人生・探求

最後の投稿から12年(干支一回り)。ついにYahooブログ終了の情報が、、、時代の流れを感じます。

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横山秀夫の『クライマーズ・ハイ』(文春文庫)を読んだ。

〜あらすじ紹介〜
1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは―。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。



はっきり言って傑作だ。470余頁の歯ごたえのある作品だが、あまりの面白さに1日で読んでしまった。というのも、読んだ日は出張だったので、電車の中で集中して読めたのだ。

僕自身、横山秀夫の本領は短編でこそ発揮されると思っていたが、何のことはない。長編でもやっぱり巧いものは巧い。面白いものは面白いのだ。

しかし本書では、短編で見られる文章や展開の切れ味とはまた違う側面を見ることができる。

それこそ、著者自身の経験を元に書かれているからこそのリアルな、そして熱気が漂ってくる文章である。著者は日航機墜落事故が起こった時、地元・群馬の上毛新聞の記者だったのだ。



思えば、お盆を間近に控えた1985年8月12日。日航機墜落事故が起こり、520人の命が灰燼に帰した。そして、延々と読み上げられる搭乗者名簿、凄惨な事故現場、4人の尊い命が助けられる様を、小学6年生当時の僕はテレビで見ていた。

子供の頃に見た映像を今でも鮮やかに思い出すことができる。いや、映像だけではない、あの日の晩、何かの番組を見ていた時に画面上部に入った「ジャンボ機消息たつ」の第一報のテロップさえ未だに覚えている。

それほど、日本全国に衝撃を与えた事故であった。



『クライマーズ・ハイ』は、日航機墜落事故を、全権デスクに任命された一新聞記者の視点で捉えた作品だ。新聞社「北関東新聞」の社員も多数登場する。

どんな出来事でもそうだが、それに色々な立場で関わる人々がいる。その立場々々の同じ数だけ物語もあるということだ。そして、新聞社の立場での墜落事故、これはある意味かなり異質な関わり方である。

つまり、事故がどれだけ重大でも、新聞社にとっては一つの記事のネタなのだ。真実を、迅速に、国民に伝えるという大義名分はあるにせよ、『クライマーズ・ハイ』を読むと、やはり一つのネタに過ぎないということがわかる。追村次長の「日航もちょっと食傷気味だしな」の言葉にも現れている。

それを浮き彫りにするのが、新聞社内の様々な対立。個人的な対立、セクションの対立、グループの対立。組織なのだから対立があるのは当たり前だ。しかし、北関東新聞におけるそれが、これでもかというほど書かれ、実際の新聞社はどうなのだろうという要らぬ揣摩憶測をしてしまう。このあたり、著者の『第三の時効』における各捜査班長の対立を髣髴とさせるものがある。

また、悠木の記者としての矜持は素晴らしいものがあるが、やはり彼も人間だ。色々な悩み、以前からの家庭の悩みや自分自身の生い立ちの悩み、墜落事故と機を同じくして起こった同僚・安西に関する悩みなど苦悩の狭間でこの大事件に取り組まなければならない。そのことが物語に一層の厚みを加えているようだ。もちろん、本流の過去の墜落事故と交互に語られる、現代の登山のようすも。



話は逸れるが、つねづね疑問に思っていることがある。よくもまああれだけのボリュームの新聞が、来る日も来る日も発行され続けるものだ、ということだ。

記事の中には予め準備しておけるものもあるだろうが、やはり記事の新鮮さが求められる社会面やスポーツ面、政治面などではそんなに準備しておけるものではないだろう。

つまり、新聞社にとっては毎日毎日が勝負なのである。悠木の述懐で印象的なものがあった。新聞社では降版というタイムリミットがありそれを受けて輪転機が回り出す。朝刊が配達されると昨日までのしがらみもリセットされて、また新たな紙面作りに望むというようなのがあったと思うが、まさにその通りなのだろう。



こんな大変な新聞記者という仕事をしたいとは思わないが、仕事をする上で衿を糺すヒントを与えてもらった。

僕にとっては、今までの横山作品の最高傑作に推したい。それほどの物語であった。

閉じる コメント(37)

>swdchiroさん。新聞で搭乗者名簿に知り合いの名前を見つけた時の気持ち、、、さぞびっくりされたでしょうね。僕も阪神大震災の時経験ありますが、、、

2006/7/30(日) 午前 0:30 maa*aka**

>のふべぇさん。『クライマーズ・ハイ』いいですよ!特に会社の中でどう仕事していくか..色々なことを教えられると思います。

2006/7/30(日) 午前 0:31 maa*aka**

>ゆきあやさんもベストですか!これで僕を入れてこの記事で4人の賛同ですね!僕も空調の効いた電車内で、特に最初のほうのシーン、がたがた震えながら読んでましたよ。ところで僕も『出口のない海』買ってあります。近いうちに読むつもりです☆

2006/7/30(日) 午前 0:34 maa*aka**

>Anvilさん。本当に息詰るシーンの連続ですね。よくもまあ悠木さんは、あんな息苦しいようなしかも長時間の仕事を続けられるなぁと思います。新聞のデスクってみんなそう?

2006/7/30(日) 午前 0:36 maa*aka**

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私は、読んだことはありませんが面白そうですね。メモさせていただきます。しかし、出張中に1日でとはやりますね。私の場合、乗り物に乗るとあっという間に寝てしまうことが多いので、なかなか読めないんですよね。

2006/7/30(日) 午前 7:12 [ gak*1*66* ]

いや、gakiさん。僕も普通は出張中に読書していても、いつの間にか心地よい振動から眠りに落ちていますよ。寝ないで1時間読むのは、その本が本当に面白い時だけです。

2006/7/30(日) 午後 11:10 maa*aka**

こんばんは、ごはんです。まぁさんの意見に大賛成です。この作品は、コレまで読んできた中で最高傑作だと思います。それから、新聞のことについても同じように考えました。ひとつのベタ記事でもポリシーを持って、書いてるんだなと。職業小説なんでジャンルがあるのならまさにそれですよね。

2006/8/2(水) 午前 0:50 [ ぼのぼの ]

職業小説というのはいいですね。自分の仕事にポリシーを持てるというのはとても羨ましい。自分自身は、今あまりポリシーを持って仕事をやっているとは言い難いので(爆

2006/8/6(日) 午前 2:14 maa*aka**

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昨日本屋で見かけ買おうかどうか迷った本でした。やっぱり今日購入してみよう。

2006/8/11(金) 午前 6:18 Tsugumi

そりゃもうぜひ。ってもう買われて、読まれた頃でしょうか。また感想伺いに行きます。

2006/8/21(月) 午後 7:35 maa*aka**

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まぁさん、クライマーズ・ハイ読み終えました。トラバさせていただきます♪

2006/8/26(土) 午後 1:33 [ - ]

おお、そうですか!のちほど見させてもらいます☆

2006/8/26(土) 午後 11:15 maa*aka**

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読みました。トラバさせていただきます。

2006/9/5(火) 午前 7:06 Tsugumi

トラバどうもです。感想見に行かせてもらいます♪

2006/9/5(火) 午後 9:59 maa*aka**

今回、タイミングよくドラマの再放送と原作を一気に満喫しました。緊張感あり感動ありの傑作ですね。短編も読んでみたいと思います!

2006/10/17(火) 午後 2:32 れおぽん

ドラマの再放送、僕も前編は見ました!後編はDVDに撮ってあるので、近いうちに見ようと思いますが、なかなか上手に仕上がってますよね☆ぜひ短編も読んでみてください。

2006/10/19(木) 午前 0:05 maa*aka**

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ようやく原作を先に読みました。まぁさんのように「報道のあり方」を切り口に記事を書くと、また面白いですね。トラックバックさせてくださいね。

2007/1/7(日) 午前 0:40 mepo

トラバありがとうございます。メポさんの記事楽しみですね。近い内に読ませてもらいます。

2007/1/7(日) 午後 10:42 maa*aka**

日航機事故と、クライミングと、どうつながるの?と読む前は思っていましたが、心地よく収束!!さすが上手いなあと思いました。

2007/2/19(月) 午前 9:04 zo_no_mimi

普通だったらそんな二つを取り入れると破綻しかねない所をうまくまとめる辺りが横山秀夫の手練ですね。

2007/2/21(水) 午後 10:16 maa*aka**

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