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日本のナショナリズムの代価
2005年4月13日
エリック・マークアート
Erich Marquardt
パワーアンドインタレストニュースレポート
Power and Interest News Report
http://www.pinr.com,
週末にかけて中国で広がった反日デモは、日本においてナショナリズムが強まりつつあるあるということをあらためて明らかにしている。抗議運動は、日本の文部科学省が20世紀の歴史の初期に起こった戦争での日本の残虐行為を糊塗した教科書を公に承認したことを受けて発生した。推計1万名から2万名の中国人が北京の日本大使館に向って抗議のデモ行進をし、大使館施設に投石をした。さらに、4月10日には推計2万名のデモ隊が広東州南部の二つの都市で行進し、深川にある日本のスーパーを攻撃した。
この抗議行動は中国と日本が1972年に国交回復を正常化して以降最大の反日デモと考えられる。また、コソボ紛争中の1999年に米国がベルグラードにある中国大使館を破壊したとき以降の中国国内における最大の抗議行動でもある。週末にかけて、同じ問題をめぐって、韓国においても規模は小さいが同様の抗議行動が広がった。中国と韓国の両国は20世紀前半に日本の領土拡張政策の犠牲となった経験のある国だ。
日本の文部科学省による決定は、日本の隣国の感情を刺激した一連の日本政府による国家主義的行動に続くものである。例えば、日本は中国と台湾との間で尖閣諸島(釣魚台諸島)を巡る紛争に関与している。また、日本は日本において「竹島」と呼ばれ、韓国が領有する主張する「独島」という韓国の呼ぶ小島を日本の領土と主張している。日本の戦死者を奉じている一方で、特に14名のA級戦犯を含む1000名を超える戦犯を合祀している靖国神社を小泉純一郎首相をはじめとする日本の指導者達は参拝し続けている。日本の軍隊はその潜在的力を強化しつつあり、軍を強化し、その兵力を遠方のイラクにまで展開している。さらに、日本は中国本土による侵略から台湾を防衛するためにアメリカに協力するという宣言に明らか見てとれるように、日本政府はこれまで以上に自己主張の強い外交政策を宣言している。
日本のナショナリズム
強まりつつある日本のナショナリズムは、より独立した外交政策を展開し、軍事力を増大させたいという日本の願望から生じている。日本の指導的政治家の多くは日本が強力な日本国へと復帰することを夢見ている。それらの政治家にとって、日本国民の間にナショナリズムを強化することはより強力な軍隊に対する支持を増大させるために必要なシナリオとなる。
20世紀前半の東南アジア全土を通じての日本の暴力的な領土拡大に対する反省に立って、これまで、このような水準のナショナリズムは自制されてきた。しかし、最近日本の社会は変化した。第二次世界大戦前とその期間中の日本の行動についての記憶は薄らぎつつある。一方、中国は飛躍的にその力を増大させつつある。そして、アメリカはイラク戦争の問題に直面していることから、中国との紛争が勃発した際に、アメリカが日本の防衛に完全に関わる確実性は減少している。
このようにアメリカに依存しきれないということが、日本の多数の指導的政治家が日本の軍事強化にむけた社会的条件を作り出すため、日本のナショナリズムを一層刺激しているということの背景にある。日本政府は、現在韓国によって領有され占拠されている竹島や、日本によって占拠されているが中国と台湾が競ってこれに異論を唱えている尖閣諸島などの一連の諸島に関する主張を強めている。さらに、日本はその歴史教科書に第二次世界大戦時代の軍国主義的過去について盛り込むことを求める国際的なプレッシャーに抵抗している。例えば、最近承認された教科書の一つにおいて、日本の文部科学省は、日本軍のための売春婦と性的奴隷とされた10万名から20万名の「慰安婦」の強制収容、強制労働を無視し、1937年に起こった中国南京での民間人および戦争捕虜の虐殺という日本軍の行為の詳細について触れない歴史教科書の使用を許可した。
問題の教科書を書いた組織である「新しい歴史教科書をつくる会」は「日本における歴史教育の非常に深刻な状況」に深く憂慮するという国家主義的な学者達から構成されている。同会の副会長である藤岡信勝は、「日本は現在われわれの子ども達を根拠のない、戦時の、敵性プロパガンダを用いて教育している。子ども達が自分達の先祖はとんでもない極悪非道な人達であったと思わされているということが容易に想像できるだろう。実際には、日本人による戦争犯罪が他国民によって犯された戦争犯罪よりもひどいものであったということ証明する証拠はない」と説明している。
藤岡は、「慰安婦」問題を論じて、「売春それ自体は悲劇的なことだった。しかしながら、女性達が日本軍によってそれを強制されたということを示す証拠はない。もしそうであったなら、誇り高い韓国人は、その結果がどうなるかを省みることもなく、怒りを持ってすべての日本人を殺すために立ち上がっただろうとわたしは思っている」と述べている。
日本の歴史にその隣国の国民が非常に敏感であるという背景を考慮するなら、日本政府がこのような発言を支持することは、おのずと20世紀始めの日本の拡大による被害を受けたこれらの国々の反日的ナショナリズムを刺激することになる。それが今日実際に起こっている反日デモにつながっているのだ。日本政府は先に述べたような情報を日本の歴史教科書に盛り込むべきであるとする中国と韓国の要求は、日本の政治指導者によって単なる反日的な意見だとして片付けられつつある。そのような中国と韓国の要求を無視することは日本人のナショナリズムを刺激し、国民を日本の再武装と国家主義的な外交政策に向けて追いやることになる。藤岡が主張するように、日本の子ども達に自虐心を植え付けることに反対するという彼等の意見をますます多くの人々が共有するようになってきている。
中国政府は自国民を満足に養うことに失敗していること隠蔽するための材料として反日的意見を利用していると日本の指導的政治家は主張している。日本の政府与党である自由民主党服幹事長の安倍晋三はこのことについて、「日本はその怒りを発散させるためのはけ口となっている。(中国における)反日教育があるために、これらのデモに火をつけるのは簡単であり、インターネットがあるので多数の人を集めやすい」と述べた。このような発言が、日本のナショナリズムを推進している者達により一層権力を与えるべきだということを日本国民の一部に確信させることになる。
さらに、抗議の後に、日本政府は中国政府にデモに関する謝罪を要求した。中国政府はアジア地域において大国となるという野心を後押ししつつある自国民のナショナリズムに注意を払っており、日本に対する謝罪を拒否した。その際、中国外務省の秦剛報道副局長は、「中国に対する侵略の歴史のような中国人民の感情に関わる大きな問題に対して、日本政府は、真剣かつ適切に対処しなければならない。日本政府は、反対のことをするのではなく、相互信頼を高め、中日関係の総合的利益を守るための一層の努力をすべきだ」と発言している。
日本政府は日本の国益を危うくしている
日本の行動は韓国および中国両国との関係に傷をつけた。日中間にはつねにナショナリズムに基づく緊張が存在している。一方、日本と韓国とは双方とも米国の軍事的な傘の下にいたことから、日韓関係はこれまで安定していた。ソ連との長い冷戦時代、中国が共産主義勢力であり、北朝鮮からの侵攻に対して米国が韓国側に立って戦っていた時代には、日韓両国は米国によって支援され、保護されていた。日本政府は韓国政府との緊密な関係を維持することが重要である。韓国を孤立化させることは、日本が韓国政府を一層中国政府よりに追いやることになる。このような事態は中国政府が歓迎することではあるが、日本政府はそのような動きを助長すべきではない。(拙稿「日本と韓国の強力な関係を維持することの重要性」を参照されたい。)
韓国の盧武鉉大統領は3月23日に、「韓国政府は、日本の侵略と殖民地支配主義の歴史を正当化し、アジア地域での覇権を復活させようという試みに断固たる対処をする以外にもはや選択肢はない。両国間での各種の交流を減らし、経済問題を引き起こす原因となりうる強固な外交戦になる可能性がある。しかし、多くを心配することはない。われわれは、真に必要なときには、困難に耐えることができる」と警告している。
実際、韓国政府は日本が国連安全保障理事会の常任理事国入りの努力に反対すると述べている。常任理事国となろうとする日本の動きは、アジア地域での力を増大させたいという日本の願望の一部である。日本は、国連内では米国とオーストラリアによって支持されているが、韓国の国連大使金三勲は、「過去に対する反省を欠いているために、その隣国の信頼を得ていない国が世界の指導者としての役割を果たすには多くの困難がある」と述べている。
中国は日本が常任理事国入りに反対する韓国の動きに加わった。4月12日、中国の温家宝首相は、日本の常任理事国入りに関連し、「歴史を尊重し、責任を果たし、アジアと世界の人民の信頼を勝ち取る国だけが、国際社会の中でより大きな役割を果たすことができる」と述べている。
日本は現在、東アジアにおけるバランスオブパワーを維持するために日本を利用している米国とオーストラリアの戦略的支持を得ているが、これらの両国は地理的に遠い国だ。そのため、日本は、冷戦時代に西側であった歴史があり、東アジアにおける経済大国でもある最も近い隣国である韓国との戦略的同盟関係という連合を築き上げることが重要である。それゆえ、韓国との関係を悪化させることは、同地域において日本をさらに孤立させることになり、日本の国益に悪影響を及ぼすこととなろう。
結論
日本のナショナリズムは東アジアにおけるバランスオブパワーが変化していることを日本が認識したことから生じた反応である。中国が経済大国として成長し続けていることが日本にその外交戦略を再考させることの原因となっている。日本は現在、中国との良好な貿易関係を有しており、両国間の貿易は2004年に17%増加した。それにかわらず、中国が現在採っている路線は東アジアにおける最強の国としての日本の役割を押しのけようとするものであり、中国は東アジアにおける日本の力と影響力に対する脅威となっていると日本のナショナリズムは認識しているのだ。
このような脅威に対抗するため、日本政府はその軍事力を増強する一方で中国の封じ込めを支持することも間接的に宣言している。それは、中国による台湾侵攻に際する米国の防衛に日本も協力するという日本の声明によって証明されている。東アジア地域における力を維持しようと望むなら、米国との関係は非常に重要である。しかし、同時に、日本は、列島の西側沿岸全体が中国によって牛耳られたブロックに面したままで、東アジアの末端で孤立しているというような状況にならないよう、他のアジアの国々とも協調することが必要だ。
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日本のナショナリズムだけに注意を喚起しているが、それが問題なのだろうか?
2005/5/4(水) 午後 7:15 [ mak*2*5002* ]
日中だけでなく、日韓の関係が悪化するのは日本にとって大問題。過去の戦争を引き起こした日本がまずナショナリズムを抑える事は重要ですね。しかし、日韓だけでなくアジアの大国である日中の関係の改善も必要だと思います。日中が互いにブロック化するのは避けたいところです。
2005/5/20(金) 午前 5:36 [ skywave1493 ]
友人の意見を参考に文章を修正したところがあります。よりわかりやすくなったかと思いますが・・・
2005/5/21(土) 午前 11:40 [ mak*2*5002* ]
ずいぶん後になりましたが、参考になりました。TBさせていただきました。m(_ _)m
2006/1/28(土) 午後 1:25 [ obi*bi*73 ]