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(公式HP)
2010年1月12日
一昨年、東京オペラシティにヘイリーのリサイタルを聴きに行った。
彼女がまだ20才の時である。
CDは車の中でよく聴いていて、助手席でヘイリーが歌っているつもりになって悦に入っていた。
テレビドラマ「白い巨塔」の主題歌としても彼女の歌う「アメイジング・グレイス」は素晴らしかった。
映画「ローレライ」の中で「モーツァルトの子守り歌」が天から流れて来た時はフリーズした。
彼女の声は天使の歌声とも称されるビブラートのほとんど無い、透明感に満ちた響きである。
当日はちょっと奮発して前から3列目の席を予約した。二人で16,000円。
この世で天使の歌声が聴けるのだ。チケットはケチッてはいけない。
顔がよく見える場所に座らないと後々、天国に行ってから「やあ、ヘイリーさんその昔オペラシティではどうも」と言えないじゃありませんか。
会場のざわめきが静まって、ヘイリーがにこやかに舞台に進み出てきた。
聴衆の期待が最高に高まった瞬間だが、
「あれっ、手にコップを持っている。透明な液体だけどまさかウオッカじゃないだろうな」。
しかも素顔、ノーメイクに近い。ついさっきまでスタッフと雑談でもしていたような気軽な雰囲気。
オペラ歌手だとほとんど「塗り壁」状態で、大袈裟に演技しながら舞台に出てくるでしょう。
ヘイリーはコップを小さなスタンドの上に無造作に置くと、あらためて聴衆に礼をして歌い始めた。
演出がほとんど無い。歌の力だけで舞台が持つんですね。
最初の曲目は忘れた。
母国ニュージーランドの曲やオペラのアリア、沖縄の唄「花」、おなじみ「アメイジング・グレイス」などを次々と披露してくれる。
まぎれも無い澄んだ「天使の歌声」がそこにあった。
なぜか中原中也の「汚れっちまった悲しみに今日も小雪の降りかかる・・・」の詩が頭の中によみがえる。降りかかる小雪はヘイリーの歌声だ。
ヘイリーはコップの水で少し喉を潤す(さよう、水だったんです)。
彼女の歌の魅力はやはり、高原を流れる渓流のように純粋で澄んだ歌声にある。
彼女が幼いとき、絶対音感を持っている事に気がついた教師が歌の道に進む事をアドバイスした理由が良くわかる。絶対音感の持ち主は雨やクラクションの音を音階で認識する。
聴いているうちに心が洗われていくような心地よさがある。
そしていつの間にかステージと客席がこの世のパラダイスのような、平和で愛に包まれた世界になる。
「ブラボー」「娘になってくれーー!」
終幕の時、なかなか帰ろうとしない聴衆から3回もアンコールのリクエストがあったのだが、ヘイリー
は困惑するような、うれしいような笑顔でその都度「ワンモア?」と言った。
その表情があどけない少女のそれで、いっそう愛おしくなった。
相反する事を言えばもう少し「深み」が欲しいのだが20才の歌姫にそれは無理というものでしょう。
コンサートのあとオペラシティ53階にある夜景の美しいイタリアンレストラン「トラットリア・ベラビスタ・サバティーニ」で食事をしたが、コンサート割引料金があったのも良かった。
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