m12ozの日記

お絵描きと粘土遊びで考え感じた文字。

Syukaki/朱柿

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椿。

Venice Classic Radio
Allegro con Vivacita'. / Luigi Boccherini.



庭の日陰にある椿は先日より紅の色を咲かせている。
小さく細長いその花弁は日陰で、けなげに咲く。父の好んだ花も椿だった。

実家には父の墓はある。
今は老いた母は、父が逝った十数年後に抗する事が出来ず、兄と相談して墓を造った。
父は永平寺出の坊主であったが、母との出会いでそれを捨て去り、英文学を選びウィリアム・ワーズワースの研究と、野見山朱鳥と俳句に関する評論集一冊を残し逝った。
そんな父の意志として、母をも含めて僕達には暗黙の了解で、お墓は必要ないとの考えがある。だが
親戚、知人、隣近所の視線と母自身の何かに耐え忍んだ母は墓を造るに至ったが、まだ飛んでいない時の母は一度だけ「あれはお墓ではない、墓だ」と僕に言い切った。「お」を付けない「墓」に僕は納得した。
飛ぶ事が多くなった母は、何でも無い雑草の花を手に今でも時々思い出したように「墓」に向う。僕もそんな母に従い「お墓」ではない「墓」に向うことはある。

二階のガラス戸越しに、そんな事を思い、椿を見た。

Sonata Moto Perpentuo-Allegro Vivace. / Nicolo' Paganini.

朱柿の上。

CNEMIX (www.cinemix.us)
Dolls. / Joe Hisaishi.



昨年秋、朱柿の木は大きく剪定されて太い幹を残すだけになった。
机前のガラス戸を明けての毎朝の眺めも大きく変わった。その切られた大きな幹の上を電線が横切る様子は、その事で全てを曝け出し、今朝は響く雨戸とガラス戸を開け放つ音にも関わらず、その電線に鳥が一羽とまっていた。その大振りの鳥は、大きくその羽をふくらませ寒さに耐えるように丸い褐色に固まり、動く様子はない。
朝日を受ける絶好の位置での固まりだが、まだ、もう数分の時間が必要だ。
今朝は強く冷える。

Venice Classic Radio
Concerto per violino in fa Maggiore D69-ll. / Giuseppe Tartini.

白菜畑。

radio standardo
Invitation 1958. / John Coltrane.
Centerpiece. / Milt Jakson and John Coltrane.
How Deep Is The Ocean. / Bill Evans.


暖かな一日だった。
午後、昼食を抜きにしてあの白菜畑の観察に行ったが、どこにも白菜は無く、もう、何も無かった。
なんにも無く、外側から包み込んだ枯れ果てた、それが棄てられてるだけだった。
昨夜の雨に打たれたそれは、熟し果てひどく濡れた黒褐色に変色し、触ると、ずるりとする腐りの感触を残した。

In A Mellow Tone. / Ray Brown Trio.

19度、湿度62%、快晴。

帰り着いた。
一ヶ月間の外出だった。今朝早く目覚めて朱柿を見た。期待を裏切る事無い見事な茂りと朱の無数のその実が待っていた。所々の紅葉、重く連なる朱柿、数十の小鳥が熟れたその実を啄む姿も観察する事が出来た。出かける前に想い描いた朱柿だった。
コーヒーを入れ、たばこを吸いながらもう一度その朱柿を、っと願いガラス戸を閉じ、階下へ降りた時、姉が僕を呼んだ。老いた隣の夫婦が柿の木の剪定をしているので手伝って欲しいとの事。向こう隣の主人等もその準備を終え、まさにそれは始まる。

もう、ガラス戸を開けても早朝の眺めは無い。裸にされ、多くの枝を切られ、朱の実も無く数枚の緑の葉を残し、辛うじて二個、朱の実が陽を浴びているだけである。その作業を僕も手伝った。
朱がたわわに実る一枝を貰って玄関に活けはしたが、今朝の朱柿はもう舞い戻って来る事は無い。僕の頭部の頼りない細胞の奥に記憶した。
一羽の黒灰色の尾が長い鳥が今朝まで朱柿の木であった太い幹に来て、「キーイイ、キーイイ」と盛んに真っ赤な口腔を見せて鳴き放ち、そして飛び去った。真っ赤な口腔のすぐ上にある少量の脳細胞にもう熟れた朱柿が無い事を記憶しての飛び去りだろう。記憶と云う事ではなく確認だけなのかもしれない。
僕は朱柿不在の確認で終える事はできない。記憶しなければ。不確定な記憶になっても何時かその朱を手繰り寄せる事があるだろう時のために。記憶しなければならない。

20度、88%からの旅。

体調は今日の曇り空。思わしくない。
何も無いのに混乱し、頭蓋骨の中にある細胞が少し消え、とても疲れる。
しばらく、療養の旅に出ます。
机越しに見える朱柿の木には無数の実が少し色付き、その葉は深い緑だ。多分、実もその葉も美しく色付く頃にまたPCに向う事が出来るだろうと思えるが。
梅の木の下に埋め込まれた高麗の石、無数に並ぶ握られた粘土塊。
何なんだったのだろうか。

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