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 小さな街に一人で暮らす老人のロバートは、孤独な日々を過ごしていた。仕事はスーパーの店員で、身の回りの事は全て自分でこなしていたが、人づき合いが極端に悪く、友人にも恵まれなかった。休みの日にも、ほとんど出歩く事もなく趣味も持ち合わせなかった。


 ロバートの仕事は、地元の街では一番大きいスーパーの雑用の係をしていた。社長のマイクは、辣腕の若手の経営者だったが、何故か他の社員には厳しくとも、ロバートには寛容で、毎日必ず声をかけてくれた。気難しいロバートも、マイクとだけは気軽に話をする事が出来た。


 そんなある日、彼のアパートの向かいに、メアリーと言う美しい女性が引っ越して来た。ばったり入り口で会ったロバートは、ひと目で彼女に好意を持ち、味気ない彼の日常は、しだいに心ときめく日々へ一変してしまう。“愛は人に魔法をかけるのかも知れない。”ロバートは、彼女に気に入られようと、整髪は勿論、着るものから歯磨きまで、全てに気を使う様になっていった。


 そんなロバートに、メアリーも次第に心を引かれていく。2人はどちらからともなく食事に誘い会い、食事を一緒にする事になった。しかしメアリーには1人娘がいて、とても反対していた。でも、メアリーは意味ありげにこう言い放った。「人生は、前に歩きださないと、何も変わらないから・・・」


 そして、食事の時に・・・メアリーがこう切り出した。「ねえ、ロバート、一緒にクリスマスの夜をすごさない・・・」。勿論、ロバートは即答でイエス。そしてメアリーは彼に2つの提案する。「一緒にプレゼントを贈り合う事」と、「何事もあきらめない事」。当然、ロバートに異論はなく、小さい子どもが約束事を誓いあう様に、お互いのスプーンを鳴らし合った。


 翌日から、ロバートにとってプレゼントを何にるすかが、大問題だった。何せ、生涯で一度も、女性にプレゼントをした事が無かったからだ。思いあぐねてスーパーの社長のマイクに相談をしてみた。マイクはすぐに、クリスマスには心のこもったプレゼントを見つける為に、一緒にプレゼントを探しに行く事を約束をしてくれた。


 一方、メアリーは娘のアレックスに相談し、一緒にプレゼントの買い物に付き合わせる事にした。気乗りのしない娘に、メアリーは最初からプレゼントが決まっていた様に、ネクタイとマフラーを選んだ。娘がメアリーに何故それを・・・と、簡単に質問した。その質問に、メアリーはこう答えた。「前から、彼に首ったけ・・・ていう意味なの・・・」(首に巻く為)head over heels in love


 一方、ロバートとマイクは、プレゼント探しに紛糾していた。そして、やっと見つけたのが、雪の降る聖歌隊というオシャレな飾り物。ガラスボールの中に聖歌隊がいて、水が浸してあって、ふると細かい白い粉が、まるで聖歌隊に雪が降ってくる様に見えて。そして、讃美歌が流れてくる仕組み。・・・


 2人の仲にエールを送る、マイクとメアリーの娘のアレックスも、いつの間にか恋人どうしの様に、一緒に食事をする仲になっていった。そして、迎えた12月24日のクリスマス・イブ。マイクの大きな自宅にたくさんの友人と一緒に、ロバートとメアリー親子が招待されて、盛大なパーティが催された。・・・


 積極的なメアリーは、すぐにロバートをダンスに誘う。ロバートは戸惑いながらも、2人が踊りだす。マイクの家に招かれた友人達の全員が2人を優しく見守った。勿論、マイクとアレックスも腕を組みながら。・・・そして、いつしか2人は雪の降る庭に踊りながら出て行った。


 ロバートは、彼女に・・・「不思議だ、以前から君を愛していた様に思うと、告白する。」その言葉にメアリーは即座に「私達はずっと愛し合っていたのよ・・・」と付け加えた。ロバートはその意味は分からなかった。そして何故か胸が痛くなる・・・と言い、その言葉にメアリーはすぐに冷えない様にと、雪の降る庭から、マイクの家に戻る事にした。


 そして、その直後から、メアリーの態度が何故かそわそわして、落ち着かない。ロバートが少し目を離した隙に、突然メアリーは何処かに消えてしまった。気が動転したロバートは、メアリーを探して家を飛び出して行く。そして、向かった先は、メアリーの家。玄関のドアを激しく叩くが反応が無い。業を濁したロバートは、とうとうドアノブを壊して、家に入ってしまった。


 そこで、ロバートは衝撃的なものを目にしてしまう。壁に掛った沢山の写真。それは若い時の自分とメアリーの結婚写真から、子どもの頃のマイクとアレックスの写真。・・・ロバートは老人性のアルツハイマー病で、過去の記憶が消えてしまっていたが、その時に、初めて自分とメアリーが夫婦で、2人の子どもがマイクとアレックスだと言う事を知る事になる。


 しかし、運命は皮肉なものである。ロバートの持病は、アルツハイマーだけではなく、狭心症も持っていたのである。メアリーはロバートの胸の痛みをすぐに持病と気付き、ロバートのアパートに薬を取りに飛び出して行ったのである。そして、ロバートは写真を見た衝撃もあって、心臓の発作でその場に倒れてしまう。


 後から駆け付けた、アレックス達に発見され、すぐに救急車で病院へ。・・・メアリーが駆け付けた時には、病院の医師はすでに手遅れだと容体を告げた。病室にメアリーが入る時に、家族に2人だけにしてくれと頼み、2人だけで最後の時を迎えた。ロバートはメアリーの為に、マイクに頼んで聖歌隊の贈りものを持っていた。


 メアリーが入って行くと、最後の贈り物を手渡しながら、ロバートは優しく話しかけた。「不思議だ・・・一生つれ添ったはずなのに、この一週間の時めきの方が、まさる気がする。」メアリーは涙をこらえて、それに答えた。「あなたと暮らした一生も、この一週間も、愛情の重さに変わりはないの・・・」それを聞きながら、安心しながら静かにロバートは息をひきとっていった。贈り物の聖歌隊の歌に送られて・・・





 (注・これはあなたにも起こりえる、家族の愛の物語。妻から夫へ・・・娘、そして息子から父へ。願いをこめて、もう一度向かい合えるように、家族は優しい嘘をついた。・・・ニコラス・ファクターが、自分の両親をモデルに書きあげたものであり、人間の愛情の絆を思い超さずにはいられない物語である。・・・)




閉じる コメント(18)

久しぶりに、いい話を読ませていただきました。
あるような、そしてありえないような 考えさせられる話ですね。

2011/10/2(日) 午前 8:02 [ ろうせん ]

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こんにちは、2011/10/1(土) 午後 7:34 の秘密さん、コメント有難うございます。
人間は、老いて行く事は誰にも避けられませんが、心まで老いる必要など何処にもありません。・・・
愛情の価値も、その長さでは・・・無いのかも知れません。☆

2011/10/2(日) 午前 9:04 メイク・アップ 32 jp

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2011/10/1(土) 午後 7:34 の秘密さん。

ロバートとメアリー、そしてマイクとアレックスにポチ☆有難う。(*^^)v

2011/10/2(日) 午前 9:17 メイク・アップ 32 jp

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こんにちは、2011/10/2(日) 午前 7:31 の秘密さん、コメント有難うございます。
この物語を読んで、サミエル・ウルマンの「青春」を思い出しました。(^^♪
クリスマスも近づいたある日、孤独な老人ロバートと美しい女性メアリーが出会い、二人は少年と少女のように恋に落ちる。グリム童話の続きの様に・・・
ポチ☆有難う

2011/10/2(日) 午前 9:25 メイク・アップ 32 jp

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こんにちは、ろうせん さん、コメント有難うございます。
誰にも公平に・・・そして、誰もが体験するだろ「老い」を、直視して、それを優しく見守る家族。・・・
忘れられ無い夫へ、メアリーの愛情の深さに感動します。(*^^)v

2011/10/2(日) 午前 9:33 メイク・アップ 32 jp

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いい話だけど、、せつなくなりますね。。。
今、最近かなり老けてきた母のことを思っています。。私は母がもしこうなった時に「優しい嘘と贈り物」をすることができるかな・・。

2011/10/2(日) 午後 8:11 Holy

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こんにちは、holy さん、コメント有難うございます。
悲しくも、心あたたまる実話です。最後の讃美歌はクリスマスキャロルの「Silent night」(オルゴール)
誰しも避けては通れない道で、やさしくしてあげたいものです。・・・

2011/10/3(月) 午後 6:07 メイク・アップ 32 jp

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こんにちは。
>あなたと暮らした一生も、この一週間も、愛情の重さに変わりはない

死を前にしたら、最後の言葉や想いは、これまでの一生を振り返り凝縮されたことばとなって出てくるように思います。
夫のことを思いながら読んでいましたが、別れを前にしたらたぶん同じような思いになると思いますが、言葉で言い表せるかどうか?
別れは必ず来る。
それを思うと悲しくなりますね。

2011/10/7(金) 午後 1:41 たんぽぽ

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こんにちは、たんぽぽ さん、コメント有難うございます。

記憶を失ってしまった夫に、2度恋をする・・・家族は、みな反対なのに、彼女だけが諦めずに・・・
ギスギスした現代の社会では、考えられない様なラブストーリー。
誰でも、必ず来る老いの宿命に・・・とても心があたたまる物語です。・・・(^^♪
最後は、嘘でも・・・優しく看取って欲しいし、そうしたいものです。(*^^)v

2011/10/8(土) 午後 5:43 メイク・アップ 32 jp

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鉢呂氏の「放射能つけたぞ」報道は、「捏造(ねつぞう)」だった。

2011/10/13(木) 午後 4:32 [ 万年山 ]

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感動的ですが、実に哀切でした。
こういう物語をお書きになるあなた様の才能に驚き、
ジェラシイが溢れました。

本当に、すばらしいお話でした。
涙が止まりませんでした。

2011/10/25(火) 午後 8:50 [ サチコ ]

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こんにちは、万年山 さん、ご訪問有難うございます。

またのご訪問・・・よろしくお願いします。(^^♪

2011/10/26(水) 午前 9:13 メイク・アップ 32 jp

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こんにちは、サチコ さん、コメント有難うございます。
この物語は、ニコラス・ファクター(作家)が、実際に体験した自分の両親をモデルに書きあげた、言わばノンフィクションの実話です。
悲しくとも切ない愛の物語・・・本当に、人間の愛情とは、一緒に過ごした期間ではない事に、ほんの少し考えさせられるストーリーでした。(*^^)v

2011/10/26(水) 午前 9:24 メイク・アップ 32 jp

アルツハイマーは誰にでも起こりうることですが、
もし自分の家族がアルツハイマーになったときに、
この家族のように優しい嘘がつけるでしょうか。。。
私の伯母がアルツハイマーになり、気になって会いに行きました。
かろうじて私のことをわかってくれていましたが、
話していて気がつくと昔の話ばかりしていました。
身内としては本当にいたたまれないです。。。
素敵な話を有難うございました。ポチ☆

2011/10/29(土) 午後 8:08 ♪∞さくら∞♪

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こんにちは、さくら さん、コメント有難うございます。
数年前に若年性のアルツハイマー病をテーマにした「私の頭の中の消しゴム」がヒットしました。・・・
アルツハイマーは、誰にでも起こる難解な病気です。この記事の様に、人生で同じ人を2度愛して、2度とも恋に落ちる奇跡のストーリーです。(^^♪
結果は、美しくも悲しい物語・・・ニコラス・ファクターが、実話をもとに書きあげたストーリーに、感激しました。
老いは誰も避けては通れない問題でもあり、愛情とはなにか・・・深く考えさせられました。(*^^)v
ポチ☆有難う

2011/10/31(月) 午前 9:47 メイク・アップ 32 jp

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老いとは。。

辛いですね

2011/11/6(日) 午後 4:21 rintan(。-`ω´-)

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こんにちは、rinta さん、ご訪問有難うございます。

誰しもが避けて通れない道で・・・美しく老いて、そしてその時を待ちたいものです。・・・

有難う。

2011/11/6(日) 午後 4:47 メイク・アップ 32 jp

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泣きました・・・

転載させていただきました。
https://blogs.yahoo.co.jp/konnitiwayama/69726026.html

2017/11/1(水) 午後 0:05 ヤマ


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