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「もう、お花見ねぇ。みんな、今年はどこに行きたい?」
カウンターに座ってカクテルを飲みながら、ママが提案。
「去年と同じでイイ〜」
ミエ姉とマコ姉の無気力なお返事。
「去年はどこに行ったの?」
私はヨシコ姉のボックスのフルーツを作りながら疑問を質問。
「青山墓地よ」
「お墓でお花見っ!な〜んかバチが当たりそう」
ママの回答に私の感想。
「マキちゃん、横浜の外人墓地だってデートコースじゃない」
「ママさぁ、和風と洋風じゃぁ、雰囲気が違うでしょう」
トイレの話しみたい。和風の墓地でお花見?本当?
「桜の木の下に死体を埋めると、骨がピカピカ、ツルツルになるって、何かで読んだけどさぁ」
「マキちゃん、わりとお墓なんて気にならないわよ」
「六本木が近いから、オシャレな花見客ばっかり。焼きそばだって、クレープ屋なんかの屋台も出てるし」
マコ姉とミエ姉の言葉に、私は疑いの目。
「そりゃ、ミンナお酒に卑しいからっ、お酒があれば満足だろうけど…」
田舎者の私は信じられない。絶対だまされてる気がする。根拠はないけど、本能がからかわれてるって感じてる。私の野生草食動物的危険回避の本能が、全員グルだって告げてる。き〜っと、かつがれてるんじゃないの?
「御苑の方が近いじゃない。歩いて行けるじゃない?」
「御苑は入園料がいるし、お酒飲めないわよ」
ミエ姉の呆れ顔の説明。
「マキちゃん、もしかして疑ってんの?」
マコ姉が私に質問。
「だって、墓地で花見ってミスマッチ。みんなで私を騙してんじゃないの?」
ここまでロコツにウサンクサイと、かえって新鮮ですがすがしい〜かな?
「いいから、アンタも参加すんのよっ」
ミエ姉のキツイ口調。
「明日の五時に青山墓地の真ん中ね」
ママのアバウトな待ち合わせ場所と遅い時間。
「はい。は〜い。フルーツ出来ました」
お皿の真ん中のシェリーグラスにドライアイスをコロン、ペパーミントリキュールをトクトク。モクモクのドライアイスの冷気がフルーツをヒエヒエ。出来上がったフルーツ盛をミエ姉たちが運搬。
ドアベルがカラン。
「いらっしゃいませ」
「久しぶり〜」
千恵姉が来店、カウンターに着席。
「疲れが吹っ飛ぶようなカクテル欲しいなぁ」
「ラジャ〜!」
私はシャンパングラスにクラッシュアイス詰めて、ペパーミントリキュールをトクトク。
「は〜い、どうぞ」
「ありがとっ」
千恵姉は通りすがりの王子様じゃなくてもキスしたくなる程の黒髪アジアンビューティ。性格は優しいけど、口と行動は凶暴で凶悪。
「あれっ、目の下赤いよ。どうしたの?」
顔の赤たん発見。
「客に殴られちゃってさぁ。支配人にシメてもらった」
「痛くない?」
カウンターから手を伸ばしてナデナデ。
「すぐ氷で冷やしたから腫れなくてよかったんだ」
「危ないお客だった?」
「う〜ん。春だからねぇ」
「四月馬鹿?」
「うん、暖かくなって活動開始」
「今日の客も?」
「オタクっぽいのが多くて、ヤになんの。ホント、全国から来んの。わざわざ電車に乗って、東北とか名古屋から…」
「春とか夏のHOTな気温になると連中が増えてくるのよ」
「ママ違う、あいつらは年がら年じゅう活動してんだってぇ」
「今日の客はねぇ、加○ちゃんの家を探しに来たロリ」
「ロリは人間特有で、生殖能力のない♀に性欲を感じることを、動物行動学者は『エラー』って言うんだって」
ママのウンチク。
「マキちゃんもエラ〜?」
千恵姉の質問。
「エラ〜じゃなくて、服装フェチなのかなぁ?」
私は自分でも釈然としない自己回答。
「キレ〜だからイイじゃないさぁ。ヤツらのチャーム・ポイントは油でギトギトになってる肌」
「引き篭もってますよって感じの白い肌に眼鏡!」
私はゴキを見た人が殺虫剤を手にするように、喋りながらジェスチャー。
「そうそう!」
私と千恵姉はクスクス。
「一匹見たら百匹いるって、故郷のママが言ってたけどねぇ」
「頭に『ゴ』のつく虫の話じゃないけど、まったく思い込みの激しい人間ば〜っか来んのさぁ」
千恵姉はグラスの柄を持ってフリフリ、御代わりの合図。
楽しい時間はあっという間に過ぎて。
「居心地がいいなぁ〜」
酔ってラリパッパの千恵姉。
「友達になってくれたママと恋人になってくれたマキ。ここはさぁ友達のいないアタシがリラックスできる場所」
私とママはウンウン。
「あ〜と何だっけ…zzz」
はぁ、私は溜め息。
「ママぁ、千恵姉が寝ちゃったから、私一緒に帰るね。サバにご飯あげなきゃ」
「明日は千恵ちゃんも連れて来なさいよ」
「はい、は〜い」
千恵姉とスクラム組んでヨタって帰宅。
重っ!
めでたくなし!
めでたくなし!
つづく〜。
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