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物心ついた時にはここはすでに成人映画館。映画館で映画を見はじめたのは高校時代だが、都内通学だったので川越で映画を見ることはほとんどなかった。旧川越日活(旧鶴川座)の内部に入ったのは映画館としての役目を終えてからである。 「あるってアート(8月31日で終了)」の会場のひとつなので、久しぶりに内部が見られると出かけてみた。入口前に作品展示があり、内部にはどうやら入れなさそうな雰囲気。パンフを手にした若い女性は入口の作品を見て、次の会場へ行ってしまった。ふと気づくと入口ドア向こうの薄暗い受付に人がひっそり座っている。「中は見れますか?」「どうぞ」 内部は真っ暗で赤い妖しい灯がぼんやり光っているだけ。これは作品のために暗くしているらしい。座席が取り払われた広いコンクリート土間に、天井から作品がゆらゆら海草のように揺らいでいた。もうひとりカメラを手にした男性が入ってきた。大きな扇風機が数台回っている館内はかび臭さがプンと漂っている。そして静かである。 昭和30年代まで「鶴川座」と名乗ったこの映画館は、明治時代に劇場として開場した由来を持つ。建物は当初のもので、劇場時代の痕跡を諸処に留めていることから、その希少性が近年注目を浴びている。しかし映画館としての歴史が長いため外観内部とも見た目は映画館である。何度も細かい改装を重ねたに違いない。少し前まで全国各地にあった古びた映画館そのもの。この暗い空間にいると映画館通いをはじめた70年代末期の感覚に陥ってしまう。小屋みたいだった江古田文化や、池袋文芸地下の通路とかを思い出す。 戦前は大野屋洋品店とみこもり煎餅店の間に、鶴川座の広告アーチが通りをまたいで設置されていた。 |
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2008年09月01日
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