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再びイラン攻撃論について(1)
9月29日
8月31日までにイランの核開発活動、特にウラン濃縮活動の停止を求めた国連安保理常任理事国プラスドイツ(Pプラス1)とイランとの対立は、相変わらず強硬路線を追求している米国、交渉による解決を探るヨーロッパそしてイランとの間でのはらの探りあいが続いています。

当ブログでは、前回、「最終的にはイランに対する武力行使に発展か?」というタイトルで、アメリカの元CIAスタッフであるレイ・クローズの意見を紹介しました。

今回も、現在までブッシュ政権が追及してきた数ヶ月間の外交路線は結局イランに対する軍事的選択肢を行使するための口実にでしかなく、ブッシュ政権はイランを攻撃するだろうという立場の論説の一部を紹介します。

この論者はサム・ガーデナーで、米空軍の退役大佐で軍事戦略および作戦に関して米国防大学等で教鞭をとったことがあり、アトランティック・マンスリーによる戦争ゲームを実行した人物です。そのガーディナーが米国センチュリー財団からの委託を受けて行った研究の成果として、「『外交の夏』の終わり?:イランに対する軍事的選択肢の評価」を発表しました。以下は、その内容を要約紹介するものです。

まず、ガーディナーは以下のように述べています。

今年の5月31日、ライス国務長官は、イランがウラン濃縮プログラムの凍結に同意するなら米国はイラン政府との直接交渉を開始するという非常に重要な声明を発表した。これはそれまでのイランとの直接対話をかたくなに回避してきたブッシュ政権の外交方針の劇的な転換だ。

この方針の大転換はブッシュ政権内ですんなりと認められたとは言えず、チェーニー副大統領はこの方針に反対した。しかし、米国がイランと対決しようとしているのなら、外交ルートでの解決の可能性を試しておくべきだとの論理が時のブッシュ政権内で優勢となっていた。その結果、今年の夏は外交努力による解決を行うための時間としてライス国務長官に与えられたということだ。

しかし、その夏は終わり、外交による解決には十分なチャンスが与えられたが、現在ではそれまでの数ヶ月間の外交活動は軍事的選択肢を行使するための口実でしかなかったように思われる。

「武力によるイランとの衝突はアメリカの政策決定者が望んでいるような結果をもたらすことはなく、反対の結果をもたらしてしまう可能性が高くなる。したがって、軍事攻撃は意味がない。」多くのヨーロッパの識者はそう指摘するが、「意味があるかどうか」といフィルターを通してはアメリカの外交政策を理解できない。このフィルターはイラクに関するこれまでの4年間適用されては来なかったし、イランを攻撃すべきかどうかという点を評価するに当たっても適用されることはない。

イランに対する軍事的選択肢の行使に関する最終的判断を行う米国政府内の立場を理解するには、彼らが信じている鍵となる7つの真理についてまず考慮する必要がある。

・ イランは大量破壊兵器を開発しつつある(括弧内はガーデイナーによる判断。以下同じ―これは真実である可能性が大きい)
・ イランは国際社会を無視している(真実である)
・ イランはヒズボラとテロリズムを支援している(真実である)
・ イランはますますイラクに関わりを深めつつあり、アフガニスタンにも関与し始めている(真実である)
・ イラン国民は体制転覆を望んでいる(誇張である可能性が大きい)
・ 制裁は効果がない(真実である可能性が大きい)
・ イラン人とは交渉はできない(必ずしも証明されていない)

これらすべての点を真理であると判断した場合は、ブッシュ政権にはほぼ軍事的選択肢のみが残されている状態にあるということが理解できるだろう。ブッシュ政権は外交にチャンスを与えたいという。しかし、そういう時、彼らが交渉による解決を望んでいることを意味しないということを念頭におくべきである。イランはアメリカの非軍事的対応の結果としてアメリカの望んでいることを実行しなければならないということをブッシュ政権は意味しているのだ。すなわち、ウラン濃縮を凍結すれば、アメリカは交渉に応じる、ということだ。しかし、イランは濃縮活動を継続するように思われ、両者間での直接協議はない。非軍事的対応は役に立たないことに満足し、7つの真理を信じている者たちは、残された唯一の実行可能性のある選択肢は軍事的選択肢だと主張する。しかし、話はそれほど簡単ではない。

そして、ガーディナーは、イラン攻撃を求めるプレッシャーと論拠、空爆のもたらす可能性の直接的間接的影響、軍事的選択肢の推進論者が実現しようと望んでいるものと実際に手にすることができるものとの間の大きなギャップ、政策決定者がこれらのギャップを無視し、それにもかかわらず戦争に突き進む可能性について論じるとしています。

タイミングと不確実性

ガーディナーは、イラン攻撃をすべきだというプレッシャーについて、以下のように述べています。

彼はアトランティック・マンスリー誌において2年前に戦争ゲームを行ったが、そのときには、イランの核関連の攻撃目標として13施設を確認したが、現在ではその数は24の施設に増えた。そして、これまでの数年間で、ナタンツのウラン濃縮施設は15メートルの地下の強化コンクリートと土壌の下にあることが分かっているが、その他の施設で同様に施設の強化が行われ、核施設が人口集中地区に移されたという証拠がある。そのことから、アメリカが待てば待つだけ、攻撃対象施設が強化され、また攻撃が困難になる。したがって、攻撃を避けることができないなら、手遅れになる前にできるだけ早くすべきだという議論がワシントンで勢いを増している理由の1つだ。

もう1つ攻撃のタイミングに影響を与える大きな問題はイランに関する信頼できる情報の明らかな不足という問題だ。下院情報委員会の報告書はイランの核開発プログラムに関するアメリカの知識に深刻なギャップがあることを指摘したが、皮肉なことに、このギャップは攻撃に対する注意を喚起するものではなくて、逆に攻撃を推進する圧力となっている。

アメリカの情報機関はイランのすべての核施設の位置を知らない。またイランがウラン濃縮についてどれだけ進展しているかについても把握していない。さらに、イランの核開発プログラムがパキスタンの開発計画に著しく類似していることは知っているが、イランが現在評価しているものよりもさらに進歩した技術を習得したかどうかについては把握していない。

ある米国政府高官はイランが核兵器を所有するまでに10年はかかるとしている。また、国防総省は5年で以内に可能だといっている。イスラエルはイランが3年で核兵器を所有できるとしている。ジョン・ネグロポンテ国家情報長官は最近、イランは向こう10年以内には核兵器を製造できないと述べている。しかし、その翌日、ドナルド・ラムズフェルド国防長官はイランの核開発プログラムについての評価は信用していないと述べた。

このような非常にあいまいな情報しかないという状況が軍事行動を主張するもう1つの根拠となってきている。なぜなら、米国の政策決定者がレッド・ラインに関する政策に合意することができても、一体イランがそのラインを超えたのか、またいつ超えたのかを判断する方法がないからだ。チェーニー副大統領が支持しているグローバルな脅威への対処に当たっての計算は、ある国が大量破壊兵器WMDをテロリストに渡している可能性が1%でもあるならば、米国は行動しなくてはならないというもの。そして、イランがテロリストに大量破壊兵器を渡している可能性は1%あるので、ブッシュ政権は非軍事的選択肢を拒否すべき立場にあるということになる。

地域的プレッシャー

ガーディナーはもう1つが地域的プレッシャーだとして、イスラエルから生じているイラン攻撃へのプレッシャーを挙げ、以下のように続けます。

イスラエルはイランの各施設を攻撃する計画を既に持っていると述べている。そして、最近空軍将校をイランに対する作戦の責任者に任命した。この空軍少将はイスラエルのイラン戦争の調整を担当する。イスラエル軍は米国製の地中貫通型爆弾とナタンツの核施設の複製を持っている。イスラエル軍の担当プランナーは、イランに対する攻撃は1967年のイスラエルのエジプトに対する作戦と同様のものとなると言う。攻撃プランはイスラエル空軍の第69飛行隊による空爆以上のものとなるだろう。高速哨戒艇シャルダグによる戦闘部隊、海上発射ミサイル、地下施設に浸透する爆発を携行する犬などを含むこととなろう。

イスラエルは分かっている核施設のほとんどを攻撃することができるだろう。しかし、それらの攻撃はイランに大規模な報復オプションを与えることとなる。これは深刻な問題である。同地域における米軍や米国関連施設はイラによる報復の攻撃対象となる可能性が高い。したがって、イスラエルの単独での軍事行動であっても米国にとって重大な影響を持つことになる。

問題の一部は、アメリカとイスラエルにとってのイランに関するレッド・ラインが同じではないということだ。イスラエルにとってのレッド・ラインはウラン濃縮であり、アメリカにとってのレッド・ラインはイラン製核兵器の開発である。これまでの6ヶ月間、アメリカのレッド・ラインはイスラエルのレッド・ラインへと近づいてきた。3月21日、米国はイランが核兵器を製造する知識を持つことを許すことはできないと、ブッシュ大統領は述べた。また8月にもその発言を繰り返した。

このような形でレッド・ラインを引き直すことによって、アメリカの政策決定者はイランとの戦争を行うべきというプレッシャーを作り出してきている。イランは核兵器を開発する知識を持つことを許されるべきではないと述べることによって、ブッシュ大統領は1年前に行われたイスラエルの外相の発言とそっくりの発言をしている。最近、米国務省高官は、イランが核開発プログラムにおいてもはや引き返すことのできない「ポイント・オブ・ノー・リターン」を越えたと発言した。この言葉はイスラエル政府高官の発言を正確に復唱したものだ。イスラエルによるイラン攻撃へのプレッシャーが確実に働いている。(続く)

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時間が取れずに間が空いてしまいました。一挙に書き上げたいのですが、少しずつ何回かに分けて書きます。

2006/9/29(金) 午後 6:10 [ mak*2*5002* ]

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イランはアメリカとイスラエルの攻撃を待っています。もし攻撃すればイランの勝ちになります、というか全世界の反米勢力と言い換えましょう。イラクでアメリカは泥沼でイスラエルはレバノン紛争で世界中の評判を落としました。そこにイランに攻撃を加えたらどうなるか、アメリカはアフガニスタンから手を引きました。

2006/9/29(金) 午後 6:20 lamerfontene

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ベネズエラのチャベス大統領は国連でアメリカは悪魔だ、私が推薦するアメリカ人の本を読めば理解できると訴えました。彼の言う通り中南米は潜在的にすべてが反米です、アメリカ、イスラエルがイランを攻撃すればアメリカへのテロ攻撃は中東だけではすまなくなるのです。チャベスを笑うのは簡単ですが世界には反米包囲網が確かに存在します、それを勢いづかせるのがイラン攻撃です。

2006/9/29(金) 午後 6:32 lamerfontene

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当ブログの立場は平和裏に問題を解決してほしいというものですが、必ずしも楽観できない動きがあり、それを皆さんにお伝えしたいという思いで書いています。不十分かもしれませんが、よろしくお願いします。いつもコメントありがとうございます。

2006/9/29(金) 午後 6:35 [ mak*2*5002* ]

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( ´ー`)旅先でベトナムやミャンマーの人達と話しをする機会がありました。いろいろな国際的な意見や感想も聞きましたが、皆「戦争は良くない、戦争はしたくない、戦争が終わって良かった」と言っていました。なによりも心からの言葉だったと思います。 政治はそうは言ってられないのでしょうが、何かひっかかります。

2006/10/2(月) 午後 6:25 [ buddhasayyes ]

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戦争は必ず何らかの理由付けを持って行われます。イラク戦争の大義も大量破壊兵器の存在、対テロ戦争でしたが、その根拠は今では多くの人が疑問に思っています。政治のうそを見抜く力が必要ですね。

2006/10/3(火) 午前 6:12 [ mako 2750026 ]

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お元気ですか?最近ご無沙汰ですね。ご清栄のことと存じますが、くれぐれももう年ですから、少しずつ無理せずで・・・、ご自愛下さい。そのうち、横手氏、信行氏などと一杯やれると良いですね。来年度から小生、ワーキングプアーならぬただのプアーになります。宜しく!!

2006/12/11(月) 午後 3:20 [ MASARU ]


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