|
■世田谷文学館 松本清張展を見に行く 松本清張作品の抑え目の文体にはすごく惹かれる。作品をそれほど読んでいるわけではないが、世田谷文学館での松本清張生誕100年記念巡回展は開催前からたいへん楽しみにしていた。 作家への力を蓄積していた小倉時代と作家活動時代に焦点をあてた構成で、自身の生い立ちを綴った「半生の記」を何度か読み返した自分には小倉時代の展示が興味深かった。尋常小学校時代の写真などはじめて見るものばかり。絵が上手だったことから印刷所の版下画工となり、新聞社で広告版下の仕事をする。没後に発見されたという、父親の故郷の山村景色を清張が描いた風景画が数点展示されていたが、その上手さに驚いた。ペンか鉛筆で描いて絵の具で色彩を施した画だが、素朴なタッチでとてもいい。複製がほしいくらい気に入ってしまった。図録に絵が掲載されているのでこれでガマン。 「砂の器」のBGMが静かに流れる中、ゆっくり展示を見て図録を購入。世田谷文学館の図録はいつも素晴らしい。普段入手できない北九州市立松本清張記念館の図録類も販売されていたのでいくつか購入した。 ■清張原作の映画「霧の旗」 川越ロケだった「鬼畜(野村芳太郎監督/1978年)」も清張原作。清張作品の映画化は野村監督の十八番だったが、「霧の旗」は西河克己監督による1977年作品。 殺人犯として逮捕された兄の無実を晴らすため、妹は高名な弁護士に依頼するが金が無いことを理由に断られてしまう。兄が殺人犯の汚名のまま獄死すると、妹は弁護士を陥れて煉獄送りにしてしまうストーリー。すべてが弁護士のせいでは無いとわかっていても、怨みの矛先を向けてしまう理不尽な恐さを描いた作品。 主演は当時アイドルだった山口百恵。運命にひたすら耐えるような役柄が多かった彼女が、冷酷な表情で弁護士を少しずつ追いつめて行くその演技は一部の映画評論家から絶賛を浴びた。作品としては2時間ドラマの枠を出ない感じだが、平凡な事務員から銀座の女への変貌の見事さはキネ旬女優賞の次点だった。山口百恵はこの役に乗り気だったが、監督西河克己はアイドルゆえ演出に手加減してしまったことを、後年のインタビューで悔やんでいる。この作品を都内の名画座で見たとき、弁護士を誘惑するシーンの唐突さに館内に失笑がもれたが、多分そのあたりを指しているのだろう。弁護士役はベテラン三国連太郎。銀座からワンランク下の新宿のバーに転落した山口百恵を三国が訪ねてくるシーンがあって、三国の姿を見てフッと微笑む山口百恵の表情は怖かった。 「霧の旗」は1965年に山田洋次監督・倍賞千恵子主演でも映画化されている。こちらは一度しか見たことがなくすっかり忘れているが、林光のテーマ曲がとてもよくてメロディーはよく覚えている。
|
映画・演劇他
-
詳細
コメント(3)
|
■張込み(昭和33年/松竹) 今年は松本清張生誕百年を記念して、各地でさまざまな催事があるようです、川越ロケだった松本清張原作の映画「鬼畜(1978)」を見たのは高校生時代で、これをきっかけに松本清張の作品を読むようになりました。同時に映画化作品にも惹かれて、その頃都内飯田橋の佳作座あたりで見たのが「張込み(1958)」です。 ドキュメンタリータッチのこの作品は期待どおりのおもしろさでした。 殺人事件の犯人を追い詰めるというよりも、犯人の元恋人だった女を張り込んだ刑事の目を通して、その女の抑圧されたわびしい日常生活が浮き彫りにされてきます。女はひと回りも年上の銀行員の後妻となり、前妻の子を育てながら毎日炊事・洗濯・掃除・買い物と同じことの繰り返し。亭主から毎朝百円を与えられ生活を切り回していますが、自分用の買い物などはできず、子どもたちにおやつをせがまれれば内職先から前借をして求めた果物を剥いてあげるのです。その姿はやつれて生彩に欠け、若い刑事にはこの女がかつて恋愛などしたとはとても見えないのです。 張り込んで一週間以上が過ぎて犯人の立ち寄りをあきらめかけた頃、突然女は普段着のまま外出します。差したパラソルをくるくる回しながら歩く女。異変を感じた刑事は尾行するものの不覚にも女を見失い、四苦八苦の末郊外の温泉場に犯人と一緒の女を発見します。もちろん殺人犯であることを女は知りません。刑事がそこで見た女は溌剌としてどう見ても別人のようでした。「私もうあの家出るわ。あなたと一緒に行きます」 2人が別々に温泉につかっている間に犯人は逮捕され、部屋に戻ってきた女に刑事は優しく言います。「奥さん、今すぐバスに乗ればご主人の帰宅時間に間に合いますよ」 つらい現実突破の夢があっけなく消え、いつもの生活に戻るしかないとわかって、温泉旅館の手すりにすがってさめざめと泣き伏すシーンに胸が締めつけられます。このシーンの泣き方を見るだけで、高峰秀子はうまい女優だなと思います。 この作品は九州佐賀市を舞台にしていますが、風土描写もたいへんすぐれていて、一升瓶をもって市場で高峰秀子が買い物するシーンなどに当時の地方都市の生活感がよく出ています。 昨日で東海道線筋の夜行列車が全廃されましたが、この映画の冒頭の夜行列車シーンもみどころです。マスコミの目を逃れて横浜から鹿児島行き夜行に乗り、翌日の夜更けに佐賀駅に降りるまでの長い車内描写は、かつて夜行列車の旅がいかに苦労だったかを偲ばせます。以前、YouTubeにこの場面の動画があったんですが・・検索したらもうありませんでした。それに昨日まであった「張込み」の予告編もなぜかなくなっていて・・残念! ■【張込み】
昭和33年 松竹作品 監督/野村芳太郎 脚本/橋本忍 出演/大木実・高峰秀子・田村高広・宮口精二・浦辺粂子・小田切みき他 |

>
- Yahoo!サービス
>
- Yahoo!ブログ
>
- 練習用
|
小学生から中学生にかけて、教室で配布されたのが「青少年名作劇場」の鑑賞券。一度も見たことがなかったが、今も鑑賞券が数枚手元に残っている。 1975年前後で入場料200円は破格。たふん正規の入場料は800円くらいの時代じゃないだろうか。埼玉県下の主要劇場が会場になっているが、現在もあるのは「川越スカラ座」だけ。近年まであったのが「幸手劇場」だと思う。ここも今は記念碑のようなものが過去の栄光を伝えているだけと聞いた。 上映作品はこの当時でもかなり古い。「飛び出せ青春」はたしか夏木陽介主演だから1960年代の映画。「野にかける白い馬のように」はマーク・レスター主演だと思う。マーク・レスターといえばトレーシー・ハイドと共演した、「小さな恋のメロディー」が有名で、これはテレビで見たことがあった。 秩父革新館(正確には「革進館」)の上映作品「鳥」はヒッチコック作品だろうか? ちょっと子ども向けではないような。これもテレビで見ただけだが、じわりじわりと恐怖を盛り上げてくる手法が秀逸な作品。カットが変わるたびに窓の外の鳥の数が増えていくシーンなどが怖かった。 |
|
新宿バルトナインで暇つぶしに見たのが「K-20 怪人二十面相・伝」 金城武・仲村トオル・松たか子の出演。深窓の令嬢ながらもおきゃんな役どころは松たか子の得意とするところ。小型飛行機?まで見事に操縦して「平吉さま〜〜〜〜」と叫んでおります。「THE 有頂天ホテル」に出たときよりもよし。金城武と二十面相とのアクションシーンは見ごたえあり。 「三丁目の夕日」スタッフによるCGの見事さに物語が負けている感が濃厚なものの、なんの予備知識もなく見たせいか、ラストの意外性とかを楽しめて気楽に見れた娯楽作品でした。「ソーダ水みたいな映画よ、あとになんにも残らないの」とは主演作「秀子の車掌さん(1941年)」についての高峰秀子の懐旧ですが、この「怪人二十面相・伝」もまさにそんな映画です。DVD発売まで待ってレンタルで見るのがお得・・かも(笑)。主題歌「ショック・オブ・ザ・ライトニング(OASIS)」がよかったんで、CDショップで探したのになぜか見つからない。 そういえば江戸川乱歩「少年探偵団」を読んだとき、気球に乗った怪人二十面相が埼玉熊谷上空を通過して市民を驚かせる場面があったことをふと思い出しました。 ▼怪人二十面相・伝 予告編 http://www.youtube.com/watch?v=B50Jd6SbgZ0 今、見たいのはこの作品。行方不明になった息子が五ヶ月後に見つかるが・・・実話の映画化でまもなく公開。ユナイテッドシネマ南古谷で上映されるので、ここで見ようかと考えているところ。 |
|
川越郊外の畑に大きな大根が一本取り残されていました。思わず近寄って撮影。通りかかった自転車の主婦に不審顔されました。 撮影はしたもののこの画像で語れるものが見つからない。なにか無いかと頭振り絞ったら・・浮かんできたのは映画に登場した大根。 黒澤明監督「赤ひげ(1965年)」に廓の下働きの少女(二木てるみ)のエピソードがあります。赤ひげ(三船敏郎)が酷使されて病気になっている少女を強引に小石川療養所に引き取るわけですが、どんなに親切にしても警戒して心を閉ざしています。療養所の賄婦たちもこんな娘の面倒なんてまっぴらと突き放してしまうのですが、医師保本(加山雄三)の献身的な介護にだんだん心をひらいていきます。 そこへやってくるのが廓の雇主(杉村春子) 強引に連れ去ろうとするのですが、賄婦たちが「この子はもうあたしたちの娘だ!」と抵抗します。そしてその一人が傍らに干してあった大根でパカーンと雇主を殴るのです。その大根の砕けて見事なこと! 他の賄婦もここぞとばかりに大根で殴って、雇主はひぃーと退散。 このシーンの杉村春子はだらしない走りかたなどさすが名女優と思わせます。名演技といわれる「小島の春(1940年)」「東京物語(1953年)」や主演作「晩菊(1954年)」などを見ているのですが、やはり自分の中で印象に残るのは「流れる(1955年)」の年増芸者役でしょうか。お座敷があまりかからなくていつもしけていて、あげくの果てに置屋の雇主(山田五十鈴)と喧嘩して飛び出すものの、ちゃっかり戻ってきてしまう。涙声で高峰秀子に啖呵きるシーンや、猫撫で声のゴマすり演技が見事でした。
|





