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画像1:WATTS, George Frederick 1817-1904
『Ruth and Boaz』1835-7
それを背負って町に帰ると、しゅうとめは嫁が拾い集めてきたものに目をみはった。
ルツは飽き足りて残した食べ物も差し出した。
しゅうとめがルツに、
「今日は一体どこで落ち穂を拾い集めたのですか。
どこで働いてきたのですか。
あなたに目をかけてくださった方に祝福がありますように」
と言うと、ルツは、誰のところで働いたかをしゅうとめに報告して言った。
「今日働かせてくださった方は名をボアズと言っておられました。」
ナオミは嫁に言った。
「どうか、生きている人にも死んだ人にも慈しみを惜しまれない主が、
その人を祝福してくださるように。」
ナオミは更に続けた。
「その人はわたしたちと縁続きの人です。
わたしたちの家を絶やさないようにする責任のある人の一人です。」
モアブの女ルツは言った。
「その方はわたしに、
『うちの刈り入れが全部済むまで、
うちの若者から決して離れないでいなさい』と言ってくださいました。」
ナオミは嫁ルツに答えた。
「わたしの娘よ、すばらしいことです。
あそこで働く女たちと一緒に畑に行けるとは。
よその畑で、だれかからひどい目に遭わされることもないし。」
ルツはこうして、大麦と小麦の刈り入れが終わるまで、
ボアズのところで働く女たちから離れることなく落ち穂を拾った。
ルツはしゅうとめと一緒に暮らしていたが、
しゅうとめのナオミが言った。
「わたしの娘よ、わたしはあなたが幸せになる落ち着き先を探してきました。
あなたが一緒に働いてきた女たちの雇い主ボアズはわたしたちの親戚です。
あの人は今晩、麦打ち場で大麦をふるい分けるそうです。
体を洗って香油を塗り、肩掛けを羽織って麦打ち場に下って行きなさい。
ただあの人が食事を済ませ、飲み終わるまでは気づかれないようにしなさい。
あの人が休むとき、その場所を見届けておいて、
後でそばへ行き、あの人の衣の裾で身を覆って横になりなさい。
その後すべきことは、あの人が教えてくれるでしょう。」
ルツは、「言われるとおりにいたします」と言い、
麦打ち場に下って行き、しゅうとめに命じられたとおりにした。
ボアズは食事をし、飲み終わると心地よくなって、
山と積まれた麦束の端に身を横たえた。
ルツは忍び寄り、彼の衣の裾で身を覆って横になった。
夜半になってボアズは寒気がし、手探りで覆いを捜した。
見ると、一人の女が足もとに寝ていた。
「お前は誰だ」とボアズが言うと、ルツは答えた。
「わたしは、あなたのはしためルツです。
どうぞあなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆ってください。
あなたは家を絶やさぬ責任のある方です。」
ボアズは言った。
「わたしの娘よ。
どうかあなたに主の祝福があるように。
あなたは、若者なら、
富のあるなしにかかわらず追いかけるというようなことをしなかった。
今あなたが示した真心は、今までの真心よりまさっています。
わたしの娘よ、心配しなくていい。
きっと、あなたが言うとおりにします。
この町のおもだった人は皆、あなたが立派な婦人であることをよく知っている。
確かにわたしも家を絶やさぬ責任のある人間ですが、
実はわたし以上にその責任のある人がいる。
今夜はここで過ごしなさい。
明日の朝その人が責任を果たすというのならそうさせよう。
しかし、それを好まないなら、主は生きておられる。
わたしが責任を果たします。
さあ、朝まで休みなさい。」
ルツは、夜が明けるまでボアズの足もとで休んだ。
ルツはまだ人の見分けのつかない暗いうちに起きた。
麦打ち場に彼女の来たことが人に知られてはならない、
とボアズが考えたからである。
ボアズは言った。
「羽織ってきた肩掛けを出して、しっかりつかんでいなさい。」
ルツがしっかりとつかんだ肩掛けの中に大麦を六杯量ってルツに背負わせると、
ボアズは町へ戻って行った。
ルツがしゅうとめのところへ帰ると、
ナオミは、「娘よ、どうでしたか」と尋ねた。
ルツはボアズがしてくれたことをもれなく伝えてから、
「この六杯の大麦は、
あなたのしゅうとめのところへ手ぶらで帰すわけにはいかないとおっしゃって、
あの方がくださったのです」と言うと、
ナオミは言った。
「わたしの娘よ、成り行きがはっきりするまでじっとしていなさい。
あの人は、今日中に決着がつかなければ、落ち着かないでしょう。」
ボアズが町の門のところへ上って行って座ると、折よく、
ボアズが話していた当の親戚の人が通り過ぎようとした。
「引き返してここにお座りください」と言うと、
その人は引き返してきて座った。
ボアズは町の長老のうちから十人を選び、
ここに座ってくださいと頼んだので、彼らも座った。
ボアズはその親戚の人に言った。
「モアブの野から帰って来たナオミが、
わたしたちの一族エリメレクの所有する畑地を手放そうとしています。
それでわたしの考えをお耳に入れたいと思ったのです。
もしあなたに責任を果たすおつもりがあるのでしたら、
この裁きの座にいる人々と民の長老たちの前で買い取ってください。
もし責任を果たせないのでしたら、わたしにそう言ってください。
それならわたしが考えます。
責任を負っている人はあなたのほかになく、わたしはその次の者ですから。」
「それではわたしがその責任を果たしましょう」と彼が言うと、
ボアズは続けた。
「あなたがナオミの手から畑地を買い取るときには、
亡くなった息子の妻であるモアブの婦人ルツも引き取らなければなりません。
故人の名をその嗣業の土地に再興するためです。」
すると親戚の人は言った。
「そこまで責任を負うことは、わたしにはできかねます。
それではわたしの嗣業を損なうことになります。
親族としてわたしが果たすべき責任をあなたが果たしてくださいませんか。
そこまで責任を負うことは、わたしにはできかねます。」
かつてイスラエルでは、親族としての責任の履行や譲渡にあたって、
一切の手続きを認証するためには、
当事者が自分の履物を脱いで相手に渡すことになっていた。
これが、イスラエルにおける認証の手続きであった。
その親戚の人は、「どうぞあなたがその人をお引き取りください」
とボアズに言って、履物を脱いだ。
ボアズはそこで、長老とすべての民に言った。
「あなたがたは、今日、
わたしがエリメレクとキルヨンとマフロンの遺産を
ことごとくナオミの手から買い取ったことの証人になったのです。
また、わたしはマフロンの妻であったモアブの婦人ルツも引き取って妻とします。
故人の名をその嗣業の土地に再興するため、
また故人の名が一族や郷里の門から絶えてしまわないためです。
あなたがたは、今日、このことの証人になったのです。」
門のところにいたすべての民と長老たちは言った。
「そうです、わたしたちは証人です。
あなたが家に迎え入れる婦人を、どうか、
主がイスラエルの家を建てたラケルとレアの二人のようにしてくださるように。
また、あなたがエフラタで富を増し、ベツレヘムで名をあげられるように。
どうか、主がこの若い婦人によってあなたに子宝をお与えになり、
タマルがユダのために産んだペレツの家のように、御家庭が恵まれるように。」
ボアズはこうしてルツをめとったので、
ルツはボアズの妻となり、ボアズは彼女のところに入った。
主が身ごもらせたので、ルツは男の子を産んだ。
画像2:ROOKE, Thomas Matthews 1842-1942
『The Story of Ruth』 1876-1877
女たちはナオミに言った。
「主をたたえよ。
主はあなたを見捨てることなく、
家を絶やさぬ責任のある人を今日お与えくださいました。
どうか、イスラエルでその子の名があげられますように。
その子はあなたの魂を生き返らせる者となり、老後の支えとなるでしょう。
あなたを愛する嫁、
七人の息子にもまさるあの嫁がその子を産んだのですから。」
ナオミはその乳飲み子をふところに抱き上げ、養い育てた。
近所の婦人たちは、ナオミに子供が生まれたと言って、
その子に名前を付け、その子をオベドと名付けた。
オベドはエッサイの父、エッサイはダビデの父である。
ペレツの系図は次のとおりである。
ペレツにはヘツロンが生まれた。
ヘツロンにはラムが生まれ、ラムにはアミナダブが生まれた。
アミナダブにはナフションが生まれ、ナフションにはサルマが生まれた。
サルマにはボアズが生まれ、ボアズにはオベドが生まれた。
オベドにはエッサイが生まれ、エッサイにはダビデが生まれた。
注.私のHPでは絵画主題としての旧約聖書を取り上げたいと思いますので、
物語の整合性は求めていません。
絵画を読み解く知的遊戯ってことで御理解下さいませ。
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