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フランスに片思い。

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極上の晴天。
 コーヒー豆を買いに行き、そのまま<ナタリー・コール>のCDを聞きながら
 榛名湖までドライブ。桜の美しい・春の一日。

 帰宅し、新聞を眺めると目が留まる。
 テレビ欄の<パリの極上を食べる>の文字。
 早速、HDDにGコードで録画予約する。
 コーヒーを落とし、タルトに生クリームをかさねる。

  パリ一区、カメラがルーブル美術館前の広場を駆け抜け、
 ド派手なアレクサンドル3世橋をオートバイが滑走する。
 BGMはロックで・・・。
 「古都パリをロックねぇ。まぁ、そうよねぇ、パリにずっと住んでたら
 古臭い街並みにうんざりするかもねぇ。何処となく、抑制された圧力感に圧迫される
 感じがするものねぇ。ヨーロッパって素敵だけど閉鎖感が漂うのがいやよねぇ。・・・。
 ロックを流しながらの通勤は正解だわねぇ。」と、一人でボソボソ。

 <ホテル・ムーリス>で働く37歳の料理長が主役らしい。
 「<ホテル・ムーリス>?、Rivoli通りのアレでしょう?
  歴史ある由緒田正しい一流ホテルだけど、
  ド派手なイメージのクリヨン・リッツ・ジョルジュサンク他と比べると
  いまいち控えめな・地味なイメージなんだけど、今が旬の活気溢れるホテルなのかしら?」
  と独り言。

  カメラがホテルの地味めなレセプションを横切り、
  クラッシックなレストランをつき抜け、厨房に入った。
  白いタイル・命令口調のフランス語が飛び交い、
  軍隊のような緊張感のほとばしる<ブリガード>。
 
  懐かしい緊張感。短いシェフの命令口調のフランス語が響く厨房。
  答えはいつも一つだけ。<oui,chef!oui,mon chef!>ただ、それだけだ。
  スピードと活気と独特の静寂。
  銅鍋の重さや、厨房の匂いが、瞬時に脳を<記憶の矢>が翔け廻る。
  私にも、あんな場所でひたむきな時間を過ごしていたことがあった。
  もう、戻れない青春の場所だ。

  美しい・華麗な芸術作品のような料理が、
  スライド映画のように次々と画面に映し出される。
  生き生きとして、繊細で精巧で、そしてクラッシックな料理さえも現代的だ。
  活力を感じる。
  インターネットで世界のどんな名店の料理の画像が飛び交っても、
  真似しても、この料理に宿るエスプリはコピー不可だと思った。
  そんなオーラを料理達はまとっていた。
  「おぉ!凄い。素晴らしい。」TV録画をしていて本当に良かったとホットした。

  一人の初老の女性が食事をしている。
  彼女はこのレストランの、37歳の料理長の料理を愛し通ってくる常客だという。
  「ここで、美味しい料理を沢山頂くでしょう。
   なのに次の日には、お腹が空いて又食べたくなってしまうの。
   彼の料理が食べたくなってしまうのよ。」
  で、彼女はこのレストランに通ってくるのだ。
  彼女は、37年パリに住む料理ジャーナリスト<マダム・福井>。
  素敵だ。彼女の人生は私の夢だ。
  言葉は簡単だ。しかし、行動は難しく事実の証だ。
  同じレストランに通い続けることは、そのレストランに熱心なラブレターを
  送り続けるのと同じことだ。それも、毎回高額な料金が発生する。
  熱心なラブコールは嬉しい。しかし、同時にプレッシャーでもあり、
  期待に答えなければ、と心地よい緊張感も生まれる。

  彼女に出される料理は、他の人とは異なった<アルール>をまとっている。
  <骨髄のソース>etc.しっかりとクラッシックな料理。
  ワインとのマリヤージュ無しには食せない皿だ。
  食べ続けるには、胃袋もしっかりと実践を積み・博識で根性と情熱がなければ
  経験を積んでない初心な胃袋では、拒絶反応を起こしてしまうかもしれない。
  料理長とマダム・福井の信頼関係を感じた。
  「彼女の舌と胃袋は、こんな料理を喜んでくれるだよう。
   だから、これをおだしするのだ。」と。
  客と料理長の幸せな両思いの関係だ。羨ましい。全く、羨ましい。

  料理長の日々の生活や、彼の言葉、そしてその育まれた人間関係は、
  競争の激しい世界や都会に生きながら、温かい人生を歩んでいる人だった。
  「こんな人が作る料理なら、幸せとポジティブな勇気をくれそうだ。
  料理は、その人自身を表現してしまう物なのだから。」
  この時点で、わたしは彼の料理を食べるために
  毎日の<小銭貯金>を決心した。それを持って、パリに飛ぶのだ。

  彼のおばあさんは、彼が子供の頃から
  キッチンにあるありあわせの食材で、美味しい料理を作ってくれた。
  これが、彼がプロの料理人になる源となった。
  <美味しい料理は、幸せの根源である。>
  これは、偉大なグランシェフ・エスコフィエの言葉。
  まさに、家庭での毎日の生活の中の料理は愛情表現だ。
  家庭の中の食事。
  他人が見ることもない、料金を払う人もなく、請求書を請求しない食事。
  愛情を込めて、美味しい温かい料理を作り続けること。
  深い愛情を食べ続けた彼は、大人になって温かく・情熱を込めた料理人になった。
  
  彼の最愛のおばあさんが、彼に言った言葉は
  「立派な料理人になっておくれ。」だったそうだ。
  そして、彼は人の心に触れる料理を創る料理人に成長した。
  <こんな素敵な人生を生きている人がいるんだ。>
  感動した。

  エンディング。パリの夕暮れが映し出される。
  そして、画面下の流れるクレジットに、目が留まった。
  <企画 福井和子>そう、この番組はマダム・福井が企画したものだった。
  彼女は料理長をバックアップし、声援を送っている。
  彼女の心意気を感じた。そして、彼女の料理に対する真摯な情熱を感じた。

  この番組は大切にしよう。
  そして、料理に対する情熱を忘れないように、
  人の情の素晴らしさを忘れないように。
  
  
  
  

 

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