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ジフ人がギブアに来てサウルに、
「砂漠の手前、ハキラの丘にダビデが隠れている」と告げた。
サウルは立ってイスラエルの精鋭三千を率い、
ジフの荒れ野に下って行き、ダビデをジフの荒れ野で探した。
サウルは、砂漠の手前、道に沿ったハキラの丘に陣を敷いた。
ダビデは荒れ野にとどまっていたが、サウルが彼を追って荒れ野に来たことを知り、
斥候を出して、サウルが来たことを確認した。
ダビデは立って、サウルが陣を敷いている所に近づき、
サウルとサウルの軍の司令官、ネルの子アブネルが寝ている場所を見つけた。
サウルは幕営の中で寝ており、兵士がその周りに宿営していた。
ダビデは、ヘト人アヒメレクとヨアブの兄弟、ツェルヤの子アビシャイに問いかけた。
「サウルの陣地に、わたしと下って行くのは誰だ。」
アビシャイが、「わたしがあなたと行きましょう」と答えた。
ダビデとアビシャイは夜になって兵士に近寄った。
サウルは幕営の中に横になって眠り込んでおり、
彼の槍はその枕もとの地面に突き刺してあった。
アブネルも兵士もその周りで眠っていた。
アビシャイはダビデに言った。
「神は、今日、敵をあなたの手に渡されました。
さあ、わたしに槍の一突きで彼を刺し殺させてください。
一度でしとめます。」
画像:Count Feodor Tolstoy 1783-1873
『 David Refuses to Kill Sleeping Saul』 1806
ダビデはアビシャイに言った。
「殺してはならない。
主が油を注がれた方に手をかければ、罰を受けずには済まない。」
更に言った。
「主は生きておられる。
主がサウルを打たれるだろう。
時が来て死ぬか、戦に出て殺されるかだ。
主が油を注がれた方に、わたしが手をかけることを主は決してお許しにならない。
今は、枕もとの槍と水差しを取って立ち去ろう。」
ダビデはサウルの枕もとから槍と水差しを取り、彼らは立ち去った。
見ていた者も、気づいた者も、目を覚ました者もなかった。
主から送られた深い眠りが彼らを襲い、全員眠り込んでいた。
ダビデは向こう側に渡り、遠く離れた山の頂に立った。
サウルの陣営との隔たりは大きかった。
ダビデは兵士に向かって、またネルの子アブネルに向かって呼ばわった。
「アブネル、答えないのか。」
アブネルは答えた。
「王に呼ばわるお前は誰だ。」
ダビデはアブネルに言った。
「お前も男だろう。
お前に比べられる者は、イスラエルにいない。
そのお前が、なぜ自分の主人である王を守れなかったのだ。
敵兵が一人、お前の主人である王を殺そうと忍び込んだのだ。
お前の行いは良くない。
主は生きておられる。
お前たちは死に値する。
主が油を注がれた方、お前たちの主人を守れなかったからだ。
さあ、枕もとの槍と水差しがどこにあるか見てみよ。」
サウルはダビデの声と気づいて、言った。
「この声はわが子、ダビデではないか。」
ダビデは答えた。
「わが主君、王よ。わたしの声です。」
ダビデは続けた。
「わが主君はなぜわたしを追跡なさるのですか。
わたしが何をしたというのでしょう。
わたしの手にどんな悪があるというのでしょうか。
わが主君、王よ。
僕の言葉をお聞きください。
もし、王がわたしに対して憤られるように仕向けられたのが主であるなら、
どうか、主が献げ物によってなだめられますように。
もし、人間であるなら、主の御前に彼らが呪われますように。
彼らは、『行け、他の神々に仕えよ』と言って、
この日、主がお与えくださった嗣業の地からわたしを追い払うのです。
どうか、わたしの血が主の御前を遠く離れた地で流されませんように。
まことにイスラエルの王は、山でしゃこを追うかのように、
蚤一匹をねらって出陣されたのです。」
サウルは言った。
「わたしが誤っていた。
わが子ダビデよ、帰って来なさい。
この日わたしの命を尊んでくれたお前に、
わたしは二度と危害を加えようとはしない。
わたしは愚かであった。
大きな過ちを犯した。」
ダビデは答えた。
「王の槍はここにあります。
従者を一人よこし、これを運ばせてください。
主は、おのおのに、その正しい行いと忠実さに従って報いてくださいます。
今日、主はわたしの手にあなたを渡されましたが、
主が油を注がれた方に手をかけることをわたしは望みませんでした。
今日、わたしがあなたの命を大切にしたように、
主もわたしの命を大切にされ、
あらゆる苦難からわたしを救ってくださいますように。」
サウルはダビデに言った。
「わが子ダビデよ。
お前に祝福があるように。
お前は活躍し、また、必ず成功する。」
ダビデは自分の道を行き、サウルは自分の場所に戻って行った。
注.私のHPでは絵画主題としての旧約聖書を取り上げたいと思いますので、
物語の整合性は求めていません。
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