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何事もバランス!

体守る菌まで除去
汚れ許さぬ 内向き思考

「人間の肌には様々な皮膚常在菌がいます」と話す福林智子さん
 神奈川県小田原市にあるカネボウ製品保証研究所では、化粧品の安全性や効果を研究している。微生物を専門とする主任研究員の福林智子さんが、シャーレの上で怪しく輝く黄白色の物体を見せてくれた。皮膚常在菌の一種「表皮ブドウ球菌」を培養したもの。「皆さんのお肌にも、これと同じものがあります」と、福林さんは落ち着き払って言う。

 次に顕微鏡写真を見せてもらうと、プチプチとした形状はさらに不気味。だがこれは、病原菌などが肌に付着した際に、急激に増殖するのを防ぐバリア機能を持ち、また皮脂や汗を分解する人間にとって大事な菌だ。1日2、3回の洗顔ならなくなることはない。ただ、増え過ぎるとにおいやニキビ悪化の一因になる。

 これら皮膚常在菌は10種ほどあり、未知の部分も多いが、それぞれ役割や働きがあることが分かっている。「菌だからといって毛嫌いせず、バランス良く付き合って下さい」と福林さん。

 私たちの身の回りには、様々な菌が住んでいる。外部からの菌が付着したからといって、すぐに病気になったり肌が荒れたりする訳ではない。それなのに、なぜ「汚れ」を過剰に気にし、「清潔」にこだわるのだろうか。

 東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎さん(感染免疫学)は長年、インドネシアを定期的に訪ね、現地の状況と住民の健康を調べてきた。衛生環境は日本とは比べものにならないが、住民たちは決して不健康ではない。

 「アレルギーは無く、肌はきれいで、日本人よりも健康でした。身の回りをきれいにするのは悪くありませんが、行き過ぎた清潔は体に必要な菌まで追い出し、体を守ることができなくなります」と話す。そして現代は「汚いものの存在を許さない社会」になってきたと心配する。

 最近の清潔志向を「内向きで小さな人間関係の表れ」と分析するのは、日大教授の佐藤綾子さん(行動心理学)。少子化などにより家族の人数が減り、地域のつながりも弱くなった。私たちは初めての環境や慣れない人、モノを恐れ、不確実で不安なものに接しようとしなくなった。雑多な環境で、複雑な人間関係にもまれて暮らしてみれば、価値観も変わるのでは、と佐藤さんは話す。

 「近ごろの日本は、国家に対する関心が高まり、『内と外』を区別する意識が強い。ウチのものは安全でソトのものは怖いという考えは、家庭・個人レベルにも広がっている。そんな内向的な考え方も、清潔志向に通じているのでしょう」

 ほどほどの汚れと付き合うバランス感覚は、豊かな人間関係を築き快適な暮らしを営む上でも大切なものだろう。(月野美帆子)(おわり)

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