【↑「川越地方使用ノ『方言』概況及ビ本校生徒使用ノ『敬語』概括」 埼玉県立川越中学校 昭和17年】
☆自分のしゃべり言葉の中にある方言☆
■小学生の頃、川越郊外の親類へ出かけたときに、その近所の年上の子供たちと遊んだことがあった。その子らはみな会話の語尾に「○○だんべ〜」をつけてしゃべっていた。そういう言葉遣いは自分の中に皆無であったから、同じ川越なのになんて田舎なんだろうとびっくりした。以来、子供心にも自分のしゃべり言葉は標準語だとずっと思っていた。
その思い込みが無残?にも打ち砕かれたのは高校2年生の時。都内の果てにあった学校には愛媛県出身の古文の教諭がいたが、この人は川越の兄宅から通勤していた。ある時、この古文教諭が「東京の隣だから標準語だと思ったが、埼玉にも方言があるんだよな」と言った。
へえなんだろうと思っていると、教諭曰く
「来ない(こない)を埼玉では『来ない(きない)』と言うんだよ」
このとき初めて自分が方言を使っていることを知ったのである。
「○○さんは来た?」「いやまだ来ない(きない)ですよ」
「埼玉のことば 県北版(篠田勝夫/さきたま出版会/2004年)」には、埼玉・千葉などで遣われる「来ない(きない)」がコラムで大きく取り上げられて詳しい解説がされている。「来ない(きない)」は「来ない(こない)」が発展して変化したのではなく、「来ない(こない)」という言い方をまったく知らないで生まれた言葉らしい。
昭和17年にガリ版刷りで発行された川越中学校(現県立川越高校)編纂「川越地方使用ノ『方言』概況及ビ本校生徒使用ノ『敬語』概括」にも「来ない(きない)」は掲載されている(↑画像矢印のところ)
古文教諭の指摘はかなりショックだった(笑)。
大学時代にサークルの連中に「来ない(きない)」を知っているかと訊ねたら、「そんな言葉遣いは知らん」とすべての人に言われた。全国各地を出身地とする人が集まったサークルだったが、臆せずに堂々と方言丸出しの奴もいて、今の自分が片言の九州弁をあやつるのはそのためである。
なまりがあった青森出身の先輩(女性)は、ある時日本一短い会話を教えてくれた。「な どさ?」「ゆ どさ」なのだが、これは「あなた どこへ行くの?」「湯(お風呂)へ行くの」
方言をナマでいちばん聴くことの出来た時期だったと思う。
今も自分は無意識に「来ない(きない)」と言っている。強いて直そうとは思っていない。
ちなみに他にも方言を遣っている。なにかが折れたときなどに「うっかけた」「ひっかけた」
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