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7月24日
イスラエルのレバノン攻撃が激しさを増し、イスラエルはついに地上軍をレバノン内に侵攻させ、ヒズボラの拠点を直接攻撃すると同時に国境地域に部隊を集結させていると報じられています(7月24日読売新聞電子版)。ロイター通信によれば、死者の数はレバノン側365人、イスラエル側37人と400人を超えるものとなっています。
国連のアナン事務総長はじめ世界の多くの国々は、イスラエルのこのような軍事行動を過剰反応として非難するとともに、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ側に対しても砲撃停止を求めています。しかし、現在、目に付くのは、米国のブッシュ政権による一方的なイスラエルに対する擁護の姿勢です。
ブッシュ大統領は7月18日、イランとシリアがヒズボラにイスラエル攻撃をそそのかしており、シリアが再びレバノンに対する影響力を強めようとしていると警告しています。そして、「現在の不安定の根本的原因は、テロリズムと民主国家へのテロ攻撃にある」と指摘し、世界はヒズボラなどと対決し、イランの孤立化に向かって引き続き行動する必要がある」と語ったとされています(ロイター電子版7月20日)。
また、ライス国務長官は7月21日「永続的な暴力の停止に向けた状況を作り出すために」中東を訪問すると記者会見で述べていますが、即時停戦を求める声に、「政治的条件の伴わない即時停戦は意味がない。現状維持を目指してもヒズボラは再びレバノン南部を拠点に、イスラエルを攻撃するだろう」と述べ、即時停戦を求めないという考え方を示したとのことです(産経新聞7月25日電子版)。
そして、イスラエルの「Haaretz」紙電子版(7月23日付け)は、アメリカはヒズボラに対する攻撃をもう一週間ほど継続してよいとの承認をイスラエルに与えたと報じています。
国連による多国籍軍やNATOによる国際部隊派遣が取りざたされる中、ブッシュ政権は、イスラエルの軍事行動を「自衛権」の名のもとに擁護し、仲裁を求める世界の世論を無視し、ヒズボラの無力化作戦(レバノンに対する攻撃)を継続させようとしている感があります。現在のイスラエルのレバノン侵攻は、核開発問題をめぐって膠着状態にあるイランとその同盟国シリアとの来るべき軍事対立を想定し、米国とイスラエルがヒズボラをイラン・シリアの別働隊とみなし、今のうちにヒズボラを叩いておこうとしているのではとの見方があります。
トリタ・パーシー博士(「不安定の三角関係:イスラエル、イラン及びアメリカの秘密取引」
イエール大学出版2007年出版の著者)は、「ヒズボラだけの問題ではない」というタイト
ルでアジアタイムズにおいて以下のように論じています。
・ イラン、シリア、ヒズボラには現在のようにイスラエルとの紛争を拡大させる動機がない。
○ まず、まずシリアは現在非常に弱い立場にあり、同時にブッシュ政権はシリアとの対話を拒んできており、シリアには外交的工作の可能性(diplomatic maneuverability)が限られている。また、シリアの軍隊は弱体化している。
○ ヒズボラは自らの存在の正当性を証明するために、イスラエルの敵意を必要としていない。これまで何十年と続いた戦争から復興したレバノンに自らが原因となってイスラエルを引き入れることは、ヒズボラの存在自体がレバノンを危機に直面させることになる。
○ イランは核問題をめぐって西側との間に非常にリスクの高いゲームを競い合っており、その戦略は継続的に米国に挑むことにあるように見えるが、実際には勝つことはできないと知っている軍事対立に自らを直面させるまでには至っていない。
○ アフマディネジャドは「シリアを攻撃すれば痛烈な反撃を行う」と発言し、シオニスト国家の蛮行に巻き込まれているヒズボラを支援することを拒否したアラブの指導者を非難するなど、騒ぎ立てているのは事実だが、今回の紛争においてイランが活発な役割を果たしたことを示す証拠はない。
○ イスラエルはイランを攻撃する新しい理由を見つけるためにレバノン危機を利用している。(イランが)ヒズボラを支配している、あるいはシリア以上にヒズボラに対する支配力を有しているという証拠はない。厳然たる事実が出てくるまで、イランの役割とは単なる憶測に過ぎないとのCenter for Strategic and International Studies: CSISのアンソニー・コーデスマンの指摘がある。
・ 一方で、紛争の長期的拡大に戦略的関心を有しているのはイスラエルだ。
○ イスラエル政府はイランとの将来の対決の可能性を見据え、イランの抑止力と報復能力を弱体化させる機会を狙ってきたように思える。
○ イランはこれまでの数ヶ月間において、米国がイランの核施設を攻撃するなら、イランはイスラエルに報復を行うと警告を発してきた。このため、イスラエルはイランに対する政策を見直した(訳注:より積極的にイランの報復能力を殺ぐ必要性を認識した。)。
○ イランはハマスとヒズボラを通してイスラエルの領土内で戦争を引き起こすことができ、このことが非対象的戦争に対するイスラエルの脆弱性を際立たせている。今の時点で、ハマスとヒズボラを先制攻撃することにより、米国がイランを攻撃したときのイランのイスラエルに対する報復能力を大幅に殺ぐことができる。イランが核兵器を持ってしまったなら、このオプションはイスラエルにとって有効ではなくなる。
パーシー博士は以上のような理由から、紛争を拡大しようというイスラエルの戦略は明らかだとしています。
また、同博士はアメリカがイラクにおいて失敗していることの影響もあることを指摘しています。
イスラエルはアラブによるいかなる通常型攻撃にも対処できる軍事力を確かに所有しているが、その抑止力の強さはかなりの程度米軍の強さと連動している。米国の過度の軍事的展開がイスラエルの敵を大胆にさせ、イスラエルにはその厳しい姿勢を続ける決心と能力があるかを試してみたいという気にさせた可能性がある。そのため、イスラエルは今回の衝突における過度な反応と紛争の拡大を通して、自らの脆弱性を隠し、アラブ側の冒険主義的考え方を放棄することを迫ったのだろうとの指摘です。
当ブログは、欧米の主要なソースからの情報を管理人の興味に応じて紹介しています。できるだけ、一般の新聞等で読むことのできない意見等を紹介していきたいと思います。荒唐無稽な意見を取り上げるつもりはありませんが、ここで取り上げた意見に必ずしも賛成しているということではないことにもご留意ください。価値判断は読者の皆様に委ねられており、そのための参考になれば幸いです。
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いつも興味深い情報の提供に感謝です。比ゆとしては適切ではないかもしれないが、日本陸軍、関東軍の共産匪賊討伐の名目による満州から北シナへの侵略の経緯が思い浮かべます。強力な軍が独断的にゲリラと対決するとき、民族全体を敵にしていることを忘れている。イスラエルもモスリムの各民族を分断攻撃し、撃破しているつもりだろうが、やがて大きな代償を払うことは歴史の教訓だと思う。両者が生存をかけている。インテリは無力ですね。
2006/7/25(火) 午前 9:35 [ MASARU ]
ネオコンの機関紙でビル・クリストルは現在のイスラエルの戦争はアメリカの戦争でもある。なぜ、イランに対する攻撃をしないのかとイランに対する攻撃を主張しています。一時影を潜めたかに見えるネオコンがまたぞろ声を張り上げています。
2006/7/25(火) 午後 1:41 [ mako2750026 ]
また、民主党の将来の大統領候補と目されるヒラリー・ローダム・クリントンも7月17日徹底的にイスラエルを擁護し、中東における軍事衝突でハマス、ヒズボラ、イラン、シリアからイスラエルを守るためには、必要とされるいかなる手段をとることを支持すると発言しております。連邦議会下院でもイスラエル支持とイラン・シリア非難の決議が成立しています。大量の犠牲者を出している戦闘を停止させる努力こそが必要と思われますが、アメリカの大勢はあくまでイスラエルとアメリカ中心の思考パターンなのでしょうか?
2006/7/25(火) 午後 1:42 [ mako2750026 ]
ブッシュの強力な支持基盤に、南部のキリスト教原理主義者が存在しており、本来彼らと相容れないはずのユダヤ教徒との妥協と連携が成立している?!との論があります。何のためか、これはかなり深い文責が必要で、世界中で個別的紛争が多発している状況が、2極対立に集約されたら世界大戦になるわけです。中国も朝鮮半島も日清・日露戦争当時とよく似てきました。日本の針路をあやまたぬ様、意見を言うべきときは言わねばならないでしょう
2006/7/25(火) 午後 6:28 [ MASARU ]