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「大変だったな」
「其程(それほど)では無かったわよ」 僕は僕の彼女の身を案じた言葉を掛けた。 僕の彼女、戦場ヶ原ひたぎは、嘘を吐(つ)いた。 大変で無い筈が無いのだ。 自宅の前で事故が遭ったのに、事故の際に家に滞在中だったのに其程で無い筈は無いのだ。 戦場ヶ原ひたぎは、他人から嘘を吐かれる事を嫌う様だが、自分から嘘を吐く事には躊躇を行わ無いらしい。 「お前の言った通りにネットに記事が有ったが、物凄い音がしたそうじゃ無いか。 目撃者が核爆弾が耳元で試し打ちされた気分だったわって。試し打ちで有る理由が良く分から無いがな。 まあ、最近で「本打ち」が行われたのは広島と長崎の二箇所依頼だから。他は全て試し打ちだから、正確な表現だとは思ったけれど。」 「あぁ、其の記事なら私も見たわ。ちょっとその人表現力が豊か過ぎるわよ。実際には其程でも無かったわ。それよりも、大丈夫なの? 其の自転車、貴方(あなた)とても大切そうにして居たけれど。」 「あぁ、小さなガラスの破片が刺さったから、僕がいつも携帯して居(い)る、一回だけ修理出来る泡立ちスプレーで直せるよ。」 「はぁ、随分とおべんちゃらな物を持って居るじゃ無い、阿良々木君」 「おべんちゃらって、使い方が今一で罵倒の言葉にも成って無いけど、何か別の言葉と間違えたんじゃ無いか?」 「あぁ、間違えたわ。そんな小さな核爆弾がもう世の中には出回っているのね。いいわ、阿良々木君、心中しましょう。」 「し無いし無い。心中はし無い。」 ?此の様な会話を何処かで誰かとした事が有る様な気がする。 思い出した。 その出来事の後、数々の伝説級の毒舌を聞いたから記憶の隅っこに追いやられていた。 僕と戦場ヶ原が私立直江津高等学校3年生の頃の話だ。 階段で、「戦争をしましょう」と目の前に居る此(こ)の戦場ヶ原ひたぎ当人から聞いた言葉に声の調子が似ているし言ってる 内容の悍(おぞ)ましさも似通っている。 「何で僕が自転車がパンクした時に一回だけ直す事が出来るスプレーを目の前に翳(かざ)しただけで心中をする事を誘われる事に成るんだ!」 此の女の思考回路は最近さらに「やばい」芳香を出しており、やばい方向へ向かっている。咆哮したい程に。奉公してでも宥(なだ)めたい 程に。 彼女は昼間っから彷徨している様だ。 否(いな)寧ろ、確固とした目的を持って真っ直ぐに「やばい事」を平気で、兵器の言葉を使って僕に言っているのだから事は大変だ。 僕が戦場ヶ原ひたぎの荘の前を自転車で横切ったら、僕の自転車がパンクして仕舞ったのだ。 僕は、戦場ヶ原の荘に用事が有って此の道を進んで居た訳では無い。 が、パンクして仕舞った次(つ)いで、寄ってみようかと気が向いたので、寄ったのだ。 此処(ここ)で事故が有った事は知ら無かった。 僕が踏んで仕舞ったガラスの破片は、その事故の時に散(ばら)蒔(ま)かれた物らしい。 地面がキラキラして有(あ)ったので「やばい」と思ったが時既に遅しであった。 戦場ヶ原がインターネット上にその時に記事が載ってるわよと言って携帯のPCサイトビュアーを使う様に促して来たので、仕方無く其の場で 使う事にした。 物凄い料金が発生するのだが。 PCサイトビュアーの料金は、核爆弾級とは言わ無い迄(まで)も物凄い金を取られる事に成るのだ。 「それにしても阿良々木君位(くらい)ね自動車免許を取ったのに、自転車の方がいいや何て言う幼児的発想で自転車に乗り戻して仕舞う人は。」 幼児級と言う言葉に少しカチンと来たが、英語で言う処(ところ)のbabyみたいな物の様に感じる事にした。 「と・に・か・く。阿良々木君。どうすれば良いかと言うと、此処に判子を押せば良いのよ。」 そう言って戦場ヶ原ひたぎが僕に突き付けて来た紙は只(ただ)の紙では無かった。 意味が篭められて有る紙。 離婚届だった。 …離婚届? そもそも僕は戦場ヶ原ひたぎと結婚をした覚えは無い! 「何で結婚もして居無いのに、突然離婚を突き付けられ無いと成ら無いんだ!」 「あぁ間違えた此方(こっち)では無かった。此方(こっち)」 そう言って差し出して来た紙も只の紙では無く、こちらは「結婚届」だった。 先程の離婚届は一体。 僕の欄以外は全て書かれて有ったけれど…。 結婚届けにも僕が書か無ければ成ら無い欄は全て記入が住んで有(あ)る。 「視聴者には悪いのだけれども、私は嘘を吐(つ)きました。私が西尾維新の物語シリーズの表紙を飾った事は幾度も有る。 其れは確かにそうよ。全て私のナイスなボディを見せ付ける、いえ、魅せ付ける、いえ、見蕩れさせて、いやらしい気持ちに させてアダルト小説と間違えさせて購入させると言う企ての一貫だった事は承知でしょうけれども、実は私は、此処(ここ)で白状し無ければ 成ら無い事が有るの。」 否(いや)、アダルト小説と間違えさせる為に、御前が表紙に抜擢された訳では無いと思うが。 そんな、いやらしい男の気持ちを弄(もてあそ)ぶ等、許せぬ。 そして、実際に絵を描くと言う時点でイラストレーターがお断りする筈(はず)だ。 「そう、そのVOFANさんの話なのよ」 「自分が小説の中の登場人物に過ぎ無いと言う事を意識し過ぎるな」 「うん?何の事を言っているのかさっぱり分から無いわ。ねぇ皆(みんな)。」 「テレビの前の皆に同意を求めるな!」 連続での突っ込みは喉に悪い。 少し枯れて来た。 「ほら、偽物語DVD、or、Blu-rayの拍子で私がポストに座って其れは其れは素晴らしく可愛らしくチョコンと 鎮座して居る図が有ったでしょう?」 チョコンと鎮座ってどうするんだ? 「あの図案は当初は、私がラブレターをポストに入簡する図では無くて、結婚届けを役場に提出する場面だったのよ。 イラストレーターのVOFANの野郎が、其の案を[ロマンティックで無い]と言う陳腐な理由であの図案に変更して仕舞ったらしいわよ。 元の図案の方を採用して欲しかったわ。」 「戦場ヶ原」 「嘘を吐き過ぎだ。」 「これしき、朝飯前よ。私は嘘を吐かれる事は嫌いだけれど、嘘を吐く事は大好きなの。」 カルマの法則が軽く崩れた。 「もしも、今此処(ここ)で印鑑を押してくれ無いのだったら、私はもう一度役場の前にガラスを鏤(ちりば)めるわよ」 …!! 「ちっ。バレたか。口が滑っちまったぜ。こんちくしょう」 車の衝突事故戦場ヶ原に拠る嘘で、戦場ヶ原が、ガラスの破片を態(わざ)とばら撒いたと言う事にも勿論驚いた。 が、真相が明らかに成った時の、悪者が口にする言葉を戦場ヶ原が言っていると言う状況が面白いなとも感じた。 似合わ無い。 「そうよ。私がやったのよ。悪(わる)うござんしたわね。」 「おい。待てよ。じゃあ、先(さっき)PCサイトビュアーで大量に御金を支払って見たあのサイトは一体何だったんだ。」 「あれ?私が作ったのよ。」 |
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