流風月海

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物語2 (自作小説 恋愛物)

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韓国ドラマにはまってから書いたので韓国ちっく?コメント頂けると励みになります。

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今日は、なぜか少し心が動いた。それは、キム・ジュノシの態度に悲しいものを感じたせいなのかもしれない。どこか投げやりで自分を捨てて犠牲になっているような。そんな気がして仕方なかった。出来れば幸せになって欲しいから無理は強いたくなかった。だけど断れなかった。どうしてかわたしにも分からない。これでよかったのかと自答自問するもののなぜか残りたいという気持ちが強くあって正直自分でも驚いていた。本当ならキムご一家の事を真っ先に考えないといけないのに・・・。私ってこんなに自分勝手だったのかしら。人の事を考えられない人間だったのかしら。韓国へ来てキム・ジュノシにあってから自分でもよく自分が分からなくなってきている。それにキムご一家にも温かさを感じる。勿論約束のためもあるけれども・・・

と日記に書いてまた愛は指をとめ、外を見た。ただビルが並んでいるだけだったが、遠くを見ていた。
今祖父達は話し合いをしている頃だろうと思った。部下達が反論をしている気が愛にはしていた。
そして祖父もまた迷っていると思った。決心は固く小さい頃から愛は教えられてきたが、この何日間のキム家の様子を見て祖父も諦めが半分あったような感じがした。そして今日のジュノシの態度をみて改めて不安を感じたのも 愛はわかっていた。だが、愛はそのままとどまるつもりでいた。追い返されるならまだしもそうゆう理由でもなく、去る理由がなかったのとなにか引っかかるものがあった。

愛は日記をしまい、荷物をまとめはじめた。明日からは キム家に住む事になる理由だし 祖父達も結婚式が終わり暫く居たら日本に帰国しないといけない。どちらにしても式が順調に進まなくとも進んでもホテルからは出るのでまるで気持ちを落ち着かせるかのように愛は荷仕度をはじめた。いつも冷静な愛だが、今回だけは少し複雑な気持ちだった。

ベルが鳴り、祖父と部下達がドアの前に居た。食事をしに外へ出かける4人。韓国の伝統的なお店へ入る。暫くは静かだったが、部下達が口々に「今回の事は考えなおされた方がいいかと思います」や「お嬢様は苦労されるの目に見えております。どうか一緒にお帰りください」などと言い出した。

愛は祖父の方を見たが 祖父は賛同しているかのように沈黙だった。愛は、帰らないと二人に告げた。「これは前から決まっていた約束事です。それに式は明日と決まりました。わたくしが帰る理由も場所もありません」という愛に3人は顔を見合わせた。

冷静でまるで歓迎されて嫁ぐかのような愛を理解しがたかった。この数日のキム家とのやり取りも決していいとも思えない上に歓迎もされていず、夫となる男の態度の悪いこと。しかも嫁げばこき使われ、待遇も悪くなるのは目に見えていた。裕福な家に育ち、苦労を知らないお嬢様的な愛がそれに耐えられるとは部下達は思えなかった。

だが、愛は違った。とても自由な気持ちが芽生えていた。勿論皆の幸せを考えると帰国した方がいいのかとも考えたが、それでも小さい頃から植えつけられたキム家の一員となるということと祖父同士の約束は守りたいと思っていた。愛はその裏に別の感情があるのに気づいたがそれがなんなのか自分でもよく分からなかった。

食事を終えホテルの部屋に戻ろうとする愛を祖父が呼びとめ二人は話すこととなった。
お茶を飲みながら暫く無言だった祖父が「本当にいいのか?無理しなくてもいいんだぞ。」と話した。
愛は何も言わないままお茶を飲んでいたが、暫くして「前にお話しましたようにわたくしの決心は変わりません」と告げた。それを祖父は見ながら「分かった。明日10時にということだ」。
「承知致しました」と告げ愛は自分の部屋へと戻った。

結婚式用のチマチョゴリを出し つって遠くから眺めた。いよいよこれを着る日が来たのだと。
準備を済ませ愛は、寝床に入った。眠れず天井をみつめている。

その頃、キム・ジュノも自分のアパートで寝転びながら天井を見つめ愛の事、明日の結婚式の事を考えていた。(どうせお嬢様。直ぐに逃げ出すさ)と思いながらも愛の目を思い出していた。綺麗な瞳をしていた。だが、どこか悲しげだった。決心は変わらないようだったが・・・やはり政略結婚は嫌だと思っているのだろうか。ただ従っているだけに見えた。それがジュノには面白くなかった。近くにあったクッションを投げ舌打ちをした。

キム家も海道家もそして愛にジュノもみな落ち着かない夜を過ごしていた・・・
愛は、準備をし 祖父と朝食をしていた。ホテルだけあって 豪華ではあったが、西洋式だった。
日本に帰って父の決めた相手と結婚すれば 西洋式を食べる事が多くなるだろう。

「キム家から連絡があった。今日来てほしいとの事だった」と祖父が口を開いた。
愛は、予測していたが 「そうですか」と一言 言っただけだった。
祖父も部下達も愛を見ていた。声に全く感情が入っていないのは 久しぶりに聞いた気がした。
いつも無表情だが、どこか愛想があるのに今日は 顔色さえ悪かった。

やはり無理をさせているのだろうかと少し心配になってきていた。
愛は、その後も淡々と食事を済ませ 部屋へと戻っていった。
「会長、お嬢様は大丈夫でしょうか?」と部下達が訊いてきたが、うーんという顔をするだけだった。

部屋で 愛は ただひたすら呼ばれるのを待っていた。何も手につかず日記も書けなかった。
自分でも自分の感情が、分からなかった。昨日 初めて婚約者に会って韓国を離れる気がしなかったが、あの様子では 納得していないのは 十分分かる。恐らく本当に来るとは思っていなかったのだろう。何故か分からなかったが、悲しい目をした彼を忘れられなかった。酔っていたとは言え、家族の前でああ言ってしまった以上 引っ込みがつかないのでは と心配になってきた。

その時、部屋の電話がなった。ドキっとした。愛は、ロビーで待っている祖父と部下達と共にキム家へと向かった。
その頃 キム家には 親族が一家族以外集まっていた。まだ言い争いは続いていたが、そんな言葉にはキム家の主人は聞かなかった。「決まった事だ。」と言い張るだけで小さい頃から聞かされていてもやはりキム・ジュノの両親は 納得が出来なかった。唯一ジュノの父だけが、少し傾いていた。昨日の愛の姿を見て美しいだけではなく、利発で優しい温かい子だというのが 一目見て分かった。

キム・ジュノも 愛が 今まで出会った女性と違う事は 感じていたが、それでも抵抗はあった。だが、何日か一緒に過ごせば向こうも嫌になって直ぐに出て行くだろうと思っていた。ジュノの弟 ジュナは心配していた。兄が、ぶっきらぼうで愛想がない上に節操もない。女をとっかへひっかへしている事も知っていたし、本気で人を愛した事もないのも。しかもだらしがないし、優しさがない。酒ばかり飲んで荒々しい・・・愛を幸せに出来る理由もない。酔っ払っていっただけだろう。

それぞれの想いが交差するなか (こんにちは、失礼致します)という声が聞こえてきた。
海道一家がやってきたのだと皆分かると慌てだした。
キム・ジュノの母が 玄関を開けた。
日本人でなければ・・・と愛を見て思った。こんな理想の花嫁はいないだろうに。

二人と部下達は、キム家が集まっている部屋へと案内された。昨日と同じ部屋だった。
愛は あたりを見回してから韓国式の挨拶をした。ジュノとジュナは、落ち着いて挨拶をしている愛を不思議に想いながらも見ていた。

(結婚式は、いつでどこでしたいかね?)とキムの義理祖父が訊いてきた。親族はあっけに取られて言葉にならないようだった。愛は、義理祖父の顔を見ながら わざと片言で(それは、皆様でお決めになった事でしょうか?)と質問で返した。違うというのを承知していたからだった。そこで意義があるだろうと愛はおもったのである。

また昨日のように言い争いになるかと予想していたが、言い争いというより動揺が走っているようだった。愛は、説明したかったが 反応を見ていた。やはり快くというのは 無理だと分かっていても家族になるのなら賛成までいかなくとも納得はしてほしかった。特にキム・ジュノには。

(明日にします)とジュノが言った。(こうゆう事は 早い方がいいでしょう)と付け加えると義理祖父は(ばかもの!約婚式をするのが 順序じゃろ。それから付き合いをして結婚をする。しかも明日では まともな結婚式も挙げてやれないだろが。)と怒鳴りはじめた。

愛は、その様子を見ていて 決心をした。(皆様が納得されていないのに 嫁ぐ理由にはいきません。明日日本へ帰ります)と伝えた。一同が静まりかえった。愛の目に涙が見えた気がしたのである。こんなに若いのにしっかりとしていて、きっとかなりの決心を持って異国に嫁に来ただろうと思っただけで胸が痛んだ。すすり泣きが聞こえてきて愛は、微笑みながら(泣かないでください)と言った。それが、とても優しく包みこむような声でよりいっそう涙を誘った。

ジュノは、愛の手をつかみ(俺の決断に文句があるのか?)と訊いた。まっすぐとジュノの目を見て(いいえ)と言う愛を見ながらジュノは、綺麗だけどどこか悲しげな目に引き込まれていた。(俺が決めたんだからいいですよね?)と親族にジュノは 落ち着いているが 決心の固い意志がとられるような声で質問した。

義理父になるかも知れない人が、(本当にいいんだな?)とジュノを問いただすように訊く。(約束は約束ですから)とジュノはぶっきらぼうに答えた。ジュナが (兄さんでは 幸せに出来る理由がない。ただ嫌がらせのつもりだろ。直ぐに彼女が愛想つかすと思ってるんだろ)と怒りに震えながら立った。
ジュノは、ジュナを見て(何だと)と胸ぐらをつかもとした時 愛がすっと腕をつかんだ。冷静な顔をしているのに そのさっとした対処に少しジュノは驚いた。普通こんな時は、泣き顔で(やめて)とか止めに入るが、こんなに落ち着いてしかも手だけで止められたのは はじめてだった。

それを見ていた祖父は、義理祖父に(皆様の反対もある事ですし、形式ばってせずに写真だけ取って暫く嫁がせたいと思うんですが・・・)と申し出た。(あんたさんが、そう言うなら・・・)と渋々と承知したようだったが、納得はいっていないようだった。愛の方を申し訳なさそうに見たのを愛は (そうして頂ければ わたくしもいつでも帰れますし、ジュノさんや皆様の重荷にならなくてすみます。どうかわたくしからもお願い致します)と頭を下げた。

(それで本当にいいんですか?そんな扱いであなたは満足ですか?幸せになれますか?)とジュナが愛に向かって怒りを抑えながら言った。愛は、心配してくれるジュナに微笑みながら(私は ここに居られるだけで キム家の皆様と一緒に暮らせるだけで幸せです)と告げるが、ジュナが またいいかけようとすると父親に(おまえが口をはさむことじゃない)と言って座らせた。

(それでは、これで失礼致します。時間と場所はお任せしてもよろしいでしょうか?もし気が変わりましたら お電話頂ければ幸いです)と言って韓国式の挨拶をしてまた昨日のようにすっと去っていく愛とお辞儀をしてついていく3人をキム一家は見送った。
ホテルの一室。ベランダで月を見ながら愛は 日記を書いていた。

今日は、私の家族になるかも知れない人達に逢いました。予想通りでした。やはり賛成されてはいませんでした。ずっとその話題を避けてきたのでしょうか?それとも私達が 来た時にその場で断ろうと思っていたのでしょうか?それが、私には理解出来ませんでした。もう60年近く前の約束、ご存知だったろうに。反対してもおじいさま同様頑固だったのかしら・・・。少しそんな感じはしたかも知れません。二人共頑固なのね。

と書いてからクスっと愛は笑った。二人の涙の再会を思い出しては胸にくるものがあった。

60年近くも逢っていなかったのだから二人がまた生きて出会えてよかったと思いました。
家族の皆さんも反対はされたもののとても素敵な人達ばかりだったので家族になれると嬉しいのですが・・・。

またペンを止めて月を見る。結婚相手の事を考えていたのである。写真から見てとても素敵な方だとは思っていたが、特に何も思っていなかったが 目の前にしてみると背は高くスリムなのに体が作られていて朝黒く凛々しい顔立ちをしていた。龍吾も確かにそちらのタイプだが、目がとても印象的な人だった。とても澄んだ綺麗な目をしていた。声も低音で体に響くような。

少しうつむく愛。あの態度が気になったのである。やはり政略結婚なんて誰でも嫌な物。自由はないし、相手も選べないし。やはり気に入られなかったのだろう。それよりも前に日本人だということでもう受け付けないのかもしれない。最初もめた時は、断られたら帰ってと思っていたが・・・。出来れば あの家に嫁ぎたいと思った。小さい頃からの決め事でもあって果たさなければという責任感があったのかもしれない。でもそれだけではない気が 愛にはしていた。あの家族・・・そしてあの人。

やはり相手側が 嫌であるならば 日本に帰ってお父様の決めた人と結婚するのが 道理なのでしょう。でも この結婚には 意義があるけれど 父の結婚には ただ企業を広めるというそれだけの理由。いくら操り人形でも企業のために結婚させられるのは・・・。結婚した事にしてこの国にとどまり 私が出来る事をしてみようかしら。そうすれば、約束は果たせなくても少しは償いが出来ておじいさまの心も軽くなるはず。それにある意味、私も自由になれる。

月を見上げながら それが出来れば一番なのかも知れない。反感を持たれたまま 嫁いでも 誰も幸せにならない。それどころか 苦しめてしまい 不幸にしてしまうかも知れない。酔っ払ってあんな事をおっしゃったけどきっと本心ではないはず。やはり小さい頃から決められた相手だけに 幸せになって欲しいと思う。約束に縛られて苦しんで欲しくはない・・・。

愛は、月を見ながら考え込んでいた。
やはり簡単に行く結婚だとは思ってはいなかったが、いざ目の前で色々と言われると愛でも少し動揺した。小さい頃からもう既にこの キム家に 嫁ぐ事が決まっていたため 韓国語から文化など全て叩き込まれていた。何度も韓国を訪れ 何ヶ月間か渡って学校に通った事も幾度もあった。それを知らないキム一家は、韓国語で しきりと義理の祖父に反対をしていた。

(日本人なんて)
(何を考えているのお父さん!!)
(おまえ達には 前にも話をしているだろうが)
(よく恥もなく来れたもんだわ)などなどと韓国語が 飛び交う中 愛は、 祖父を見た。

祖父も戦争から帰ってから 韓国語を覚え 歴史から文化から 韓国に関わってきた。
日本の在日 韓国人の人達のためにも色々と出来る事がないだろうかと寄付したり 政治家に話しあったりなどしていた。それでも自分の罪は消えないと 色々と韓国の事ばかりにかまっていて とうとう韓国の縄張りにまで入ってしまって一度は 危なかったものの仲良くなり 今では兄弟の杯さえ交わしていた。その事を考えると 愛は 少し胸が痛んだが、キム一家の気持ちもわかるため ただ聞いていた。

何時間も口論は続いた。その間 肝心な結婚の相手は不在。ということは・・・。今度は、父の決めた結婚相手のところへいかないといけないのだろうか。愛は 特に結婚願望はなかった。ただ祖父達の約束とそして日本がしてきた事を考えたらと思うと結婚してこの国で暮らし 自分が役に立てるのならば 出来るだけ何かをしていきたいと思っていた。だから大人しく従っただけで企業を大きくするために結婚するならば いっそうのこと・・・。だが、父の気持ちも考えると・・・。日本に帰り 父の選んだ人と結婚する事になるだけと自分に言い聞かせていた。

(もう決まった事だ!!客人の前でみっともない!!恥なのは おまえたちだ!!)と怒鳴り声が聞こえ
周りは 静まりかえった。愛は 現実に戻され うつむいている キム一家を見渡した。
祖父を 見てから 義理の祖父の方を向き (皆様ともう一度お話をされ、納得された上でまた後日お返事を伺いに来たいと思うのですが、それで よろしいでしょうか?)と流暢な韓国語を喋る愛に一家は驚いていた。

義理の祖父は、躊躇(ちゅうちょ)していたが、 祖父も(やはり皆さんが納得された上ででないと私も心苦しいです。肝心なお孫さんも来ていないようですし、それはやはりこの結婚をしたくないという意思表示ではないかと思うのです。愛も皆さんが 嫌な思いをしてまで嫁ぎたくはないでしょう。私達が勝手に交わした約束ですから)と説得をした。

義理の祖父になるかも知れない人は 泣いていた。(この子達は わかっとらんのじゃ。わしらの気持ちを。あの時 あんたさんがいなかったらどうなってたか。この命は あんたさんに何度も救われたんじゃ。それなのに恩知らず目が。本当にどう謝っていんだか・・・。こんな立派なお孫さんをうちに嫁にくれるなんてそんなありがたいことこの上ないのに。確かに日本がした事は ひどいことだったが、それは全員じゃない。あんたさんみたいな人も沢山いる。あんたさんの友人達だって韓国人に殺されてあんたさんはそれでどれだけ責められたか。そうゆう事をこいつらは わかっとらんのじゃ!)と涙ながらに怒鳴った。

義理の父になるかも知れない人は、それを静かに聞きながら 海道と愛を見ていた。2人は うつむきかげんに何度も頭を下げているように見えた。二人の目が潤んでいるのを見た。それは、キム一家全員が見ていた。(だまされないわ)っと一人の女性が言った。愛は それを聞いて胸が痛んだ。そこまでの憎しみを持っているのは 辛いだろうと。同じ人間でも過去の過ちはそう消えない。いくら国がした事とは言えども それは一般の人にしたら関係ない事。今も尚謝らない日本、そして下に見て粗雑に扱う日本。憎まれて当然な気もしていた。

(日本のしてきた事を考えたら・・・いえ 今もまだしている事を考えたら当然の事だと思います。)と愛は 言ってから 祖父に (おじいさま、今日はひとまず おいとましましょう。)と言った。
お辞儀をして去ろうとする二人に 義理の祖父になるかも知れない人は 泣きながら引き止めた。
その様子を家族は 見ながら 義理の祖父を押さえていた。祖父と愛は また座った。
暫く沈黙が続いた。部下2人は出口の前に立ちながら顔を見合わせていた。
祖父も考えこんでいるようだった。
その時 一人の男性が 入ってきた。愛には 直ぐに誰か分かった。
少し酔っているようだった。
(これが 俺の日本人の嫁なんだ〜)と愛を見て言った。
(この親不孝者が〜)と義理父は怒鳴り その人の頭を何度も殴った。皆が止めに入った。
(ちゃんと来たからいいだろ。それに結婚するからさ)と軽く言った。
その声のトーンで愛は 彼をじっくりと見た。彼も愛を見ていた。
(なんだ その顔は。文句あるのか。結婚してやるんだからいいだろう。)と乱暴に言うと義理の祖父が何度もその人を殴り (そんな言い方があるか。おまえになんか勿体ない。ジュナの嫁にした方がましだ。)と怒鳴るとジュナと呼ばれた男性は 愛を見た。義理の弟になる人なのだろう。と言っても年は愛よりも上に見えた。

愛は、韓国流の挨拶をしてから すっと立ち上がり出て行こうとした。その男性に手を取られる。
(俺が相手じゃ不満か。もっとましなのを期待していたのか。)
首を振って愛は、(決まりましたら またお知らせください。)とわざとたどたどしく韓国語を話してその場を離れた。

実は 動揺を隠せなかったのである。自分でも何が起こっているのかが分からなかった。彼の心理も分からなくはなかったのだが・・・。自分の心理が理解出来なかった。あれだけもめてしまうなら 身を引こうと思っていた。大人しく日本に帰り 父の選んだ結婚相手のところへ行こうとさえ思っていた。
だが、彼が入ってきた瞬間 その気持ちはなくなっていた。愛には 何が起こったかがわからなかったが、彼が嫁にしてくれるというのなら嫁にしてもらおうと思った。それが、どうしてなのか愛にもわからなかった。ただ 呆然としている自分が居た。
飛行機の中でも愛は ただ外を眺めているだけで何も言わなかった。そんな様子を海道次郎は 伺っていた。何を考えているのかが分からなく もしや自分が愛に無理をさせているのではとそんな気持ちがぬぐえなかった。

「無理しなくてもいいんだぞ」という優しい祖父の声に少し微笑んだ。だが、また窓の外を見つめていた。まだ20歳になったばかりだというのに知らない土地、知らない所へ 嫁がされる愛の気持ちはどうなんだろうとこの頃そればかり 考えていた。だが、愛は優しいから何も言わない。小さい頃から逆らわずに妻の言いなりになり、そして自分が戦争で出会った友との約束を果たすために勉強をしてこうして今約束が果たされようとしている。あの時 助けてくれた敵であり、後に友になった彼には恩義を感じていつかきっとそうゆう時代が来たらという約束だった。それを果たしてこの子達に押し付けていいものなのだろうかと疑問さえ起きた時があったが、一度だけ 愛が 「大事な約束です」ときっぱりと言ってくれた事がありその言葉に甘えてきたが・・・。孫を見ながら 目頭が熱くなるのを感じていた。

飛行機は、何度も乗っているが 久しぶりに緊張している気がした。不安が襲った日も何度もあったが、怖くはなかった。これで海道家とは 離れると思うとほっとしている自分に驚きだった。ここまで育ててもらっていながら 砂をかけるみたいだわっと反省しながらもこれから 嫁ぐ家の事、家族の人たちの事が気になっていた。ちらっと写真で見たのと名前や年齢が分かっていても実際会うのとは違う。
百聞一見にしかず・・・。

簡単でない事は覚悟していた。全く違う国に嫁ぐ理由だし、日本がしてきた事を考えたら歓迎は期待していなかった。いくら祖父同士の約束とは言えどもそう簡単に割り切れるものではないと心得ていた。それでなくとも日本でも姑と嫁や色々と結婚には 困難がついてくる場合もある。違う環境や文化、習慣や経験などで価値観も思想も違うのだからお互いぶつかりあったり、理解出来ない事があるのも当然。ただ少しでもお役に立てればと償いにはならないとしても少しでも償えたらと愛は思ってこの事は小さい頃から決めていた。愛にとっても大切な約束だったのである。祖父は、それには気づいていないだろうが・・・。

空港についた。祖父は、驚いた様子だった。「おじい様」と愛が声をかけるまで見渡していた。部下達もその様子がおかしかったようで笑っていた。着物を着た二人は特に目立っていた。好奇心の目が多かった。中には憎悪を感じる目も感じたが、そこは海道一家 動じない。
迎えは期待していなかったが、二人の男性が 迎えに来てくれていた。
義理の父と義理の弟になる人達だった。挨拶を交わし 車へ。
部下達は、レンタカーで後をついてきた。

一時間程走り、立派な家の前に着く。愛には 伝統的な家が 素晴らしくここで暮らすのかと思うと嬉しく思った。大きすぎず、小さすぎず、丁度いいサイズ。案内され、家の中へと。そこには沢山の人達が集まっていた。親族なのだろうか・・・。大勢人がいるのには 平気な愛も少しまた緊張した。
祖父と祖父の友人は、久しぶりの再会に涙してお互い抱き合っていた。そこには愛が結婚する人はいなかった・・・・。

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