鷲巣義明のシネファンタスティック

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カルト

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 今年10月15日の深夜に、「東京ファンタ」の“狂い咲きオールナイト”の中で、石井輝男監督の『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』(73)と『直撃地獄拳 大逆転』(74)が上映された。主演のみならず脇役、小さな端役に至るまで個性的な出演者がギラギラと輝き、予定調和の映画が溢れる今、意表を突く予想外の展開の連続に、脳内は酩酊状態に……(笑)。

 私は、石井監督の60年代〜70年代の作品を数えるほどしか観ていなかったためか、今まで良好的な接近遭遇を果たしていなかった。とりわけ今回初見の『〜総括リンチ』には大感激。池玲子扮する、侠客・猪の鹿お蝶の凛々しさと美しさに惚れ(彼女、当時18歳だったというから驚く)、自らの肉体をその時の状況に応じて使い分けるという、凄まじいタフネスぶりに惚れぼれ。
 特にオープニング・タイトルの大立ち回りから、お蝶の着物がはだけ、そして徐々に脱げていき、最終的には全裸になりながらも戦い続けるという凄まじい姿勢にこそ、お蝶の凄まじい侠客魂を見た気がする(マジで……笑)。

 彼女が戦う相手は、女たちをシャブ中にして麻薬の運び屋にする博徒一家で、女の秘所に麻薬を入れて運ばせているのだ。実際あっても不思議ではないが、股を開いた女のあそこに入れる(別に性器やヘアが映るわけではないが)場面って、実に滑稽だ。
 今なら、そのあたりの映像は観客にイメージさせてお茶を濁してしまうが、70年代という時代ではそれがある程度許されていたし、石井輝男監督もその描写があってこそ、映画がより面白くなると感じていたハズ。その他にも、今でも考えられないようなインモラルな表現と、惜しげもなく女性の裸が出まくり、エロティシズムを軽〜く超えた扇情的な場面が続出する。
 観終わって感じたことは、映画って、いつから上品、健全なものになってしまったのだろう……と。

 帰宅して、早速ネットにて、米版DVDソフトを注文。米DVD発売時の英語題名は、『FEMALE YAKUZA TALE』。予想よりは、画質が良くて満足。ちなみに本作は、姐御伝シリーズの第2弾で、1作目も米でDVDソフトが発売中だ。

 で、私の中では、石井輝男熱がやや上昇中だったので、池袋の新文芸座にて、10月29日(土)から始まった、「追悼 石井輝男監督特集」(〜11月11日(金)まで日替わり上映。11月19日は石井監督の『スーパー・ジャイアンツ』6本立のオールナイト上映あり)の初日、『徳川いれずみ師 責め地獄』(69)と伝説のカルト映画『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(69)を観た。

『〜責め地獄』は初見で、強引に連れてきた柔肌の若き女性たちに刺青を入れて外国人(劇中では、毛唐!と表現)に売りつけようとする役人・鮫島らの陰謀に巻き込まれた、同門の彫り師2人(吉田輝雄、小池朝雄)の彫り物対決がクライマックスだ。

 ただし冒頭、金属の貞操帯を付けられた女郎の回想シーンから始まり、彼女が主役かと思いきや、そこから話の中心が徐々に移行していくするあたりは流石(笑)だし、女郎役になった由利徹や大泉滉らの掛け合い漫才的(声は女性があてている)もユニーク。

 今回、女性に刺青を彫る場面が多いため、いつも以上に女性の肌をフェチに捉えていると思うし、刺青のデザインがこれまた面白い。特にクライマックスで闇に光る畜光刺青対決には唖然とする(笑)。
 アクション劇ではないので『〜総括リンチ』のような爽快感はないものの、主人公2人の悲哀と憎しみを絡めた心理と展開が見もの。キュートなハニー・レーヌちゃんの裸もクライマックスで見ることができ、まずは満足。

 数年ぶりの再見(2回目)になる『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』で印象に残るのは、やはり土方巽が演じる菰田丈五郎が、島全体をフリークス・ランドにするという野望と、その夢の過程で強引に造りあげてしまった、悲しき象徴の結合双生児である。

 また「双生児」「人間椅子」「屋根裏の散歩者」など、乱歩が生んだ怪しき者たちを動員したような構成には、乱歩ファンは原作映画として認めたくはないだろうが、逆に考えてみれば、怪しく、いかがわしい者たちを描くには、乱歩が創造したキャラちを配置するのが、まさにベストだったと言えるかも。それだけ、乱歩の怪しきキャラたちに魅了されていたということなのだから。

 そしてラストの唐突とも思える、人間花火の場面も賛否両論だが、ある種、突き抜けた瞬間=感覚が、この場面にはある。それまでの陰湿で澱んでいた空気が物の見事に払拭されたような気がする。愛する2人にとって、フリークスや近親相姦という忌まわしき呪縛から逃れるための、盛大な打ち上げ花火だったに違いない。彼らの遺書にも書いてあったように、この世で結ばれることができないのなら、せめて別の世界で、という願いを込めて……。
 と同時に、人間花火という奇怪な行動を通し幕を閉じたことで、よりカルト性が高まったとも言えると思う。

 今回の特集上映、とにかく私が予想していたよりは入りがよく(とは言っても初日ですが)、新文芸座に着いた途端、館員の方から、「この後、入場してもお立ち見になりまぁーすっ」との声が響いた。結局、座ることができたけど、最終回の『〜恐怖奇形人間』では、後方に立ち見客が続出(ウ〜ン、凄い)。
 他に気になっている作品としては、11月6日上映の『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』(69)、10月31日上映の『実録三億円事件 時効成立』(75)で、是非観てみたい。

(写真1枚目は、新文芸座ビル1Fの本日興行の告知ボードで、右は『徳川いれずみ師 責め地獄』、左は『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』のポスター。写真2枚目は、米で発売されたDVDソフト『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』のジャケット)

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