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小林恭二の『短歌パラダイス−歌合二十四番勝負−』(岩波新書)を読んだ。 〜内容紹介〜 短歌と短歌が一対一で優劣をきそいあう伝統の競技「歌合」(うたあわせ)。この古式ゆかしい遊びを現代によみがえらせるべく、男女二十人の歌人が一堂に会した。甘やかな春の伊豆を舞台に、大ベテランから気鋭の若手まで、いずれ劣らぬ実力派の歌よみが真剣勝負に秘術をつくす。華やぎと愉楽に満ちた歌合戦の勝敗のゆくえはいずこ。 短歌。一般に五七五七七の三十一文字(みそひともじ)から成る日本古来の文芸。 僕は古典短歌なら、百人一首は昔ほとんど暗記していたし、学校でいろいろと習ったため多少は知識もある。 しかし、この本を読むまで現代短歌に関してまったくの無知であった。 これまで現代短歌に全く興味のなかった僕が、なぜ『短歌パラダイス』という本を読むようになったか? 今を遡ること約2ヶ月前。 「月読通信」のアニスさんの提唱により、酒を飲みながらヤフーメッセンジャーを使用してチャットで本のことを語り合うWEB月読会という催しが始まった。 その記念すべき第1回の月読会で、2回目の会はどんな会にしようかということを話していた時、課題図書を決めて会までに各自読み、その本のことについて語り合おうということに決まった。思えば第1回は割と建設的に話が進んでいたもんだ(笑) その課題図書が、複数の参加者が推薦されていた『短歌パラダイス』だったのである。 会の次の日にさっそく何軒かの本屋さんを回ってみたが、発刊から10年近く経過した、しかも新書ということで田舎の小さな本屋さんでも置いてあるわけもなく、作戦を切り替えネットで入手することとした。 そしてアマゾンで見つけ、購入。送料をあわせると結構かかったが、のちに古本屋で100円で入手された方もあると聞き、ハンカチを噛んで悔しがった(嘘です(^^)>cuttyさん ところで月読会で『短歌パラダイス』の内容について質問したところ、短歌をよんで対決する現代版の歌合を記録したようなものだと聞いた。 歌合といえば思い出すことがある。百人一首の解説書などにもよく載っている、平安時代・村上天皇の催した歌合だ。世に天徳の歌合わせというが、なぜ数ある歌合の中でこれが有名かというと、、、 「忍ぶ恋」というお題で、当代きっての歌人、平兼盛と壬生忠見が対決した時のこと。 平兼盛:忍ぶれど色に出にけり我が恋は物や思ふと人の問ふまで 壬生忠見:恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしかと、どちらも今では小倉百人一首でお馴染みの、素晴らしい歌を詠んだのである。この時、判者は優劣を決めかねたが、天皇が平兼盛の歌を口ずさんだのでそちらを勝ちとした。失意の壬生忠見はそれを苦に病気になったという逸話もある(これは創り話らしいが)。 ということで歌合自体にはかなり興味があったし、しかも俵万智くらいしか知らない現代短歌の世界に触れてみようという気持ちもあって、かなり期待して本書を読み始めた。 そして読み終えての感想をいくつか挙げておく。 まず何より、歌合の模様が丹念に書かれ、その場の緊張感が伝わってくる。あまり知識のない短歌が題材であっても、真剣勝負の醍醐味が堪能できた。 そして、個々の短歌に関して言えば、古典短歌しか知らない身からすれば非常に新鮮で驚いた。あまりにも有名な俵万智の『サラダ記念日』の時も「これが現代の短歌か!」と感心したがそれどころではない。次から次へと僕の貧弱な発想の尺度では推し量れない、新しい世界が繰り広げられているのである。着想、言葉、表現、どれもがすごいのだ。僕では理解できない歌も少なからずあった(^^) それから歌人のみなさん、結構毒舌である(笑)やはり自分のチームのために、本心かどうかはともかく相手チームの作品のアラを見つけて批判し、自分チームの作品を誉める。これも真剣勝負の一面だろうが、読んでいるこちらまでヒヤヒヤするほどの貶しぶりだ(笑) さらに、判者の高橋睦郎と記録者(著者)の小林恭二の意見が違うことが多いことも興味深い。いかに短歌の優劣を決めるのが難しいかを痛感した。判者も錚々たる現代歌人を相手に大変だったろう。 なお歌そのものを引くことはしないが、本書中で僕の好きな歌をいくつか挙げておく。 1日目「燕」荻原裕幸の歌 1日目「盗む」東直子の歌 2日目「芽」田中槐の歌 2日目「塗り絵」十時由紀子の歌…本当に只の編集者なのか!? このような素敵な本の存在を教えていただいた月読会参加者の皆様、そして何より場を設定していただいたアニスさん。どうもありがとうございました。
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確かに判者こそは最も困難な役目ですよね。それにしても本当に面白い本です。同じ小林恭二の『俳句という愉しみ』『俳句という遊び』(俳人による句会録)もまた面白いので、ぜひどうぞ^^これも近所の本屋さんでは売ってないと思いますが(笑)
2006/6/18(日) 午後 2:41
もう近所の本屋さんは当てにしません(笑)俳句関連の2冊もネットで入手します!
2006/6/19(月) 午前 1:02
今まで、短歌も俳句も川柳も一括りにしていましたが、本書で短歌の楽しみの一片を知ったような気になり、とても楽しかったです。いい課題図書でしたね。小林さんの書き方も、さらっとして上品なのにユーモアもあって、とても好感が持てました。さて、ここでハンカチのご用意を。「俳句という遊び」も100円(税込み105円)で入手致しました!(笑)
2006/6/20(火) 午後 0:06
そうですね。僕も短歌と俳句は、文字数が違うだけで同じような短詩という認識でしたが、全く別物だということを知ることができて良かったです。何と俳句のほうも100円で入手されましたか!ここまでくると悔しいのを通り越して、笑うしかありません。
2006/6/21(水) 午後 11:52
この本、いろんな本屋さんで探したのですが、いまだ見つからないのです‥。なるべく、本屋さんで自分で見つけたいのですが、もうネット注文しかないかもしれません。はやく読みたいな〜。
2006/6/26(月) 午前 9:25
僕は2軒くらいで早々と諦めてしまいました。新書は姿消すのが早く、昔のものはよほどのベストセラーでないと置いていないことが多いですからね。ネットも一つの選択肢ですよ☆
2006/6/26(月) 午後 10:52
こんばんわ。『短歌パラダイス』お読みになったのですね。(^^) 確かに手に入りにくいでしょうけれども、あの本を読んで短歌をはじめた 方もいらっしゃるのであきらめないでくださいね。 岩波は本屋は買い切りで返品がききませんのである本屋さんもあるはずです。あきらめないでくださいね。ふふふ。これを読めば歌集を買ってもいいかなあ・・・って気分にならないかな。いい本ですよね(^^)
2006/6/27(火) 午後 8:23
機会あって今回読むことができました。素敵な作品との出会いに感謝。ところで岩波は返品ができないのですか?本屋の流通制度は門外漢にはチンプンカンプンです。
2006/6/27(火) 午後 10:18
まぁさんも書かれていますが、短歌の楽しさ素晴らしさって、私はそこに流れる「緊張感」だと思っています。σ(゚ー^*)一瞬をとらえた写真のように。究極的に限られた文字から広がる世界・・・言葉の力を信じさせてくれますね☆彡
2006/6/30(金) 午後 9:00
普通に読むだけでも緊張感はあるでしょうが、それが歌合わせともなると、時間的制約や勝ちたいというプレッシャーの中で、さらに高まるでしょうね。たった31文字なのに、そこに平仮名・カタカナ・漢字、果てはアルファベットまで組み合わせると、本当に無限の表現になるものですね。
2006/7/1(土) 午後 5:19