|
1990年代半ばから数学教育活動を積極的に展開してきた者として、数学の教育に関してはいろいろなことを実践したり提言したりして今日まで来ました。主に数学科教員時代に小・中・高校での数多くの出前授業を行った経験から、生活やビジネスに結び付いた生きた題材による応用例を紹介すると、生徒の興味・関心は相当高まること。数学の学びにとって大切なのは、答えを当てるマークシート式ではなく、答えを導く論述式であること。1994年度版の高校教科書から数学I、II、III、A、B、Cのアラカルト方式になったが、数学は大河が滔々と流れるように前後の繋がりを大切にして、なるべく一本化して学ぶべきものであること。等々。
そのような考え方を踏まえて、2010年に講談社ブルーバックスから『新体系・高校数学の教科書(上・下)』を出版し、2012年には同じく『新体系・中学数学の教科書(上・下)』を出版し、数学教科書の在り方に一石を投じました。戦後の中学と高校の数学教科書で扱ったすべての項目+αを含め、完成度の高い書を目指して執筆したこともあって、反響は大きいものとなりました。主に数学が得意な方々からの好意的な声を多くいただいた半面、数学が苦手な方々からの「難しい」という声もいくつも寄せられました。
実際、桜美林の学生はじめ何人かの社会人から「先生の新体系シリーズの御著書は、数学が好きな友人は本当に面白いし、ためになると言います。しかし、中学校から数学が大嫌いだった者にとってはやはり難しいです。先生が、数学を苦手とする学生対象の授業で実践されているような、数学嫌いの多くの学生の心をつかむ語り掛け調で易しく解説した本こそが、日本の大多数の数学嫌いの社会人や学生や生徒が期待するものだと思います。先生らしい役立つ雑談を交えて、受験のためではなく人生のための、そのような学び直しの易しい本を望みます。しかも、中学と高校の全範囲の基礎事項を中心にして」という意見が数多く寄せられていました。
間もなくして、小学校の算数の復習から始まって高校の理系進学の人達が学ぶ微分積分や統計までを扱う本を、中学と高校の二冊に分けて上記の意見に沿って執筆することを決めました。章立ては、新たに設ける算数の復習の章以外は新体系シリーズと同じであるものの、各章の基礎的事項を可能な限り平易に述べることに照準を合わせること。生きた題材の応用例はなるべく新体系シリーズとは異なるものを用いるが、とくに興味・関心を高める効果が期待できるものは若干レベルの高いものも許すこと。
そして9月14日に、「生き抜くための高校数学〜高校数学の全範囲の基礎が完璧にわかる本」(A5版492ページ)と「生き抜くための中学数学〜中学数学の全範囲の基礎が完璧にわかる本」(A5版344ページ)の二冊を、日本図書センターから同時出版の運びとなりました。今になってふと思ったことは、「ブルーバックスからの新体系シリーズと、今回の二冊の出版の順番が入れ替わっていればよかったかな?」ということです。
出版してからの追加ですが、基礎的事項の解説で一番大切なことは数学用語の分かり易い説明です。そこが他の参考書と比べて優れている、と何人かの方々に言われました。基本的に他書は見ないので分かりませんが、数学では定義の理解がまず重要なので、自然なことだと思っています。「やり方」だけ教える簡略した書と一線を画すことができたのかも知れません。
最後に、今回の二冊が縁となって、「この著者を出前授業に呼んでみようか」と思われた高等学校関係者は、遠慮なく桜美林大学を通して(あるいは直接私に)出前授業を申し込んでください(北海道〜沖縄までOK!数学大嫌いな生徒ももちろんOK!)。旅費や謝金等は一切不要です。旅費だけは大学で工面して可能な限りお引き受けしたいと思います。時期は9月か3月がよいのですが、その他の月でも金曜日は出掛けることが可能です。
9月の16日に青森県の柴田女子高校に行ってきました。素朴で態度の素晴らしい生徒さんばかりでとても感動しました。その学校の先生も昔の私のゼミ生で、本書(中学の方)の作成ではお世話になりました。
|
数学
[ リスト | 詳細 ]
|
2か月前に書いた直近のブログ(1月10日)を読んでいただいた御高齢の方のようですが、大学にお手紙を送っていただきました。その内容は、私の20年間近くに渡る数学教育活動に関して、その方が最も評価したいことは、話題になった本を何冊か出版したことでもなく、あちこちの学校に出前授業に出掛けたことでもないのです。批判を恐れないで雑誌・新聞等に日本の教育行政について、思い切った主張を堂々と展開されたことだそうです。
確かに、いろいろな主張を雑誌・新聞等に述べることは、数学書を出版するときには無い不安があります。もっとも私としては、大事だと思うことを主張したまでという気軽な気持ちがありました。その方は「大切と思っても、お上にたてつくことはリスクがあります。だから多くの方々は思っていても何も主張しないで、無難な数学書を書くのでしょう。そこが貴方に拍手したいことです。多くの方々が知らないそれらの主張の一覧表を、ブログ等で発表されておいてはどうでしょうか」というようなコメントも書いていただきました。もちろん、学術論文や著書などは含まれません。
いろいろ考えた末、せっかくの機会なので20年間近くに渡る雑誌・新聞等での主な主張のリストを以下、公開します。もっとも一部は、主張とは無関係な楽しく書いた新聞の連載記事も含んでいます。なお、今後もいろいろと主張するかも知れませんが、当分は人間の「心」と関係ある内容に限定するつもりです。
実はこの20年間の間に、何人もの友人から「どこかプロダクションに所属すれば、もっと有名になるのに」と散々アドバイスをしていただきました。しかし私は、なんら制約を受けないで下記のような自分の考えを堂々と訴えたかっただけなので、そのアドバイスは受け入れないで今日まできました。結果として、それで良かったと振り返ります。
さあ、今日は実質新年度入りのオープンキャンパスでのスピーチです。大急ぎで休んで、昼からのスピーチを準備します。天気予報は雨模様ですが、それでも聞きに来てくれる高校生がいると思うと、頑張ってスピーチしなければ、という気持ちがより強くなります。次のブログは、しばらく経ってからになると思います。
[1] 数学教育の大切さ再認識しよう 朝日新聞「論壇」 1996年11月7日号
[2] 「数学の楽しさ」に誤解 読売新聞「論点」 1998年3月12日号
[3] 日本経済に重大な影響 数学教育への七つの迷信 週刊ダイヤモンド「論文」1998年4月11日号
[4] 学校での証明教育 数学セミナー 1998年7月号
[5] 「円周率3」に隠された問題 朝日新聞「論壇」 2000年5月5日号
[6] 「統計学的見方」の重要性 読売新聞「論点」 2000年8月2日号
[7] インドの数学教科書から学ぶこと 数学セミナー 2001年11月号
[8] 日常不可欠な数学的感覚 読売新聞「論点」 2002年4月19日号
[9] 数学を軽んじれば国は滅びる 週刊ダイヤモンド「論文」 2002年7月20日号
[10] 正解の“法則” 読売新聞 2003年5月30日号(一面記事)
[11] 数学教諭の学力不足深刻に 朝日新聞「私の視点」 2003年7月15日号
[12] 教育に欠ける試行錯誤 読売新聞「論点」 2003年10月6日号
[13] 教育に試行錯誤を生かせ 朝日新聞「直言」 2004年1月21日号
[14] 入試を大切にすれば数学は大切にされる 数学セミナー 2004年7月号
[15] 「数学的考え方」重視を 日本経済新聞教育欄 2004年9月18日号
[16] 数学と理科、互いに理解を 数学セミナー 2005年10月号
[17] 「確かな国語力」の育成を目指した学習指導の在り方 中等教育資料(文部科学省編集)2005年10月号
[18] 大切な「3」の発想 中日新聞文化欄 2005年11月24日号
[19] 算数を面白く学ぼう 児童心理 2005年12月号
[20] 「すべて」と「ある」の教育を見直そう 数学セミナー 2006年2月号
[21] 学校種間の交流不可欠 日本経済新聞教育欄 2006年7月24日号
[22] 「3」の発想を大切にしよう 数学セミナー 2006年9月号
[23] インド式「19×19」暗算礼賛ここがおかしい 月刊現代 2006年12月号
[24] 教材としてのあみだくじ 中日新聞文化欄 2007年2月23日号
[25] 芳沢先生の身近な算数教室 毎日小学生新聞 2007年4月〜2009年3月毎週水曜日の連載
[26] 数学重視の大学改革 数学セミナー 2007年5月号
[27] 神髄は考えるプロセス 読売新聞「論点」 2007年6月20日号
[28] 「考える教育」を充実 京都新聞 2007年12月14日号
[29] 数学の芽 中日新聞文化欄 2008年4月〜2009年5月毎月末木曜日の連載
[30] プロセス軽視の安易な評価 朝日新聞「私の視点」 2008年12月24日号
[31] マークシート式数学入試が及ぼす危険性 数学セミナー 2009年2月号
[32] 「理系・文系」の枠組みを超えよう 児童心理 2009年2月号
[33] 講習会充実 大学にも責任 読売新聞「論点」 2009年6月20日号
[34] 拓くひと 日本経済新聞 2009年9月19日号夕刊一面
[35] 私の教育直言 読売新聞 2009年11月26日号
[36] 大学生に熱気・夜の補習授業 東京新聞夕刊文化欄 2010年12月9日号
[37] やっぱり数学だ! 新潮45 2011年2月号
[38] 出前授業の在り方を考え直そう 数学セミナー 2011年2月号
[39] ほのぼの数学(土日以外の連載) 西日本新聞 2011年9月〜2011年12月
[40] わくわく数学(隔週の連載) 読売新聞 2011年10月〜2012年3月
[41] 3桁同士の掛け算の必要性 産経新聞 2011年9月17日
[42] 数えることの大切さ 東京新聞夕刊文化欄 2011年12月6日
[43] 疎かになった空間図形の教育 産経新聞 2011年12月10日
[44] 大学入試の抜本的改革を 産経新聞 2012年2月25日
[45] 説明力を鍛える図形証明問題 東京新聞夕刊文化欄 2012年4月12日
[46] 論理的に考えて説明する力 産経新聞 2012年5月12日
[47] 教員免許・採用の改革は緊急課題 産経新聞 2012年7月28日
[48] おとなの数学(毎週火曜連載) 日本経済新聞電子版 2012年7月31日〜10月2日
[49] 全国学力調査分析 算数・数学 朝日新聞 2012年8月9日
[50] 学生感激の「就活の算数」 産経新聞 2012年10月13日
[51] 算数・数学、生きた題材で学ぼう 産経新聞 2012年12月29日
[52] 技術立国日本 再建の礎 産経新聞 2013年3月16日
[53] 論理的に考え書く力を 朝日新聞「私の視点」 2013年5月18日号
[54] 高校生論述の力低下 読売新聞「論点」 2013年5月28日号
[55] “当てる”から“論述する”数学教育へ 数学文化 第20号2013年
[56] 大学でbe動詞から教えて何が悪い 数学セミナー 2014年5月号
[57] 教員採用試験問題を改善せよ 数学セミナー 2014年6月号
[58] おとなの数学(隔週火曜連載)日本経済新聞電子版 2014年9月30日〜2015年2月3日
[59] エンタの数学(隔週金曜日連載) 読売中高生新聞 2014年11月〜 |
|
最近は学長特別補佐として、主に大学広報の課題に精力的に取り組んでいますが、授業は今まで通り、基礎的な数学、教職の数学、専門の数学、3年生ゼミナール、4年生卒業研究を含めて、週に8コマ以上を楽しく頑張っています。
この20年間、数学教育の問題で走ってきた私ですが、学生時代は主に群論を学んでいました。
そして、30年以上前にはいつか「群論入門」という群論の、予備知識のいらない丁寧で読み物とは異なる書を書いてみたい、という夢を抱いていたときがありました。
本年5月下旬に、講談社ブルーバックスから出版してようやく実現することになりました。
題は「群論入門〜対称性をはかる数学」で、目次は以下の予定ですが(若干の微修正あり)、5次交代群の単純性の素朴な証明等(5章)を含む、非可換ないろいろな群の例を取り上げました。
群論は化学や比較言語学などに応用されているように、対称性のあるものには何でも関係します。それだけに、今後は様々な分野に浸透していくものと考えます。
1章 基礎的用語とあみだくじ
1.1 用語の準備 1.2 あみだくじ
2章 置換群の導入
2.1 偶置換と奇置換 2.2 15ゲームが完成するための必要十分条件 2.3 対称群・交代群と置換群
3章 群の定義といろいろな例
3.1 群の定義 3.2 合同式とZm
4章 いろいろな対象の自己同型群
4.1 自己同型群の意味 4.2 駐車場移動問題 4.3 マジックS10 4.4 15ゲームの拡張
5章 群と置換群の基本的性質
5.1 剰余群とその応用 5.2 正規部分群と剰余類 5.3 準同型写像と同型写像
6章 GL(2,Zp)と直交ラテン方陣
6.1 2次元ベクトル空間(Zp)^2の自己同型群としてのGL(2,Zp) 6.2 ラテン方陣とデザイン 6.3 (Zp)^2から作るp次ラテン方陣の完全直交系 |
|
7月下旬に出版した「ほんとうに使える数学 基礎編」(じっぴコンパクト新書)の続編である「ほんとうに使える数学 レベルアップ編」(じっぴコンパクト新書)がようやく出版に漕ぎ着けました。題の前振りに「あなたの理系力が試される!」とありますが、急に難しくしたものではありません。本書の校正チェックはゼミ生の3人に精力的に手伝ってもらい、頭の下がる気持ちです。私のチェックでは気付かなかったミスをいくつか見付けてくれて、見方が異なる人のチェックの重要性を改めて感じた次第です。
|
|
最近は紙書籍と電子書籍が両立してきた感があります。私自身は紙書籍派ですが、周囲でも紙書籍は読まないで、なんでも電子書籍にして読む人もいます。そのような流れを鑑みて、講談社ブルーバックスから出した5冊を3月7日に、一斉に電子書籍としても扱っていただく運びとなりました。
厳密な説明・生きた応用例・索引などが評価された「新体系・高校数学の教科書(上・下)」と「新体系・中学数学の教科書(上・下)」、および入学試験学の創設をも念頭に置いて書いた「出題者心理から見た入試数学」の合計5冊です。
未だに紙の新聞を広く読む私からすると、脱・紙の世の中にはついて行けない面もありますが、今後の展開を想像すると楽しみな面もあります。とは言っても数学書である限り、電子書籍であろうとなかろうと、紙と鉛筆は手元に用意して読んでもらいたい気持ちです。
|



