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ヒョン陛下とコン内官は部屋を後にした後、
残ったヘミョンとシオンしばらくの沈黙の後ヘミョンが緊張しながら言った
「こうしてお会いできるとは思いませんでした。」
「そうですか?僕はまたお会いできると信じていましたよ。」
「あなたは変わらないわ。」
「女帝陛下もあの時ままで…。」
「今は2人だけなのに昔のようにヘミョンとは呼んで下さらないのね?」
悪戯っぽく微笑みながら言うと
「いえ、一国の君主に軽はずみな事は、でもあなたが即位すると聞いた時、手の届かない人なんだと
初めて感じました。」
遠い目で自分を見るシオンに寂しさを感じたヘミョン。
「私は何も変わっていないのよ、あの日から今までも…。」
「ヘミョン…」
「やっと呼んでくれた。」
「はーっ 駄目だな、ヘミョンには敵わないな。」
「シオンさんが留学先で飛び級で首席で卒業したって聞いてはいたけどさすがね。」
「ヘミョンだって2年の間に留学や奉仕活動で海外を周っていた事も聞いているよ。」
「それってお父様のから情報でしょ? いつ韓国へ?」
「2年前だ。ちょうどヘミョンの留学と入れ違いだな。」
「私には何も連絡してくれないなんて薄情よね。」
「決めたんだ。あの日、必ず君に似合う男になるまでは会えないと。」
「シオンさん」
「あの頃は僕も君も幼すぎて自分の力のなさを実感したんだ。」
「お母様に身分違いと言われて私は反抗して…、でも仕方がなかったのよね。」
「君の将来を思って言われた事だった、それにヘミョンを思うのなら納得させるだけの人間になれと
今ではあの言葉を励みにここまでやってこれたんだ。」
シオンは懐かしそうに笑いその様子に時間の経過を感じたヘミョンは
「さっきは父からあなたを紹介されて驚いたわ、仕事はお父様の後を継いで?」
「いや、ゆくゆくはそうなるが、父が元気な内は好きにさせて貰ってる。今は文化省に臨時職員として
勤めている。」
「意外ね?どうして文化省へ?」
「留学中にその国の文化に触れる事が多くてね、海外では自国の文化財に重き置くが、韓国では認識が低く
世界から立ち遅れているんだ。
自国の歴史的文化財が放置されている事を知って、その内に次世代への文化の継承を、お手伝い出来ればと
思って入省したんだ。」
「そうだったの?だから父もあなたを高く評価していたのね。」
「そんな、まだまだだよ。それより公務の方は大丈夫なのか?さっきも…。」
「心配性ね?大丈夫よ。今はシンがいないから忙しいだけ、最近も女帝陛下に慣れてきたしね。」
「ヘミョンは頑張り過ぎるところがあるから、上手くセーブしないとダメだぞ。」
「ありがと。」
「あの…。さっきの話なんだけど、ヘミョンはソン氏の勧める夫君候補に会ったことあるのか?」
「ええ、今思えば就任のパーティーで候補らしきご子息を紹介されたわ。気になる?」
「気にならないと言えば嘘になる。」
「随分素直ね。」
「強敵出現って感じだな。」
「強敵?」
「あぁ、僕もその資格があるなら是非、参加するよ。」
シオンは少し冗談めかしてヘミョンに言うと
「シオンさんだって名家のご子息でしょ?」
『ふっ』と笑ったが、先程まではとは違い 突然、真面目にヘミョンを見据えて言った。
「正直、不安だった。ヘミョンが即位してから、君は僕をどう思っているか?僕は君を望める程の男なのか?」
「シオンさん…。」
「それに、ヒョン陛下や父からヘミョンの大変さを聞く度に胸が痛んだ。
即位した経緯も聞いて、『何故ヘミョンが背負わなければならないのか?』って
役に立ちたいんだ。今はすぐに君のそばにいる事が叶わないなら、少しでも力になりたい」
「シオンさん…。私は宮家に生まれ皇女としての天命を受けて女帝となったの。でも、あなただけの為に
そばにいる事が難しくなったけど、私にできる事はあなたがいつも幸せでいてくれる事を祈るだけよ。」
「僕は幸せだよ。こうしてヘミョンの役に立つことができれば、それだけで多くは望まない、だから気にするな。」
シオンの変わらぬ思いに思わず立ち上がり駆け寄ったヘミョン、そんな彼女をシオンは優しく包み込んだ。
「シオンさん、ありがとう。」
2人はお互いを思い、必ず一緒になろうと誓い合うことはせずに、今ある現実を受け止め、互いの幸せを
祈ることが、精一杯の愛の証だった。
「これからは王族会の事でヘミョンと会える。君の姿が少しでも見る事ができる。」
「シオンオッパったら…」
嬉しそうに恥ずかしそうにしているヘミョンは皇位に就いてはじめて心からの安堵感を味わっていた。
「その呼び方も久々に聞くと新鮮だ。」
「ふふっ。」
「この後の予定は?」
「何も入れてないわ、コン内官が気遣って少し予定を調整してくれたの」
「そうか、ならばしばらくこのまま陛下を抱きしめていてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ。」
ゆっくりと静かな時間が流れ、そこだけが束の間の特別な空間となった。
・・・・・・・
シオンは、ヘミョンとの思いがけない再会を惜しむように
「そろそろ行かなきゃ。」
「そう…。」
少し寂しそうに見つめたが、すぐにいつものヘミョンの笑顔になり
「じゃあ、また。シオンさん。」
と言って手を出すと、それに答えるようにシオンも手を重ね熱い握手をしながら
「ええ、ではまた、女帝陛下。」
と互いの立場に戻り、シオンは部屋を出て行った。
『これでいいんだ』と一言つぶやき再び歩み始めると、そこには皇太后ミン妃が女官を従え立っていた。
そのままシオンは歩み寄ると
「……。」
「お元気でしたか?」
以前のピリピリした感じとは違い、優しく微笑み懐かしそうにこちらを見ていた。
「はい、ご無沙汰しております。」
「少し、お話できますか?」
「はい。」
そう言って、ミン妃が先導するようにして、宮殿にある庭先のテラスまで歩いて行った。
「ご立派になられて…。」
「いえ、私はまだ学ぶべき事が多い身です。」
「ヒョン陛下からあなたのことを聞き、もしやと思いました。今ではお父上の片腕として王族会にも尽力している
とか、あなたの活躍を聞くと、あの時言った私の言葉を後悔します。」
「そのようなお心遣い、ありがとうございます。
そして、あの時の皇太后様のお言葉を胸に刻み、日々精進すべきと今までやってこれたのです。
お気に病む事などありません。」
ミン妃はこの青年の変化に目覚ましい物を感じ、あの時には無かった落ち着きと信頼感が
『ヘミョンが彼の元へと望むならば、もう反対することはない、できれば温かく見守り仲良く添い遂げれば』
とも思った。
「女帝陛下とはお会いになったのでしょ?」
「はい、先程。ヒョン陛下のご厚意でお目に掛かる事ができました。」
「そう、ヘミョンはあなたの事忘れていないわ、あなたも望むなら私が…。」
「皇太后陛下。」
シオンは真っ直ぐにミン妃に向けミンの言う言葉を遮るように
「今、私に出来ることで、女帝陛下や宮家を御支えるのが、幸せなのだと思っています。
多分、女帝陛下も同じ思いと思われます。それ以上は今の私には望めませんし、望んではいけないと
思っております。」
「それでいいのですか?」
「はい。」
シオンは揺るぎない強い目で言い切った。
「ならば、今はこれ以上言いません。でも、私に力になれることがあれば、遠慮無く申しなさい。待っていますよ。」
「そのお言葉だけでも、心強くありがたく感じ入ります。」
シオンは今までにない皇太后の心遣いに感激し、一層、宮家への忠誠を誓いヘミョンだけではなく
この宮家に対して、私欲や権力だけの輩に立ち向かう決意をした。
ヘミョンの苦悩 完
*お知らせ*
昨日、新キャラの”シオン”についてのお話ですが、韓国では似たような発音では”シウォン”が妥当の様です。
しかし、私の勝手な都合で結局このまま”シオン”としてお話を進めようと思いますので、ご了承下さい。
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