ドイツ

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全6ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6]

[ 前のページ | 次のページ ]

ジクマリンゲンへは、ウルムから、普通の案内書では載っていないような支線に乗り換えます。
 
ドナウ川の源流に向かって沿うように走ります。
 
途中、これがあのドナウかと思うほど小川のような可愛いドナウが見え隠れします。
イメージ 1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
↑ウルム駅8番線、ジクマリンゲン行き  sigmaringen
 
わたしは列車の旅が好きです。列車を降りたら路線バスを乗り継いでまた列車に乗る。
 
乗っている人がほとんどいなくて貸し切り状態の時があります。そしたら、あたりに
 
はばかることなく足を投げ出して、車窓を楽しみます。(↓貸し切り状態)
 
イメージ 2
 
 列車は「黒い森」に突っ込んでいきます。
 
これが永年夢に見続けた「黒い森」なんだ!
 
という興奮に思わず声を上げそうになりました。
 
乗り降りする人もまばらな駅々に止まるたびに、その駅名の看板の写真を撮りました。
 
人は、なぜ旅に出たがるんでしょうか。
 
それは本能としか言いようがなく、人はなぜか見知らぬ土地に憧れます。しかし、やがて
 
その土地にも飽きてしまうことも多いのですが。イメージ 3
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジクマリンゲンは、この沿線ではイチバン大きな駅(↑)です。
 
しかし、駅に人影はまばらでした。この駅からメスキルヒ村まで路線バス。
 
もうあと二時間足らずでメスキルヒ村に着くはずです。
 
荷物を担いでバス停を探しました。
 
胸の鼓動が少し高まっています。メスキルヒ村はどんなところなんだろうか、と。
 
駅舎の外へ出ると、小さなバスターミナルはすぐに見つかりました。
 
1番線から12番線までありました。
 
その一つ一つの行き先標を順番に見ながら、11番目にありました。確かに、メスキルヒ行きが
 
書いてあります。ただしバスはあと40分後。
 
バス停の下でぼぉーっと座り込んでいました。
 
しばらくすると、おじさんが声を掛けてきました。
 
「どこから来たんだい?」
 
「にほん、ジャパン」
 
「おお、そうか日本ね」
 
わかっているんだろうか。そしておじさんは続けました。
 
「どこへ行くんだ」
 
「メスキルヒだよ」
 
これらのやりとりは英語なのですが、わたしもそうですが相手も片言英語。ときどき
 
ドイツ語が混じっていてうまく意味が通じません。それがまた楽しいのですが。
 
そんなやりとりを見かねていたのか、近くでバスを待っていた大学生のような若くて美しい女性
 
が割り込んできました。
 
「メスキルヒに行くのならわたしも同じバスよ。ここで待っていればいいわ。わたしは
 
ずっと手前で降りるけどそのまま30分も乗り続けていればメスキルヒよ」
 
ちゃんとした英語でした。わたしは礼を言って彼女に話しかけました。
 
「大学生?」
 
「そうよ、フライブルグよ」
 
「ああ、フライブルグね、メスキルヒのあとフライブルグに行く予定なんだ」
 
「メスキルヒにはなにしに行くの」
 
「ホーフガルテンの森を歩いてみたいだけさ」
 
「へえ、じゃあひょっとしてハイデガー博士のこと?」
 
「そう、そういうこと」
 
ハイデガ博士と、ハイデガーの名前に「博士」とつけて言ったところがとても気に入りました。
 
「だったら、フライブルグ大学ね。わたしの行っている大学だわ」
 
彼女は、ハイデガーなんて、という不思議そうな顔をして、しかし誇らしそうに微笑みました。
 
 
 そんな話しをしていると、バスがやって来ました。
 
バスに乗り込んでしばらくしたら彼女は降りていってしまいました。
 
バイバイの手を振って別れました。バスの後方に彼女が小さくなっていくのを見ながら静かに
 
なってしまいました。
 
静寂の合間の小さな会話。それがとぎれたらまた静寂。
 
バスはまたしても貸し切り状態。
 
気を取り直して思想に集中します。車窓の田園風景は日本では絶対に見られないものです。
 
さあ、もうすぐあこがれのメスキルヒに着くぞ!
 
 ↓貸し切り状態の路線バスイメージ 4
 
 

イメージ 1

イメージ 2

 ウルムと言えば世界一高い大聖堂の塔。

 161.53m、768段の階段を上ります。

 先っぽの細くなった突端まで、それなりの覚悟がないと上れません。

 広場で見上げながら、上るべきか上らざるべきか、決心するのに

時間が掛かります。

 みなあのドイツ語の語感を交わしながら人々がすれ違っていきます。

 考えてみれば言葉とは不思議なモノです。ドイツ語やフランス語が分からな

くても、聞けばああこれはドイツ語だ、ああこれはフランス語だ、イタリア語

だとわかるのですね。語感、とはなんなのでしょうか。

 日本では、ニワトリは「コケコッコーと鳴きます」

 アメリカでは「コッカドゥルドゥルドゥー」と鳴きます。

 フランスでは「ココリコー」と鳴きます。

もし、生まれた赤ん坊に、親も周りの人も誰もが鶏の鳴き声を、「コケコッ

コー」と言って聞かせることがなく育てたら、その子供はニワトリの鳴き声を

どのように表現するのでしょうか。

 外国にいると、言葉の違いや習慣の違いから、そんなことをよく考えてしま

います。

 一大決心をして塔に上ることにしました。こういう塔に上るときはいつもそ

うですが、ただひたすら、早く頂上に着くことだけを祈りながら上ることが

大切です。だらだら上ってはいけません。きっと挫折してしまいます。

 そうして登り切ったときの満足感・達成感は、エベレストの比になりませ

ん。

 この塔の上からの景色の彼方、「黒い森」がかすかに見えますが、そこは哲

人ハイデガーのふるさとです。そう思って目を細めて見やると感慨深いものが

ありました。

 哲学のジャンルの中に、「存在論」というジャンルがあります。

 この「存在論」の大家がハイデガーという人です。「存在」とはなんぞや、

と考えた人です。「ある」とはなんぞや、とたずねられても、「ある」ものは

「ある」としか言いようがないではないか、ということですが、いや違うんだ

「リンゴがある」の「ある」とはどういうことなんだ、と言い張る人です。

りんごがある?それ以上どのように言えばいいんだ。リンゴがある、とはそこ

にリンゴがある、としか言いようがないではないか、????

 この「存在」という言葉は、ドイツ語では「Sein」、英語では「Be」

フランス語では「Etre」で表現します。

 そもそも日本には明治以前には「存在」という単語がありませんでした。

 明治になって、これらの言葉を翻訳するのに「存在」と造語されたのです。

 ですから、もともと日本には「存在論」という概念がなかったと言うことで

す。明治になってからの造語を用いて「存在論」として解釈して行くには日本

人はあまりにも日本人でありすぎます。無理があるかもしれません。

「存在」という大きな問題を考えるにしてそうなのです。

 言葉とは、鶏の鳴き声のようなもので、それぞれのメタファーでしかありま

せん。よほど気を遣って言葉を使わないと、大いなる呪術師、あるいは詐欺師

になっている自分に気がつきません。

存在なる言葉は無かったかもしれませんが、日本人には日本独自の「存在」に

対するメタファーが遺伝子として伝わっているのに気がついていない場合が多

いようです。「存在」の響きは、人の心を撃つものです。

 売れない文筆家などは、たいてい言葉が先走っていて虚ろで意味

が無く、ただ焦っていて、ですから言葉の行き先が無いのが原因です。言葉を

もてあそんでいるだけでは人を感動させられません。その点、自分の存在の琴

線に触れたものの言葉は重いものがあります。


 ハイデガーのふるさとを遠望しながら塔の上で汗が引くのを

待ち続けました。






 

 



 

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

シュバルトバルトの奥深く、二両連結の列車がガタゴトと各駅に停まりながら進みます。

その名の通り、まさに「黒い森」です。神秘的です。

そして、「ティティゼー」という駅で降りました。

シュバルトバルトの真っ直中にあるティティゼー湖に向かいます。

シーズンオフにあるあの寂しい湖畔を想像しました。

でも、日本の秋よりずっと早く寒いのに、湖畔や森の散策で結構な人手でした。

オープンカフェには毛布が準備されていました。

人々はビールやワインを前にしてゆったりとしていました。

時間は静かです。わたしもそれに倣いました。

シュバルトバルトでは、「存在と時間」が迫ってくるのが分かるような気がします。

目を細めて湖上を見やり、そしてその向こうに拡がる「黒い森」を仰げば、

そこはまさにハイデガーワールドでした。

開く トラックバック(2)

イメージ 1

イメージ 2

写真 マルティン教会

   ホーフガルテンに立つ道標




 ドイツの秋は早く、雲は鉛色に重い。

時折、陽が照ったかと思うとパラパラと時雨れる。

九月の終わりだというのに、マフラーに背を丸めた有様です。

この重苦しい空の色は、どうしても沈鬱な気分に陥れようとします。

これからの季節は暖炉の前でのメディテイションの季節です。


メスキルヒのホーフガールテンの森のベンチでドストエフスキーの「罪と罰」の或るセリ

フに思い至りました。空が、そんな気分の雲ゆきでしたから・・・。

「われわれはつねに永遠というものを、理解できない観念、何か途方もなく大きなもの、

として考えています。それならなぜ大きなものでならないのか?そこでいきなり、そうし

たものの代わりに、ちっぽけな一つの部屋を考えてみたらどうでしょう。田舎の風呂場

みたいなすすだらけの部屋で、どこを見ても蜘蛛ばかり、これが永遠だとしたら。わたし

はね、ときどきそんなようなものがちらつくんです」

 このスヴィトセリガイロフのセリフはいいですね。

 ドストエフスキーの思想性に感動するところです。

 そこいらの無思想な物書き達にもう少しこのような「生への重々しさ」を表現して

ほしいものです。このあたりが、ドストエフスキーが偉大なわけではないでしょうか。

 ここにある「永遠」は、われわれはどうしても時間を客観的にしか見れなくて、だから

漫然と生きてしまう、そんなことへの警鐘です。

ドストエフスキーは、日常のごまかしの言葉にみちあふれた「世間知」のなかにあって実

存とは何かに立ち戻らせてくれます。



自分の死に直面したものにしかわからない不安。

その不安に煩わされるのが人間誰しも当たり前のことですが、このドストエフスキーの

言葉のなかに、何か生きんとする希望のようなものを見いだすのです。まさに

ほんものの実存の小説です。

「死は存在の可能性」

「実存を不可能にする可能性」



メディテイションしてみると熱い炎が燃えさかっていて、その炎から目をそらそうとし

ているだけだということがわかります。

しかし、・・・・・・。

イメージ 1

イメージ 2

写真上 メスキルヒ郊外

    古茂田守介「少女」



「なぜ在るのか。存在するとはどういうことなのか」

マルティン・ハイデガーという人は、そんな存在の意味を問い続けました。

彼の生まれたドイツの片田舎メスキルヒの村の中を歩いているとき、彼の原初の問いかけ

がずっと聞こえていました。

彼の本は難解です。何度もなんども読み返しました。

そして少しずつ、なにかがわかったような気になるのですが、いまだによくわかりませ

ん。でも、その少しずつ、が気に入ってはいるのです。そう、原初の問い、「存在」と

は?なのです。


その日朝から、かなり歩き回って、なんでもない村の中の古い建物の前に来たとき、ふと

古茂田守介の言葉が思い起こされたのです。

古めかしい、いかにもドイツの田舎というふうな、でもどこにでもある田舎屋、そこに

えもいわれぬ重さを感じたのです。言葉では言い表しようのない「質量」を感じて古茂田

守介の言葉なのでした。

守介は自分の体質について「私は自然を見る場合、色彩と言うよりむしろ彫刻的な美しさ

を感じることの方が強い。そのせいか、色の少ないモノクロームに近い絵になってくる。

つまり自分の生理に従って私は絵を描いているように思う」と言ってます。

そして量感について、

「存在する物体には、大は大なり、小は小なりの量を具えているものです。一滴の

水が小川になり、支流に流れて本流に合し、大海に集まって大きな量をつくり、陸地と

組み合わされて地球という大きな量を形づくっている。そして量は宇宙にまでも拡が

っていくのです。このようなことを考えると、何か心に、ゆとりができて、ある

安心感が生まれてきます。つまり量というものが人間の心に与える大きな力

でしょう」

 メスキルヒの路傍で、この「量」という言葉が突然私に襲いかかってきたのです。

「量」つまり「存在の意味」につながっていく、そんな気がしてわたしの心は騒ぎまし

た。


さらに古茂田は言います。

「絵画の場合ヴォリュームとは、個々の物、即ち調和、比例、均衡、形、運動

色彩、配置、質量など数限りない美の構成要素によって発揮され・・・・画面から

うける張り、とか緊張感と言うこともできるでしょう」
(1990年古茂田守介展図録より。於目黒区美術館)

そうなんです、すべてが、瞬時に燃焼する場のことなんだ。そう思い至ったとき

どんよりとたれ込めたメスキルヒの空に感謝の気持ちがわき起こりました。

絵画にせよ彫刻にせよ、文学にせよ、音楽にせよ、なんにせよ芸術的なものの真底には、

誰にも語り得ぬ「存在」に触れそうな何かがあるものなのです。考えてみれば、

偉大な芸術家は、みな「言葉」のむなしさの虜になることなく言葉以前のなにものかを語

る「存在からの使者」なのです。

人間は、言葉以前の郷愁に心ゆるがせて、そして理屈抜きになびいていくのです。

全6ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6]

[ 前のページ | 次のページ ]


.

過去の記事一覧

ZuiZan
ZuiZan
非公開 / AB型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事