|
『父の作業着』
父が昔貰ってきた鉛筆のことを想いだし 段ボール箱を探すと、沢山の鉛筆と一緒に、 中から作業服も出てきた。 勤続50年の労働者 寒い日も暑い日も 雨も霰もかいくぐり 雪にも負けず 勤め上げた父 俺は父を恨んでいた 無粋で粗野で教養のない人と 蔑んでいた。 でも、いま鉛筆も作業着もくれるという父 温厚で優しくなった父 大学途中で投げ出してしまった俺を許し、 統合失調症になってしまった俺をも受け入れてくれた父 作業着は黙って語りかけてくる 本当の強さ、優しさ、継続することの素晴らしさを 父のような後ろ姿になりたいものだ!! 父の作業着を着て明日から作業所の仕事に励もう。 |
|
遠い国からやってきた
硝子の瓶に栓をして 香水匂う便箋に 細い横文字書き並ぶ ぁあ 本当に世界全体が幸福にならなければ わたしも幸せになりません 海猫の声こだまして 再び波にさらわれて 手紙は旅を続けゆく |
|
地獄を覗かれたもうお方は、 どなた? 酒をくらい 女を侍らせ、男をたぶらかすお方は、 どなた? あぁといい いぃというお方は、 透明な衣を翻して、 地獄の様子を見ては 歎き悲しみ 御自ら 夜の巷へさ迷う 佛は嘘をつかれない 佛は悪を裁かれない ただ風のような 遠い眼差しをお与えになる |
|
秋の薔薇
花弁から滴りおちる雫 朝の光りに煌めいて 昨日、嵐は強い風と激しい雨をたたき付けた 薔薇はピンクに輝き 誇り高く咲く 庭の女王 寂しがりやの絵かきは 星の王子様を、読み終えた 薔薇は振り向くでもなく、甘い香りを放ち 絵かきは煙草をくゆらせる 遠い昔愛した女を思い出し、絵かきは薔薇を斬る そうして 緑の一輪挿しに、薔薇を活け、窓辺にそっと口づける |
|
渦を巻く巨大なるエネルギー
下がりつづける気圧 逆巻く波 駆け巡る黒雲 荒れ狂い飲み込み あっという間に人をさら う ひっそり息を鎮め 雨戸をたて、家に潜む 人びと 風が変わり 雲がちぎれ明るくなってきた 庭先にピンクの薔薇が 揺れている そうして秋は深まりゆく |
[ すべて表示 ]




