中国

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 2006.7.1 世界一高所を走る鉄道としてチベット鉄道が開通しました。この機会に早速この鉄道に乗ろうと思いました。ゴルムトというところからラサまで15時間乗りました。車両は、中国にしては近代的な新しいものでしたが、座席はリクライニングでなく、背もたれが直角に固定された三人掛けのものでした。さすがに15時間は辛いものがありました。
 しかし、それも乗り合わせたチベット族の人たちとの歓談でかなり気が紛れました。彼らは青海大学職員の慰安旅行中で、陽気で明るくて、車内で唄ったり踊ったりで、わたくしもそれに参加させられて「函館の女」を唄いました。西蔵の人たちからいただいた拍手はうれしかったです。
 景色は、はじめは珍しいのですがそれも単調に過ぎるだけで、車内に表示される高度計を刻々と追いかけている始末でした。
 高度計と睨めっこしながらの車中でしたが、タングラ峠で標高5000mを超えたときには車内全員が嘆声を洩らしました。
 さすがに、空気が薄い。いささか息苦しい。人によっては呼吸困難の高さ。座席の下には酸素供給バルブがあって、緊急の時にはそれで酸素吸入ができます。幸い、身の回りにはそれのお世話になる人は出ませんでした。

  この鉄道は、観光的には便利でそれなりに旅情があるのですが、しかしながらその背景にはかなり複雑なものがあります。チベットは、もともと明らかな独立国でしたが、1951年に中国共産党軍の軍事的進行のもとに強引に併合されてしまっています。
 1951年といえば、第二次世界大戦が終わって世界がまだその秩序を回復しきれずに混沌としていたときで、タイミングとしては火事場泥棒のようにチベットを中国の一部としてしまいました。今日現在なら、国際社会がとても黙って見過ごさないのでしょうが、当時の世界情勢としてはそこまでには至らなかったようです。
 当時チベットにあった僧院の95%を破壊し、多くの僧侶をむりやり還俗させ、貴重な仏像や文化遺産を強奪して持ち帰ってしまいました。そして、遊牧民のチベット族から放牧地を取り上げ定住させようとし、10万の人民解放軍を送り込んで実質支配をしてしまいました。それ以来、チベット人の抵抗運動が続いていますが、抵抗分子は見つかると投獄されるか殺されるかという恐怖政治が敷かれています。
 その後の文化大革命を通じて殺されたチベット人は、150万人に上るともいわれていて、ナチスのユダヤ抹殺は有名ですがここでもホロコーストが起こっています。その後も、中国はチベット地域への漢族の移住を着々と推進し、チベットにおけるチベット人比率をどんどん下げています。
 中国人の数を増やすためにチベット人に対しては産児制限を設けているとも言われ、数十年を掛けてチベット族を消滅させようとしているようです。こうして火事場泥棒によって奪った土地を中国のものだと既成事実化しようとしているようです。
 久しぶりのラサは、見渡す限り漢族の商店で満ちあふれていて、中国の他の都市とほとんど変わらなくなっていました。チベットらしさはすっかり薄れ、唯一、ポタラ宮の偉容だけが象徴的で、それはとてももの悲しげに見えました。
 今回建設されたチベット鉄道は、漢族の入植をすすめ、チベット人を稀薄化させ、またチベットからチベットの鉱物資源などを中国国内へ移転させるという目的があるのです。なにも、中国が観光だけのために鉄道を敷くわけがありません。
 車内で親しくなったチベット族の人に聞きました。「この鉄道ができて便利になって嬉しいですか?」しかし陽気に唄っていたかれらは、その時はじめて厳しい顔をしました。
 明らかに、中国化の象徴としての鉄道を歓迎はしていませんでした。
           青海省ゴルムト駅にて


 

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