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世界は偶然に満ちているのかも知れないが、理屈では言い表せない事が存在する。そんな事を考えさせられる出来事がある。その女の子は、4歳年上の兄といつも喧嘩ばかりしていた。とは言っても熱くなっていたのは女の子だけで、彼女の兄は、どんな事を言われてものらりくらりとかわしてしていった。
『ゆっくり時間をかけて生きて行こう・・・』それが彼女の兄の口癖だった。兄は良く言えばおおらかで、悪く言えば今どきのん気すぎる性格で、何事も手際のよい妹とはいつも性格が噛みあわなかった。バリバリの営業マンの父に似ずに、「誰に似たのかしらねぇ・・・」と言うのが、母親までが言う兄の性格だった。
そんな彼女の兄が、どう言う風の吹きまわしか、たった一度だけ彼女にプレゼントをくれた事があった。彼女が高校へ入学した年の誕生日、「今日、誕生日だっけ・・・」といきなり小さな箱をポンと手渡された。以外な行動に驚きながらも、「ありがとう」と彼女は受け取ったらしい。
箱を開けてみると、中身は見るからに安物のデジタルの時計だった。一見して分かるGショックの偽物で、今どきこんな時計は千円もしないもので、どうせゲームセンターの景品だろうと思い、机の奥にしまいこんでしまった。さすがに、恥ずかしくて一度も身につけることはなかったのである。
そんな兄妹との別れは1年後に、突然やってきた。彼女がぼんやり授業を受けていた時に、血相を変えた先生が教室に飛び込んできて、訳も分からずに職員室に連れていかれた。そこで聞いたのは、“バイク事故を起こした兄が、たったいま搬送先の病院で亡くなった・・・”と言う知らせだった。
彼女の頭の中は真っ白になって、そのあと先生が何を話しているのかも分からなかった。自分の兄がバイクの事故で死ぬなんて。「せかせかしなさんな・・・」と、あれほど言っていたのに。・・・その日以来、彼女は兄がくれた時計をつけて出かける様になった。それが唯一と言っていい兄の形見だったからだ。
やがて彼女は大学に進み、卒業する年になり、希望の会社の採用試験をいくつも受ける事になった。時代はリーマンショック以来、就職の需給は逆転して、大変な就職難に直面していた。それでも彼女は、以前から希望していた会社の1次試験に合格し、2次の面接まで進む事が出来た。
その2次試験は、この時点でほぼ内定が決まったものと考えて良いとのことで、あとは簡単なディスカッション・・・と、担当者に言われて、他の会社は断わって、安心して2次試験にのぞんだ。そして、面接の当日、約束の時間よりも1時間以上も早く着いてしまい、近くのカフェで時間を過ごそうと考えた。
しばらく読書に没頭し、ぼんやりカフェの壁時計に目を移すと、さっと血の気が引いてしまった。面接の時間は3時。壁時計の時間は3時5分。「そんな!・・・」と、思わず声をあげてしまった。ちゃんとアラームを設定したのに・・・時計に目を落とした彼女は言葉を失ってしまった。
その時計は完全に壊れていて、横線が何本も入って、完全に停止していたのだ。「まさかこんなタイミングで壊れるなんて・・・」すぐに、会社に電話を入れて、面接時間をずらしてもらったが、面接では遅刻の事をねちねちと言われるだけで、その後内定が来る事は当然のようになかった。
彼女は相当に落ち込んで、そのやり場のない怒りは、兄に向けるしかなかった。「なんで、こんな安物をくれて・・・そして一番大事な時に止まってしまって・・・」亡くなった兄のせいではないと分かっていても、やりきれない思いを胸に、その時計は壊れたまま、机の奥にしまいこんでしまった。
気力を失ったまま、2ヶ月が過ぎた頃、大学の友人だった人から突然電話がかかってきた。「会社に欠員が出たから、力を貸して欲しい・・・」その会社は、自分の希望とは別に2流の会社であったが、乗り気がしないまま引き受ける事にした。そして、苦労した就職活動があっけなく終わりを告げた。・・・
そして、その後に待っていたのは、大変だけどやりがいのある仕事で、恵まれる充実した日々が待っていた。彼女の夫とも、その会社で出会い、小学生になる娘と3人でいつもの朝を迎えていた。たまたま新聞をみると、驚いた事に最初に試験を受けた会社が、不祥事を起こして、倒産した記事が載っていた。・・・
「あの時、兄から貰った時計が壊れていなかったら・・・」自分の人生は、180度変わっていただろう。そう思いながら、実家に電話して、母親に引き出しの奥から、兄にもらった時計を探してもらった。母親から返って来た言葉に思わず息を飲んだ。「この時計、ちゃんと動いているよ・・・」
彼女は、小学生の娘の頭をやさしくなでながら・・・自分にさとす様に言い聞かせた。「人生は、せかせかしていきちゃ駄目なのよ。時間はたっぷりあるんだから・・・」兄がくれた大事な時計は、娘の横において、大切にしている。いまでも止まることなく、時間を刻みながら・・・
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こんにちは、ブラックバカラ さん、コメント有難うございます。
不思議な因縁で、つながる愛情もあるそうです。チョッと信じられないと思いますが、↑の兄は、小さい頃から、自分は長生き出来ないと・・・直感していたと思います。
多分、それが時間を惜しむように・・・ゆっくり生きたかったのかも知れません。・・・ポチ☆有難う
2011/5/13(金) 午後 11:47
こんにちは、holy さん、コメント有難うございます。
このお兄さんは、天国にいても妹が心配で々でしようが無かったのでしょう。・・・
偶然をよそおった、虫の知らせは良く聞きますが、優しい天使が妹の時計を狂わせたのでしょう・・・
チョッとした偶然が、後年になって、運命的な出来事だった・・・と言う話は、よく耳にします。(^^♪
ポチ☆有難う
2011/5/13(金) 午後 11:54
こんにちは、Axen さん、コメント有難うございます。
メイクは必然主義者で・・・人生を決定するような偶然は、生まれる前から決まっていた、その人の運命だと信じています。
つまり、どんな偶然にも・・・意味があるって事だと思っています。(^^♪
☆有難う
2011/5/13(金) 午後 11:58
こんにちは、ニャンズママ さん、コメント有難うございます。
人間や動物の出会いと別れは不思議なもので・・・巧妙にリンクされた一本の経糸(たていと)で、つながっています。
世の中で、偶然と思われた事は、得てして必然で・・・しかも、その逆もありますので・・・本当に分からないものです。(*^^)v
2011/5/14(土) 午前 0:02
う〜ん・・・
不思議な事ってありますよね。
些細なトラブルが人生を大きく変えて。
何かの巡り合わせなんでしょうね。
良い意味での。
素晴らしいお話かと。
ちょっと悲しいですけど。
(;∇;)/~~
2011/5/14(土) 午後 9:52
こんにちは、masa さん、コメント有難うございます。
ユングの提唱した、「意味のある偶然の一致」と解釈しています。
特に、この手の話は数多く聞いていますが、本人に確認すると・・・はじめは単なる偶然だと思っていた事が、年を重ねる事で、起こるべくして起こった様な気持ちになってくるのが、共通しています。
少し悲しい現実です・・・
2011/5/15(日) 午前 0:09
2011/5/14(土) 午後 10:39 の秘密さん、ご訪問有難うございます。
こんなコメントを書くと、おかしく思われるかも知れませんが、内緒さんの弟さんは、間違いなく自分の早世を知っていたと思います。
早くして、亡くなる方の手記を集めた、臨床学者、日本赤ちゃん学会の池川教授が膨大な数を調べています。
そこに記されているのは、何らかの意味をもって、子どもは生まれてきたかも知れない・・・と言うことです。
以前に関連の記事を書きましたので、暇な時にお訪ね下さい。
⇒http://blogs.yahoo.co.jp/makeup32jp/34849851.html
2011/5/15(日) 午前 0:29
2011/5/14(土) 午後 10:41 の秘密さん。
メイクのブログは長文でも、質問でもなんでも結構ですので、またお訪ね下さい。(^^♪
2011/5/15(日) 午前 0:30
人生における個々の出来事は、表に出る現象だけで判断しにくいことは、承知しているものの、それにしてもその裏に秘められた数々の必然性というか、そういったものへの気づきというか、感覚を研ぎ澄ませて行くこと、これはとても勇気のいることだな、と思わずにはいられません。
ともすれば、それらへの怖れから、それが「偶然」であったと、自分に無理やり言い聞かせようとしている、そんな気がします。
いずれにしろ、段階的に受け入れていくための準備さえ、計画の中に設定されているのかもしれない、とさえ思ってしまいますが・・・
ぽち☆
2011/5/15(日) 午前 11:15
こんにちは、あまんじゃく さん、コメント有難うございます。
ユングの提唱したシンクロニシティ「意味のある偶然」そして、クランボルツの「計画された偶然」、どちらもその場ではまったく気がつかないものですが、時間の経過とともに、誰しも思い当たるところがあるのかと・・・
人生は、色々な偶然にドレッシングされた、一本の経糸(たていと)で繋がっていると思います。出会いや別れ・・・そして生死さえも左右する経糸で・・・
全ては必然的になせる業で・・・ポチ☆有難う (^^♪
2011/5/15(日) 午後 2:50
こんにちわ♪
いつも、いつもあくせくと時間とにらめっこの生活をしている
私には本当に心に響くお話でした。いつも本当に勉強になります。
いいお話をありがとうございます(*^^)v
ポチ★
2011/5/16(月) 午後 0:56
こんにちは、ユウナ さん、コメント有難うございます。
現代人は、時間に追われる毎日で・・・とかく自分を見失いがちになってしまいます。
他人に左右されずに、マイペースには中々いけなくて・・・
ゆっくり、地に足をつけて歩いて行きたいものです。(^^♪
ポチ☆有難う
2011/5/16(月) 午後 5:09
こんにちは。
おいらも、やる事が裏目裏目・・・・。
でもナントか、ここまで生きてきました。
「あまりせかせかしなさんな」
ケン
2011/5/18(水) 午後 2:44 [ ケン ]
こんにちは、ケン さん、コメント有難うございます。
やる事が裏目に出ても・・・きっとその理由が何処かにあり、きっと好回転になる時がやってくると思います。(^^♪
ゼロサム論理では無いのですが、幸と不幸の相対量は、心の中ではバランスが、結果的には同一量になるものと信じてします。・・・
2011/5/18(水) 午後 7:17
メイクさん、とってもご無沙汰しておりました。
こういう人知を超えた出来事は、そのときはその意味がわからないものですね。
お兄さんが妹さんを護ってくださったんでしょう。。。
「凶めいて吉」という言葉が頭に浮かびます。
その時点では悪いことのように思えるけれど、
結果的にはそれでよかった。
悪い出来事が全て不幸ではないという気持ちになりますよね。
変わらず素敵なお話をどうもありがとうございました☆ポチ!
2011/5/21(土) 午後 5:29
こんにちは、さくら さん、コメント有難うございます。
その時に見落としていたものが、その後何かの拍子で気がついて、それが前もって知らされた重大なサインだった・・・と言うことがたくさん存在します。
「凶めいて吉」という言葉・・・「人間万事塞翁が馬」との故事通り、その時には非情に悪い事も・・・その後、突然逆転することがたくさんあります。
↑の女性のお兄さんは、妹を本当に大事に思っていたのでしょう。この話は、偶然の出来事とは理解していません。似た話で、驚くような話はたくさん存在します。・・・
悪い出来事が起きても・・・まずは、腐らずに冷静になることが肝要ですネ・・・(^^♪
ポチ☆有難う
2011/5/21(土) 午後 7:48
この記事を読んで、ちょうど、亡くなった家族の遺品の処分をどうしようと思っていた時でした。
たくさんの思い出の品、みな、とっておく事はとても無理で【これだけは!】というものだけとっておくつもりです。
物の値段ではなく、思い出のあるものを残します。
この話の【腕時計】のように思うことはないかもしれませんが、遺品からいろんなことを思い出し、もしかしたら、今までに感じなかったことを思うかもしれませんね。
2011/5/21(土) 午後 10:56
こんにちは、たんぽぽ さん、コメント有難うございます。
故人の思い出は・・・遺品とともに、毎年浄化されて・・・綺麗なアルバムを心にしまいたいですネ。(^^♪
つらい時には、心のアルバムを開いて・・・楽しかった想い出にひたるのも良いものです。『ゴースト/ニューヨークの幻』と言う映画がありましたが、死んでも愛するものを守りたい・・・夢ではない・・・現実の話もたくさん存在します。(^^♪
2011/5/22(日) 午前 0:23
兄さんは
いつも妹さんを 見守っていてくれたのでしょうね。
偶然にみえる必然とは このような事をいうのでしょうか。
でも素敵な兄妹愛のお話ですね。
お兄さんの生前の生き方を
妹さんに時計を通じて教えてくれたのかもしれませんね。
素敵なお話しありがとうございます^^勿論ポチ★です!
2011/5/27(金) 午後 10:56
こんにちは、サン太ひな菊 さん、コメント有難うございます。
以前記事に書きましたが、私の友人の奥さんが流産し、その後に身ごもって、翌年臨月を過ぎても全く生まれる気配なし・・・
1ヶ月以上すぎ・・・総合病院の主治医はもう、涙目で・・・
ところが、前年に流産したその日に日付が変わると同時、陣痛が始まり健康な男の子がうまれました。・・・
流産した子が、自分の忘れないでね・・・って言っている様な気がして、家族で大泣きしていました。これって、偶然だとは決して思われません。
↑の腕時計の話も、同様にシンクロしていると思います。妹が本当に心配だったのでしょう・・・
ポチ☆有難う
2011/5/28(土) 午前 10:28