空を見上げて

諸事情でブログを休止しておりお越しいただいた皆様すみません<m(__)m>

母乳部隊 PHD企画

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全2ページ

[1] [2]

[ 次のページ ]

PHD 変わらぬ想い

イメージ 1



「ゴホッ、ゴホッ……ううっ…ぐっ…。」

「如何なさいましたか?殿下。
 まだ、咳がお辛いですか?」

「アッ…ジョ…シィ…、ゴホッっ…ゴホッ…、
 オ、ォン…マァ…、オォ…ディエ…ヨォ…。」

「殿下…。
 皇后様は正殿においででございます。」

「ゴホッ…。ゴホッっ…ン。
 オォ…ンマァァ…。オンマァァ…。」

「殿下…。」

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

「シン君…、シン君…。」

僕を呼ぶ声に導かれて、僕はゆっくり瞼を開けると

「シン君、こんなところで寝ちゃ、あの子たちみたいに風邪引いちゃうよ。」

深夜に照度を落としたダウンライトの灯りと、加湿器から出る蒸気音の中
部屋の脇にある一人掛けソファーに、身を委ねてうたた寝していた僕を、
見かねた彼女が起こしてくれたようだ。

「ん…あぁ…、いつの間にか寝ていたのか…。
 で、熱は?下がったか?」

「うん、もう大丈夫だって。
 シン君も私のピンチヒッターの公務のあと執務室に籠りっきりで、大変なのに……。」

「構わないさ、それであの子たちの傍にお前がいれるなら。」

「ほんんと、ゴメン。
 後でコン内官アジョッシに聞いたよ。
 かなりタイトなスケジュールだったって…。
 私が公務行けない分シン君に負担掛けちゃったネ…。」

本当に申し訳なさそうに眉をハの字にして、詫びる彼女にさっきの夢のせいだろうか?
昔の自分を思い出していた。

5歳でいきなり、見ず知らずで大人ばかりの世界に独りぼっちにされて、ある時熱を出した
僕は、精一杯の声で母上を呼んだけど、母上は僕の傍には来てくれなった。
今となっては、皇后という身分でわが子とはいえ、簡単に皇太子のいる東宮殿に来る事は
出来なかった。
大人たちの事情があったとはいえ、あの時の孤独感は今でも、心に冷たく響く。

だからせめて、我が子達にはこんな思いはさせまいと、彼らが成人するまでは
僕ら親子4人で当たり前に過ごせる様にと、皇帝に即位して、早速法度も変えた。

「誰だって、病気の時は心細いだろ?」

「そう言えば、さっきシン君『オンマ』って寝言言ってたよ。」

「……。
 そんな事言ってたか?」

「うん、ここにさっ、皺寄せて難しそうな顔してさっ。」

そう言うと、自分の眉間を狭めて僕の真似をする彼女に…。

「そんなに怖い顔してたか?」

という言葉に『ウンウン』と彼女は首を縦に振り頷いた。

「そっか…。」

そう言って、愛くるしい我が子たちが眠るベッドに近づき、いっぱいかいた汗を
拭うように額に掛る髪をかきあげると、くすぐったいのか『ニコッ』と微笑んだ。

「何も双子だからって、揃って熱出す事もないのにね…。」

僕の隣に寄り添うようにして、子供たちを見ながら困ったように言う口ぶりとは
真逆に彼女は柔らか微笑みで愛おしいそうに、彼らの額にキスをした。

幼かった僕が欲しくて望んでも、手に入らなかった、それを目の当たりして
少し羨ましかったのか思わずポロリと口をついて出た。

「この子たちが…、羨ましいな…。」

「ん?」

「いや…、オンマを無条件に独占してるから。」

「やだっ…、シン君子供返り?マザコン?」

チェギョンは僕の意外な反応にギョッとした様子になっていたが
そんな彼女の様子に、僕は自然に笑みが零れて更に冗談ぽく言ってみた。

「子供返り出来るならイイかも?」

皇帝となって冗談とは無縁となりつつある、夫を神妙な面持ちで見つめ、おもむろに
手のひらを僕の額や、頬、首周りにペタペタ触れて

「やっぱり、熱はないわね…。」

「なんだよ…。」

それでも、不思議そうに見るチェギョンに軽く微笑んで

「心配するな、マザコンになる程、僕に幼少期の母上の記憶は無いよ…。
 だからかな…、この子たちにはオンマの優しい記憶を残してやりたい。」

その言葉にやっと納得したのか

「そっか…。
 うん…、そうだね…。」

そう言ってしばらく、2人して子供たちの寝顔を見ていた。
そして、チェギョンがポツリと呟くように言うんだ。

「シン君の記憶には残って無いだろうけど、ホントは皇太后様も、きっとこうして
 シン君の傍に居たかったんだろうな…。」

彼女の言う事は理解は出来る。
ただ…、僕には幼少期からのトラウマというか、そういった親子の絆というものが、
心の核の部分で腑に落ちてないのかイマイチすんなり未だに落ち着かない。
そんな僕の様子をチェギョンは察したんだろう

「シン君もちゃんと愛されてたんだよ。だから大丈夫。」

そう言ってその小さな体で僕を包み込むようにして抱きしめくれた。

「オンマはね、子供を無条件に愛する事が出来るんだよ。
 私もこの子たちのママになったからこそ、今は皇太后さまの思いがわかるよ…。」

そう言って、幼子に話す様に僕に語りかける。

「ママの思いはみんな一緒。
 こうしていつも抱きしめて、『愛してるよ』って子供に伝えたい。
 変わらぬ思いなんだよ…。」

子供の頃の僕は凍えるような寒い世界しか知らなかった。
大人の僕は、チェギョンによって人を愛する事を知って、本当の幸せを感じた。

「なあ、チェギョン。」

「何?」

「この子達の風邪が治って、仕事のメドがついたら、海にでも行くか?」

「どうして素直に温陽の御用邸に行こうって言えないの?」

「こういう時は何も言わず『わかった!』って言えよ。」

「ふふっ…♬
 うん…、わかった。
 この子たちも喜ぶね。」

「いや、父上と母上の方が喜ぶよ。」

「そうね…。」

そう言って子供たちを2人して見つめながら、僕はこの優しい温かな変わらぬ想いが
ずーっと続きますようにと願った……。

-END-


あれから数年後、ある瞬間にいきなりあの時の光景が重なった。
それは俺が結婚し、ある時大人たちの思惑によって義愛合にチェギョンと俺は閉じ込められた。
仕方なく同じ布団に入る為にチェギョンが着こんでいた衣装を脱ぎ、身軽な衣服になって俺に背を向け
横になった様子が、あの幻想的な天女の後ろ姿が突然浮かび、あの刺激的な時間に引き戻された。

『まさか、ありえないよな…。
 でも…。』

今まで女性の後ろ姿を見て、こんなに釘付けになったことはなかったし、あれは夢の話と終わったはずなのに
そうは思っても目の前にあるその華奢な背中が、気になって思わず手が伸び掛けた。

『あの時の天女はお前じゃないよな?』

そんな事を思いながらシンは悶々とし、あのパーティーからチェギョンのちょっとした仕草や表情さえも
気になって仕方がなく、シンは邪な思いを振り切るように起き上がると

「どうしたの?」

「ほっとけ!」
『俺はどうしたんだ?
 コイツのことばかりが気になって仕方ない。』

「こうなったら、皆の期待に応えようか?
 折角だし、どうだ?」

困惑するシンは思わず今の気持ちをそのままに気が付けば口走っていた。

「冗談はやめて。」

『俺は何てことを言ってる?
 ええい、こうなれば思い切って聞いて見るか?』

「本気なら?」

「離婚したら本当に好きな人とすればいいじゃない。」

『なんだとぉ?
 本当にってじゃあ、お前は誰か好きな奴がいるのか?』
そんな思いから、シンはとんでもない事をチェギョンに言ってしまった。

「分かってないな
 男は女と違って好きじゃなくても出来る。」

「いい加減にしないと許さないわよ。」

「こうなったのもお前が悪いんだぞ
 俺と仲のいいフリしないからだ
 お前のせいだぞ。」
『ち、違うんだ、あぁ、俺って何言ってるんだぁ?』

「冗談じゃないわ、仲良くするなんて無理よ
 嫌がらせばかりするくせに…」

チェギョンは手元にある枕をシンに叩きつけると

「最低男!!」

と言い放ち、胸元をパタパタと仰ぎだした。

「なんだと…。」

言いかけた言葉が胸元を仰ぎチラチラ見えそうなチェギョンの素肌がシンを黙らせて
急激に上がる心拍数にシンは、ますます月夜の天女かと見紛うばかりにあの時の自分自身に引き戻された。

『や、やめろよ…
 でも、本当にあの時の天女がチェギョンなら…。』

あの時の天女とチェギョンが重なって仕方がない、どうやっても理解出来ない自分の思いを持て余し

「くそっ…。」

シンは慌てて布団を跳ね上げ筋トレの腹筋をしだした。

「ちょっと、何してるの?」

「見れば分かるだろ、運動だ。
 お前と口げんかするよりもマシだ。
 疲れたら眠れるかも。」

「じゃ、私も一緒にやる。」

何故か俺達は一緒に筋トレをしてそれでも、一向に眠気が来ないので、囲碁でおはじきゲームをしていた。
負けが続くチェギョンの腕にしっぺをして痛がる彼女の反応を見るのが楽しく、さっきまでの邪な考えや
天女の事なども忘れて、素のイ・シンになっていた。
何度やっても勝ち目のないチェギョンは意地になっているのか、彼女の指先から弾かれた碁石が
シンの瞼付近にHITして蹲っていた。

「いっ…てぇ…。
 反則だぞっ…。」

「あ!ごめん。
 力の加減が分からなくて…
 目に当たったの?
 見せて」

「ここ?」

心配そうにチェギョンはシンの顔を覗き込む。

『え?
 お前、そんなに近づくと…。』

再びあの日の天女を思い出し、自然とチェギョンの唇に近づこうとすると、それを察知した彼女は
頭突きをシンに喰らわせた。
思いもよらぬ彼女からの攻撃に、たじろぎながらも少し膨らんだタンコブを作らされた俺は

『なんだよ、お前が何の警戒心もなく近づくから俺は……。』

そんな事を思いながらも、今にも飛びし出しそうな心臓の高鳴りを押さえるのに必死で
なんとかそれをチェギョンに悟られぬようにと誤魔化した。

「冗談なのに 酷すぎるぞ。」

「えっ?」

「反応が知りたくてね、本気で襲うもんか!」

「そうね…
 好きでもない子を襲う程ケダモノとは思わないわ。
 でもビックリしたのよ、今度やったら…」

俺の少しきつめの言葉に少し傷ついたような表情をした彼女を見て心の奥が《ズキンッ》と痛んだ。
言い過ぎた言葉への謝罪を言える訳でもなく、せめて誤解を解こうと話しだした。

「嫌いじゃない、誤解するな。
 ただ気を付けているだけだ」
『しっかりしろ、コイツはあの時の天女でも、ましてや俺達は愛し合う夫婦でもないし、いずれは離れるんだ。
 せめてその最後までは、合理的に不都合ない関係でいなければ。』

「俺はただ…
 離婚後も道で笑顔を交わせるクールな仲になりたいんだ。
 その為には今から気を付けなきゃ…」

「だろ?」

結婚前にも言っておいた離婚の言葉に当然彼女も同意の上とばかり思っていたが、彼女から紡がれた言葉は
彼の予想外だった。

「あなたは感情のコントロールが出来るの?
 私は無理、道ですれ違うと考えるだけで苦しくなる…」

『え?どう言うことだ?
 それって離婚しても俺と再会すら嫌なのか?
 それとももしかしてお前は…』

シンは彼女の意味深な言葉に思考が止まり固まったままで、話を済ませてしまったチェギョンは気にする風でもなく

「もう寝ましょう。
 どうせ閉じ込められたんだし」

寝ようとするチェギョンの手首を捉まえ引き寄せ、有無言わさぬうちにシンの唇がチェギョンの唇に重なった。

「んっ……。」

《ドンッ》

突然のキスに混乱したチェギョンはシンの胸を押し退けて、信じられないとばかりに大きな瞳が見開いていた。

「何するのよ!」

「何って、お、俺達は夫婦だろ、キスぐらいでなんだよ!」

少しだけ感じた先程の彼女からの言葉がシンの”もしや?”の期待を裏切り逆ギレ状態で言い放ち、

「さっきも言ったでしょ?こういのは愛し合ってないとダメだって。
 シン君ったら酷いよ!!」

そのまま言いっぱなしで、さっさと布団に入ってしまい、シンは呆けたままこんもり盛りあがった
布団の中にいるチェギョンを見つめたまま、衝動的とはいえチェギョンの唇が触れた自分の唇を
指でなぞっていた。
チェギョンの存在が知らぬ間にシンの中で女に変わった瞬間でもあった。

「おい…。」

シンを無視して、完全にそっぽ向くチェギョン。
相当怒ってるいるのかと、仕方なく布団のそばまで寄ってゆすってみた。

「おい、返事しろよ。」

「何よ、なんか用?」

「俺もそこで寝るんだ、布団の独り占めは許さないぞ。」

「今度は何をするつもり?」

「何もする訳ないだろ。」

「どうだか…。」

「布団は一組で俺たちは今夜はここで寝るしかないんだ。」

「じゃあ、勝手にすれば。」

そう言って布団に潜り込み互いに背を向けて、床についた。
しばらくの沈黙の後、どうしても気になるシンは天女の事を聞いてみようとした。

「なあ、寝たか?」

「まだだけど、何?」

「お前ってさ…。」

「何よ、」

「2年前ほどに湖とか行ったりしなかったか?」

「え?2年前?湖?…。」

「いや、いいんだもう寝ろよ。」

「あるよ、親戚のおばさんちに行って、お手伝いしてアルバイトしてたもん。」

「アルバイト?」

「そうよ、おばさんがどっかの別荘の使用人で、よく野菜の皮むきとか、お部屋の掃除とか…。」

「もしかして、お前夜中に水浴びなんてしないよな?」

「なんで知ってるのぉ?ふぁーぁ…。」

「じゃ、じゃあお前はあの時の…。」

「なん…なのよぉ…。」

「え、お前それって、間違いないのか?」

チェギョンに問いかけても一向に返事もなく、やむなくチェギョンをこっちに向かせてみると
思考も限界なのか、瞼が下りてきてすでに熟睡モードに入っていた。
このままでは納得できないシンは、揺さぶるように必死に起こそうとしてもビクともしない彼女は
今度、俺の胸にすがりついきて小さな寝息を立てて、スヤスヤと眠っている。

『え、それはないだろぉ…。』

その後様々な困惑と誘惑に見舞われるシンだが、コン内官が勧めた薬蕩の影響か、むくげの花をいくつも咲かせ
あの夏の衝撃的な思い出はシンの長い眠れぬ夜の幕開けとなった。

【終わり】


イメージ 1
シンも部屋には戻ったが、簡単に体の痒みも治まらずに寝むれない夜となり、落ち着いた頃にはすでに
真夜中だった。
ベッドのサイドテーブルにある時計を見て

「もう、こんな時間か…。」

中途半端な真夜中に目が冴えて、ふと外を見れば綺麗な満月がカーテンの隙間から見えた。
月の光に誘われるかのように外に出て、散歩がてら特に当てもなく歩いていくと水音が聞こえる

『確か、あっちは湖のはず…。』

とは言え”この辺りは私有地で他人が簡単に入れないはず…”疑問と音の正体を確かめる為に
湖の方になるべく音を立てずに、歩いていくとシンはその場で立ち尽くしてしまった。

そこには何も身に付けずに、月に向かって光を浴びるように水辺に立つ女性の後ろ姿を見て
シンは言葉が出ず、この様な場所で女性の裸を見るとは思わず、心拍数は上がり、熱くなってきた。
このままでは彼女が振り返れば見つかる為に慌てて近くの茂みに身を隠した。

『一体誰なんだ?
 でも…きれいだ…。』

シンもこうして生身の大人の女性の裸体を見たのは初めてで、年相応にドキドキしつつも
その女性はきれいな裸体をシンに見せつけるかのように晒していた。

華奢でいて、すらりと伸びる背中から丸みを帯びた腰回りのラインは柔和で女性的な様子は
シンの中で性的刺激と、それでいてどこか神秘的で固唾を飲んで、立ち尽くした。
年頃の男の子でもあり女性の体に興味がない訳ではなかったが、こんな覗き見するなどやってはいけない事と
認識していても、彼女の一挙手一動から目が離せずにいる。

彼女は誰もいない開放感からか、手で水をすくい上げては体に掛け、水浴びをしていたようだ。
そして次に、その身を反転して水面から上がろうと、瞬間横顔が見えたがすぐに月明かりの逆光と
なりちゃんと確認も出来ずにいるとこちらに来ようとした時

《パキッ》

彼女の行動に慌てた俺は、後退りしようとして小枝を踏んでしまった。

「ひっ…。」

小さな悲鳴を上げ、全てを晒す体を少しでも隠すように手を胸に寄せて、やや怯える彼女は林の方へ
音の正体を探すかのように凝視する。

「……。」
『え、こっちに来る?』

気が気でないシンは見つからないようにと彼女から避けるように更に身を潜めていると
今度は近くの草木の揺れる音にシンも彼女も恐る恐るそっちの方向を見れば
野生の鹿が現れまた茂みの方に行ってしまった。

「ふぅ…。」

その様子に彼女もシンも安堵の溜め息を付いた。
しかし、一瞬の静寂も束の間で遠くから懐中電灯らしき光と人が近づく音に、俺達はまた緊張感が走った

「殿下!いらっしゃいますか?」

どうやら、無断で部屋を抜け出した俺を翊衛士は鋭意捜索中という事らしい。

『まずいな…。』

この場から離れないと彼女の霰も無い姿を翊衛士にまで見せる事になる。

『どうするかな…。』

色々思案している隙に、辺りを見渡すと月夜の天女が消えていた。

『え、彼女は?
 さっきまでいたのに…
 どこに行った?』

慌てて茂みから出て辺りを探すも見つからない、そこに俺を探し当てた翊衛士が

「殿下、こちらにお出ででしたか?」

「ああ、眠れなくてね…
 少し散歩をしてたが、もう部屋に戻るよ。」

翊衛士に従われ、部屋に戻りベッドに再び身を預けてみても
結局眠りを誘うどころか余計に月夜の天女に魅せられて、シンの心を捕らえた

「はぁ…。」

額に手を当ててさっきまでの幻想的な出来事が目に焼き付いて離れない
まるで月の精が舞い降り、手を伸ばせばすり抜けて天に帰って行ってしまった儚い一瞬の夢のようだった。

翌朝、眠れなかったシンは昨夜の事を確認すべく、唯一この別荘に滞在する女性のヒョリンに
聞いてみた…

「昨日はよく眠れたか?」

「ええ、お陰様で、それよりシン蕁麻疹大丈夫?」

「え?あぁ、まあな。
 本当に昨晩の深夜に起きて散歩とか、湖の方に行ったとか…?」

「うん、昨夜はお酒も飲んでたし、ぐっすり眠ったみたい…。
 だから、部屋から出て散歩なんて…。」

「そうか、それならいいんだ」

シンからの質問に不思議そうに見るヒョリンをそのままに、あと他のこの別荘にあの天女に該当する女性が
この別荘に滞在するのか、インに聞いてみても

「うーん…。
 食事や掃除の使用人ならいるが、お前の言うような、夜中に水浴びするような女なんて、いるはずもない。」

「そうか…
 ならば、外部の物が迷い込んで入ってくるとかは?」

「まずあり得ないなぁ、なんなら使用人に聞いて見ようか?」

「いや、いいよ…。」

手掛かりも、そんな人物がいたのかさえおぼろげでシン自身も幻をみたように昨夜の天女も夢だったのかもと
思うようになり、当初の目的である、課題提出用のロケハンと後で編集用として少し撮影をしていく内に
インの別荘での滞在もあっという間に過ぎ
シンは宮へ戻りまたいつもの公務の日々こなす毎日に、いつかの天女の事は忘れていった。

【続く】



イメージ 1
出発前にいつもの事ながら、皇太子と言う役目を押し付ける母の言葉に、うんざりする。
だからと言って、この状況が変化する事も、己が抗う事も無駄と分かりきっている

『結局あの母の敷いたレールを歩むしかないんだ…
 あの皇后の言う通り聞きわけのいい皇太子を演じれば母は満足なのか?』

結局、どうする事も出来ない今の現状に苛立っていた。
皆がリビングにくつろぐ中、インやギョンが連れてきたどこぞの、ご令嬢がシンの周りをうるさく付き纏い
内心うんざり顔ではあるが、全眼的に表情には出さずに適当にあしらっていても、どうでもいい事を聞いてくる

「殿下は、どの様なものをお撮りになられるのかしら。」

「……。」

シンは群がる女達に終始ほぼ無言を通し、黙っていたがそれが返って、皇太子シンのカリスマ的な魅力に
拍車を掛けたのか、女達はうっとりシンを見つめていた。
その様子を心配そうに見ていたギョンは、無言を通すシンにご令嬢達のご機嫌取りのごとく

「ま、まだ決まっていないんだ。
 ここで色々案を練り上げる為に来たんだからさ。
 なあ、シン。」

と必死のご令嬢達へのフォローも、肝心のシンは気にも止めない風に視線を態と外し、あっちの方向へ見ると
不思議な女がいる。
ここにいる女たちとは違い、シンを見てはいるが、何か違っていた。

『あいつ…、どこかで…。』

ハッと気が付いたのは、昨年高校への進路でのミン皇后と諍い、姉のヘミョンは、内緒で海外留学を決め
宮で息苦しさを感じて、2、3日家出をした。
その時に彼女も訳ありで家出をしていて、偶然に俺たちは出会っていた。
ようやく俺が彼女を思い出した様子に気付いた彼女は、俺のそばまで来ると、耳打ちした。

「今日は、彼女達からの逃亡を計っているの?」

うるさいばかりに群がる彼女達を涼しそうな目で眺めながら言う彼女に

「あぁ…。
 助けてくれるんだろ?」

「もちろん、良いわよ。」

そして俺たちは、煩そうなリビングを抜け出してデッキテラスに出て行った。

「まさか、こんな再会なんて思いもしなかったわ。」

「まったくだ。
 互いに名も知らぬ間柄だしな…。」

シンの言った言葉に少し可笑しそうに笑う彼女は

「そうなの?
 私はあなたの顔を見てすぐに分かったわよ。
 この国にいてあなたを知らないなんてある?」

「そうだよな…
 俺はこの皇太子から逃れることは出来ないんだ。」

「……。
 あなただけじゃないわよ…
 私だって…。」

それから、あの家出の後の顛末を互いに話し、俺たち二人とも、抗えない環境に身を置いている事や
自由を欲してる事に共感し戦友となった、そこに

「シン、ヒョリン、ここにいたのか?」

「「イン」」

同時に発声した声に互いを見合った。

「なんだ?
 2人とも知り合いなのか?」

「まあな。」「ええ…。」

「なんだよ、俺はのけ者か?」

インの言い方に少しの誤解を感じたシンは慌てて釈明した。

「違うよ、ちょっとした知り合いだったんだ。
 そういうお前は、彼女とは?」

「俺は中学からの同級生さ、それに従姉妹のバレエの発表会で、たまたま知り合いになって…。」

そんな会話をしながら、改めて自己紹介をして、彼女はミン・ヒョリンと言って芸術高校舞踏科で、同じ学年だった。
彼女は俺の事は当然知っており、インと共に話しているうちに、ファンがやって来ると、ギョンまでもが
ここにやって来てしまった。

気が付けば自然に俺達の中でヒョリンは存在し、その様子に最初口うるさかったご令嬢たちは閉口し
悔しそうにシン達を眺めている事に、我慢が出来ずに最後には予定より早く帰ってしまった。

「あ〜あ…。
 シン!!お前のせいだぞ、彼女たち帰っちゃったじゃないかぁ。。。。」

残念そうに言うギョンにシンは面白そうにわざと言い返した。

「今からでも追いかけろよ。」

「もう遅いよ!!」

そう言いつつも、思ったほどに悔しがる感じも無く、切り替えの早いギョンは

「こうなったら飲もうぜ!!」

そう言いながら、どこから持ってきたのか、シャンパンと人数分のグラスを用意し

「「「「「乾杯!!」」」」」

とグラスを合わせて【カシャン】と音を鳴らすと、シャンパンを飲みほした。

「はぁー、やっぱ上手いなぁ…。」

「おい、ギョン。
 飲み過ぎるなよ。」

「いいの?こんなの飲んでて。」

「一応未成年なんだから、そこは程ほどにしないとな。」

シャンパンを飲み口々に言う言葉に反しシンだけが口ごもる

「……。」

「シン?」

「どうした?」

「なんだか、痒い。」

シンはむず痒そうに首掻いて、シャンパンの酔いとは違い、赤っぽくなったかと思うと
その腕には、赤い斑点が出来、シャツをめくると、背中一面真っ赤で、尚且つ、背中を見て
皆がしきりに笑い出している。

「なんだ!!」

「いや、悪い、悪い。」

シンの不機嫌極まりない様子に慌てて謝るインとは違い、お調子者のギョンだけは未だに笑いが止まらない。

「あっはは…、背中がさぁ…。」

「背中?」

そう言って、窓に写る自分の背中を見ると、赤くなってそれは丁度ハートマークの形になっていた。
それを見て更に不機嫌になり、むくれていると

「ほんと、悪いって。」

さすがのギョンの笑いすぎにシンの態度が如実に悪くなると素直に謝った。
その中珍しいとばかりに、カメラを回し続けていたファンが

「しかし、このままじゃまずいよな、護衛の人呼ぶか?」

「それはまずいでしょ。
 未成年が酒盛りでそれに参加の皇太子が蕁麻疹だなんて。」

冷静沈着に今の状況判断をするヒョリンにギョンは

「じゃあどうするんだよ。」

良いことが閃いたように、インがあることを思いだした。

「そう言えば…。
 俺の従兄弟の医者も休暇でこっちに来てるはずだ、連絡してみるよ。」

一瞬不安そうに見るシンに自信満々のインは

「安心しろ、従兄弟の兄貴は口が堅いからさ。」

仕方なくインの従兄弟の医者に診てもらい事なきを得た。
どうやら俺は、桃アレルギーらしく、それが反応したらしい、幸い少量を口に含んだ程度だったので
大事にはならなかった。
そして、後で空いた空いたボトルを見ると桃のリキュールが入っていた事を確認した。

「今晩は痒みがおさまらないとは思うけど朝方には、落ち着いてきますよ。」

「ありがと、兄貴。あ、この事は…。」

呆れらように一同を見てから半ば諦めたかのようにインの従兄弟は

「分かってるよ、ばれたらそのお友達がマズイんだろ?
 しかしお前も高校生なんだから、もう少し考えろ。
 じやあな。」

そう言うと、従兄弟はそのまま帰っていってしまった。

「はぁ…、興醒めだな、寝るか。」

ギョンの一言に事態が落ち着いた事もあって皆がその言葉に従うように、それぞれの部屋に戻っていった。

【続く】


イメージ 1
「何だ?
 なにかいるのか?」
湖畔沿いの木々の暗闇から満夜が輝く深い時間。
目を凝らしてその先にいるであろうものを見てみると人影だった…。

『まさか、こんな時間にこんな所で、いったい誰なんだ?』

《パシャ》

と水音がしてさらに近づくと何も身につけない裸体空に浮かぶ満月の光にさらす女性の後ろ姿を見た。

「……。」

俺はその光景に言葉を無くし、ただ立ち尽くすだけになったが、その姿が周りの
情景と重なり幻想的で、夢か現実の境界線を見失う程に美しく
まるで月から遣わされた月夜の天女の様な彼女の姿から目が離せなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2004年夏
シンは芸術高校に入って初めての夏休みを迎える事となった。。
期末試験も終わり目の前に迫った夏休みを前に生徒達が、俄かに浮足立つこの終業式までの期間。
オリエンテーリングや休暇中に出される課題準備期間でもあり、普段とは違う雰囲気の校内の様子には
我関せずのクールな皇太子イ・シンは傍観者のように、雑誌をパラパラとめくり、傍では夏の課題準備とも、
単なる夏休みの遊びの計画とも言える、イン・ギョン・ファンが何やら騒がしく、それでいてコソコソと
話していた。
そこに、インがもっともらしくシンに話しかけた。

「なあ、シン。
 夏休みってずーっと公務なのか?」

「基本そうだが、何だ?」

「課題映像のロケハンをしようと思ってさ…。」

「ロケハン?…」

「新学期の提出課題の分だよ。」

横からファンがカメラを構えながら補足としてシンに話し、インは話を続けた。

「俺の親父の別荘で、いい感じの場所もあるし、もちろん私有地内だから簡単に外部の者は
 入って来れないようになっているからセキュリティーも万全なんだ。」

そこに妙なテンションのギョンが横やりで

「シ〜ン!
 お前が来なきゃ何にも始まらないだろぉ〜。」

「何故だ?」

「お前が来ると撮影対象(女の子)がいっぱい集まるからに決まってるだろ♪」

シンは『俺は客寄せパンダか?』などと思いながらそんなシンの様子にも気にも留めずに続けるギョンは

「俺の一存で即答は出来ない。」

「じゃあ、聞いてくれよ。」

なおも粘るギョンに少々呆れつつ返事するシン

「そうだなぁ…。」

一般の年相応の男子なら、”夏休み”という単語は心躍るフレーズなのだが…
皇族であり、皇太子でもあるシンにとっては、ただ学校の授業が無いだけで、あまり変わらない
公務と皇帝学の勉強で特段彼らほど待ち望む物は無い、学校の課題のためとは言え、シンが公務以外で
外出をするという事は、それ相応の対応も必要となり、極端に面倒な事に関わりを嫌うシンもきっぱりと
断る事も珍しい事ではなかったが、彼らとの関わり合い上無下に断ることも出来ない。

「参加できるかどうかは確認しないと分からない。」

「じゃあ、近日中に返事くれよ。」

「分かった。」

そんなやり取りのあった、数日後の正殿への朝の挨拶で皇太后陛下がどこで聞いたのか

「そういえば聞きましたよ、この夏休みに学校の友人の別荘に泊まるとか?」

目線を部屋の端で控えているコン内官に向けると、彼はいつものように柔らかい笑顔で会釈をし
シンの疑問は納得したように皇太后に答えた。

「はい。
 夏休み明けの課題提出の準備の為です。」

いつもとは少々違う話題に、にこやかにその話題の中に入るように皇帝陛下が話し掛けてきた。

「そうか太子は、映像科だったな。」

「はい。」

「どうだ?
 学校での授業は楽しいか?」

「はい、皇帝陛下。」

「太子が希望して進学した学校だ、多くを学ばねばならない。」

「はい、陛下が入学を許可して頂き、感謝しております。」

皇帝陛下の満足げな様子に、控えめながらもシンに釘を刺すように皇后陛下が話し出した。

「しかし、太子は学生でもありますが、皇太子としての務めも疎かにはできませんよ。」

「はい、心得ております、皇后陛下。」

皇后のシンへの忠告に、それを穏やかに制するように皇太后は

「まあいいではないか、皇后。
 シンもこの夏の経験が、太子の今後の糧となろう事もあるであろう…。」

「はい、皇太后陛下。」

「太子。
 いや、シン。」

「そなたもたまには、同じ年の友人たちと親交を深める事は悪い事ではない。
 そなたも存分に楽しんで来るがよい。」

「ありがとうございます、皇太后陛下。」

皇太后の鶴の一声で、シンは公務以外で初めて、宮殿を出て外泊し、イン達友人と過ごす事になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

インの別荘に出発する当日直前に、コン内官が遠慮がちにシンの様子を窺っていた。

「コン内官、どうかしましたか?」

「はい、皇后さまが出発前にお部屋に来るようにと、お呼びでございます。」

『出かける前までお小言か?』そんな風に思いながらも返事をした。

「わかった。」

一旦東宮殿から皇后のいる正殿の部屋へ向かうと

「私をお呼びとお聞きしお伺いしましたが。」

「太子、そこへお坐りなさい。」

促され皇后に向かい合うように座ると

「先日、両陛下がお許しになった本日の外泊の件ですが…。
 皇太后陛下や、皇帝陛下の特別な取り計らいで、許可された事、あなたは皇太子という
 立場をくれぐれも忘れてはなりませんよ。」

「はい。」

シンの形式的な返答に満足がいかないのか皇后は話を続けた。

「皇帝陛下は現在、我が国保有の歴史的文化遺産の返還に力を入れておられます。」

「存じております。」

「本来、夏休みの間に皇太子であるあなたには、陛下のお力となりお助けせねばならないのですよ。」

「……。」

「それに太子は、時期皇帝となる為、何をおいても皇帝学を学び、鍛練をする事を最優先にする事は
 最も重要なのです。」

「はい、心得ております皇后陛下。」

『結局また”皇太子として…、時期皇帝として…”それしか言葉が出てこない母…
 いや皇后は俺を息子ではなく皇太子してしか見ないんだな…。』

ふと一瞬、遥か遠い記憶が甦る。

「シン。」

「オンマ。」

そこには微笑ましい当たり前に子を抱く母の情景が浮かび、消えてはまた現実に引き戻された。。

「……ですから、くれぐれも皇太子としてどうあるべきか、決して忘れてはいけませんよ。」

「はい。
 では、出発の時間ですので、僕は失礼いたします。」

言いきる形で皇后陛下を振り切るように部屋を辞して、そのまま車寄せに向かい、リムジンに乗り込んだ。

【続く】


イメージ 1

全2ページ

[1] [2]

[ 次のページ ]


.
kyomao
kyomao
女性 / A型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

ブログバナー

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

過去の記事一覧

宮 創作

宮 関連

韓流関連

登録されていません

その他創作

標準グループ

登録されていません

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事