芳沢光雄ほのぼの日記

自然・動物・鉄道・お酒が好きな数学人

数学

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索
 いよいよ新課程の高校数学教科書がスタートします。特徴は同一会社の教科書でも易しい教科書から難しい教科書までいろいろ作られたことに現れていますが、今までの発展的な内容がもっと広がったと考えます。私は、それ自体は肯定的に捉えますが、入試範囲との兼ね合いをどうするか、という議論が後回しになっているかも知れません。
 実は東京理科大時代に、入試で責任的立場で仕事をしているとき、出題範囲の扱い、とくに教科書の発展的内容の扱いを文科省に電話で尋ねたことがあります。そのときは、今一つはっきりしない回答をもらい、困ったことを思い出します。結局、複数の先生方とも相談し、複数の教科書に載った発展的な内容はいいのではないか、と思ったことを思い出します(実際は無難な問題が出題)。
 今回の改定では、今までより扱いはもっと広くなります。そこで、今からこの問題をはっきりした形に整えておけば、新課程での入試のときに混乱しないで済むと思います。大学入試に関わる全国の関係者皆様の、この問題に対する関心が高まることを期待したいものです。
3月から4月にかけて「新体系・中学数学の教科書(上下)」と「いかにして問題をとくか実践活用編」を出しましたが、著者として注目してほしいことと読者として注目することには大きな違いがあり、驚きます。私としては、たとえば次のような部分にもっと注目してほしかったのです、それは未来永劫ないような感じがして、注目されることのギャップを感じます。
 中学数学の検定教科書や参考書での分配法則の証明は、3つの文字が正の場合だけを長方形の面積で示している。拙著ではその部分を最初にのべて、後でそれを用いて代数的な証明により、3つの文字が正負どちらの場合も証明していること。
 相似の導入が検定教科書や参考書にはない方法で、相似の中心と相似の位置の定義から組み立てたこと。
 想い返すと、「新体系・高校数学の教科書(上下)」で極限の導入をするとき、検定教科書の表現にεーδ論法の発想を含めた(もっとも注目してもらいたい)表現を書きましたが、一人の方からは「この方が誤解が無くて分かり易い」と言われたものの、後の多数の方々からは「生きた題材例と索引が充実している」という内容の指摘をもらったことを思い出します。
 かつて大学入試の国語で、「作者が一番訴えたいことはどこか、以下の1〜5から選びなさい」というような問題が出て、作者の答えと作問者の答えが違っていたことが何回かありました。最近は、作者がこの世にいないことを確認してこのような問題を作るようですが、こんなことを思い出した連休でした。
 実は、たまに行く池袋北口の(ロサ会館近くの)トンカツ屋さんは、非常に美味しいお店で有名です。そして海老ひれ定食の海老フライに対しては、塩とレモンをかけて食べてもらいたいそうで、いつも「塩とレモンで食べてください」と言われます。しかし、私はソース味が大好きで、そのようなアドバイスは無視して、海老フライにもソースをたっぷりかけて食べます。トンカツ屋さんの御主人が私の食べ方を残念に思う気持ちは、本を書いている人間が、一番注目してもらいたいことに読者があまり注目しないで残念に思う気持ちと、同じようなものだと思います。

私とG.ポリア

 近著「いかにして問題をとくか・実践活用編」を出してから、何人もの方々からG.ポリアとの関係を聞かれます。そこで、簡単に述べておきます。
 最初にポリアを知ったのは、20歳代の頃、学習院大学の助手の時代に研究対象を置換群論から組合せ論に移し、参照文献でポリアの論文を何度となく見たときです。当時、師匠の先生から「ポリアは組合せ論でも有名だけど、教育でももっと有名だ」と言われたことが忘れられません。
 ポリアの「いかにして問題をとくか」を本格的に知ったのは、代数や離散数学から軸足を数学教育に移してからです。私は当初から証明の重要性を述べ、数学マークシート問題の解法のように、プロセスを軽視してやり方だけを真似る学習を批判していました。ポリアの書で訴えていることと同じであることを嬉しく思いましたが、一方で特定の信仰の信者が教祖の言うことを絶対視するような表現はいやだと思ったこともあり、自分は自分の考えで行こう、と思いました。
 とは言っても、「条件反射丸暗記教育はダメだけど、(ポリアの)発見的教授法は大切」という主張はずっと展開してきました。とくに20歳の頃、永田 雅宜先生の「抽象代数への入門」(朝倉書店)を読んでいるとき、体の拡大の理論のところで、一般化して数学の問題を解決する面白い例を見て、「一般化」に興味をもちました。また振り返って、有限数学(離散数学)では「背理法」を多く用いますが、それは必然なのかを相当自問したことがあります。自分はよく背理法を使ってきたが、学習院大学の助手の時代に、フィールズ章をかつて受賞された小平邦彦先生の背理法に対する違和感を身近かで感じ、その気持ちも少し分かったからです。背理法に関しては東京理科大勤務時代に数学科の入試で「背理法はどのようなものかを説明せよ」という国語のような問題を出題して、世間から相当注目されたことも記憶に新しいです。その他、マークシート式数学問題と「特殊化」、3桁同士の掛け算の教育と「帰納法」、などなど、発見的教授法の立場から考えると、重要な話題がたくさんありました。
 今回の拙著では、算数+αの知識で発見的教授法必須項目の個々の話題をいろいろと述べましたが、振り返って高校数学の知識を仮定しての発見的教授法の書や教育系の論文はいろいろと発表されています。「とにかく易しく誰にも分かるように、日常の生活とビジネスへの関連を述べてください」という出版社の御意向からそのようになったのですが、当初は高校数学も仮定したいろいろ難しいことも書いていました。それを断腸の思いで次の機会に回して誰にも読めるように完成させたことは、振り返ってみると大変よかったと思います。実際、今の大学生は「背理法とは何か」を尋ねると、理系の大学生でもさっぱり答えられない者が大多数で、「逆は必ずしも真ならず」を聞いたことがある文系の大学生はごく少数になっている現実を把握しているからです。
 一方、ポリアの問題解決4つのステップは、数学問題の解法でのそれをこと細かくビジネスや生活にあてはめることには時間的な問題,、さらには複数の問題に対する優先順位を付けなくてはならない面などがあります。そこで「ポリア入門」を念頭に置いて、骨格を残しつつ、海外のトレーニングなどを参考にして、「数学の問題とは若干切り離して」と前置きしてから、日常やビジネスへの展開を具体的な例も用いて易しく述べたのです。
 本ブログをたまに読んでいる昔の友人2人から前後して手紙を送っていただき、「新体系・中学数学の教科書より今度の本は易しく読める」とブログに書いてあったけど、本当だった。新体系・高校数学と新体系・中学数学の教科書は証明を一切省かず、徹底的に書かれていて易しくない面もあったが、その同一著者と思うと面白いよ、という感想をもらい、やれやれ目標は最低限達成したかな?と思いました。
 私は今回の書に関して実は、「著者の名前が世間に広がるのでなく、とにかくポリアの名前が広がってほしい」と、編集者や友人皆に何度も伝えていますが、ポリアの考え方が日本の教育をはじめとする社会の再建の軸になってもらえると信じるからです。もっともポリアの本は数学だけ優秀でも中々読めません。哲学に興味をもちつつ、何度もゆっくり読んでいくと、素晴らしい味が少しずつ分かるものでしょう。
 今回の書の帯には、「いか問」を読んで挫折している人へ、これからポリアを読もうとしている人へ、誰でも読める!誰でも使える、応用できる!!と書いてあります。私や出版社の事前の宣伝にも、マイナスな面があることも甘んじて認めつつ、はっきりそのことを述べています。私の昔の院生から、「代数や解析や幾何や離散系の違いを浮き彫りにするような、先生が昔話していた発見的教授法からの分析を期待していたのに・・・」という連絡をもらいましたが、「いつか、そのような本を出すことを分かってもらえる文を前書きに書いておきましたが、本当にごめんなさい」としか、答えられませんでした。すると、「確かに大多数の数学嫌いな国民も、今回の本でポリアに関心を抱きますね。それをもって、日本の諸問題をいろいろ改革していこうという気持ちがよく分かります」という返事をもらい、ほっとほっとしました。
新体系・中学数学の教科書(上下)が完成したことにより、主に社会人・学生向け(あるいは進んで勉強する生徒向け)に書いた検定外中学・高校の数学教科書の執筆は、3年間に渡る作業の終わりとなりました。ここに、全4巻に渡るコンセプトをまとめて述べておきます。
 
1.戦後の検定教科書として扱った題材はすべて含むこと。順列・組合せ、2次曲線、統計なども詳しく記述した。円の性質のように、中学と高校を行ったり来たりした内容は中学に収めた。それぞれの上下巻に、丁寧な上下巻共通の索引を設けた。これにより、数学活用辞典として用いることもできる。
 
2.前後の繋がりを大切にして、「なぜ、これをここで学ぶのか」を理解できるように記述したこと。人類が自然数の概念を確立する過程で登場した「トークン」の発想を冒頭にもってきて、新体系・中学数学の教科書(上)を記述したのはそれゆえである。新体系・中学数学の教科書(下)の順列・組合せの節で数えることに徹底したのは、高校で扱う順列記号Pや組合せ記号Cを最初から使うことの問題点、すなわち一つずつ数えることが疎かになってはならない、という注意のメッセージでもある。新体系・高校数学の教科書(上)で論理の節を前にもってきたのは、「すべて」と「ある」の用法を早めにしっかり確立させたかったからである。それによって、たとえば新体系・高校数学の教科書(下)で扱った微積分の導入では、検定教科書より正確なεーδ論法に近い表現を用いることができたほか、最近の人達が弱いと指摘される論理力のアップを図る道をつくる配慮もあった。
 
3.公式や定理の証明をごまかさずに徹底的に詳しく述べた。新体系・中学数学の教科書(上)では、一部の場合に限定しない分配法則の証明や凹多角形の内角の和の証明を述べたり、作図文や証明を徹底的に逃げずに扱った。また、新体系・中学数学の教科書(下)で、相似の位置と中心から自分の頭で一から考えて相似の節を組み立てたこと、東大入試に出題されて話題になったレベルの円周率の評価や正多面体の分類定理やピタゴラスの数の分類定理の証明も分かり易く述べたのも、その気持ちゆえである。新体系・高校数学の教科書(上下)では、素因数分解の一意性、一般のn個の正の数に対する相加平均は相乗平均以上であることの証明、自然対数eの定義から(eのx乗)の微積分までを検定教科書と違って途中省略せずに述べたこと、等々もそれゆえである。
 
4.出前授業等で生徒から喜ばれる、生きた応用例をふんだんに用いた。物差し一つで距離を測ること、誕生日当てクイズ、あみだくじの仕組み方(以上、新体系・中学数学の教科書)、ゲーム理論的なグーとパーだけの遊び、消費者金融のグレーゾーン金利廃止前後の元利均等返済による違い、トイチ金融の恐怖の説明、推移確率行列から説明する市場の均衡、3次元空間における線形計画法による最大利益問題、放射性物質の崩壊などにも現れる微分方程式、1964年と1985年の阪神タイガース優勝年度の特徴付け、将棋は後手が有利になったと言えるのか?(以上、新体系・高校数学の教科書)、等々を含む様々な例を紹介した。
 
5.「ミス無し」を目指して、他の著書と比べて慎重なチェックを何度も行った。編集にあたったブルーバックスの部長さんや校閲を担当してくださった皆様は慎重なチェックを丁寧にされる方々で、新体系・高校数学の教科書(上下)の本文で修正した部分は未だ全く無い。(奥付け等では版を重ねる度に記述が変更される。)新体系・中学数学の教科書(上下)でも、「ミス無し」を目指して何人もの方々の協力があった。貴重な意見を述べていただいた皆様には、本当に頭の下がる思いである。
 
 

数学書の執筆は一段落

いろいろな仕事に追い掛けられながらも、いろいろな人達からの励ましもあって、
今月下旬と来月上旬に、それぞれ以下の書を出版するところまで漕ぎつけました。
「新体系・中学数学の教科書(上・下)」(講談社ブルーバックス)
「いかにして問題をとくか〜実践活用編」(丸善出版)
前者では、数量編と図形編の垣根を乗り越えて、証明を重視し、ピタゴラス数の分類の証明もしました。
ピタゴラスの数とは、a×a+b×b=c×c となる自然数a,b,cの組のことです。
また相似の節では検定教科書とは趣を変え、相似の中心、相似の位置、から組み立てました。
後者では、58年前に初版のポリア著「いかにして問題をとくか」(丸善出版)がやや難しいことに配慮して、
それと日常生活やビジネスとを結ぶことを目的に、誰にでも読めるように平易に書きました。
「ビジネスへ展開するポリアの問題解決4つのステップ」などが柱です。「算数+α」を予備知識として、
ポリアと私を結ぶ組合せ論的な易しい発想も用いましたが、日常生活の話題を大切にしました。
どちらも社会人向けですが、前者より後者の方がより平易に書いています(普通の人は逆に想像?)。
それほど後者を易しく書いた理由は、いままで数学に振り向かなかった人達にも、
ポリアの発見的教授法の世界に少しでも関心をもってもらいたかったからです。私が17年間に渡って、
終始、試行錯誤と論述を強気で訴えてきた支えの一つには、ポリアのその書がありました。
一段落して、トマトをたくさん買ってきました。本当に痩せるか疑問ですが、毎日食べてみましょう。

.
芳沢光雄
芳沢光雄
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

標準グループ

登録されていません

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事