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ドアを開くと2人の内人が立っており、先程の声とは違う内人が
「殿下、お料理を中へお運びしてもよろしいでしょうか?」
「え、あぁ…。」
シンは2人の内人を部屋に招き入れた。
1つのワゴンには七面鳥などの料理やクリスマスケーキなどを乗せており、
もう1人の内人は顔がよく見えないように俯きながら飲み物を乗せたワゴンを押して入ってきた。
「殿下、私は先に下がりますが、この者が殿下のお食事の給仕をさせて頂きます。」
とシンがドアを開けてから一向に口を開かず、俯き加減の内人のみが残り、
もう一人の内人が部屋を出ると、シンが気になる内人が
「殿下…。お、お食事を…。」
と言うのと同時にその内人の手首を掴み、その拍子にゆっくりと内人が顔を上げると
「チェギョン?」
「シ…シン君、ただいま。」
「どうして、お前がここに?」
「あのね…、お姉さまが極秘で韓国に一時帰国させてくれたの。」
「……。」
「シン…君?」
チェギョンはシンがこのように突然の事を怒ったと思い、恐々シンの顔を覗き込もうとすると
「チェ…チェギョンなんだよな…、本当にお前なんだよな…。」
とシンはこの状況がまだ幻を見るようで、信じ難くゆっくり確かめようと手をチェギョンの頬に
当てようとすると、チェギョンはその手を優しく包み込むように、重ね合わせてそのまま頬に当てた。
「本物だよ、本物のシン・チェギョンよ。」
と言い終わらないうちにすぐさま、シンはその体を強く抱き寄せ、チェギョンである事を更に確かめた。
「なんだよぉ…、脅かすなよぉ…。」
「ごめんね、シン君…。」
シンはようやくこの腕の中にいるのは紛れもない、この世で愛すべき妻である、チェギョンがいる現実に
落ち着き、ようやくその強く抱きしめた腕を緩めると
「はぁ…、一生分の幸運を使った気分だ…。」
「そんな、大袈裟なぁ…。」
妻は相変わらず、愛くるしい笑顔で俺を見つめそう言うと
「さ、折角のお料理やら、ケーキよ!食べましょ?」
『ふふっ』とシンは笑い
「さすが、それでこそシン・チェギョンだな!」
チェギョンはシンの手を取って、ワゴンを引き寄せてソファー前テーブルに料理を並べると2人きりの
クリスマスパーティーが始まった。
「まずは、乾杯ね。」
チェギョンが立ち上がり、シャンパンを取りに行こうとすると
「いや、俺が持ってくるよ。」
シンが立ち上がって、シャンパンのあるワゴンまで行くと、ワインクーラーの下にカードが挟まっており
それを手に取ったシンはカードを開くと
『dear シン
happy MerryChristmas!
突然の事で驚いたでしょ?私たち家族からのサプライズプレゼントは気に入ってくれた?
今回は女帝陛下の特権を最大限に生かした特例処置よ、但し東宮殿限定だけどね!
チェギョンも急遽の極秘帰国だったけど、シンに会いたいって言ってたから、2人へのプレゼントね
ああ、それから、明日の正午までは、誰も東宮殿のプライベート空間には立ち寄らないように
きつく言ってあるから、心置きなく2人の時間を楽しんでね ♪
明日の昼食は皆で一緒に頂きましょう。
では、よいクリスマスを…
へミョンより』
シンは、やはり『何かあるとは思ってたけど…してやられたな…』まだまだ姉に頭の上がらない弟は
クリスマスプレゼントというよりも、先日の自身の証人喚問や、チェギョンの異国への出国を余儀なく
させた、自分達への懺悔も含まれるであろうこのプレゼントに心が熱くなった。
「シン君?どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。」
シンははシャンパンをグラスに注いで、二つのグラスを持ち、ゆっくりとソファーに腰掛けて
1つをチェギョンに渡すと
「シン君、ありがとう。」
嬉しそうな妻の顔を見ると、すぐにでも抱きしめたくなるのだが、そこは昨夜の電話で話した
妻のクリスマスのしたい事を叶えるために我慢をし
「さ、改めて、メリークリマス。」
『カシャン』
2人のクリスマスの乾杯が終わると、シンはシャンパンを口に含みながらゴクゴクと横で飲む
妻の唇から喉にかけてシャンパンを飲む様子を注意深く見ていると、少々官能的な感覚にとらわれたが
彼女は前の料理にフォークで刺してシンに『あーん♪』と夫に向けると、シンのよこしまな感覚は
すぐに消え去り、シンも恥ずかしさがあって
「え、いいよ。自分で食べれるよ。」
「いいじゃない、ね♪」
少々強引でも、この笑顔と上目遣いの目にシンの拒否などは通用せずに、チェギョンの差し出す
フォークの先にある物を口に入れた。
「美味しい?」
「うん、美味しいよ。」
「よかった…、これね、私が料理長さんに少し手伝ってもらって作ったのよ。」
「そうだったのか?」
「うん!」
妻はちょっとハニカミながら、嬉しそうにシンの反応を喜んでいた。
「マカオに行って、少しだけどチェ尚宮お姉さんに、少しだけ料理教わってるのよ。」
シンは楽しそうに話す妻の表情を見ながら相槌を打ち、妻の言う事に聞き入っていた。
「本当はね、妃宮はこういう料理って必要ないし、しなくてもいいんだけどね、
でもマカオにいる時だけって約束で、ちょっとだけ家事を手伝ってるのよ。
シン君に私の手料理とか食べて欲しかったから、今日はちょっと無理を聞いてもらったのよ。」
「そうだったんだ、嬉しいよ、ほんとに。」
俺は妻の頬に手を当てて、ゆっくり額に軽くお礼のキスをした。
「ありがと、お前が頑張ったご褒美だ。」
妻も少し驚きながらも、頬を赤く染めて、恥ずかしいのか慌てて
「あ、シン君、これも食べて!」
と色々勧められるままに、料理を口にして、食事がひと段落した頃
シンはチョギョンを胸に抱き寄せて、肩を抱いていると、チェギョンもそのシンにもたれ掛るように
寄り添っていた。
「今日は、最高のクリマスだな…。」
「そうね、夢の様だね…。」
「うん、でも、夢でもなんでもない、触れたくて仕方なかったお前がここにいる…
それがどんなに幸せか…」
「うん、私も前には決してシン君は、振り向いてくれないって思ってたから、
今でも少し信じられない気もするの。」
「チェギョン…。」
シンは今までの2人の関係が誤解とすれ違い、何よりも互いの気持ちに早く気付けなかった事が
今もこうして、妻の心の棘として残っているのだと思うといたたまれない気持ちなった。
「最初はお前の存在を、俺は邪険に思っていたはずが、ついつい目はお前を追っていた
そんな、訳の分からない自分の気持ちを持て余していたんだ。
でも、本当の気持ちに気が付いた時にはもうどうにもならない程にお前を追い詰めていたんだ。
だからお前をマカオになんて…。」
今は後悔しか残らない事でもあったシンは
「ごめんなチェギョン…。」
「シン君…。」
「俺は、お前に酷い事したと思ってる…。」
「いいの…今は私を見てくれてるでしょ?」
「ああ、お前しか見えない…、こんなにお前を愛してる自分を知った時は驚いたけど
嬉しかったんだ。」
突然、ふわっとした物がシンの体に包み込んだ。
それは片時も離れた難く、シンがこの世で一番大切なチェギョンが優しく彼を抱きしめると
「私も、シン君を愛しているわ、これからもずっと…。」
ゆっくりと、抱きしめあった腕を解きお互いに見合うとシンが
「チェギョン…
変わらぬ永遠の愛を、俺はずっとお前だけに送るよ。」
ゆっくり、シンの顔がチェギョンの顔に近づき、優しく口付けた。
最初はゆっくりと互いの唇の感触と、柔らかな温かい気持ちを味わう様に交した口付けは
やがて、啄ばむように微笑み合い、次第にシンの腕はチェギョンの体をすっぽりと包み抱くと
シンは、チェギョンと最後に抱き合ったあの日の、彼女の匂いや温かさを再び実感すると共に
またあの、甘く熱い思いがシンの心を支配しだすと
「チェギョン、俺の願いを聞いてくれ。」
チェギョンはシンを一心に仰ぎ見つめると
「今夜は、お前を抱きしめて離したくない…
お前と一緒に溶け合いたいんだ…
いいか?…」
チェギョンも望んでいた事とはいえ、口に出して言えずに静かに、頷きシンの首に手を回すと
それが合図になったのか、優しく宝物を扱うようにゆっくり抱き上げ、ベッドに横たえると
「チェギョン…愛している。」
「シン…。」
今度は深く長い口付けをしながら、身にまとうものを脱ぎすてて
2人は離れた時間を埋め合わすかのように抱きしめ、互いの体温を肌を通して存在を感じ合い
再び見つめ合うと
「シン…くん、私、幸せよ…。」
チェギョンは嬉しくなって一粒の涙を流すと、シンはその涙を指で拭い、額にキスをして
真っ直ぐにチェギョンの瞳を見つめると
「俺もお前とこうして、いられる事が幸せすぎて怖いくらいだ。」
チェギョンはシンの切なく愛しいその目を見ると何も言えずに、シンに抱きつき
「今夜は絶対私を離さないで…お願い…。」
「チェギョン…。」
2人はひたすらにお互いへの愛を最大限に与え合い、それを必死で受け止め合って
再び永遠の愛を誓う、熱く、甘い、切ない聖夜の夜となった。
【聖なる夜 完】
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