空を見上げて

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彼と彼女の困惑(リハビリ用)

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無言のまま2人とも口も交わさずに、馬だけを走らせ、木々を抜け視界が広がると、目の前に
大海原が広がり、海岸線沿いに季節の草花が咲き、続く道なりを進むと休憩ポイントに到着した。


俺が先に降りて、チェギョンをを馬から下ろそうと手を伸ばすと、彼女は少し身構えた。
馬から下りるとすぐに、1人何も言わずにどこかへ行こうとした彼女に

「どこに行く?」

「あっちの方で1人景色を見たいの。」

「そうか…。
 でもあんまり遠くへは…。」

「うん、わかってる…。」

そう言うと休憩する参加者の合間を抜けて、人波に消えるように行ってしまった。

『何も言えなかった、あんな顔のままで行かせてしまって
 ダメだな、俺は…』

俺が1人彼女への後悔とも言えぬ思いに、佇んでいると

「シン…。」

聞き覚えのあるその声に誰とは聞かずともわかるだけに、何も言わずに背中で気配を感じていた。

「あの…。」

「……。」

一切身じろぎしない俺の様子から、ヒョリンは言葉を慎重に選びながら、静かに話し出した。

「さっき…、彼女と何かあった?」

何かあった事はヒョリンも感じていたが、敢えて聞く彼女に、理不尽にも苛立ちを感じたシンは

『そんな事を聞いて、どうするつもりなんだ…
 これ以上チェギョンに誤解をさせるような事はやめてくれ…』

そんな思いも込めてぶっきらぼうに彼女へ言った。

「いや、別に…」

今までのシンからの態度とは違う事に彼女は戸惑う様子で

「そう…。」

と力なく呟くと、独り言のように勝手に話し出した。

「私達どうしてこんな風になってしまったのかな?
 以前なら話さなくてもあなたの事がわかったのに、今はあなたが遠くに感じるの…
 もし、私が夢を諦めてあなたの傍にいたらなら、きっと違っていたわよね
 きっと…。」

ヒョリンの言い分を黙って聞いていると苛立ちを感じつつ、あくまでも冷静にと対応するシンは

「何が言いたい?」

「ただ、あなたのそばにいたいの」

「それは…。」

ヒョリンの思いを改めて知った事で、シンは決着を付けようと言葉を続けようとしたが、

「分かってる、分かってるの…。
 そんな事を言っても何にもならない事だと…
 でも、失って初めてわかったのよ、あなたがどんなに私の中で大きな存在だったかを…。」

「分かっていて、いまさら何なんだ。
 君が僕のプロポーズを断った時点で僕らはただの友人になったはずだ。」

「……。」

シンの一言が今の現実を突き付けるように、ショックを隠しきれないヒョリン。
彼女の様子さえ気にも留めずに、今までのヒョリンとの関係を思い出すシンは

「いや、最初から僕たちには何も無く、ただ気の合う友人関係だけだったのかもしれない…。」

「シン。」

シンの言葉にハッとして、縋るように見つめたヒョリンに、諭すように話しかけるシン。

「それに君には僕よりも夢が大事じゃなかったのか?
 君が断ったおかげで、チェギョンが慣れないながらも彼女なりに皇太子妃として努力している。
 今になって君が後悔したところで、何も変わらないんだ。」

「そんな風に言わないで、シン。
 私はあなたのそばにいられるなら、プリマの夢だって捨ててもいい。
 あなたの正妃でなくてもいいから、お願い…シン。」

ヒョリンの切実な思いを聞いても、シンのチェギョンへの思いは変わることなく、逆に
チェギョンを守ることしか考えられないシンは

「今後、また君が今と同じように諦めきれないと言うなら、もう友達にもなれないな…。」

「そんなに好き?彼女の事。」

ヒョリンの言葉にどう返事していいのか、困惑するシンは何も言えず

「……。」

「チェギョンとは政略結婚でなんとも思ってないんでしょ?
 どうなの?」

ヒョリンはシンの様子を見て、彼女の信じがたい思いが更にシンへ追及する様に問いかけた。

「それを聞いたところで君には関係のない事だ。
 そもそも、僕とチェギョンは全国民が認める正式な夫婦だ。
 いくら周りから政略結婚と言われようともね…。」

シンは以前にチェギョンが言った”政略結婚”と言う言葉を思い出し、寂しく切なそうに言った。
その様子を見逃さなかったヒョリンは

『シン、あなた本当にチェギョンの事を?』

「話はそれだけか?」

「え?」

「君と2人きりでいる事を周囲に変に誤解されたくない。」

「シン…。」

彼女が何を言おうとも何も変わらない俺たちの関係に、気がついて欲しい思いと
ただ、チェギョンに変な誤解を招くような事は出来ない思いが先立って彼女の思いなど気にも留めなかった。

「今後、こんな話で僕を呼び止める事は止めくれないか?」

「こんな話?」

ヒョリンはシンの突き放したような言い方に、言いようも無い絶望感と行き場の無い思いで
今にも倒れそうな体を辛うじて、踏んばるようにそれでもシンだけを見つめていた。

「ああ、それに僕の諱を言えるのは、本来近しい家族だけだ。
 だから気安く僕の名前を呼び捨てで言わないでくれるかな?
 ミン・ヒョリンさん。」

シンからの決別とも取れる言いように動揺し、寂しく酷くショックを受けているヒョリンに構わずに
シンはその場から立ち去ろうとすると、ちょうど2人がいる場所の死角になる場所からある人物の視線を感じ
その方向に進んで行った。
そこにはすべてを聞いていたであろう、インが冷たい表情でシンを睨むように見た。

「あそこまで言う必要があるのか?」

「……。」

「俺はお前がヒョリンを幸せに出来ると思って、彼女をお前に委ねて見守ってきたんだ。
 それが何だ?
 お前は自分の都合だけでヒョリンの事なんて何も考えず、挙句にはあんな事を言って最低だな!」

インの感情的に言い放つ言葉とは対照的に、段々冷静さが増すシンは

「言いたい事はそれだけか?」

「何?」

「僕はこの国の皇太子だ。
 簡単に、僕の妻を決める訳にはいかないし、僕に選択権などない。
 皇族である僕にとって宮は絶対で、今更どうしろと言うんだ?」

シンがいつもする冷静で、無表情とも取れる皇太子としての態度に、インは内から震えるように
怒りがこみ上げてくると、シンに掴みかかる様子に、周りに控えていた翊衛士は飛び出そうとしたが
シンが軽く手をあげて、制止させた。
周りの状況が見えず、今だシンの襟元を掴んだままのインは

「じゃあ何故、今までヒョリンと一緒にいた?
 何故、彼女にプロポーズしたんだ?
 答えてみろ、シン!」

「それをお前に言う義務はあるのか?」

「お前を見損なったよ。
 ヒョリンには二度と近づくな。」

投げ捨てるように言い放ったインは、一人項垂れ泣き崩れているヒョリンの元へ向かった。
その後ろ姿を見てシンは

『これで、いい…。
 俺を憎んで忘れてくれるなら、そしてインならば彼女の支えとなってくれる。』

シンはそうするしかなかった、結果としてヒョリンを幸せには出来ないのだからと
自身の優柔不断が招いた事で、傷つけたヒョリンやイン、何よりも一番守るべき
チェギョンへの後悔に自分を責めた。

彼女の困惑 11

「さあ、妃宮様。
 今度は妃宮様と皇太子殿下のなれそめをお聞かせ下さいませ。」

「お聞かせって…。」

「私だけお聞きになって妃宮様ご自身は仰らないなんて、いけませんわよ!」

「はぁ…。」

彼女の有無言わさない勢いに押されて、身を引きながら怯えるように返事をした私に、
今度は急に大人しくなって、マジマジと私を見ると

「妃宮様。」

「はい。」

「こう言ってはどうかと思いますが、わたくしが帰国してユル様のご様子を拝見してて心配でしたの。」

「心配?」

ユリの言う”心配”という言葉が腑に落ちないチェギョンにユリは意表を突く言葉告げた。

「ええ、ユル様は妃宮様をお好きなんですわ…。」

「好きって…友達としての好きでしょ?」

私の答えにユリはゆっくり首を横に振り、元気なく俯いた彼女へ弁明するように話した。

「ちょ、ちょっと待って。
 私、ユル君はクラスメートで、シン君の従兄弟だし
 それに宮に慣れない私が可哀相だからって
 ほら、彼って優しいじゃない、だから気遣ってくれてるだけよ!」

それでも、先程の元気良さは何処へ行ったのかと、いうユリの落ち込みぶりに慌てて励ます私は。

「私もね、知り合いがいない宮で色々教えてくれてるユル君に感謝してるの。
 それだけよ、ほんとよ…。
 それに、私はシン君の奥さんだもの…。」

ユリへの必死の慰めについつい気持ちが入って、最後には私の本心が出た事を注意深く
聞いていたユリは先程の憂いとは打って変わって、明るさを少し取り戻した。

「ええ、妃宮様とのお話しでわたくし、妃宮様のお気持ちが分かって安心しましたの
 そして今日の皇太子殿下のご様子からして、殿下も妃宮様を大事に思っていらっしゃると。」

「そうかな…。」

ユリの言葉に私はさっきのヒョリンとシン君の2人が思い浮かび曖昧に答えた。

「そうではありませんか妃宮様。
 皇太子ご夫妻の先程の仲睦まじいご様子は、私もうっとり拝見しておりましたわ♪
 羨ましい限りですもの。
 いつ頃から妃宮様は殿下をお慕いしておられたのです?」

「え?」

今度はここぞとばかりにユリが私へと質問攻めに転じ、彼女中では私とシン君は相思相愛なのだと
思っているようで

「先程は上手くはぐらかされましたが、是非お聞かせ下さいませ。」

今度こそはとばかりに、ユリの興味深げな様子に、彼女の思惑とは別にある複雑な思いのチェギョンは
深くため息をついた。

「はぁ…。」

「妃宮様?
 ため息などつかれていかがなさいまして?」

「あ、あぁ…、気にしないで、大丈夫よ。」

私はやはり先程のシンとヒョリンとの関係が、私の中で大きく心に影を落としている事を
認めざるを得ないと思いつつ、今はユリが自分を心配そうに見る様子を誤魔化そうとした。

「もしや野駆け前のヒョリンさんとの事でお悩みですの?」

「お悩みだなんて、元々は私があの2人の間に入った様なものだもの…」

不意に漏らしらチェギョンの言葉に怪訝な顔を瞬時にしたユリは

「妃宮様、それはどういう…?」

不安そうにしている私を見つめていたが、それでは納得がいかないとばかりに
彼女の我慢強い問答にこれまでの祖父同士の遺言によっての結婚や、シンの本命はヒョリンである事、
その彼女にシンがプロポーズをする現場を見てしまった事や
それでも宮のしきたりや実家の事情でお互い結婚せざるを得なかった事など
唯一シンが約束した離婚以外の大方の話をすると。

「んまぁ〜〜〜!どういうことですの!皇太子殿下ったら!」

「ユリさん?でもね、お互い分かって結婚した事なのよ。
 それにこの事は、他の人には…」

「もちろんですわ!他の方になどお話ししませんもの!
 それよりも他に好いたお方がいながら、妃宮様とご結婚なんて、政略結婚そのものではありませんか!」

「まあ、実際政略結婚だもの、仕方ないでしょ…。」

「いいえ、良くありませんわ!
 理由はどうあれ、お二人はご結婚されて、ご夫婦ですのよ今更皇太子殿下が妃宮様を蔑ろにするような事
 許される事ではありませんもの!」

「でもね、私がシン君と結婚しなければ、彼は彼女ともっと幸せになれたはずのよね…。」

寂しそうに話す私を見て、興奮していたユリは落ち着きを取り戻し、ゆっくり私を見て

「それでも妃宮様は殿下を愛しておられるのですね?」

「え?」

「先程からの妃宮様のご様子は、とても殿下を愛しそうにされてらっしゃいますもの。」

「そうね…、そうなのかもしれない…。」

さっき1人で感じた、シンへの思いに確認事項の様に、ユリの前で素直に認めた。
そして、なんとなく目線を上げて、宙を見上げながら、シンの気持ちが見えないチェギョンは

「でも、いいのかな?」

ユリは聞き返すことも無く、ただじっとチェギョンの言葉を待っているように黙っていた。

「私、このままシン君のそばにいてもいいのかわからないの…。」

「妃宮様、それは…。」

答えに困るユリに申し訳なさそうに話すチェギョン。

「うん、最初はねさすがに私以外を思っている人との結婚ってあり得ないって思ってた、でも色々な事情で
 結婚しなきゃならなかったしね…。」

「妃宮様。」

私の様子から、ユリは思っていたような簡単な話ではないと察したのか、彼女は静かに聞き入ってくれた。

「それでもね、折角夫婦になったんだからと思っても、彼の心にはヒョリンがいるのよ…」

「お言葉ですが妃宮様?」

「なあに?ユリさん。」

「さっきの様子を見る限り、わたくしは妃宮様の事を殿下は大事に思われてるように見えましたわよ。」

「そうかな?」

まだ、自信のない私は不安そうに言う様子に今度はユリが元気付けようとしてわざと明るく言った。

「ええ、わたくしも内心ユル様が妃宮様を気に掛けてご心配になっている様子を拝見して
 心穏やかではありませんでしたが、今日の殿下のご様子を拝見して安心しましたもの。」

「あれは、いつもの事よ、あーやって、私をからかってるのよ。」

本当はユリの言うように、シンの気持ちがチェギョンにあると信じたいと思ったが、これ以上シンの事で
傷つきたくなかったチェギョンは、シンの真意を知ることが怖くなって、おどける様に誤魔化すとそれを
見透かすようにユリは

「本当にそうでしょうか?」

「そうよ、絶対!本当に性格悪いんだからっ!」

ここまで言うとチェギョンの言う言葉は強がりにしかならず、それでもユリは確信を突いてきた。

「妃宮様、この際殿下に素直にお訊ねになってはいかがですか?」

「お訊ねって…?」

ユリの気迫ある言葉に私は息を飲み、ポカーンとしてしまっているが、気にもせずにユリは

「ここでウジウジ考えても何も進みませんわよ!
 妃宮様、わたくしこうなったら、必ず殿下に妃宮様へ”愛している”と言わせて見せますわ!」

「あ、あのぉ…、ユリさん?」

彼女のテンションは一気に上がり、チェギョンの言う事など耳にも入っていないのであろうか

『私、とんでもない人と友達になっちゃったかも?』

なんとも言えない思いに暮れるチェギョンだった。

彼女の困惑 10

目の前に大海原が広がり、近くにはススキやコスモスが咲く休憩ポインにはトまで着くと
すでに到着組の参加者が集っており、各々馬に水を飲ませたり、談笑していた。
ヒョリン達も、休憩ポイントにて待っていたが、先程の事があるのかぎこちない雰囲気に
居たたまれない私は馬から降りると早々に、シンの元を離れ独りになるために、
人の少ないベンチに腰を下ろして目の前に見える海を眺めていた。

『シン君…何も言わなかった、ううん言えなかったんだ…』

さっきの2人を見て、チェギョンは余計に2人の間を引き裂いた悪者として思い知らされる。
だから、私の心は勝手に気付かないふりをしたんだと…。
本当はずっと前から気が付いていた。

”私はシン君を好き”だと…

でも、彼にはヒョリンがいる、法度と状況だけでの政略結婚、そう思って自分の気持ちを
押し込めてきた。
それを認めてしまうと、宮でやっていける自信すら無くなってしまいそうで怖かったから…
でも、これ以上この気持ちに気付かなかった事にすることは無理だと分かってしまった私は

「どうしたらいいんだろう…。」

考え事をしながら気が付くと指はさっきシンとキスした唇に触れていた。
唇から伝わった優しく温かい感じ、あの感覚がシンの気持ちを表すような気がしただけに

『シン君も私の事好きなのかな?
 ううん…、彼にはヒョリンがいるもの…
 じゃあ、どうして私にキスしたの?』

シンのわからない行動にただ目の前の海を眺めるだけでしかなかったチェギョンのそばに

「妃宮様?」

声のする方に向くとそこには、ユリが気品ある微笑みで立っていた。

「あ、ユリさん。」

「どうかされまして?お顔の色が良くありませんわ。
 誰か呼びましょうか?」

そう言って誰かを呼ぼうとする動作に

「あ、いいの。大丈夫ですから。」

そういう私に心配そうな顔を浮かべて横に座っても良いかと訊ねられ、私の隣ユリが座り
2人並んで何を話すでもなく目の前に広がる海原を眺めていると、少しだけ遠慮がちにユリが
チェギョンの方に向き直り話しかけた。

「あの…、妃宮様お聞きしてもよろしいかしら?」

「え?何をです?」

「ミン・ヒョリンさんと仰ったかしら?先程お会いした方。」

「あぁ…。」

シンと彼女の事を考えていただけに、力なく答える私に構わずユリは

「あのお方、殿下の事が余程お好きなのね。
 先程の彼女の言いようも私への挑戦なんでしょうね…。」

「え?それはどういう…。」

ユリは先程のチェギョンとヒョリンの3人での会話の様子に思い出し笑いをしている。
私はそんな彼女の言おうとする意味が分からず、ユリに聞き返してしまった。

「すでにこうして妃宮様とご結婚されているというのに、あの方はどういうおつもりなのでしょう?」

今度は何故かユリは私に変わってヒョリンを相手にお怒りのようで

「あ、変に誤解なさらないで下さいね。」

ニッコリといつもの美麗な微笑みに私は困惑していると

「確かに、殿下のご結婚前には噂で皇太子妃候補として私の名が上がっていたのも
 存じておりましたわ。」 

『ふふっ』と軽く笑うと目の前の海を見ながら、彼女は話し出した。

「元々宮家の婚姻は早くに行われますでしょ。
 王族会で殿下と年齢が近いお妃候補数名は、幾度となく皇太子妃候補として注目されてましたしね。
 特に私が王立の中等科に進学すると如実にマスコミも動き出して、わたくしほんと飽き飽きしてましたの!」

苛立ちを含んでもの言う彼女から聞く意外な言葉に、面食らった私は

「へ?でも、ユリさんは皇太子妃候補として、教育受けたりしてきたんでしょ?」

「それは、まあそうですけどね、だからといってこの時代に自由恋愛も出来ないなんて…。」

「はぁ…。」

その当時を思い出し、余程鬱憤が溜まっていたのであろう彼女の怒りは、ふつふつとしている
そんなユリを私は黙って聞いているしかないようで

「私だって、恋の一つや二つ、経験したいんですもの!
 それを既に私の夫は皇太子殿下って決めつけられるのも、おかしいと思われません?」

やや興奮気味に息巻く彼女の言葉には、私がイメージしていたお淑やかなお嬢様は何処にもない
彼女の言い分に、改めて私は確認事項のように聞いてみようと

「では、ユリさんはシンく…いえ、皇太子殿下との結婚は…。」

「ま、それは確かにあの様に素晴らしいお方ですもの、文句はありませんのよ
 ただ…。」

「ただ?」

私の問いかけに少し慌てた様に答えるユリは

「私にも、色々都合と言うものがありますでしょ?」

彼女の言う”都合”という言葉に先程のチェギョンの推測が重なると試しにそれを口にしてみた

「その都合のせいで、皇太子殿下との結婚は嫌だったと言う事ですか?」

「ま、そう言う事になりますわね…。」

素直にそう答える彼女に、いつもの王族会のお嬢様達とは違い、好感と親しみを感じた。
そう思うと、チェギョンは先程の推測が確信に近いものを感じると

「ユリさん…。
 もし間違ってたらごめんなさい。」

私の言葉に不思議そうに注目する彼女に

「ユリさんって好きな人いるでしょ?」

その言葉に反応したユリは上品な令嬢から普通の女の子ぽくなって、目は恋する乙女となり
ほんのり頬を赤らめたのをみて核心を突いてみた。

「それって、ユル君?」

「まあ、妃宮様そんな!…。ユル様なんて、恐れ多いですわ…。」

明らかな動揺を隠さないユリはみるみるうちに耳まで赤くなり、言わずとも認めた彼女も最後は静かに頷き
不意打ちの様な質問からユリのユルへの恋心を確信する事となったチェギョンは改めてユリに聞いた。

「そうだろうと思った。
 でも、いつからなの?」

彼女は嬉しそうに昔の話を話してくれた。
幼稚舎の頃に初めて出会い、子供の世界には関係のない妃候補を巡っての諍いが、子供同士でもあって
ユリがいじめられているところを慰めたのがユル君だったこと。
それがきっかけで恋心を抱き、孝烈皇太子殿下が亡くなった事で、宮から離れ遠いイギリスへと発たれた事が
悲しくてしばらく泣き暮らした事、その後周囲が勝手にシン君の皇太子妃候補と騒がれ、ユリの本心とは
違った方向へと向かうと危機感を感じ、両親と対立してでも強引に留学して、ユル君の元へ向かったこと。
イギリスに留学後も数回ユル君と出逢えて嬉しかった事や、ユル君が韓国に戻る事になってまた追うように
自分も帰国した事など、一気に話し終えると

「妃宮様…、この事は内緒ですわよ。」

「分かってるわよ!
 私も、ユリさんの事応援するわ!」

気が付けばお互いに見合って微笑み合い、そう言って、私達は密かな秘密を共有する事で
チェギョンにとっては宮に入って初めて女の子の味方が出来たのだった。

気が付けば俺は馬上で彼女の肩を抱き寄せ、キスをしていた。
俺はゆっくり唇を離し、そのまま両腕で優しく包み込むように、俺の胸の中にすっぽり収めると

自分の事なのに訳が分からないこの状況に、納得する理由が見つかる事はなくそんな事よりも
今はただ、このままの状況に酔いしれていたかった。

初めてのキス、そしてこの腕から伝わる華奢でいて優しく柔らかい感触が、堪らなく愛おしく感じる

『あぁ…なんて心地いいんだ。
 まるで、映画で見た恋人同士のようだ…。
 え?恋人…』

確かに俺達は世間では認められた立派な夫婦ではあるが、映画のような恋愛関係も恋人関係でもない

『別に愛し合っている訳ではないのに、恋人のようだなんて…』

そこまで思うと、俺の心は急に何かが目覚めたのか

『愛し合ってる恋人……
 俺がチェギョンを愛していると?…
 まさか…。』

信じられない事実であっても、これまで理由の付かない持て余した自身思いも、今この腕に抱いている
彼女の愛おしさもすべて”チェギョンを愛している”という事に置き換えれば辻褄が合う

『俺、本当に…チェギョンを?…』

急激に自覚し出すと今のこのとんでもない状況に狼狽え始めた。

『ど、どうすればいいんだ…。
 でもこのまま抱きしめていたい。』

そんな思いが抱きしめる腕に少し力が入って、ギュッっとすると、彼女も嫌がることもなく、
少しだけその身を預けてくれた事に、驚きと嬉しさが隠せないが一つ気付いたこともあった

『今、俺に身体を預けたよな?
 それは…、お前も俺のこと好きなのか?愛しているのか?』

俺は急展開の事態に心と思考が付いていかず、ただチェギョン気持ちが気になり出すと不安になった。
半ば強引とも言える俺からのキスやこうして俺に胸の中収まる彼女から抵抗はないが肝心の
チェギョンの気持ちに自信のない俺は

「あ、あの…。」

「うん…。」

言葉少なく答える彼女にそれ以上続かない会話。
いつもなら、軽くからかったりと事も無げに言えるのに、今は何を持ってしても難しいようで
また2人とも黙り込んだ。

『こう言う時って何を言うんだ?』焦るほどに腕に力が入ったのか

「あの…シン君。」

「何?」

「ちょっと腕がキツイの…。」

「あ、ごめん…」

腕を解いて、改めて馬上で向かい合う事になって、まともに見れないで、一度目を合わせたけど
すぐに彼女は俯き、俺も視線は宙を彷徨った。

「なんだ…、その…。」
 
「……。」

それ以上続かない俺たちの会話は、先程までの軽口など言える雰囲気もなく困っていると

「さっきから何イチャついてるんだよ。」

声の主はギョンだった。
いつの間にか俺達の前にいた彼は、先程からの遣り取りを見てたかの様な口ぶりで
焦った俺達は口を噤んでいるとあろう事かこのタイミングで決定的な事を言い出す。

「なんだよ…。熱烈キスでもしてたか?」

同時に俺達はギョンを見てゆっくりと目が合うと、いつもの俺の冷静さは何処へ行き
今更ながらの落ち着きを取り戻すために、あちらの方へ目線をやりながら

『え?ばっバカッ!なんで今それを言うんだよ!
 っていうかお前見てたのか?』

ギョンの言葉に沈黙せざるを得なくなった。

「マジか?皇太子夫妻でラブシーンでもやってのか?
 だから遅かったんだ…。」

『え?俺達にカマ掛けたのか?覚えてろよ、ギョン!!』

さっきの混乱からギョンへの怒りへ転じた俺に

「そうなの?それは残念…。
 あと少しで、決定的映像撮れたのにね。」

ファンまでも俺の心へ火に油を注ぐかのように言う彼らに、威嚇した。

「シッ!」

チェギョンはと言うと、ますます意識してしまって目線は下を向いたまま赤味のある顔ををしきりに
手で扇いでいる様子に、俺もどうしたものかと思っていると

「シン、休憩ポイントまであと500m程だ。」

「イン、わかった。
 なんなら先に…。」

一番冷静なインが、いつの間にか俺達を気に掛けて戻って来た様子に返事をしようとすると
その後ろからヒョリンもいたことに気がつくと、一瞬で言葉を失った。
目線はこちらを向けているが、その表情には憎しみとも未練とも取れる寂しい目をしていた。

『ヒョリン、そんな目で見るな、俺にはお前に出来る事はもう何もないんだ…。』

言葉も交わさないまま俺の気持ちが分かったのか、彼女の方が顔を背けて静かに進む姿にインが

「シン、先に行くぞ。」

「あぁ…。」

インはヒョリンの後を追って先に行ってしまった。
続けてギョンとファンもさすがに空気を察したのか、先に行ってしまった。

彼らを見送り何とも言えない、雰囲気に取り残された俺達も振り切る様に先に進もうとした時

「……。
 シン君…ゴメンね…。」

「……。」

『何故謝る?
 チェギョンお前が謝る必要などないのに
 お前は何も悪くはない、誰かのせいというなら、俺のはずなのに…』

彼女の謝罪が余計に俺の心を締めつけ、結局言葉を失ったまま何も言えずに馬を走らせた。

彼女の困惑 09

私の人生初となるファーストキスは、思いがけない場所で偶然に起きた。
最初は何が軽く私の唇に触れただけで、単なる交通事故のような出来事だった。
でも、今は違う。
私の夫であり皇太子でもある真切れもないイ・シン本人から、私の唇にキスをしている。
決してあり得ないし、なにかの間違いではないかと思い、信じられない事なのに
それは幻想的なおとぎ話の中にいる錯覚ではないかと、思う程に穏やかで優しいキス。

『何、どうしたの?
 でも、この柔らかい優しい感じは嫌いじゃない…。
 むしろ、ドキドキして嬉しい…。』

シン君はゆっくりと唇を離すと、そのまま私を包み抱いて今度は彼の胸の中へ簡単に
収まってしまった。

『どうしたの?シン君…
 それに私ったら変よ…』

いつもと違うシンの予想外の行動に、戸惑いは隠せないチェギョンだったが、それを抵抗する
気にならなかった自分にも驚いていた。
いつもなら、文句の一つや二つ言ってもおかしくないのに、大人しく彼の腕の中にいるそれに…
初めて抱かれた彼の胸は見た目以上に固く、意外にしっかりした骨格からは衣服を通してでも
男らしい逞しさを感じ、今までにない密着感に目眩を起こしそうになる。

『あぁ…本当に夢みたい…。
 夢でも良いからこのままでいたいな…』

すでに現実と夢の境目も見えなくなってきた私は、今の状況や私や彼の気持ちなどこのままいいのか
不安になった。

『これってやっぱり現実なの?
 でもシン君どうして?』

私の不安な気持ちを察したかのように、突然シン君の腕が更に強く抱きしめてきた。

『これって、また偶然なの?
 それともシン君は私の事を思っていると思って良いの?』

チェギョンの心も思い迷う中、考えるよりも心のままにシンの力強いその腕へ反応して
そのままシンの胸に体重を預け更に彼の方へ身体を寄せた。

『こんなことしたら私のドキドキする心臓の音が聞こえちゃうかな?』

そんな不安よりもあまりの心地よさに、うっとり夢心地になっていたら

「あ、あの…。」

「うん…。」

シン君は何か言いたそうにしている様子に、私もそれに一言だけしか返事しないと
沈黙は更に深まり

『どうしよ!どうしよ!私どうしたらいいの?』

チェギョンもシンからの不意の言葉に、なお一層に心拍数は上がり、思考が上手く
働かなくなっていくと、シンも緊張しているのか、更にチェギョンを抱きしめる腕が強く
息苦しくなってきたチェギョンは思わず

「あの…シン君。」

「何?」

「ちょっと腕がキツイの…。」

「あ、ごめん…」

シン君はすぐに、私を抱きしめていた腕を解くと自然に、また馬上で2人向かい合う事になり
一度目を合わせたものの、直視出来ない私は急いで、目を伏せ俯いてしまった。
すると私の頭上からシン君の声がして

「なんだ…、その…。」
 
「……。」

私達の埒のあかない妙な空気と問答が繰り返される中、そこに張り詰めた緊張感を破る
厄介な人物が私達を待っていた。

「さっきから何イチャついてるんだよ。」

といつもの様にギョンがニコニコと意味深な表情で問いかける言葉に返答せずにいたら
いつもと違う私達の様子に勘付いたかのように

「なんだよ…。熱烈キスでもしてたか?」

冗談交じりに言うギョンの言葉に、もう一度顔を見合わせた物だから
余計に顔が赤くなり互いに違う方を見ていると

「マジか?皇太子夫妻でラブシーンでもやってのか?
 だから遅かったんだ…。」

ギョンの顔は更ににやけて、からかう様子を器用に馬に乗りながらビデオカメラを回すファンも

「そうなの?それは残念…。
 あと少しで、決定的映像撮れたのにね。」

とこちらまでからかう様子に

「シッ!」

とシン君は威嚇するものの、私はそれどころではなく、未だ火照りが取れず
思考も追いつかないで、俯いてぱたぱた手扇で仰いでいる。

「シン、休憩ポイントまであと500m程だ。」

「イン、わかった。
 なんなら先に…。」

シンがインに言いかけて止めた理由が俯いた顔を上げたインの先にいるヒョリンと
気がついた時、後ろにいるシン君の戸惑いが伝わった。
彼女にも見られていたのだろうか、無表情にも取れる様子でじっとこちらを見たままだった。
そして何も言わず馬の鼻先を前に向けると静かに先に行く様子を見て

「シン、先に行くぞ。」

「あぁ…。」

そう言うとインはヒョリンの後を追って先に行ってしまった。
その様子にギョンとファンも先に行ってしまうと、シンとチェギョンは取り残された。
私はさっきのヒョリンの目を見て彼女とシン君に罪悪感を感じてしまう。

『私のせいで、2人を引き離しちゃったんだもんね…
 でも私はシン君の事…』

その先の思いがはっきり言えない代わりに

「……。
 シン君…ゴメンね…。」

「……。」

私が言った言葉に答える事もなく、みんなが待つ休憩ポイントまでそのまま馬を走らせた。

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