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温暖化の原因となる二酸化炭素を地中に封じ込めて減らそうとする取り組みが活発になってきた。先行しているノルウェーは発電所から出る二酸化炭素を回収し、北海の地下にためる事業にも着手している。米、英、豪州、中国などでも計画が動き始め、長期的な温暖化対策として注目されている。(ノルウェー南部モングスタット=西崎香)
●炭素税導入で研究開発加速
「この発電所が来年稼働すれば、大きな産業施設としては世界初の本格的な『炭素封じ込め』の実証プロジェクトとなる」
ノルウェーの石油最大手スタットオイルハイドロの担当者ヨン・ヤコブセン氏は胸を張る。
国内最大の石油精製・輸出港のモングスタットで建設中の天然ガス発電所に併設される、二酸化炭素の分離・回収施設は国家プロジェクトだ。投資額は約250億クローネ(約3700億円)。
ノルウェー政府は先月末に朝日新聞など海外の記者を現地取材に招いた。
発電・精製所から出る二酸化炭素を排出ガスから取り出し、それを液状にし約250キロ沖合の北海の海底下約1千メートルに注入する。二酸化炭素の回収・貯留(CCS)といわれる技術。担当のコス副大臣は「化石燃料の発電所だったら二酸化炭素の9割前後を地中に眠らせることができる可能性がある」と話す。
将来的には近隣国による貯留の利用も見込む。処理費は発電所だと1キロワット時あたり0.01〜0.05ドル(約1〜5円)との推定もあるが、運営規模などで異なるという。ちなみに日本国内の一般的な電気料金(首都圏)は同約23円。
ノルウェーでは96年から北海ガス田のスライプナーで、天然ガスに含まれる二酸化炭素の大部分を取り除き、直径約25センチの高圧パイプを使って海底下に戻してきた実績がある。
90年代初めに北海油田の採掘などを対象に政府が導入した炭素税がきっかけだった。エネルギー業界は税負担を免れようと、CCSの研究開発を加速させた。「回収・注入のコストが税負担とほぼ同水準まで下がった。二酸化炭素を海底下に戻すことが経営方針に見合うようになり、以来、せっせと貯留している」とスタット社のトール・トープ氏は説明する。政府幹部も「炭素税の圧力があったため、民間の環境対策が本格化した」。
ガス田での削減量は、年間でノルウェーの二酸化炭素排出量の約3%にあたる約100万トンに上る。さらに約4%をモングスタットで削減する見通しだ。
CCS技術は2050年に必要な世界の二酸化炭素削減の約5分の1を担い、省エネなどに次ぐ主要対策になる、との試算もある。
●漏出「わずか」 米英など追随
ただ、注入しても、いつか、どこかで漏れる懸念もある。施設の誘致に地元が反対する理由のひとつとされ、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のパチャウリ議長も「安全性を確認するためにも、ノルウェーなどの先行事例が参考になる」と注視する。
先月開かれたノルウェーの国際会議に出席した専門家らは「地上に漏れる可能性は最悪でも、約5千年で0.2%程度」などと指摘。ノルウェーのストルテンベルグ首相は「これまでの経験は、漏出なしで貯留できることを示している」と話す。
主要8カ国(G8)は2010年までに主なCCS実証計画を世界で20カ所特定し、積極的に取り組む方針で合意している。すでに米政府は約34億ドル(約3400億円)の関連予算を盛り込んだ。欧州は15年までに10〜12カ所で着手する構想で、中国も処理施設をつける発電所の建設を始めた。日本は20年までに実用化をめざし、福島県いわき市で実地調査に入る。専門家の調べでは、米、カナダ、英、豪州などで64件の大規模プロジェクトが計画されている。
他業種でも導入促進を ノルウェー・ストーレ外相 ノルウェー北部の気温上昇の度合いは世界平均の約2倍にのぼり、氷が解けている。オスロでは私が育ったころの雪の季節は11〜4月だったが、今は1〜3月にとどまる。地球的な環境対策の一つとして二酸化炭素の回収・貯留には極めて大きな可能性がある。国際協調で「この技術なしでは新たな石炭火力発電所の建設は認めない」ぐらいの取り組みが必要で、導入促進の対象業種にはセメントや鉄鋼、化学なども含まれるべきだ。排出権取引の普及で二酸化炭素の排出コスト削減の努力が世界的に加速すると、企業も回収・貯留の設備投資に真剣にならざるを得ない。
2009年6月18日 朝日新聞
(http://www.asahi.com/eco/forum2009/news/j/TKY200906180218.html)
■一言
決して恒久策とは言えないと思いますが、CO2大幅削減の切り札がない中で、早急に確立すべき技術だと個人的には思っています。
いろいろ問題はあります。CO2をいかにコストをかけずに回収するか、日本の場合にはどこへ入れるんでしょう。他国へ運ぶとなるとそれもコスト増になります。もちろん漏出の心配もあります。
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