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ジクマリンゲンへは、ウルムから、普通の案内書では載っていないような支線に乗り換えます。
ドナウ川の源流に向かって沿うように走ります。
途中、これがあのドナウかと思うほど小川のような可愛いドナウが見え隠れします。
↑ウルム駅8番線、ジクマリンゲン行き sigmaringen
わたしは列車の旅が好きです。列車を降りたら路線バスを乗り継いでまた列車に乗る。
乗っている人がほとんどいなくて貸し切り状態の時があります。そしたら、あたりに
はばかることなく足を投げ出して、車窓を楽しみます。(↓貸し切り状態)
列車は「黒い森」に突っ込んでいきます。
これが永年夢に見続けた「黒い森」なんだ!
という興奮に思わず声を上げそうになりました。
乗り降りする人もまばらな駅々に止まるたびに、その駅名の看板の写真を撮りました。
人は、なぜ旅に出たがるんでしょうか。
それは本能としか言いようがなく、人はなぜか見知らぬ土地に憧れます。しかし、やがて
その土地にも飽きてしまうことも多いのですが。
ジクマリンゲンは、この沿線ではイチバン大きな駅(↑)です。
しかし、駅に人影はまばらでした。この駅からメスキルヒ村まで路線バス。
もうあと二時間足らずでメスキルヒ村に着くはずです。
荷物を担いでバス停を探しました。
胸の鼓動が少し高まっています。メスキルヒ村はどんなところなんだろうか、と。
駅舎の外へ出ると、小さなバスターミナルはすぐに見つかりました。
1番線から12番線までありました。
その一つ一つの行き先標を順番に見ながら、11番目にありました。確かに、メスキルヒ行きが
書いてあります。ただしバスはあと40分後。
バス停の下でぼぉーっと座り込んでいました。
しばらくすると、おじさんが声を掛けてきました。
「どこから来たんだい?」
「にほん、ジャパン」
「おお、そうか日本ね」
わかっているんだろうか。そしておじさんは続けました。
「どこへ行くんだ」
「メスキルヒだよ」
これらのやりとりは英語なのですが、わたしもそうですが相手も片言英語。ときどき
ドイツ語が混じっていてうまく意味が通じません。それがまた楽しいのですが。
そんなやりとりを見かねていたのか、近くでバスを待っていた大学生のような若くて美しい女性
が割り込んできました。
「メスキルヒに行くのならわたしも同じバスよ。ここで待っていればいいわ。わたしは
ずっと手前で降りるけどそのまま30分も乗り続けていればメスキルヒよ」
ちゃんとした英語でした。わたしは礼を言って彼女に話しかけました。
「大学生?」
「そうよ、フライブルグよ」
「ああ、フライブルグね、メスキルヒのあとフライブルグに行く予定なんだ」
「メスキルヒにはなにしに行くの」
「ホーフガルテンの森を歩いてみたいだけさ」
「へえ、じゃあひょっとしてハイデガー博士のこと?」
「そう、そういうこと」
ハイデガ博士と、ハイデガーの名前に「博士」とつけて言ったところがとても気に入りました。
「だったら、フライブルグ大学ね。わたしの行っている大学だわ」
彼女は、ハイデガーなんて、という不思議そうな顔をして、しかし誇らしそうに微笑みました。
そんな話しをしていると、バスがやって来ました。
バスに乗り込んでしばらくしたら彼女は降りていってしまいました。
バイバイの手を振って別れました。バスの後方に彼女が小さくなっていくのを見ながら静かに
なってしまいました。
静寂の合間の小さな会話。それがとぎれたらまた静寂。
バスはまたしても貸し切り状態。
気を取り直して思想に集中します。車窓の田園風景は日本では絶対に見られないものです。
さあ、もうすぐあこがれのメスキルヒに着くぞ!
↓貸し切り状態の路線バス
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ドイツ
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ウルムと言えば世界一高い大聖堂の塔。 |
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シュバルトバルトの奥深く、二両連結の列車がガタゴトと各駅に停まりながら進みます。 |
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写真 マルティン教会 |
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写真上 メスキルヒ郊外 |



