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あるめちゃめちゃ晴れた土曜日。朝から先生はそわそわしていた。
「つっちゃ先生。どうしたん。今日はわ」
生徒に心配される先生もどうかと思うが、一人の男子生徒が聞いた。
「いやー。今日は天気がいいから課外授業にしようと思って、準備しているんや」
「課外授業?。そんなん勝手にいっていいんか?」
「問題ない。わしが引率するんやから。よし、2限目からは、外行くで。
みんな体操着に着替えて」
生徒にとっては学校外の授業は非常に楽しみで、やんやの歓声があがった。
すぐにみんなは用意して、準備万端「どこにいくんやろ」という気持ちと、
授業がなくなる嬉しさで、いまにも爆発しそうだった。
「先生、着替えおわったで。出発しようか」
「よっしゃ。そしたら出発や」
先生は行き先も告げずに、大きなリュックを担いで、生徒を連れて学校を
飛び出した。僕らは突然の遠足気分に、なんともいえぬ期待感を持っていた。
街中を歩き、少し町から外れたところに竹やぶがあった。竹やぶの先には
小さな池と、田んぼが3面あった。学校からあるいて約20分くらい。
僕らはその光景におどろいた。
「先生、こんなとこ、どこで知ったん。すごいなここ」
都会で育った生徒にとって、竹やぶの中にあるこの場所は、秘境のように見えたのだった。
「そやろ、ここは秘密の場所や。うちの学校のやつは大体知らんわな。さ、みんな、理科の
実験の開始や」
そういって、先生はおもむろに釣竿を取り出し魚を釣り始めた。生徒達には、タコ糸と、裂きイカ
を配り、田んぼに垂らすように指示した。これで何が釣れるかって、それは田舎の子供なら誰でも
知っているはずなのだが、この学は街中にあるせいで、釣りなどしたことのない生徒ばかり、
こんなんで連れるはずがないと思いながら、半信半疑で先生の指示に従っていた。
狙いは「アメリカザリガニ」えびに良く似た。大きなハサミを持った甲殻類の動物だ。裂きイカ
を目の前に垂らすと、大きなハサミでつかみ、たべようとする。それをすっと引き上げると以外に
簡単に釣れるのだ。平成の現在では、見かけなくなった遊びかもしれないが、昭和の頃は、田舎に
行けば、こんな光景はいくらでもあった。しかし、実験とは名ばかりで、ほとんどレクリエーション
である。いやはや変わった先生である。
(つづく)
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