|
■山本嘉次郎(やまもとかじろう) 1902−1974
映画監督・俳優・脚本家・随筆家
大正末期から戦後にかけて多くの映画を監督した。
主な作品は、良人の貞操(1937)・エノケンのちゃっきり金太(1937)・
藤十郎の恋(1938)・綴方教室(1938)・馬(1941)・ハワイマレー沖海戦
(1942) 等
山本嘉次郎監督作品で見たことがあるのは
「綴方教室」と「馬」だけである。
どちらも映画史に残る名作。両作に主演し
た高峰秀子が演技を高く評価され子役から脱
皮したことでも知られる。最近2作品を再観
賞したが、馬と娘のふれあいを東北の農村の
四季と生活を背景に描いた「馬」がよかった。
高峰秀子も出演作自薦ベスト10に入れている。
山本嘉次郎は好奇心が強く博識でグルメ家。
著作の中で川越の焼だんごを褒めていると知
ったのはもう20年以上前のこと。
以来、神保町へ行ったときなどに古書店の
棚をのぞいてみたが、書名はわかなないし山
本嘉次郎の著作を見かけることがなかった。
ところが先日、デパートの古本市をのぞいたら山本嘉次郎の著作が3冊もあっ
たのである。「日本三大洋食考(昭文社出版部/1973年)」の目次を見ると『小
江戸なりけり』のタイトルが。あっこれだ!と頁を開くとまさに長年探していた
文章。焼だんごだけでなく、いろいろな店や食べ物のことが書かれている。
登場する店屋のいくつかをご紹介しよう。
※なお「小江戸なりけり」の初出は「グルメ第2号(1972年)」である。雑誌だ
ろうか?
■【田中屋】
山本嘉次郎が川越でいちばんうまいものと絶賛しているのがここの焼だんご。明治の東京の味であり、良い醤油は焦げたときに正体を現すそうで、ほんとうの醤油の味に接したのはひさしぶりと書いている。
今は焼きだんごだけだが、山本嘉次郎が訪れた昭和40年代には餡だんごもあって、この餡が
ただ甘いだけでなく適当な塩気
があって美味だったそうだ。
だんごが焼ける間に、時の鐘下の薬師様へお参りしたり、だんご屋隣にあった雑穀屋で大豆やえんどう豆を、角の八百屋(近長さん?)で生姜・にんじん・ごぽうなどを買い求めたが、東京の店にはない質の良さだったという。
田中屋の焼だんご。最近は昼くらいには売り切れに なってしまうこと多し。(2009年撮影の画像)
■【お茶亀屋】 山本嘉次郎が川越を訪れる目的はここで新茶を買うことであった。
買う銘柄は決まっていて、それは東京でも買えたが混ぜ物が多いた
め純粋な品を求めて毎年川越に来ていた。
■【うなぎ小川菊】 近藤勇でも出てきそうな雰囲気の二階で、注文を受けてから割いて
焼く中串を、キモ焼やタニシとネギのぬたなどで1杯やりながら待っ
たとある。近くの野川か沼で捕れたうなぎらしいが、適度に脂が乗っ
ているくせにピンと引き締まった味と書いている。このころはまだ
郊外の河川などで天然うなぎが捕れたのだろうか。
うちの母親は川越郊外が実家だが、子どもだった終戦直後は近く
の川でうなぎが捕れたそうで、病弱だった親によく食べさせていた
そうだ。
■【うどん・縄のれん】(現在なし) 店名のとおり縄を結ったりっぱなのれんが目印のうどん屋で、川越
市役所裏手にあった。昭和50年代くらいまではあったのではないだ
ろうか。軒の低い店構えを見たことがあるようなおぼろげな記憶が
ある。油揚げをいれたうどんしかなくて、でもそれはキツネうどん
ではないのだそうだ。みんなそれで酒を飲んだりしており、午後早
くに売り切れになると暖簾を仕舞ってしまった。真のうどんが味わ
えると山本嘉次郎は讃えている。
■【お不動様の茶店】(現在なし)
山本嘉次郎は川越市内のあちこちを散策していて久保町のお不動
さま(成田山本行院)も訪れている。当時は久保町通りに面した門脇
に茶店があって、ここで心太や味噌おでんを食べ、徳利で地酒を味
わいながら端の池で甲羅干しをしている亀を眺めた。
今も境内の喜多院寄りに茶店があるが、ここと関係あるのだろう
か?
■【川越市古市場の通り】 「小江戸なりけり」には川越郊外も登場する。
ふじみ野市のどじょうやの往復の際に、古市場を通ったようで新河
岸川の際にあった醤油醸造場(橋本醤油)の廃屋と赤い柿の情景の美
しさを記している。
河川改修で醤油醸造場の建物は取り壊され、舟運でにぎわった古
市場のこじんまりとした家並みも今ではほぼ消滅してしまった。
■【まちかん】
『日本三大洋食考』に「小江戸なりけり」とともに収録されている随筆「茶ほうじ」に登場するのがまちかん。
番茶や胡麻を焙じるのに便利な「茶ほうじ」という道具が壊れてしまい、百貨店に行ったが売っていないどころが店員も知らない。浅草かっぱ橋にも築地の専門店にも無く、京都の老舗にも問い合わせたが無し。途方に暮れた頭に浮かんだのが「川越の重要保護財になっている土蔵造りの金物屋」
川越に急行すると、なんと何十個も店先にぶら下がっていたそうである。希望の石綿製でなくブリキ仕様だったが5個ほど買い求めた。茶ほうじを使う人はほとんどいなかったらしく「なにに使うんですこんなものを」と不思議がられたと書いている。
偶然にも見つけた「日本三大洋食考」に狂喜したが、古書価はあれ
っ?て思うくらい高かった。万には行かないが、それでも買うことを
躊躇した。他の山本嘉次郎の著書は安いのになぜこれだけ?そんなに
珍しい本なのだろうか。でもこの機会を逃したら次はいつやらと思い
、手に抱えていた他の本はあきらめて、この一期一会を大切にすると
いうことでレジカウンターへ・・ でもこういう後で、どこかで安く
売ってたりするもんなんです(苦笑)
装丁は伊丹十三 |
川越の本
-
詳細
コメント(0)
|
■華舫(かほう) 熊谷敬太郎 NHK出版 2014年
川越駅改札を出てぶらりと書店へ入り、あちこちの書棚をのぞいて店を出ようとして新刊コーナーの「川越が舞台の小説」のPOPに気づき衝動買い。
明治初年の東京深川と川越を舞台に展開する歴史サスペンスとのこと。POPには新河岸川の蒸気船のことが紹介されていましたが、明治初年に実際に新河岸川に計画された蒸気船「飛鳥丸」がストーリーに絡んでいるようです。たしか川底が浅く藻がからむことから計画が頓挫したと、なにかの本で読んだことがありました。
新河岸が登場する小説は珍しいように思います。獅子文六の小説に新河岸駅(川越のひとつ手前の駅という表現)が出てくるのと、1979年頃にテレビのTBS東芝日曜劇場で新河岸の船宿を舞台にしたドラマがありました。主演は大原麗子でしたがタイトルは失念。
さて、この小説どんなストーリーなんでしょうか。
週明けから行き帰りの電車内で読むつもりです。
|
|
■川越が登場する小説
夕方ラッシュ時のターミナル駅の通路を歩いていたら、古本市の案内ビラが目にとまり、電車内で読む文庫でも探そうと会場になっているデパートに入ってみた。
映画関連の書籍がずいぶんとあり、いつのまにこんな本が出てたんだろうというのがけっこうある。でも何気でいい値段。2010年にキネマ旬報社が出した「高峰秀子(監修斉藤明美)」が状態もよく半額以下の1000円だったので購入決定。
売場をぶらぶら廻って、もうレジへ行こうかと思ったときに平台に並んだ書籍の中に見つけたのが「小江戸の街の人々」
全国の小江戸と呼ばれる街で活躍する人たちのインタビュー本?などと思いながら目次を見ると、前半はエッセイで後半が「小江戸の街の人々」といういくつかの短編小説からなる構成。半額以下の400円なのでもちろん購入。
電車内でさっそく読んでみると、いずれも川越が舞台の七つの短編。恋人同士や親子の心のふれあいをさらりとした文体で綴った小説。川越駅西口、蔵造りエリア、六軒町、連雀町界隈や郊外鹿飼地区などが描かれている。
「小江戸の街の人々」 立松修治 ヤマメ文庫 そうぶん社 2005年
|



