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「武蔵野S町物語(永倉萬治/ちくま文庫)」
S町となっていますが、読んで見ると昭和30年代の志木市を描写していることがわかります。都市化の波がやってくる直前の、町を一歩出ると深い雑木林と田園が広がる場所に住む少年の日常を綴った、自伝要素の強い小説です。このように地名は伏せていても読んでいるうちにどこかわかる小説には、川越をモデルにしたものもあります。
志木は古くは市場町として栄え、目抜き通りの真ん中を野火止用水が流れていました。用水は埋めたてられましたが、今も本町あたりには古い商家が残っています。小説にも町の周囲の雑木林のことがでてきますが、今も東上線の電車が志木駅を池袋へ向かって発車すると、両側に雑木林があります。20年ほど前までは、駅のそばにこんなところがと思うくらい、鬱蒼とした深い雑木林でした。木造屋根のホームに立っていると、雑木林の中から電車が現れてきた光景をよく覚えています。開発が進んで、現在は半分程度になってしまいました。
志木駅のあたりは、ずいぶんきれいになりました。ほんの少し前まで志木駅の乗降客数は池袋に次いでの多さだったはずです。今は川越と朝霞台に抜かれましたが。
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