美男ですね その後の話☆

韓国ドラマ 美男ですね のその後など書いてみました

story of EDEN

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ドラマ「美男ですね」の後、弟分高校生バンドが誕生し、ヴォーカルのジョンフンがミニョに恋をすることからA.N.JELLLに変化が…。
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「ジェルミ、それが終わったらすぐ戻ってこい」
階下から届いたテギョンの声にジョンフンが「もう僕だけで大丈夫ですから、どうぞ行ってください」と告げた。
「そうか、じゃ、悪いけど後は頼むぞ」ジェルミはミニョをしっかりジョンフンに託して静かに階段を下りて行った。

ジョンフンはうつろな表情で立ち尽くすミニョの背中に手を回し、そっと押すように少しずつ部屋に向かっていた。
背中に添えた手はそのままで、もう片方の手をつなぐと、一歩ずつゆっくりと歩かせてミニョの部屋までたどり着いた。
こんな調子で大丈夫だろうか。ジョンフンは反応の薄いミニョを見て、いたたまれなかった。
早くいい報告が届くといいのに…。でも当分それは期待できなさそうだ。

「とりあえずここにいてください」とジョンフンはミニョをベッドに座らせた。
何をしたらいいか、ジョンフンもまだ焦って混乱しているせいで思いつかなかった。
とりあえず一度下に降りて、何をすべきか確認してこよう。
そう考えて、ドアに向かったとき、ふと目に入ったものがあった。
それを手にすると、一度ミニョの元へ戻った。
ジョンフンは「これを」と手渡してミニョに「ちょっと下に行ってきます。すぐ戻りますから」と声をかけ、部屋を出て行った。

無言のまま、ミニョは渡された豚ウサギを抱き締めていた。
リビングへ降りたジョンフンはテレビの前で話し合うメンバーたちの会話をしばらく聞いていた。
「ジョンフン、ミニョはどうした」ジェルミが顔を上げて聞いてきた。
「とりあえずベッドに座らせてきましたけど…何か今するべきことってありますか」
立ち上がったシヌが「ミニョに温かいミルクを持って行ってやってくれ」と用意を始めた。
テレビの前でテギョンは繰り返されているテロップと航空機の参考映像を見ていた。

「少しは何かわかりましたか」
「まだハイジャックされた奴らがどこかへ行くために乗っ取ったらしいとしかわからない。基本的には乗客に危害を加える気はなさそうだという話にはなっているが…」
「まだその程度なんですね」
「テレビで報道されてる範囲ではな」
シヌが温めたミルクをトレイにのせて持ってきた。
「たぶん犯人たちが交渉を持ちかけてくるだろう。となれば、あまり詳細な情報は今しばらく出てこないな。乗客の安全な救出がなにより優先だからな」
とシヌはジョンフンにトレイを差出し、飲めそうなら少しでも飲ませて暖かくしてやってくれ、と頼んだ。
「そうですか。わかりました。ミニョさんにはまだ何も言えませんね…」

「そこらへんはお前に任せる。なんなら歌でも歌ってやれ」
テギョンは社長や室長と連絡を取ろうと、携帯を手にしていた。
「お、それいいかもな。俺も参加しようかな」とジェルミが乗り出すと、お前はいい、とテギョンが止めた。
「今は、ミナムにつながるA.N.JELLメンバーは出番じゃない。残念だけど任せよう」
とシヌがジェルミの肩をたたいた。
「シヌヒョン…。肝心な時に何もしてやれないんだな、俺たち」
「まぁ、今後活躍するときもくるさ。今はミニョの心を落ち着かせるのが先だろ」
「…そうだな。ジョンフン、悪いけど頼んだぞ」
「はい。じゃあ、行きます」
ジョンフンが階段から消えるとシヌがぽつりとつぶやいた。「またジョンフンに一歩後れを取ったな」


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これだけ読んで下さる方がいるのかと うれしいです^^ そして参考にさせていただきますのでよろしくお願いします
ジョンフンは、皆が緊迫した様子でいる理由を知り、その中でまたミニョが神経をすり減らさなければいいけれど、と心配になった。自分が大変な時でも周りのことに気を使う人だから…。
「ジョンフン、着いたぞ」

合宿所は暗かった。いつもなら誰かがいるか、灯りがどこかしらつけてあるのに、今日はそれどころではなかった。
「まだ帰ってないんだな、あいつも」
テギョンは外灯以外には灯りがついていないのを確かめて言った。
エストレージャを迎えに行った事務所の車は確かにどこにも見えなかった。
遅れて到着したA.N.JELL車からシヌとジェルミが降りてきた。
「もうミニョも帰ってくるよね?なんて言って迎えたらいいんだろう」ジェルミがためいきをついた。

明日は幸い土曜日で学校はない。ジョンフンはホッとした。こんな時こそミニョの力になりたかった。
今晩ミニョの顔を見たら、たぶん一度家に帰って、明日の朝にでもまた出直すことになりそうだ。
まさか今晩泊まって行けという話にはならないだろう。
ジョンフンはミニョのために何ができて、どう慰めればいいのかと考えていた。

「あ、やっと来たか」シヌが遠くから近づいてきた光に気づいた。
「ジェルミ」
「うん、何?シヌヒョン」
「ミニョとは、仕事の話だけにしろ。そのほかは言わない方がいい」
「…そうだね。他に何言っていいかなんてわからないし」
ミニョの乗った車を目で追っていたシヌがジョンフンを振り返った。
「ジョンフン、明日俺たちは早速ラジオ収録なんだ。ミニョのことを…頼めるか?」
「はい。大丈夫です。明日は学校もないし」
「それなら、とりあえず安心だ。頼むぞ」
「わかりました」

小さな足音が聞こえてきて事務所スタッフに抱えられるようにミニョが顔を伏せたまま現れた。車が止まったままなのは先にエストレージャのメンバーたちを帰したってことかとジョンフンは気が付いた。
「ミニョ…大丈夫か。疲れたろ。早く中へ入ろう」とジェルミが優しく声をかけ、スタッフ二人に代わってミニョを支えながら、宿舎の中へと連れて行った。
それを見たジョンフンはすぐに追いつき、「ジェルミさん手伝います…ミニョさん、大丈夫ですか?」と肩を貸した。

「大丈夫なのか…あれで」テギョンがぼそりとつぶやいた。
「仕事がか?それともミニョ自身か」
シヌがテギョンに目をやって聞くと「どっちもだ」と忌々しげな答えが返ってきた。
「…だからこそ、ジョンフンに頼んだ」

テギョンの表情が変化した。だからこそジョンフン、なのか?俺ではなく?
…そう言いたいんだろう?とシヌは内心思っていた。
でも残念ながらそうだ…俺よりお前より、奴が今は一番いい。
ミナムが原因でなかったら、ジェルミだって癒せたかもしれない。
だが、今はA.N.JELLにつながる俺たちはむしろ逆効果だし、ミニョとの距離が近すぎて、何か質問されたらすぐボロが出そうだ。隠しておかなければいけない事実があってもきっと隠し通せない。

ミニョの状況を理解しつつも彼女に余計な気を使わせず、何か全く違うことで気を紛らわすことのできる誰かが必要なんだ。別のグループだし、後輩でもあるジョンフンの方が、ミニョは多少気が楽だろう。
「俺たちは両方のミナムがいない間、A.N.JELLをしっかり守ることと、ミナムの事件が早く解決するように祈ることくらいしか、今はできないんだ」
テギョンがじっとシヌを睨み返した後、背を向けた。
「あとはせいぜい室長や社長と連絡を取りながら、あいつに余計な心配をさせないよう、情報の管理を徹底するくらいか」
「そうだな。ミニョにもマスコミにも下手な情報は流せないから、ジェルミにも言って、事務所でも二人くらいに制限して今後の対策を話し合うことにしよう」


その頃ミナムの乗った航空機ではハイジャック犯が最初の宣言をしていた。
「俺たちは乗客に危害を加えるつもりはない。行きたい場所に行けたらいい。
だがその計画を邪魔する奴がいたらどうなるかわからない…無事に帰りたければ言うとおりにしろ」

機内は遠くで泣く赤ん坊の声やぐずる子供の声以外は静まり返っていて、たまにささやき声が聞こえる位だった。
「言うことはわかったし、安全を保障してくれるなら、俺たちは騒ぐ気はない。
だからとりあえず、その物騒なものはしまってくれないか?
子供たちがおびえて騒いだら、お互いにいいことはないだろう」
不意にどこかから聞こえてきた声に、犯人グループの一人が銃を手にしたまま周りを見回した。

「誰だ?動くな。顔を見せろ」
「…ここだ」とミナムは両手をあげて立ち上がった。「俺は武器を何も持っていない。抵抗する気もない」
犯人たちの向ける大きな銃を視野にいれながら「ただ話し合いがしたいだけだ」とミナムはまっすぐ見返した。
その隣でユヘイは眠ったふりのまま、心臓の鼓動が早まって行くのを感じていた。
そして誰からも見えないようにミナムのジャケットの裾を握りしめた。
ミナムは視線を動かさずに犯人たちを見据えたまま、ユヘイの手に手を重ねた。
…心配するな。俺が守ってみせる。お前も、俺自身も。

家に帰り着いたイナは「今頃ジョンフンは何してるんだろう」と何も知らずにシャワーを浴びようとしていた。
これからのエストレージャはどうなるのかと考えると少し不安だったが、先輩や社長の判断と指示を信じてしばらく待とう、と決めた。

誰にとっても、この夜はいったいいつ空けるのか、と思わせるような長い夜だった。



ジョンフンは、皆が緊迫した様子でいる理由を知り、その中でまたミニョが神経をすり減らさなければいいけれど、と心配になった。自分が大変な時でも周りのことに気を使う人だから…。
「ジョンフン、着いたぞ」

合宿所は暗かった。いつもなら誰かがいるか、灯りがどこかしらつけてあるのに、今日はそれどころではなかった。
「まだ帰ってないんだな、あいつも」
テギョンは外灯以外には灯りがついていないのを確かめて言った。
エストレージャを迎えに行った事務所の車は確かにどこにも見えなかった。
遅れて到着したA.N.JELL車からシヌとジェルミが降りてきた。
「もうミニョも帰ってくるよね?なんて言って迎えたらいいんだろう」ジェルミがためいきをついた。

明日は幸い土曜日で学校はない。ジョンフンはホッとした。こんな時こそミニョの力になりたかった。
今晩ミニョの顔を見たら、たぶん一度家に帰って、明日の朝にでもまた出直すことになりそうだ。
まさか今晩泊まって行けという話にはならないだろう。
ジョンフンはミニョのために何ができて、どう慰めればいいのかと考えていた。

「あ、やっと来たか」シヌが遠くから近づいてきた光に気づいた。
「ジェルミ」
「うん、何?シヌヒョン」
「ミニョとは、仕事の話だけにしろ。そのほかは言わない方がいい」
「…そうだね。他に何言っていいかなんてわからないし」
ミニョの乗った車を目で追っていたシヌがジョンフンを振り返った。
「ジョンフン、明日俺たちは早速ラジオ収録なんだ。ミニョのことを…頼めるか?」
「はい。大丈夫です。明日は学校もないし」
「それなら、とりあえず安心だ。頼むぞ」
「わかりました」

小さな足音が聞こえてきて事務所スタッフに抱えられるようにミニョが顔を伏せたまま現れた。車が止まったままなのは先にエストレージャのメンバーたちを帰したってことかとジョンフンは気が付いた。
「ミニョ…大丈夫か。疲れたろ。早く中へ入ろう」とジェルミが優しく声をかけ、スタッフ二人に代わってミニョを支えながら、宿舎の中へと連れて行った。
それを見たジョンフンはすぐに追いつき、「ジェルミさん手伝います…ミニョさん、大丈夫ですか?」と肩を貸した。

「大丈夫なのか…あれで」テギョンがぼそりとつぶやいた。
「仕事がか?それともミニョ自身か」
シヌがテギョンに目をやって聞くと「どっちもだ」と忌々しげな答えが返ってきた。
「…だからこそ、ジョンフンに頼んだ」

テギョンの表情が変化した。だからこそジョンフン、なのか?俺ではなく?
…そう言いたいんだろう?とシヌは内心思っていた。
でも残念ながらそうだ…俺よりお前より、奴が今は一番いい。
ミナムが原因でなかったら、ジェルミだって癒せたかもしれない。
だが、今はA.N.JELLにつながる俺たちはむしろ逆効果だし、ミニョとの距離が近すぎて、何か質問されたらすぐボロが出そうだ。隠しておかなければいけない事実があってもきっと隠し通せない。

ミニョの状況を理解しつつも彼女に余計な気を使わせず、何か全く違うことで気を紛らわすことのできる誰かが必要なんだ。別のグループだし、後輩でもあるジョンフンの方が、ミニョは多少気が楽だろう。
「俺たちは両方のミナムがいない間、A.N.JELLをしっかり守ることと、ミナムの事件が早く解決するように祈ることくらいしか、今はできないんだ」
テギョンがじっとシヌを睨み返した後、背を向けた。
「あとはせいぜい室長や社長と連絡を取りながら、あいつに余計な心配をさせないよう、情報の管理を徹底するくらいか」
「そうだな。ミニョにもマスコミにも下手な情報は流せないから、ジェルミにも言って、事務所でも二人くらいに制限して今後の対策を話し合うことにしよう」


その頃ミナムの乗った航空機ではハイジャック犯が最初の宣言をしていた。
「俺たちは乗客に危害を加えるつもりはない。行きたい場所に行けたらいい。
だがその計画を邪魔する奴がいたらどうなるかわからない…無事に帰りたければ言うとおりにしろ」

機内は遠くで泣く赤ん坊の声やぐずる子供の声以外は静まり返っていて、たまにささやき声が聞こえる位だった。
「言うことはわかったし、安全を保障してくれるなら、俺たちは騒ぐ気はない。
だからとりあえず、その物騒なものはしまってくれないか?
子供たちがおびえて騒いだら、お互いにいいことはないだろう」
不意にどこかから聞こえてきた声に、犯人グループの一人が銃を手にしたまま周りを見回した。

「誰だ?動くな。顔を見せろ」
「…ここだ」とミナムは両手をあげて立ち上がった。「俺は武器を何も持っていない。抵抗する気もない」
犯人たちの向ける大きな銃を視野にいれながら「ただ話し合いがしたいだけだ」とミナムはまっすぐ見返した。
その隣でユヘイは眠ったふりのまま、心臓の鼓動が早まって行くのを感じていた。
そして誰からも見えないようにミナムのジャケットの裾を握りしめた。
ミナムは視線を動かさずに犯人たちを見据えたまま、ユヘイの手に手を重ねた。
…心配するな。俺が守ってみせる。お前も、俺自身も。

家に帰り着いたイナは「今頃ジョンフンは何してるんだろう」と何も知らずにシャワーを浴びようとしていた。
これからのエストレージャはどうなるのかと考えると少し不安だったが、先輩や社長の判断と指示を信じてしばらく待とう、と決めた。

誰にとっても、この夜はいったいいつ空けるのか、と思わせるような長い夜だった。


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ミナムが犯人たちを前に交渉を始める前から、すべては始まっていた。

ミナムは事前にメモを回して、協力者を募っていた。
自分一人で乗客全員の代わりに人質になるつもりでいたが、相手はきっと納得しないだろう。
人質は多いほど自分たちにとっては有利だとわかっているからだ。
だとしたらできる限り少ない人数だけ残して、あとの乗客を降ろすことを考えるしかない。
そう思ったミナムは、自分の考えに賛同して協力してくれる仲間を探したのだった。
なんとかハイジャック犯たちの目を盗んで、ミナムに力を貸すと言ってきたのは10人ほどいた。
家族や恋人など連れがいたら別行動をするのは難しいだろうと、一人で搭乗している男たちに協力を頼むことにした。
ユ・ヘイには何も言わずにミナムは話を進めていたが、不意に腕をつかまれた。

「私だけ放り出す気じゃないでしょうね?そんな無責任なことしないわよね」
「放り出すわけじゃないけどね。無事に地上へ帰すだけで」
「ただでさえお忍び旅行なんだし、こんな状況でマスコミに嗅ぎ付けられたら大変なんだから、ちゃんと責任もってエスコートしなさいよ」
黙ったまま考え込んで救出策を進めているミナムを見ながら、ヘイも無言で推測していた。
多分ミナムの性格上、もし一部の乗客が解放されることになっても、それにまぎれてこの場から逃げたりはしないだろう。
一般人のふりをしてさっさと降りるわけがない。
自分の身分を明かすことになってでも乗客を救うために一肌脱ごうとするだろう。
私を一人で地上に降ろしてでも…。マネージャーも一緒にいるから余計にその可能性が高い。
私が早く解放されて安全が確保されることを優先して、自分は二の次でこの事態を収めようとするだろう。
ユヘイにはミナムの考え方も行動パターンもすっかり読めていた。
「ばか…」
なんで一般人にまぎれてでも私とさっさと助かろうとしないの?
だいたい、どこかの段階でミナムと私だと気づかれたら、それはそれで大騒ぎなのに…。


ハイジャック犯たちにとうとう交渉をもちかけ、席を立って行ってしまった後姿を見ながら、ヘイはまたつぶやいていた。
「大ばか…。私を放っておいたら、あっという間に言い寄る男たちで人垣ができるわよ。
 変装してたって私のオーラは隠せないんだから。あんたの席を空けてといてあげたりしないからね」

ヘイがきっと怒っているだろうなと思いながらも、ミナムは気持ちを切り替えた。
少しでも早く事態を改善しよう…いますぐ解決が無理なら、せめて早く乗客たちを降ろさなければ。
コクピットの手前、座席の最前列のあたりまで来た。
そこに犯人グループの幹部らしい男と仲間が数人いた。
「…話を聞かせてもらおうか?勇気ある兄さんよ」
「手間を取らせたくないから、簡単に説明する…とりあえず話を最後まで聞いてくれ」
「いいだろう」
その男は品定めをするようにミナムを上から下まで見た。「変な考えは起こすなよ。無事に帰宅できなくなるぞ」
「そんなバカなことをするために来たわけじゃないから、余計な心配はしないでくれ」
「…話を続けろ」


地上ではヘイの事務所社長とアン社長が渋い顔で空港に詰めていた。
「まだ何の進展もないんですか」
「とりあえず今のところ、危険な状況ではないようだ。そう思いたい」
「いや、そうでなきゃ困る」アン社長はイライラして、立ち上がると右に左に歩いてはアンビリーバブル!としかめっ面でつぶやいていた。


「とりあえず何もこれといった情報がないってことは、今のところ特には問題がないってことかな」
ジェルミが社長からの電話を切った後、不安げにシヌに語りかけた。
「だろうな。ミナムがいるからなんとかしてくれそうな気はするけど…お忍びだから動きにくいだろう」
ジェルミがため息をついた。どうなっちゃうんだろう、とつぶやいた後にはっとして口を押えた。
「ミニョならまだ部屋で寝てる。けど、言葉には気をつけろよ…こういう時だから」
「了解。シヌヒョン」

そこに足音が聞こえて、はっとしたシヌとそれに続いてジェルミが顔を上げた。
階段の上にいたのはジョンフンだった。
「なんだ、お前だったのか〜心臓に悪いよ」
「…すいません。新しい情報はないんですか」
「特にな。情報がないってことはある意味、ハイジャックされた以上に心配な事態は今のところないってことだ。
 とにかく、ミニョを不安にさせないように、あまり考えさせないようにしてくれ」
「はい。そうですね…なんとか考えてみます」
それから、とジョンフンが上着を持ってシヌのところへ来た。
「これ、ありがとうございました。すみませんでした。余計な手間をかけさせてしまって…」
「気にするなよ。ジョンフンも疲れてるだろ。今のうちに寝ておけよ。ミニョは俺が様子を見に行くから」
「はい。わかりました。じゃあ…」
「今度こそベッドで寝ろよ」シヌが笑って言うと「はい、今度こそは」とジョンフンが返した。

ミニョの気を紛らわすために、何ができるだろうな。ジョンフンには歌という武器があって羨ましい限りだ。
俺は…とシヌが考えている間に、キッチンにいたジェルミが階段を上っていくのが見えた。
「ジェルミ?」
「ミニョに新作のアイスを持ってくんだ。昨日出たばかりのフレーバーだからさ、感動してくれるかな」
「…さあ、どうだろ。でも寝起きにいきなりアイスって…」
と目を上げたときにはもうジェルミの姿は消えていた。
まったく、とシヌは笑った。俺があれこれ考えて動くより、ジェルミの本能に任せるか。
ああいうジェルミの行動力には勝てないな、とシヌは自分のためにお茶を入れて一休みすることにした。

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航空機の中では自然発生的に、数人の男がそれぞれにハイジャックをどうにかして阻止しようとタイミングを狙っていた。そして、犯人グループのうちの一人が見回りに来たとき、すきを見て、ある男が立ち上がった。
それに気づいた数人が動き出そうとした。
その時、あるメロディーが響いた。

動き出していた人々やそれを見守っていた周囲の乗客がはっとした。
<言葉もなく>だった。静かに立ち上がって、唇に人差し指を当てる男がいた。
大きなサングラスと斜めにかぶった帽子で顔はよく見えなかったが、皆、もしや…と思った。

不意にサングラスの下の唇から聞き覚えのある声が流れた。
<知らないふりをすればよかった 会わなかったことにすればよかった…>
「なんだ、お前は。これが目に入らないのか?」
振り返った男が銃をかざした。
「残念ながら、俺には気づかなかったふりはできなくてね」
そういって両手を上げた。
「逆らう気はない。が、従う気もない。そんな義理はないから」

人々が固唾をのんで様子を見守っていた。
「…なんのつもりだ」
「この状況をより良いものにするために、話し合いたい。そっちにとっても悪い話ではないはずだ」
「自分の置かれた立場がわかっているのか?いますぐこいつを使ってもいいんだぞ?」
拳銃を男が誇示すると、乗客から悲鳴や押し殺したため息が聞こえた。
「そうすれば、お前たちのやろうとしていることの成功率も下がるぞ」
サングラスの男は両手を下ろした。「せっかく話し合いでいいヒントをやろうと言うのに」

拳銃を手にした男が戸惑っていると、仲間が二人ほどやってきた。
「何をしてる」
「こいつが妙なことを言いだして…」
二丁めの銃口もサングラスの方へ向けられた。
もう一度両手が上がる。
「逆らう気はない。ここでそんな物騒なものを使えば乗客に被害が出るし、場合によってはこの航空機自体に支障が出る」
男は落ち着いて犯人グループを見つめながら、言葉をつづけた。
「お互いに得るところはないから、そいつは下ろしてくれ。俺はまだ命が惜しい。むろんこの周りの乗客も全員だ」
拳銃はまだ男に向けられたままだった。それに構わず男は続けた。
「お前たちも命が惜しいだろう?そのやり方で行けば、今お前たちがやろうとしていることを果たせずに重い裁きを受けることになると思うが」
後からやってきた犯人の一人が男をにらみつけた。
「何が言いたいんだ?」
「お互いに損をしないような交渉をしようと言ってるんだ。できるだけ早い方がいい。遅くなればお前たちが不利になる」
どういう意味だ?と犯人グル―プは怪しげな男について話し合っている様子だった。
中の一人が先ほどの見張りより地位が上なのか、口を開いた。
「自分の立場を考えて物を言えよ。それからお前が変なことをすれば、ここにいる乗客の誰が、どれだけの人間が血を流すかわからないんだからな。言葉には気をつけろ」
「…わかった。信じるかどうかはそっちの勝手だが、おれはすきを見て暴れたり銃を奪い取る気はない。
 だからとりあえずそれはしまってくれ。幼い子供も乗ってるんだ」
どこかで子供の鳴き声とすすり泣くような人の声が聞こえた。

「行ってくる」
その言葉だけを残して、ミナムは犯人たちと航空機の前方へ向かった。
寝ているふりで顔に帽子を載せたユヘイはかすかな隙間から、遠ざかっていく背中を見送っていた。
…ばか。どうしてあんたがそんなことするのよ?私を置いていく気なの?
何か決意をしていたことはわかっていたが、それを止められそうにないことも気づいていた。
ミナムから言われた通りに少し眠って体力を取り戻そうとしたが、熟睡はできなかった。
ふと目を覚ますと、真剣な顔であれこれ考えているミナムの横顔が気になった。
一体、ミナムは何をするつもりなのだろう。一緒にこの恐ろしい場所から逃げられるのだろうか。


一方、A.N.JELLの宿舎には関係者のトップが集まって話し合いが始まり、社長は空港に詰めながら、ユヘイの事務所と対策を話し合っていた。

その頃うつらうつらと寝ていたミニョの眠りがやや浅くなってきて、その部屋の扉を出た脇には、やはりうたた寝するジョンフンがいた。
シヌの部屋を使えと言われたものの、夜中にうなされたミニョに寄り添い、落ち着くまでそばにいた。そのあとも気がかりで部屋を離れることができなかったのだった。
話し合いの合間に様子を見に来たシヌがそれを見つけ、ジョンフンに上着をかけた。
「…仕方ないやつだな。お前が倒れたらどうする」

部屋から夜中にジョンフンが運んだらしい水や濡れタオルをお盆ごとシヌが手にして、新しいものと交換しに下へ降りて行った。
ミニョはまだ何も知らずに夢と現実の間をさまよっていた。
そっと包み込んでいたミニョの手を、ジョンフンは布団の中にしまった。
「今はただゆっくり眠ってください。何があっても僕はここにいて、あなたを守りますから」
ミニョはジョンフンの顔を見上げて、偽りのないまなざしに胸打たれた。
「…ありがとう。心配かけてごめんなさい。少し眠ります」
眠れる気はしなかった。
それでもジョンフンのまっすぐな眼差しを前にしたら、少しでも休んで彼を安心させたいと思うのだった。
そうしたら彼もまた少し休めるのだから、そうしよう…。

瞼を閉じたミニョの姿に吸い込まれるように近づいたジョンフンは、ふとミニョの額に手を伸ばしそうになって止めた。
…触れてしまいたくなる。
ジェンマは天使のように無垢で、母親と引き離された幼子のように悲しむ姿は切なく愛おしい。
抱き締めてしまいたくなる。でもそれは…時としてジェンマを苦しめるだけかもしれないし、今はそんなときじゃない。
それでも、見つめていたい。ただそっと見守っていたい。
寝ている間も怖い夢にうなされないように。悲しい思いをしないように。
ずっとここにいて、守ってあげるから、安心して眠ってください。
ジョンフンはそっと胸の中でつぶやいた。

ミニョがあっという間に寝息を立てるのを聞いて、少し様子をうかがった後、ジョンフンはマグカップを片付けに下へ降りて行った。
「ミニョの様子はどうだ?」
気づいたシヌが声をかけた。
「まだ不安な気持ちは変わらないと思いますけど、とりあえず眠ったので…少しは落ち着くかもしれません」
「そうか」
シヌがお盆を受け取ろうとすると、ジョンフンが慌てて、
「いえ、僕がやりますから。シヌさんも一休みしてください。他に何かやることあれば僕がやっておきますし」
とキッチンへ持って行った。
シヌはさっきの光景を思い出しつつも、いい後輩だな、と微笑んだ。

「どうやら効き目があったらしいな」
意味が分からず、カップを洗う手を止めたジョンフンがシヌの次の言葉を待った。
「ミルクの中に少しお酒を混ぜておいたんだ。ほんの少しね。ミニョならちょうどぐっすり眠れるだろう」
「あ、それで…」
確かにふわりと何かの香りがした…。
疲れたとはいえ、ミニョが眠りにつくのがやけに早いと感じていたジョンフンは納得した。
「さすがシヌさんは気遣いが細やかですね。寝ないと体も持たないし、気持ちも悪い方へ行きやすいですからね」
「その通りだ。お前もきちんと休めよ」
「ありがとうございます。でも僕は…」
ちょっとしゃくだけど、と思いながらシヌは言葉をつづけた。
「俺たちはしばらくミナムのことであれこれ動くことになりそうだし、エストレージャも俺たちも音楽に関わる活動はしてかなきゃならない。だから…」

カップを片付け終わったジョンフンはだから?と言葉を待った。
「ジョンフンにはミニョのケアを頼むことになると思う。もちろん学校が第一だし、マネージャーやスタッフだっている。
 無理はしなくていい。ただお前がそばにいるのが、ミニョにとっては一番安心できそうだからな」
え?と驚きつつもジョンフンは胸の中に小さな灯りがともったような気がしていた。
「そんなことはないです。やっぱり同じA.N.JELLメンバーの方が落ち着くんじゃないかと思いますけど…」
「お前の声と、学校や勉強の話で不安を和らげてやってくれよ」
シヌがジョンフンの肩に手を置いた。
「お前といると、ミニョも青春を追体験、いや経験できるみたいだから」
ミニョの人生には思春期の悩みや楽しい思い出やいろんなものが抜け落ちているようだから、
こういう時こそ、お前がそれを埋めてくれたら…それは悪いことじゃないだろう。
「そうですか?でも皆さんやうちのメンバーが忙しいのはわかりますから、できる限り僕がここに来てミニョさんを守るようにします」
守る、と来たか…。年齢やこれまでの経験がどうとか、そんなこと関係なく、手ごわいライバルかもな。
ジョンフンをじっと見たシヌは、ふと笑った。
「頼んだぞ」
「はい」
「ただし、手は出すなよ」
「えっ、な、何ですか。何も、何もしませんよ。当然です。そんな大先輩に…」
ジョンフンの顔が赤くなった。
「赤くなるところがきわめて怪しいけどな。ま、からかうのはそのくらいにして」
改めて向き合ったシヌは、真面目な顔でジョンフンを見下ろした。
「ミニョはお前を信じて任せる。そのかわりミナムのことについては俺たちに任せろ」
「はい。ミニョさんにはそう伝えておけばいいですね」
「…わかってるじゃないか。頼もしい後輩だな。今日は俺のベッドで寝ておけ」
「えっ、でも」
「俺たちはまだリビングで作戦会議だ。気にするな。先は長いから寝られるときに寝ておけよ」
「わかりました」

テギョン、シヌ、ジェルミにホテルで控えていたマ室長も一旦戻り、会議が始まろうとしていた。
社長は相変わらず状況を知るために空港へ詰めていた。

そして、ミナムは犯人グループと最初の交渉を行おうとしていた。


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