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「七不思議」 − 1970年 あんまり楽しくて死にそうな時、あなたなら、どうするの? オレ、長生きするよって、白をきるのさ。 あんまり幸福で胸がいっぱいになった時は ? 不幸になって苦しくなるまで、息をとめるのさ。 あんまり退屈で、へが出そうな時は ? 体の中から煙がでるくらい、モクを吸うのさ。 あんまり可笑しくて涙が出る時は ? 人が白けるまで、涙を流すのさ。 あんまり驚いて気が狂いそうになる時は ? オレは、驚く事は、この世にないのさ。 あんまり悲しくて笑い出す時は ? 人の瞳をジッと見て自分の顔をみるのさ。 あんまり惨めで話ができない時は ? 電話の交換手に泣いてもらうのだ。 そして大きな大きな愛の話をするのです。 (完)
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私的な詩の死と再生
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「墓標(その2)」 − 1970年 壊れた映写機に、ちぎれた一片のフィルム 音が縮まり、十二小節のブルースが重なる 「さよならだけが、素直に言えなくて、 過去が未来を先取りしてはいけないと、 人々は言うけれど、やはり さよならだけが、落ちつくの。」 一枚の紙切れとニラメッコだけが、残され、 メルトーメの歌が、共鳴し、神経をゆさぶる。
I give her all my love,
壊れそうになる魂の弦と共鳴させまいとしてThat’s all I do, 耳を閉じて、メッタクサスのリズムをきざむ 人は相変わらず、ストイックな視線をよこす 必死に苦痛と叫びとの格闘の数分間 和音を収斂させまいとするエスプリと それを抑えつけるジャズの空間が、 ショウトし、欲望がねじまがる 目に見えない煙が、意識の凝縮された接点にわり込んで来た時、 灰になった魂が落ちつく 通りの雑踏に逃げ込み、 一人称が三人称になる自由を待ち望む だが、周りの舞台は、人に悲劇を迫る メロドラマが、喜劇になる時、 人々は、安らかに、沈黙を守る事ができる。 しかし、道徳と理性が立ち回る 舞台の上では、役者は、観客をながめる 観客は、あせって身をとりつくろい、 断片的、逆さまの言葉を発する 夜の舗道は、悪魔が作った鐘に反射され、 どもまでも欲望の道を拡げる 押し殺してゆがめられた衝動は、 錯綜に色どられた夜に交わり、 空白の瞬間と取引する 夜が、鉛色に波うち、孤独の谷間に押し寄せる 本能と幻想が手を握る事も出来ない不条理の世界は、 地獄の火事にも驚かない 人々に優しく照りかかる橙色の夕陽と 都会の淡い夢を描き出す静かな舗道よ、 おまえは、一体、何処へ行ったのか いつの日だったのだろうか 偏見の色メガネを落としてしまったのは、 そして、想像力の現在が、さらに重圧をかけ そのガラスの砕ける音を聞いた時、 鉄格子をのみ込むような無重力の夕暮れも 寒さに震えて、真夜中のデッキから見た、 妖精の目がちりばめたような港の夜景も まだ眠りに落ちている町の坂道で、 教会の尖塔に浮かび出た虹色の太陽も、 からまわりの創造の前に、通り過ぎる。 ただ見つめていたのは、 自分の墓標だったのかも知れない。 (完)
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「墓標(その1)」 − 1970年 ある日突然、狂ほしく煙が立ち昇る。 今日も、明日も、雨矢が、ノレンのように 平べったい心象空間をふさいでしまう。 自分でも知らなかった小さな秘密の場所で、 人知れず燃えていた灯し火が、能面を被った妖精達のいたずらで、 吹き消された静かな夜。 空ろな瞳は、光を信じられなくなる。 煙がくすぶる、暗い闇に音もなく。 朝が、牛乳配達と共にやってくる日はすぎ、 夜が、地獄の門の開く音と共にやってくる日、 空がひっくり返り、ヴィーナスが魔女と同性愛。 踊るあほうに見るあほう。 神様が、人に愛されるのは怖いと逃げてった。 人はカッコよく気が狂うか、カッコ悪く死ぬか、選び給え、一言多かった。 常識という見たくない一本の文字が、執拗にまとわり付き、拒む。 このバカは、何処かの屑屋よきておくれ。 煙が、くすぶり、消防車がガソリンをまく。 イメージがくしゃみし、燻製となって、魔女達の魂を売る店にぶら下がる。 店先を転がっていったら、万博行きのバス。 雨はもう止んでいた。虚栄の市があるとかや。 どんな面白い催し物があるのだろうか。 少女のなく声に合わせて、少年達は、 ガタガタのテンポで踊っているのだった。 「あなたが好き」 「では別れよう、神さまが、おっしゃった。 ナンジ、カンインスルコトナカレ。」 皆が、キレイな玉手箱を無理やりみせるので、 その中に十円穂放り込んで逃げてきた。 余りあせって逃げてきたので、 一カケラの愛らしい恋慕も投げてきてしまった。 くやしさと苦しさが綱引きをする。 丘の上の大通りを歩く時 頭は、フラフラと風船のように浮かび、 足だけが、ドタドタをそれをひっぱる 大きな幸せも、小さなこづき合いも、 中ぶらりんこのさびしさも呑み込むような昼でも、 目は、果てしない白昼の幻を追いかける 興奮がゼリー状に凍った小さな部屋の中 何か、さみしさが、さみしさだけの世界のよう 何の響きも、もうその在りかが見失なわれ、 白い白熱の視覚だけが生き残るそんな世界 今初めて、盾を落とした、けだるさの破片が、 涙で洗われるのを待っているよう 自然の暗やみの中で、怨恨を運んでくる風の音 窓が、小うるさく、あいづちをうつ。 ふとした事で死ぬような時間をくれるとは。 でも、お前の感情なんて、ウソだウソだと、 朝空の静かな眼射しをみれば、また、 妖精たちにアイサツする言葉を探すのだと。 観音様は、早速、デイトしに行ってしまった。 置き忘れた情念の空間も、今はもう、 思い出そうとしても思い浮かばない。 美しい記憶を尚もつくろうとする汚らしさ 思いでは、現在を」閉じ込めようとする自意識。 反逆と自由は、地下室で空模様を見ている。 かって人々の熱気で作りあげた都市の伽藍は、 その熱に耐え切れず、燃え上がり、 噴水の湧き上がる泉に、自らの像を映し出す。 朝起きて、今日は快晴、 街路を歩く、煙が青く凍り付いていた。 風が、ビルの谷間の木の葉と、人々の言葉を、 かすめとって、海に落とす、深く深く。 都会の空気が紫色に漂う夕方まで歩こう しかし、人々のはき出す何気ない愛の毒気が体を突きぬけ、 最後の幻想が、砕け散る。 よれよれのフィルムが逆回転をし、 怨恨を持続する吐息だけが残る透明の世界、 生活が耐え切れず屋外に飛び出す 歩きつかれて、とある町角のジャズ喫茶に入る。 (続く)
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「お昼のお祭り」 − 1969年 いつ果てるとも知れない不安の中で、 夜が、いたずらに明け、 朝もやが、心のバクハツを溶かす 出会いの時間が、逆さまに、はね返る 時々、人々の気を引くように、 いたずらな空は、青天の笑顔を見せる 体の中にまでしみ透る白い空の放射線 商店のファッサードの色が、無意識に、 いまの瞬間に、何かを呼びかけようとする 言葉をなくした人は、それに応えられない。 その暖かさと冷たさの混った彩色の映像は、 記憶の片すみに、今にも蒸発しそう 分断された自我と道行く人々のしあわせ 日常の出来事が、こんなにも美しく こんなにも、興奮した足どりをやわらげるのか。 想いもよらなかったしぐさ、に驚き、 見せかけた平静を、忘却の谷間に追いやる。 しかし、移ろいやすい気分を粉々にうち砕く。 苦しさは、沈黙の会話のあせりの中で、 妙に、悟られまいともがき、耐えられなくなる。 不条理な生の存在は、一点の志向性に、 余りにも早く還元され、その堕罪は、 目覚めた自分への挑戦さえも忘れさせようとする。 薄暗い白木の部屋にはね返るジャズのサウンド 他人への挑戦は、できるはずもない。 衝動は、彼女の無言の問いかけも、のみ込んでしまう。 壁につくられた何気ない木の扉は、開け放たれ、 あるジャズメンのフォトゥが、ぶらさがる。 もうみせるものは何もないのに、 それ以上、何を要求するのか。 演じられる祭りは、かすかな希望を残して、 コンクリートの壁の中にとじ込められる でも自由の開示性は、孤独の断絶だけで見失われてたまるものか。 外には、太陽の陽射しと人々の愛がある。 山へ、空へとなだらかに、せり上がる道路が、 分断された都会の空間を横切る。 真っすぐに。 湧き上がる祭りの幸せのウズが、空高く上昇し、 周りには爽やかな春の風が、彼女の髪をなびかせ、 自動車の排気音を何処かに運び去ってしまう。 (完)
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「開かれた部屋」 − 1969年 かすかに、ふるえる倦怠の収斂の輝き 捨象された生活のしあわせが、主張する。 玄関に、拡がって雨滴の乾きを待つパラソル 曇りの日を裁断するかのように、刻む置時計 青天の空気に触れて、光を集めるサングラス お出かけを用意している口のあいたバッグ 軽快に、踊りの波にうかぶ曲が、とらえ処なく、 高い天井の狭い部屋に充満する テレコをひっつかみ、必死に、 空間に飛散するメロディをつかまえる さて、音の再生だ 変なだるい話が聞こえる 断絶した感覚の回復の逆もどりした喜劇 仮装された三人様達が、曲を押しやって戯れている 意外性が、表出した言葉を3/2人称にする。」 マイクが、微かに、あいづちをする 二分された音が、無と有の空間を通って合体し 秘められた生活の現存性が、色どりをつける 「是で、キレイに、音楽が入るよ。」 「この牛乳、三倍もこいから、三倍おいしんだ。」 「それじゃオレ帰る。」 「うん。 ・・・・ パッ、スパパッパ」 (完)
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