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Side story 2(原稿用紙5.5枚)
『目指せ芸術家!』
ニコニコ笑って高い目標を喋ったマキ。
『芸術家って、オタクでネクラの甲斐性なしじゃない?』
『諦めなきゃなれるってさぁ。50年後なんて予定は未定』
『忍さんの絵を描いてるから、貰ってよ』
ホールでニコニコ。
当てにしてねぇよ。
『でも、作品を見せなきゃさぁ。口では何とでも言えるでしょ』
そうだね。
『口だけじゃ、ミュージシャン目指してるって、九九の八の段が言えないホストと変わんないでしょ?』
マキは相変わらずニコニコ。
アタシの店に届けに来てくれた絵は、もうアタシのお宝。悲母観音と鬼子母神の二枚。アタシの背中の鬼子母神。
ホントに貰ってイイの?
絵を見て言葉が出なくて、ようやく出せた言葉。
マキはニコニコ。
アタシの夢って何だろ?
夢って見たかな?
団地で育って、こんなトコ絶対に出てくって思ってた。家の頭金が貯まったら、親も団地出てくって、頑張ってた。共稼ぎでも、なかなか貯まんない金。気が付いたら、壊れかけた夫婦。焦るアタシ。抗議のための、非行?仲直りするまで帰らないって、家出?いっぱい心配かけて困らせてやる。友達のねぐらを渡り歩いて、親切な男の口車に乗ちゃって、ありきたりのパターン?欲しいものはメチャクチャ沢山あった。いつも、満たされなかった。はじめは寝る場所。その次は居場所が欲しかった。
『守ってやるから、言うこと聞けよ』
守られてんだか、敵だったのか?なぁんでこんな風になっちゃったんだろう?
『ふざけんなよ!ここまで来てなんだよ』
『もったいぶってんじゃねぇ』
当然のように、当たり前のように求められるSEX。男に『稼いで来い』って言われて何でも売った。マキ、何でも商品になったんだ。
アタシ、バカだよね。
『そんなこと言わないの』
何人目かの男が893でさぁ。
強い男が好きで、強さと権力がって。アタシも二・三日表出れないくらい、殴られたけど、強いアイツが誇りだった。
しょっちゅう喧嘩するのに、別れられなかったんだ。
よくある話じゃ〜ないかぁ〜♪性格は合わないけど、別れられない。
『魔法が効いてたんだねっ』
魔法?
『喧嘩しても、恋愛中の胸キュン状態でも脳内物質は放出されるんだって』
ドメスティクな夫婦が離婚しないのも、脳内物質のおかげ?
アイツは兄貴に恥をかかせたくないって頑張ってた。
上も舎弟を男にって、女の私が嫉妬するぐらいで。
女に会うより、目上の男に会うときの方がメカして、緊張してて。
アタシが嫉妬した相思相愛の兄弟愛。893の男と付き合いだして、女友達は消えてった。
男の力を自分の力だって勘違いしてたんだよ!
『しゃべると苦しいよ』
背中を擦るマキの柔らかい手。
男の金と権力!
ホント勘違いしてた。男の強さと権力はアタシの物じゃなかった。
子供が産まれて…、子供がっ…。
背中のマキの優しい手。
『ほらっ、もうしゃべんないのっ』
やっぱり、アタシはバカだった。左手に根性焼きの跡、薬指に鑑別行きましたってリングの墨。背中にも墨。薬指の墨を隠す幅広のシルバーリング。縄目の模様が凝ってる。このリングもアタシのお宝。
「忍さん、出てないねぇ。顔が暗いよ」
マキがニコニコ。両手で私の肩をモミモミ。
「今日はダメッ。出たり飲まれたり」
「私も隣に座ろうかな」
「バイトは?」
「うん、行くよ」
マキはニコニコ。おっ、私の台がケンシロウの紫オーラ。ケンシロウの北斗百裂拳。アタシは思わずニマニマ。
「ま〜た、マキのツキ貰っちゃったねぇ」
「えぇ〜、今日こそ、私が奢ってあげようって思ったのに」
「今日もマキのラッキー吸っちゃった。アタシの勝利!」
「吸血鬼みたい?」
「ホントに吸ってあげようか?」
「いいです」
「はい、いいえ、どっちよ?」
んっふふ、やっぱ、アタシは馬鹿だねぇ。
つづく〜
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