみたいな…」


シンはやさしい眼差しで、クッションを握るチェギョンの片手を取り、親指でその手の甲を撫でた。
頬をプーッと膨らませていたのに、ふいにそんなことをされるとドキッとして気が緩んでしまう。

先程から続いている今までに無いシンのやさしい不意打ちの態度に、なんだか馴染めないチェギョン
は、戸惑いつつもその柔らかな暖かい親指の感触が心地よくて、寄り掛った硬い肩に頬擦りした。
そのままゆっくりと瞳を閉じて、シンからじんわりと伝わるぬくもりを堪能する。

「ねぇ…何が食べたい?」

「何が得意なんだ?」

「ん。うーんとねー、………。」





「チェギョン?」

急に途切れた元気な声にふと、肩に寄り掛るチェギョンをシンは斜め上から見下ろすと、彼女はもう
うつらうつらと船を漕ぎ、瞼は重そうに閉じ掛かっていた。

「眠いのか?」

「ん〜‥。なんか、薬が効いて来たみたい…。おなかいっぱいで余計に眠い……」


シンは、眼を擦り欠伸をする妻のバラ色の頬をやさしく手の甲で撫でる。

「ほら、もうこのまま寝室で休め…」

「ん〜‥…」

生返事をしながらコテッと微睡みに落ち、スースーと寝息を立て始めたチェギョンを、シンは暫くの間
髪をやさしく撫でながらそのまま眺めていたが、肩に掛かる頭の重みに、そっと身体をずらして後頭部
を支えながら、ゆっくりと起こさないように抱きかかえ、寝室へと運んだ。

大きなキングサイズのベッドへチェギョンをふわりと横たわらせ、右腕からブーケのリボンを外し、
ついでに自分のジャケットの胸ポケットに差されたブートニアも一緒にサイドテーブルに形を崩さない
ようにそっと置き、ブランケットを首元まで掛けてやると、その感触にビクッと反応したチェギョンが
トロンとした目を薄らと開いた。

「あ、起こしてしまったか?」

申し訳無さげに囁くように問いかけるシンに、枕上でフルフルと頭を左右に振るチェギョンは、鼻に
かかるような甘えた声で話しかけた。

「ねぇ〜、シンくん…」

「ん?…疲れてるんだろ。いいから、もう眠れよ。」

ジャケットを脱ぎながらベッドサイドに腰掛けて、乱れた髪を耳に掛けてやりながらシンは微笑んだ。
そんなシンにブランケットの中からニョキッと華奢な細い腕が伸びて来て、シャツの裾をクイクイッ
と引っ張った。

「あの…、あのね…あのね…」

「"あのね"はもういいから。なんだよ?」

「うんとね…あのね。眠るまで傍に居て、手を握っててくれない…カナ?」

ブランケットからちょこんと覗かせる、淋しそうな捨てられた子猫のような大きな瞳に捕われて…
シンの胸は、堪らなく愛しさが込み上げる。


──ヤバいな…。そんな眼で見ないでくれ。可愛い過ぎるだろ?!
  おまえのその視線に敵う奴が居るなら教えて欲しいよ。


不安に満ちた瞳のチェギョンに、フッと笑ってシンは、ブランケットを持ち上げて、妻の横に身体を
滑り込ませた。

「はいはい。お姫様の仰せのままに…」

ブランケットに二人一緒に包まって、ニッと口角を上げると、チェギョンの右手を取り大きな掌で
包み込むように手を繋ぐ。チェギョンは照れながらも、嬉しそうに笑ってシンの方へ身体を傾けた。

「ありがと…シンくん。こうしてると、ポカポカして、すごく落ちつくんだぁ〜‥」

「ハハッ、俺は湯たんぽか?」

「あははっそうかもー。人間湯たんぽ!なんちゃって〜。でも高級すぎるねぇ〜‥」

「そうさ、世界で唯1つの最高級品だな。だから、おまえ専用だぞ?」

「エヘヘッやったー☆ …じゃあ、私の湯たんぽさん、抱っこ〜・・」

「ああ、喜んで…」

眠いからか、何時になくやけに甘えただな…。と思いつつも、シンはリクエストに応えて、
やわらかで小さなチェギョンの躰をふわりと抱き寄せた。

「ふふっ、あったかーい…シン‥く……。
      あの‥ね…… ムニャムニャ…スゥースースーー」

チェギョンは嬉しそうに微笑みながら、安心しきった顔で本格的な眠りに落ちて行った。

「"あのね"…なんだよ?」

シンは、クスクス笑って、腕の中で眠る妻の長い睫毛や薄く開いた艶めく唇をじっと見つめ、
額にKissを1つ贈った。


「やっと一緒に眠れるな…。おやすみ、チェギョン。」


まだ陽が沈んだばかりの宵の口。午後7時を過ぎたばかり。
愛する女性が腕の中で眠るシチュエーションは、若く正常な十代のシンには堪らないものがあり、
なかなか眠りにつくこと等できないのは当然で。
しかし飽きもせず、疲れた羽根を休める、その可愛らしいこの世で一番手に入れたかった愛しいヒト
の寝顔を見ているだけで、幸福を噛み締めるのに充分だった。


いつしか彼女のやわらかな甘い香りに誘われて、ぽかぽかと伝わるぬくもりが心地よくなって来た。
流石にここ連日の疲労や、この半年間蓄積され、張り詰めていた緊張の糸が一気に緩み、ウトウトと
久方ぶりの心地よい眠りが彼の元にも訪れた。




≪≪ next

Blue Star,Blue Moon -4-

〈4〉


「ん……喉乾いた…」


チェギョンは、喉の渇きをおぼえ、ぼんやりと目を覚ました。
やわらかな間接照明が灯る見慣れない風景に?マークを浮かべながら、背中から躰を覆うような
重みに違和感を感じてノソッと背後を振り返ると、そこには穏やかな寝息を立てて眠るシンの顔が
ドアップで目に飛び込んで来た。


「!?」


眠気眼の大きな瞳をパチパチと見開いて、瞬時に正気に戻る。

──うはぁっ☆ビッ、ビックリしたー!
  そうだ。私、シン君と今日結婚式を挙げて倒れて、病院で点滴して今夜はシン君の滞在してる
  ホテルに泊ってるんだったよね。それで傍に居てって言って…ハァ〜マジビックリしたぁ〜!

ゆっくりそーっとシンを起こさないように腰に回った手を持ち上げ、躰を徐々にずらしてベッドの中
からなんとか抜け出して、ベッドサイドに腰掛け恐る恐るシンの様子を窺った。

「ふぅ〜」

シンは珍しく深く寝入っているのか、その体勢のままスヤスヤと眠っている。
鼻筋の通った端正な横顔。半年前より幾分頬の肉が落ち、更にシャープになったようだ。
これまでの苦労を想い胸が疼いたが、思わず、その鋭角な顎のラインや閉じた瞼の美しさに
ウットリしてしまう。


──どうしよう…益々好きになりそうなんだけど…。


トクトク脈打つ鼓動の早さに改めて夫に『恋』する自分を自覚する。


──ハッ!そういや今、何時なの??

レースのカーテンの向こう側はもう漆黒の闇が広がっている。
サイドテーブルに備え付けのデジタル時計を慌てて確かめると、丁度0時を過ぎた頃だった。

──ホッ。まだ、日付が変わったばかりの深夜でよかった…。
  シン君と過ごせるタイムリミットはあと2日になっちゃったね。

再び訪れる別離を思うと、もどかしく息苦しい。すぐに涙腺が緩んでしまいそうになる。
傍に居られるこの幸せな瞬間は、あっという間に過ぎて行くのだと思うと、
手を伸ばせば触れられる…こんなに今傍近くに居るのに、どうしようもなく淋しくなった。


ふと、自分の服を見下ろすと、夕食の際に纏っていたミルク色のパフスリーブの半袖ニットに同色の
シルクシフォンの膝丈のティアードフリルスカートのままだった。

──うぎゃーっ!私ってば、お風呂にも入らないままシン君の隣で寝てたのー?!

両手で頭を抱えて、シンをそろりと振り返ると、彼も同様にタイを外したシャツのまま眠っていた。

──ああもう、きっとシン君、私に添い寝してくれたまま寝ちゃったんだね。
  疲れてたんだ…。
  その上、更に今日は私のせいでいっぱい疲れさせちゃって、ホントにごめんね。


胸がキュッと締め付けられる。
チェギョンは腕を伸ばし、サラサラの黒髪に指を通して、そっと頬に掠る程のKissを贈って、
音を立てず、バスルームへと向かった。



◇◇◇




「ん〜・・・」


シンは何気無しに寝返りを打ち、そこにあるはずのぬくもりに腕を伸ばした。

「?」

先程まで腕の中にあった柔らかなぬくもり、長い髪の感触を求めて片腕を弄る(まさぐる)ように
シーツの上で動かしてみる。
寝相の悪い妻がベッドの端の方へ行ったのかと遠くまで長い腕を伸ばした。

「!?」

何度動かしてみても、そこにはあるはずのぬくもりは無く、慌てて飛び起きた。
チェギョンの姿が忽然と消え、広いベッドの上には自分1人だけがポツンと取り残された状況に、
この半年、何度も何度も繰り返し見た悪夢を思い出し、一瞬でサッと血の気が引いた。


「チェギョン!?」


大声をで呼び掛けても返事はなく、シンはリビングへ飛び出した。


≫≫ バンッ ≪≪

整然としたリビングに人気は無い。しん…とした静寂が耳に広がり、嫌な汗が流れる。

「チェギョン?どこだ?」

反響するのは自分の声だけで、ここでも返事はない。
焦りを浮かべ顔色を失い、前髪をクシャリと掻き上げて、手当り次第にゲストルームのドアや
バルコニーヘ続く窓等、手当たり次第次々に開け放つシン。


──どこに行った?…出て行ったの、か?


夜風を受けブルッと総毛立ち、頭を振って不確かな感情に揺れ、そんな想像をする自分を即打ち消す。
再びリビングで立ち尽くしていると、そこへ主寝室奥にあるバスルームの方向から、チェギョンの髪
から漂うシャンプーの香りが微かに流れて来ることに気が付き、急いでそちらへと向かった。
近付く度、香りは強くなり『なぜ先程、気が付かなかったのだ…』と己の動揺にギュッと唇を噛み、
苛立たし気にシンは歩幅を早めた。
辿り着いたバスルームのドアの隙間から明りが漏れていて僅かにホッとする。

「チェギョン、いるのか?」

コンコンッとバスルームのドアをノックして声を掛ける。しかし、ここでも返事はない。
シャワーしていて聴こえないのか?と暫くそのまま耳を澄ましていたが、水音の気配も感じられない。


──まさか、入浴中に貧血で倒れたのか?


「チェギョン?!入るぞ!」

今朝の出来事がフラッシュバックして、焦り気味に慌ててドアを勢い良く開けた。
しかし、そこは湯煙に包まれているだけで、チェギョンの姿は見当たらなかった。
ぐるりと見渡すと、バスタブは湯を抜いた空っぽの状態で、シャワーブースのガラス面には水滴が滴り、
タオルとバスローブが1セット無いことで、先程まで確かに誰かが入浴していたことを知らせていた。
ここで今日入浴できるのは、シンの他には共に宿泊する妻であるチェギョンだけだ。
チェギョンが入浴していたことが解ると、どこかへ消えたわけではないと…漸くシンは平常心を
取り戻しつつあった。


──此処でないとすると最後は…


シンは深呼吸して、主寝室とバスルーム両側から繋がっている、ドレッシングルームの扉をそっと
開いた。
開かれたクローゼットの奥にちょこんとしゃがみ込む、ようやく探し求めた小さな人影を視界に
捉えて、深い安堵の溜息をついた。一歩ずつ近付きながら、シンはゆっくりと口を開く。


「…探したぞ。返事くらいしろ!」

「あ、ごめん!着替えてて聴こえなかった。
 あの、さっき目が覚めてお風呂入ってたから…パジャマに着替えてたの。」


何やらバッグの中を漁っていたチェギョンは、慌てて立ち上がり、シンにペロッと舌を出して微笑む。
チェギョンの目の前に立つシンは、深く息を吐き出した。

「ハァ…勝手に何処かに行かないでくれ…心臓に悪い…」

シンは湯上がりで上気立つチェギョンの柔らかな躰をギュッと抱きしめた。
埋めた首元から立ち上る甘い肌の匂いや、ふわりと濡れた髪から漂うシャンプーの良い香りがシンの
鼻腔をくすぐる。

「シン君、ぐっすり寝てたから、起こしちゃマズイと思って…心配掛けてゴメンね?」

チェギョンは、おずおずと申し訳無さそうにシンの腰に両腕を回し、シンの胸に顔を埋めた。
腕の中でいつも以上に柔らかく感じるその肢体の感触に、安堵よりも男の本能が呼び覚まされて、
シンの心拍数はドクンと上昇し、病み上がりの妻に拙いと思いつつ、妙な気分になってしまう。
ゴクリと息を呑み込んで平常心を保とうとそっと躰を離し、まだ濡れている長い髪に指を差し入れた。

「おまえ、バスルームで気分悪くなったりクラクラしなかったか?」

「うん!ダイジョブ!もう全然平気だから安心して!黙ってお風呂先に頂いちゃってごめんね。
 あっ。ねぇ、シン君もお風呂入って来なよ!今日は疲れたでしょ?サッパリするよ?」

「そうだな。じゃあ、俺もシャワーして来るか…」

「うん。ごゆっくりどうぞ〜!冷たいもの用意しておくね?」

ニッコリ微笑んだもぎたての林檎のようなツヤツヤした頬が愛らしく、思わずシンはChuとほっぺに
音を立てKissを落とした。益々真っ赤になったチェギョンにフッと微笑んで、そのままバスルームの
扉の向こうへ消えて行った。


──ヒャー!///// やっぱり今日のシン君っていつもと違うよねー?


シンの唇の感触が残る火照る頬を両手で押さえて、チェギョンはこんなにドキドキさせる張本人が
中に居るバスルームの扉を見つめた。


──でも、そんなシン君も嬉しかったりして♪ エヘヘッ♪


ニヘッと嬉し気に破顔しながら、チェギョンは再びクローゼットの中を覗く。
先程自分のバッグの中から取り出した銀色のリボンをかけた光沢のある白い紙パッケージを手に取り、
ギュッと胸の中に抱きかかえると、リボンの形を手直しして、再び、シャワーの音が響来出した扉を
見つめ、ニッコリと微笑んだ。




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