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写真上から
茶下塩湖にのびる線路
狭いトロッコに集まる人夫たち
雪のように塩で真っ白な大地
収容所のような宿舎
西寧からゴルムトへの途中、茶下塩湖という湖に出くわしました。
その日、なんにもない荒涼とした道を一日中車に揺られていました。
外は小雨が降り続き、雲はどんよりとたれ込めて山の稜線を包んでいました。
夕方、茶下村のホテルに着きました。ホテルといっても、元のいわゆる招待所というや
つで、殺風景なつくりで風呂のシャワーからは赤茶化た水がちょろちょろ出る程度のレベ
ルのホテル。
部屋の中は種類のわからない虫が何匹も飛んでいて、ベッドは湿気ています。
中国の奥へはいるとこれでも上出来。ホテルがあるだけ幸運というような村です。
朝、近くに大きな塩湖があると聞いて行きました。
塩の埋蔵量が4億5千万トンときいても見当が付きません。。それが10億の人口の8
0年分に匹敵するというので、すごいなぁと思いましたが、やはりぴんと来ません。
塩湖の向こうに塩採りトロッコの線路が見えなくなるまで続いてました。
赤茶けた線路は塩によってさびた色なのでしょう。
早朝から、二十人くらいの人たちがトロッコに集まってきて賑やかです。
見渡す限り、鉛色の空と鉛色の湖で空と湖の境が判然としません。
トロッコに乗ろうとしていた人夫に聞きました。
「雨だけど、雨でも塩採りにいくの?」
「ああ、わからない、これ以上降ると中止かもわからない」
「いつから塩採りの仕事をしているの?」
「ずっとだよ、生まれてからずっとだよ」
このトロッコに毎日乗りつづけているんだ、と思うと気が遠くなりました。
今、日本で、小林多喜二「蟹工船」という本が爆発的に売れているそうです。
われわれが若い頃にかぶれた左向きの本です。この本のことを思い起こしました。
塩湖のほとりにある粗末な建物に暮らし、一生トロッコに乗り続ける。
蟹工船の苦痛を感じないのだろうか?
続けて質問しました。
「ずっと毎日毎日塩採りの仕事で飽きないの?」
愚問でした。彼は質問の意味が理解できず困ってただ笑うだけでした。
彼らにとっては、何の疑問の余地のない当たり前の毎日なんですから。
最近の非正規雇用という問題も、どこかで搾取されていることが隠蔽されていて、
ただ塩採り人夫のように、食べるだけのために毎日をやり過ごすだけなんでしょうか。
しばらくするとトロッコが戻ってきました。
「今日は雨で中止だ!」
まるで小学校の生徒が、授業から解放されたような喜びようです。
みんな喜色満面の笑みを浮かべながらそれぞれの収容所のような宿舎に帰っていきまし
た。
ここは緑が恋しくなる空間です。
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