|
地図を眺めていると、ふとオステンドという地名が目に入りました。
ブリュッセルから西へ、北海に面した小さな町。ドーバー海峡を挟んでむこうはすぐにイギリス。フランスの国境とも車で半時間ほど。ここへ行きたい、という衝動がありました。
ブリュッセルから列車に乗って終着駅オステンドに着いたのは午後でした。どうも、終着駅というのはなにか特別の駅のようで、人はみな「終着駅」ということばの響きに弱いのじゃないかと思います。
降り立った町は、小さな港町だということがすぐにわかりました。駅を出るとすぐ入り江があって、そこには様々な大きさや型をしているヨットがずらりと係留されていました。
オステン市街地図に載っている聖ピーター&ポール教会とおぼしき尖塔が鉛色の空に突き刺さっていました。めざすドーバーの海まで1Kmほど。ぶらりぶらりと歩き始めました。ここは夏の避暑地のようで、シーズンオフの町はひっそりとしていて、盆踊りが終わったあとの公園のような空虚さが漂っていました。アルベルト一世通りに出て、そこの防潮堤を登ると、ぱぁーっと海が開けていました。北海だ!ドーバーだ。正確には、ドーバーは西南の海の方向。
折しもその方向へ、ロンドン行きのフェリーが出港していくところでした
季節はずれの浜辺には、それでも少しこぼれる太陽を求めてチラホラと散歩をする人たちがいました。子供連れの若い夫婦が乳母車をかつぎ、足下が危うい老人夫婦が腕を取り合いながら、そして水辺を素足で走る若いカップルが二組、ボンジュールと挨拶を交わしました。
もはやわたしにとってセンチメンタルなんて死語となったけれど、その時少女のような感傷が襲って来たことは告白します。
ああ、ひとはなんのために生きているんだろうか、生き甲斐とはなんなのか?
上、オステンド駅舎。下、オステンド海岸ドーバー海峡方面
|