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本章はかなりマニアックな内容ですので、興味の無い方は読まないほうが無難かと・・・。
カメラ好きもいろいろあって、写真を撮る事が好きな正統派の趣味の方、カメラをたくさん
集めるのが趣味の方(いわゆるコレクターですが)、ライカ至上主義の方などいろいろ
いらっしゃいます。もっとも、ズミクロンだのズマリットだの高級なレンズを金に糸目を
つけずに買い漁っているライカコレクターさんはちょっと違う世界の方のように感じて
しまいますが・・・。本章ではそんなカネをかけなくても楽しめるクラシックカメラの世界の
入り口へご招待したいと思います。
デジカメの世界がどうかは分かりませんが、フィルム一眼レフの世界ではドイツから
カメラの主生産国の座を勝ち取って以来、キャノンとニコンの2大勢力のしのぎあいが
続きました。機能美のキャノンに対し、描写力、信頼性のニコン、これに続くのはペンタックス、
ミノルタ。AF(オートフォーカス)に失敗し行き場を失ったオリンパス、ツァイスのレンズを
売り物にお金持ちのためのブランドとなったヤシカ(コンタックス)、学生や貧乏人にカメラの
楽しさを教えてくれたリコーなど、国産カメラはそれぞれが個性をアピールしながら高い技術力で
使いやすく高機能なカメラを開発していきました。
ところが、そんな使いやすさ、高機能に背を向けた、ひねくれものの世界があります。
それがクラシックカメラコレクターの世界。AFはおろかAE(自動露出機構)すら付いていない。
場合によっては露出計もついていない。昔の職人さんの作った一品一様のようなレンズを愛し、
そのレンズのクセを利き酒のように賞賛する、そんな世界です。でも、決してライカコレクター
のような金持ちの道楽でないのが、クラシックカメラコレクターの世界。私もその世界に片足を
突っ込んでしまったので、ちょっとその入り口を紹介します。
添付写真は、この度私がネットオークションで入手したカメラ。ツァイスイコンのイカレックス
35CSTMというカメラです。3人で争って結局私が14,500円で落札しました。中古市場では25,000円
ぐらいの売値になっていると思います。おそらく1970年ごろの製品だと思います。ツァイスは
技術者だったら知らない人はいないほど有名なドイツの光学機器メーカーです。コンタックスの
レンズでも有名です。もっとも、カメラの世界では日本の技術に完全に敗北していて、甘んじて
日本のヤシカとレンズ提供の契約を結んでいます。そんなカメラ技術で日本に敗色濃厚だった頃の
ツァイスのカメラです。カメラのてっぺんにダイヤルがあって最初何だろうと思いました。
で、いろいろいじっていて、これが露出計のためだけにあるシャッタースピード設定ダイヤル
であることがわかりました。つまりこのカメラでは写真を撮る際に巻き上げレバー下のシャッター
ダイヤルと絞りダイヤルを設定し、ファインダー上の露出計用シャッターダイヤルも設定しながら
絞り値とシャッター値を決めていかないといけないという、写真をとるために煩雑な操作を要する
カメラと言うわけです。この頃すでに日本ではペンタックスSPを筆頭に操作性の向上したカメラが
市場に出回っており、このカメラ自体は完全に遅れをとったものと言えます。でも、作りは精巧だし
操作感は上品でさすがにドイツ製と思わせる製品です。まあ、相当重たいカメラですが・・・。
で、何でこんなカメラを買ったのかと、お前はどんなカメラ買っても撮影技術は向上しない
じゃないかとお叱りの向きもありますが、何がいいかと言えばこのカメラ、プラクチカマウント
なんです。
プラクチカマウントは別名M42マウントと呼ばれ、M42×P1.0のネジマウントです。
レンズを右ネジで締め込んでセットします。このマウントはカメラ史上最高の互換性マウントで
あり、タクマーレンズ(ペンタックス)をはじめとする国内や海外の各社がレンズを供給していた
マウントです。ペンタックスのタクマーレンズも愛好者の多いレンズでしたが、国内ではヤシカ、
オリンパス、リコー、海外ではプラクチカはもちろんのこと多くのレンズメーカーがこのマウントを
採用していました。このマウントのツァイスレンズも多く存在しています。
こんな汎用性の高いレンズマウントなのに、何故使われなくなってしまったのか、それには
このネジマウント特有の欠点が影響しています。ネジマウントは締切る力によってそのエンド位置を
決めることが非常に困難です。例えば手の力で締切れる位置まで締め込んだとしても、機械等を
使ってさらに締めこむことも出来てしまいます。時代がAE化されたカメラを求めるようになり
レンズからの情報も必要になってくると、このストロークエンドがしっかり決まらない構造では
機能的な障害を起こす可能性もたかくなるため、各カメラメーカーはこのネジマウントを捨て、
バヨネットマウントを選ぶことになり、これが各カメラメーカーのレンズの互換性を無くす
きっかけとなっていきます。
つまりプラクチカマウント(M42マウント)は完全マニュアルカメラの世界でのみ細々と
生き長らえ、今ではクラシックカメラコレクターのみが愛好するマウントとなっています。
でも、1台のカメラで色んな種類のレンズを楽しめると言うのはいいことです。マニアの間では
ロシアレンズ(ジュピターを代表とする)の描写力がすごいと言われつづけています。
そんな私も本日ジュピター37AMを無事落札し、その描写力とやらはいかがなものかと手薬煉引いて
到着を待っているところです。
今日入荷したこのイカレックスにジュピターをつけて、どんな写真が撮れるのでしょうか。
・・・大した写真は撮れないのであります・・・実際。
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